三重県飯南地域連携型中高一貫教育校の概要


1  学校環境
  (1) 設置年度  平成11年度
  (2) 学校名及び所在地
    1 飯南町立飯南中学校 三重県飯南郡飯南町粥見566
    2 飯高町立飯高西中学校 三重県飯南郡飯高町宮本216
    3 飯高町立飯高東中学校 三重県飯南郡飯高町宮前927
    4 県立飯南高等学校 三重県飯南郡飯南町粥見5480−1
  (3) 地域の環境
       飯南郡は、飯南町(人口約6,400人)と飯高町(人口約5,500人)の2町からなり、松阪市から20〜60q 離れた山間部に位置している。かつては、和歌山街道の宿場町として賑わったところであり、現在も古い町並みや文化財が残っている。日本最古の土偶が出土した遺跡や中央構造線の露頭等、特色ある文化、歴史、自然を有しており、地域住民は伊勢茶や椎茸の栽培の他、林業を中心とした産業に従事している。
  (4) 実施形態
       平成11年度から、県立飯南高等学校の全日制普通科を廃止して、全日制総合学科を設置し、飯南郡内の町立中学校3校との間で連携型中高一貫教育を実施している。
  (5) 学校規模(平成12年4月現在)
    1 飯南町立飯南中学校
      1学年  65名(2クラス)、2学年  79名(2クラス)、3学年86名(3クラス)
教員数  16
    2 飯高町立飯高西中学校
      1学年  35名(1クラス)、2学年  41名(2クラス)、3学年42名(2クラス)
教員数  16
    3 飯高町立飯高東中学校
      1学年  17名(1クラス)、2学年  11名(1クラス)、3学年40名(1クラス)
教員数  10
    4 県立飯南高等学校
      1学年  122名(3クラス)、2学年  113名(3クラス)、3学年109名(3クラス)
教員数  36
  (6) 学校の特色
    1 飯南町立飯南中学校
         校区は自然豊かな農山村地帯であり、純朴で人情味豊かな住民の温かい眼差しに支えられて生徒は育っており、明るく真面目で礼儀正しい。平成4年にアメリカ・サウスダコタ州ラピッド市立サウスミドルスクールと姉妹校提携を結んだ。
    2 飯高町立飯高西中学校
         昭和49年に3つの中学校を統合してできた学校のため、通学区域が広く、自転車通学生が多くを占める。地域住民の学校に対する理解は深く、学校行事や教育活動には極めて協力的であり、地域ぐるみで学校をもり立てている。
    3 飯高町立飯高東中学校
         平成9年に太陽光発電の設備を備えた木造の新校舎が完成した。校区には1小学校しかなく、小規模校であるが、地域の恵まれた自然環境を利用した環境教育や体験的な学習活動等、少人数のよさを利用した教育活動を展開しており、地域住民も学校の教育活動に対して積極的に支援している。

2  教育内容
  (1) 教育目標・方針
       「郷土学習」と「教員交流」を柱とし、体験的な学習活動を通して6年間にわたり計画的・継続的な教育活動を展開することにより、生徒の個性や創造性を伸長させるとともに、郷土を理解し郷土を担う人材の育成をめざしながら、中高大の連携の在り方を考える。
  (2) 教育の特色
    1 中学校と高等学校の連携内容
         特色ある郷土の文化、自然、産業、歴史等を中学校の各教科や高等学校の総合学科の各系列に組み入れ、6年間にわたって計画的・継続的な学習を行う。
   また、「産業社会と人間」の教育内容を中高双方が取り入れることを視野に入れ、地域の社会人講師を広く登用し、進路指導の一層の充実を図るとともに、確かな目的意識を育成し、各自の進路実現に向かう主体的な学習活動を展開する。
    2 中学校の教育内容
      連携型3中学校で共通して取り組む郷土学習の地域教材について、次の14項目を設定している。
      ◎社会
        1年(地理) ・ 身近な地域(飯南町・飯高町の調査)
        2年(歴史) ・ 日本の原始時代(飯南郡内の縄文及び弥生時代の遺跡)
          ・ 江戸時代の産業と交通の発達(道標と和歌山街道)
          ・ 江戸幕府の政治と参勤交代(本陣と和歌山街道)
        3年(公民) ・ 住民の生活と地方自治(飯南町・飯高町の地方財政)
      ◎理科
        1年 ・ 身の回りの生物の観察(櫛田川などの地域の水、植物調べ)
        3年 ・ 大地の変化(飯南郡内にある中央構造線)
        3年 ・ 地球と人間(櫛田川の水質調査の結果を用いて)
      ◎技術・家庭
        1年 ・ 木材加工(地域の木材を使っての木の性質調べ)
        2年 ・ 食物(地域の食材の活用)
        3年 ・ 保育(地域の保育所での保育実習)
      ◎音楽
        1年 ・ 日本の音楽(地域に伝わる歌)
      ◎特別活動
        ・ 福祉体験実習(地域の福祉施設での福祉体験学習)
      ◎特別活動又は理科
        ・ 櫛田川の水質調査(櫛田川の水質環境を継続的に調査)
    3 高等学校の教育内容
         総合学科に次の4つの系列を設置し、特色ある教育を実施しており、中でも、地元の松阪大学及び鈴鹿国際大学の教官がリレー方式で担当する「社会福祉基礎」「社会科学入門」「国際社会と日本」等の選択科目を設けている。また両大学から連携型3中学校へも「出前授業」を実施する等、中高大の連携を図る予定である。各系列には以下の特色ある科目を設置している。
      郷土・環境系列
        「郷土の産業」「郷土の自然」「環境計画」「森林科学」「野外の活動」等
      介護福祉系列
        「老人介護」「社会福祉実習」「社会福祉制度」「社会福祉援助技術」等
      国際コミュニケーション系列
        「英語理解」「社会科学入門」「国際社会と日本」「国際交流」「英語表現」等
      コンピュータ系列
        「プログラミング」「マルチメディア」「グラフィックデザイン」等

3  入学者の選抜・決定
  (1) 入学者選抜・決定方法
       平成12年度選抜では、従来の一般選抜及び推薦入学に加えて、「飯南地域連携型中高一貫教育に係る選抜」(以下「連携型選抜」)を実施した。連携型3中学校から飯南高等学校を志願する場合は、原則としてこの「連携型選抜」によるものとした。この連携型選抜方法は、学力検査及び調査書を用いず、「課題学習のまとめ」と面接により行い、面接の中で「課題学習のまとめ」の発表も行った。なお、この「連携型選抜」は、推薦入学と同じ日に実施し、募集枠は特に定めないこととした。
  (2) これまでの出願状況
    1 「連携型選抜」には連携型3中学校の卒業生合計152名中63名が応募し、全員が合格した。
    2 推薦入学には連携型3中学校以外から18名が応募し、15名が合格した。
    3 一般選抜は、全募集定員120名から、「連携型選抜」及び推薦入学の合格内定者数78名を除き、42名を募集した。54名が応募し、42名が合格した。なお、この内2名は連携型中学校からの応募であった。
    4 各連携型中学校の卒業者数及び飯南高等学校への入学者数(カッコ内は比率)
      飯南中学校  77人中34人(44.2%)
飯高西中学校  46人中17人(37.0%)
飯高東中学校  29人中14人(48.3%)

4  設置経緯
     本県においては、平成5年度に三重県高等学校教育改革推進協議会(以下推進協議会)を設置し、高等学校教育改革及び高等学校入学者選抜に関する事項について調査・検討を重ねてきた。中高一貫教育について、推進協議会では平成9年1月の教育改革プログラム(文部省)発表以前から検討を行っており、平成10年7月の第1回飯南地域中高一貫教育研究委員会での議論を経て、同年8月、推進協議会において、本県における中高一貫教育及び飯南地域における中高一貫教育の在り方について協議し、本県では当面は連携型を指向すること、飯南地域で実施する場合は総合学科が望ましいこと等について方向性が示された。
   これを受け、県教育委員会と飯南町教育委員会及び飯高町教育委員会は、平成11年4月から、県立飯南高等学校と飯南町立飯南中学校、飯高町立飯高西中学校、飯高町立飯高東中学校との間で連携型中高一貫教育を実施することを決定した。
   なお、学校教育法施行規則等の改正を受け、「三重県立学校の管理に関する規則」及び「市町村立学校の管理に関する基準規則」を改正し、連携型高等学校及び連携型中学校において教育課程を編成するときには、事前に双方が協議すること等を規定した。また、飯南町及び飯高町教育委員会においても「町立学校の管理に関する規則」をそれぞれ同様に改正した。

5  設置に要した経費
  飯南高等学校に総合学科を設置したことによる施設・設備の整備等を必要とした。
  施設改修(耐震工事を含む)  約1億3000万円
総合実習棟建設   約3億円
設備等    約8000万円(平成11年度分)

6  その他
  (1)    飯南地域連携型中高一貫教育を支援するため、平成11年度に以下の細事業からなる「中高一貫教育連携型ネットワーク推進事業」を実施した。
    1 飯南地域中高一貫教育推進委員会の設置
    2 地域に根ざした中高一貫教育推進事業
      中高一貫教育に係る地域の民間人講師活用事業
      「郷土・環境」の教育内容創造事業
      地域広報活動推進事業
    3 CATVを利用した「開かれた学校づくり」研究事業
    4 TVコミュニケーション教育システム設置事業
  (2)    平成12年度から新たに文部省の新規研究開発学校の指定を受けるとともに、文部省及び郵政省の「マルチメディア活用学校間連携推進事業」の指定も受けた。今後は連携型中高一貫教育の点検と評価を行いつつ、連携型中高一貫教育の教育課程の編成やマルチメディアの活用による小中高大の連携を柱とした飯南地域教育ネットワークの推進について研究を行う。