少人数教育の実現

教職員等の指導体制の在り方に関する懇談会(第3回)議事概要

1.日時

 平成27年8月4日(火曜日) 15時~17時

2.場所

 文部科学省東館12階 総務課会議室

3.議題

 (1) 提言(案)について
 (2) その他

4.出席者

委員

 貝ノ瀬主査、青木委員、川上委員、貞広委員、末冨委員、苫野委員

文部科学省

 小松初等中等教育局長、藤原大臣官房審議官、矢野財務課長、丸山財務課教育財政室長、安井初等中等教育局企画官、粟井財務課教職員配置計画専門官、南財務課課長補佐、桐生財務課課長補佐

5.議事要旨

(1)開会に先立ち、事務局の人事異動について紹介。

(2)懇談会提言(案)について事務局から説明の後、以下のやりとり。

【委員】 

  • 基礎定数と加配定数について、提言案では必要な定数の措置というふわっとした書き方をしている。理由はあるか。

【事務局】

  • 確実にどちらが良いのかが明らかな場合は明示しているが、長期的な計画において両者の選択の幅がある場合は明示していない。

【委員】

  • 自然増、自然減といった場合、子供の数に応じて学級、教職員の数が決まることになるが、特別支援教育の場合は自然減、自然増というような言い方をして良いのか。そのような言い方をして良いのであれば、特別支援教育についてももう少し積極的に書いても良いのではないか。

【委員】

  • 特別な支援が必要な子供は、少子化に比例して減っているのではなく、むしろ増えている。自然減、自然増というような言い方はできないのではないか。

【事務局】

  • 確かに、特別支援教育については概念が違う。自然減は客観的に把握できる物理的な子供の数の減少に対して用いるが、特別支援教育に必要な教職員定数というのは、実務上、これまでのトレンドから予想される自然増を見込んだ上で算定される。自然減という減要因以外について、もう少ししっかりと書く必要はあるかもしれない。

【委員】

  • むしろこうした定数措置がなされることによって、特別な支援が必要な子供が掘り起こされるということはないか。今は手当をすればするほど、充実した教職員定数に対する需要が明らかになってきている。

【事務局】

  • 全体として児童生徒数が減少する一方で、絶対数として特別支援教育の対象となる子供が増えてきている。特別支援学校と特別支援学級については、法律上規定される基礎定数が措置されるが、そこのみに着目すると自然増である。特別支援教育については、通級指導に対して加配定数を措置しているため、教職員定数は必ずしも自動的に措置されるだけではない。特別支援教育の対象となる子供が増えてきている中で、十分な加配定数措置ができていない状況。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングについて気になる点がある。提言(案)では、少人数教育の推進にあたっては少人数学級が適した方法であると記載してあるが、そこに疑問を感じる。
  • アクティブ・ラーニングの充実に向けた指導体制の在り方について、教職員の質の向上に対応する教職員定数の措置が必要であることには理解を示せる。アクティブ・ラーニングの実施にあたり、学びのスタイルを変える必要があるため、十分な教職員定数の措置をしていかなければならない。
  • 提言(案)には、教職員の新たな職務に対応した教職員定数の措置が必要とあるが、前回の懇談会で事例発表を聞いただけでは新たな職務に対応した教職員定数措置が必要である、ということは見えづらい。
  • 提言(案)では、「新たな学習・指導方法に対応した定数措置」が必要と記載されているが、この点は熟考を要する。アクティブ・ラーニングが何を目指すのかということにも関わる点である。今の議論の中では、アクティブ・ラーニングは主体的・協働的な学びの方法論として言及されている。しかし、アウトカムを保障するためには、学習集団を細かく分けないと、それぞれの児童生徒の学習到達点を見逃しかねない。アクティブ・ラーニングは一単元完結ではなく、学校の年間指導計画、もしくは小中一貫であれば9年間を通じて行われる新しい学びのスタイルに応じて、話し合ったり学びあったり協働したりしながら学ぶものである。
  • そのアウトカムを保障するためには少人数でなくてはいけない。少人数指導に加え、バックアップ体制を整え、プロセス管理をしっかりしなくてはいけない。中教審でも議論は進んでいると思うが、何かアイディアなどあれば教えてほしい。

【委員】 

  • 少人数教育の推進のためには少人数学級が適していると書いてしまうと、少人数学級だけがクローズアップされてしまう。

【委員】

  • その点については、誤解を招きかねない。少人数教育を行うにあたって、少人数学級が適している理由が説明できれば良いが。

【事務局】

  • 少人数学級に言及した趣旨は、平成23年度に小学校1年生で35人学級を導入したときは、この考え方に基づいていた、ということ。この点の書き方は検討する。

【委員】

  • 総論として、アクティブ・ラーニングに必要なのは、新しい社会モデル等を実現するための少人数指導。今のクラスサイズを更に細かく分割して、グループワーク等を様々な集団で学んでいく体制について、教育の専門家ではない人々にイメージを持ってもらわないとアクティブ・ラーニングは浸透しない。
  • 基本的にはクラスサイズを小さくして、その中で小集団を作ることで見取りをよくしていくことが大切。大学で用いているポートフォリオのような学びの記録が大切になると思う。子供一人一人に対する指導の記録等を次の指導に引き継ぐ等、細かな対応を行う必要がある。そのために人の確保が必要となる。だから、新たな職務に対応した定数措置が必要。
  • カリキュラム・マネジメントやカリキュラム・コーディネートのための定数措置は提言(案)で指摘しているように重要。しかし、子供にアウトカムを経験させるためには、更に細かく考えていかなければならない。昨年度の概算要求に向けた検討会では、小学校長会の先生が、単発の授業を見ただけでは保護者には全体のカリキュラムを理解してもらえないとおっしゃっていた。単発の授業を見て何をやっているんだと思われたとしても、授業が連続するとすごい力になるということを説得していかなければならない。子供たちに、単なる知識だけではなく、コミュニケーション能力や問題解決能力等の高いスキルを身につけてもらうためには、少人数によるグループワークを行ったり、見取りも少人数で行ったりする必要がある。現状では、アウトカムとして子供に何を定着させたいかという大事な要素がさらりと整理されている。ラーニング・アウトカムとして何が盛り込まれるべきかを示すことは、教職員定数の改善に向けた方針として大切。

【委員】

  • 社会の納得度という意味では、アクティブ・ラーニングの重要性は、一般にはまだ十分には認識されていないように思う。しかし、社会構造の変化や雇用の流動性に鑑み、知識獲得に留まらず、学び続かなくてはいけない背景がある。これは子供たちの死活問題に関わってくる。
  • 大学入試改革も考慮しなければならない大きな要素だと思う。教員は大学入試改革に大きなインセンティブを感じるとともに、脅威にも感じている。学びのスタイルを変えていかなければならない中、どうして良いか分からない状態である。大学入試が多様化し、知識だけではなく、アクティブ・ラーニングで求められるような能力が要求されてくるため、現場的には大学入試改革は否応なく説得力のあるファクターとなると思う。

【委員】

  • 確かに、今まさに指導体制の在り方が議論されることの社会的・時代的な背景には触れられなければならない。

【委員】

  • アメリカでは、今の小学生の65%が将来的に現在存在しない職業に就くという議論があるが、日本も同じような状況だとすれば、かなりの死活問題だと思う。従来の知識習得を行うだけではどうしようもないというのが文科省の覚悟だと思うが、教員にとっても重要な点だと思う。

【委員】

  • ある意味、危機意識を前提とした上で今後の指導体制の在り方を考えることが求められている。これはインパクトがある。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングを行うからこういう人材が必要であるというような、指導方法と結びついた書き方が必要だと思う。見取りをよくするであるとか、きめ細かく指導するために体制整備するということ等は、価値観を共有している人々には説得力があるかもしれないが、今まで示してきたきめ細かな指導という話と今回の議論は異なるということをどこで出せるか。

【委員】

  • ご指摘の点については、新旧両方必要なのではないか。背景にある必然性と同時に、具体的な新しい指導方法が確立されなければならない。アクティブ・ラーニングについて、現場としては、指導方法が分からないだろう。それは自分が子供の頃から教わってきた指導方法とは異なるため、仕方のないこと。どこかのタイミングで大きく切り替えなければ、指導方法はなかなか変わらない。中教審の委員でさえもイメージがわかない中で、現場の教員に対してカリキュラム作成が教員の本務であると主張してもなかなか受け入れられない。そうした点を導く役割も必要。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングの推進のためには、これまでの指導スタイルの変革が大胆に求められると中教審も主張していたように思う。そうした論調にすべきだと思う。日本の教職員の学習への取り組み方を根本から変えるというくらいの勢いで記載したほうが良い。それが、社会の変化に子供が置き去りにされてしまうという危機意識の現れになる。

【委員】

  • 財政制度等審議会や経済財政諮問会議で主張されているおかしな点をもう少し指摘しても良いのではないか。財政審が示す自然減のシミュレーションは、全国規模で集計単位をまとめた自然減である。集計単位をまとめてしまうと、見えなくなるものがたくさんある。そうした自然減のシミュレーションの話に乗って議論を展開して良いのか。そもそも子供の自然減と教員の自然減は、日本の制度上、必ずしも対応しない。学級単位で教員を配置しているため、もう少し緩やかな教員減となると思う。リニアな減少を想定すると、必ず困った段階が来る。
  • 課題に対応するために教職員の加配措置を行うのに、それを引っ剥がすというのは筋が通らない。現状でも教職員は不足しているのに、シビルミニマムを低下させてしまいかねない。困っている人がいても、自分で対処しなさいというような論理だと思う。この点は強く主張してよい。

【委員】

  • ここで教員の合理化をして、課題を抱える学校を増やして義務教育を崩壊させれば、日本の社会の未来はないという勢いで書いた方が良いと私も思う。

【委員】

  • 下村大臣も教育再生実行会議で、財政審の議論は「木を見て森を見ず」の議論であると批判していた。基礎定数について、財政審建議は単純化して分析している。子供が減るから学級数が機械的に減って、それとともに教員も機械的に減るという論理は分かりやすく、一般受けもしやすい。しかし、政策的に措置している加配定数は、それぞれの課題毎に措置されているから、財政審の言う基礎定数の自然減と同じ論理では議論できない。そうした点については、いい加減な議論をするな、というくらいのトーンで、本質的な点を指摘するのは良いと思う。

【事務局】

  • 委員ご指摘のとおり、子供の数とリニアに比例して教員の数が減るのかといえば、子供の数が減ったとしても、教員の数は学級の数と比例するため、すぐには減らない。また、学校の仕事は、子供の数に比例して減っているわけではない。
  • 10年程で2割も加配定数が増えているという財政審の指摘があった。加配定数がターゲットにしている学校現場の課題の状況を考慮する必要がある。実際のところ、特別支援教育における通級指導も、必ずしも地方からの全ての要望に対して定数を措置できていない。日本語指導が必要な外国人の子供の数に対して、実際に必要とされる特別な指導を受けられている子供はまだ9割である。そうした点は、我々も社会に対して説明していかなければならない。
  • 基礎定数についても、全体の子供の数が減少する一方で、通常学級よりも教員のマンパワーがより多く必要とされる分野の児童生徒数が急増している状況がある。財政審の議論では、マクロな児童生徒数のトータルの減少については指摘されたが、その内訳として、障害のある子供の数の増加等は取り上げられていない。学校の中で何が起こっているのかについて、事実の把握・確認を行った上での議論が必要だと思っている。
  • また、欧米よりも日本の教員は多岐にわたる仕事をしている。教員の給与とPISAのテストの成績の関連をOECDが示しているが、そこには正の相関がある一方で、日本は給与の水準の割に高い成績を残していることが見て取れる。こういう点の理解を求める努力は引き続き課題だと考えている。

【委員】

  • 子供の数の減少に応じて、加配定数を減らすべきという論理は成り立たない。しかし、そのことがなかなか伝わらない。
  • 特別な配慮が必要な子供への対応が喫緊の課題であることを我々は認識しているが、財政審の委員の方々だけではなく、国民にもなかなか理解してもらえない。ある自治体に、特別支援教育の充実が必要だと主張すると、うちの自治体に困った子供たちが集まるのは大変だと言う。特別な支援が必要な子供たちの基本的人権が保障されるというだけではなく、周囲の子供たちも多様性に触れる機会ができたり、落ち着いた学級で勉強できたりするというような、クラスサイズを小さくするということ以上に良いことがあるということを丁寧に説明して、理解していただく必要がある。

【委員】

  • ある自治体が特別支援教育を充実させれば、特別な支援が必要な子供が域外からも集まり、ますますお金がかかってしまう。財源が限られている中、残念ながら、財政を担う立場においては、教育論が後回しになる傾向があるのではないか。

【委員】

  • 第2回懇談会のときも議題に上がったが、特別支援教育において、他校通級から巡回指導へ移っている流れがある。他校通級は保護者が送迎しないといけないため、働く保護者にとっては巡回指導が望ましい。その一方で、他校通級を好む保護者もいる。こうした点はデリケートな問題。
  • 高校における通級指導の記載が気になる。主に発達障害の子供を前提としていると思う。高校の場合、発達障害の子供は、一部の学校に集中しているように考えられるため、巡回指導の方が効果を上げられるだろうし、一人一人の子供の家庭状況を把握している生徒指導主事や養護教諭との連携がうまく機能すると思う。今回の提言(案)では、通級指導として、例えば、県立の特別支援学校を拠点化して、そこに機能を集約することを想定しているのかもしれないが、非都市部には特別支援学校が1校か2校しかない中で、通学は現実的には難しい。むしろこれについても、基礎定数に入れるべきだと思うが、提言(案)の趣旨はどういうものか。

【事務局】

  • これについてはパターンを分けて書いている。通級指導という言葉自体についても、自校通級、他校通級の両方を示しているように、障害のある子供の立場に立ったときに、自分が在籍している学校の中で特別な指導を受けることを望む家庭がある一方で、自分の学校とは違う環境の中で特別な指導を受けることを望む場合がある。通級指導はそうした両方の形態を包む概念である。今回高校について通級指導に言及したのは、高校で障害に応じた指導を受けるということが十分に制度化されていない状況に対して、まずは現在特別支援課でシステム化を行うことを考えていることに併せて、教職員定数上の措置もしなければならないという問題認識によるものである。通級指導という言葉を用いて他校通級という形態を決め打ちするつもりはない。

【委員】

  • その点はしっかり確定させておいた方が良い。特に都市部は定時制高校やチャレンジスクールに障害を持った子供や日本語指導が必要な子供が集中する。これについては、高校の校長会等で実情が明らかになると思う。

【委員】

  • 特別支援教育については、自治体に一任すると、福祉のマグネット効果が教科書通り発動する。特別支援教育が充実しているところに子供が集まるという再分配政策の典型である。これも教科書的な理解だが、ここに国の役割がある。その点は提言に書き込む余地があると思う。
  • アクティブ・ラーニングについて質問したい。既存の定数算定の原則の中での上乗せによる措置を考えていくという趣旨と理解して良いのか。それとも、1学級1担任制それ自体を見直していくという趣旨として理解すべきなのか。

【事務局】

  • 現時点では、あくまでも義務標準法における定数の考え方に基づいた加算を考えている。アクティブ・ラーニングは、まさにこれから効果的な指導方法等の研究が進んでいく分野であり、あくまでも現時点で想定される体制を前提とした書きぶりにしているが、もしも今後の議論において、それとは全く異なるような指導方法、指導体制が必要であるとなれば、それに応じた見直しはあり得る。

【委員】

  • 提言(案)における英語の教科化に関する記載について質問したい。専科指導者を学校に配置するとあるが、これは1校に1人ということか。
  • 将来的に、小学校の英語教育が発展するとなると、学級担任もある程度英語ができなければならないことになる。そうすると、1校に1人くらい専科教員がいないと話にならない。専科教員がたまに学校にやってきて、そのコマだけをこなして帰るというのでは英語教育は充実しないと思う。その展望を踏まえたときに相当数の教職員配置を考えなければならないと思う。

【委員】

  • この点はもう少しロジックを整理する必要がある。2カ国語目の言語習得は発達段階に応じて適切な方法が異なると記憶している。中学生くらいになってくると、既に教え込みくらいしか方法がない。臨界期が10歳くらいまでにやってくると記憶している。発達段階に応じた言語習得の柔軟性に基づいて、小学校における英語の教授方法を確立していかないといけない。中学校の英語教育のスキルをもった教員が小学校に教えに来れば良いという安易な発想にするべきではない。

【委員】

  • 小学校での英語教育を中学校の教員に任せるだけでは、単なる中学校英語の前倒しになってしまいそうだ。

【委員】

  • 実際そのような形で、小中一貫校で英語指導が行われているところもある。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングにおいては、教科横断的な学びというロジックはあるのか。あるとすれば、英語もアクティブ・ラーニングの一環になる。授業のときだけ専科教員に来られても、小学校でのアクティブ・ラーニングは成功しない。

【委員】

  • 地域に1人か2人、リーダー的教員がいれば良いという発想にはならない方が良いかもしれない。

【事務局】

  • 小学校英語の関係については、委員よりご指摘のあった二つの論点の両方が重要なのではないかということが予てから議論されていた。その一方で、全小学校に専科教員配置ということになると、全国2万校に2万人の専科教員を配置することになり、現実的ではない。委員ご指摘のように、小学校における英語あるいは外国語活動については、専科教員を活用しつつも、小学校教員の基本的な教育活動の一環として考えていく必要がある。そのような中、小学校教員の英語の指導力をどのように高めていくのかという議論もあり、研修などの要素も含めた活動を考えなければならないと考えている。
  • 小学校における中学校教員の活用については、子供の発達段階に応じて、必要な指導が全く異なるという議論が学習指導要領改訂の議論でもなされている。小学校段階における英語指導の特性を踏まえなければならない。
  • 小学校における中学校教員の活用は人事的にはあり得ると思うが、人事の問題と教職員定数の問題は峻別して考えなければならない。中学校教員には余剰時間があり、余力があるというのであれば、定数措置なしに中学校教員に兼務発令して小学校で指導させることもできるが、そのような状況には全くないというのが我々の議論の前提にある。その点を理解しておかなければ、中学校にしわ寄せが生じる。

【委員】

  • 小学校と中学校における英語の指導方法の違いを勘案した上で、アクティブ・ラーニングと英語を連動させる必要がある。それに加え、練ったカリキュラム・マネジメントを行い、カリキュラム上に英語を位置づける必要がある。その上で、小学校英語に特化した専科教員が必要であるというロジックでないと世の中には受け入れてもらえない。周到に表現をした方が良いと思う。

【委員】

  • おっしゃるとおり。アクティブ・ラーニング的な要素に加え、小学校英語は中学校英語の前倒しではないということを主張する必要がある。中学校の英語教員が小学校での英語指導ができるかといえばほとんどできない。専科教員を配置するという新たな発想でなければ成功しない。

【委員】

  • 前回の懇談会で実施されたアクティブ・ラーニングに関するヒアリングの際にも指摘したが、アクティブ・ラーニングについての議論は小学校を中心に展開されているように感じ、中学校におけるアクティブ・ラーニングについては、どのような人をどのように指導場面に充てるのかというイメージがなかなか湧いてこない。教科横断的にアクティブ・ラーニングのしかけができる人をイメージできないし、単に授業補助として入るとしてもその教科の教員免許状保有者が望ましいとなるだろう。小学校は全教科を1人の教員が教えるので、アクティブ・ラーニングが成立しやすい。これは人の充て方の話。人が増えた結果、優れた指導ができる人を順に学級担任として充てていくのでは意味がない。今までの議論と今回の議論の異なる部分は、今後の指導方法に合わせて専門的な教員を加配定数として措置しようという点だと思う。優れた指導力を持った教員こそが充てられる仕組みをどこかで想定しておかなければ、加配定数を措置したものの、期待した成果が出ない恐れがある。教員の充て方についての研究・検討をした方が良い。

【委員】

  • 加配教員が配置されることによって、ニーズが掘り起こされるようになると思う。例えば、スクールカウンセラーが配置されると、心に問題を抱えた子供がこんなにいたということが明らかになり、今まで暗数になっていた子供たちが露わになると思う。統計を取れば、スクールカウンセラーを配置しても子供の困った感じは減るどころか増えたという結果が出るだろうが、実は今までは見過ごしてしまっていた子供たちに目を向けられるようになっているはず。いじめの問題等は典型である。こうしたことを主張することも必要。

【委員】

  • 既にご指摘があったが、中学校におけるアクティブ・ラーニングはまだ明確な方向性が見えていない。そうした中で、急に教科横断というオプションもあまり考えられない。恐らく中学校におけるアクティブ・ラーニングでは、学校内におけるPDCAサイクルやカリキュラム・マネジメントが重要となる。共通の達成目標としてアクティブ・ラーニングで身につけるべきスキル等を設定することになる。例えば、理科教育の中で研究発表会等を設定するとなると、理科の範疇を超えて国語でも求められる能力が必要とされる。ある一定の共通目標に向けて各教科が取り組んでいくということが中学校におけるアクティブ・ラーニングのイメージ。しかし、それに向けて指導を改善していくという合意が中学校では得られにくい。これから中教審の議論によってさじ加減が変わってくる。

【事務局】

  • 教育課程企画特別部会でアクティブ・ラーニングの在り方について議論しているが、国が特定の教授スタイルを肯定して、それを推奨するということではない。アクティブ・ラーニングは非常に幅広い概念だが、暗記再生のような学習形態ではない。現在、子供たちの学びのプロセスの中でどのような要素が必要になるのかということについての議論がなされている。単に知識を情報として蓄えるだけでなく、実社会でそれを活用し、自分1人だけではなく、他人と社会を形成しながら様々な課題に対応しながら生きていけるような人を育てたい。そのために求められる資質・能力を学習指導要領の中に明確化していく。これを実現していくための方法論として、アクティブ・ラーニングを考えている。このためには、教材やカリキュラムの内容を抽象的な概念・情報に留めるのではなく、子供たちの生きる実社会の生活環境のような具体的な文脈の中で物事を考えることができるような教材の提示の仕方を工夫すべきであるという議論もある。また、知識や情報を活用して、実際の課題に立ち向かう上で、学校教育法で規定されている思考力、判断力、表現力といった学力の3要素が必要。実際にそうした能力を伸ばすためには、子供たちが思考、判断した上で表現するという活動が学校の中で実際に行われなければならない。そうした意味において、得た情報を理解するだけではなく、自ら主体的に思考していく活動を重視する必要がある。あるいは、子供たちが自ら発表し、自分の意見を表明した上で、他者の意見を聞き、本質的に物事に対する理解を深めていくという活動を大事にしようということも議論されている。そして、子供たちの学びが個々人の枠の中に留まるだけでなく、グループワーク等の中で他者と共に工夫しながら課題解決を目指すことを学習プロセスの中に入れていこうという議論がされている。
  • アクティブ・ラーニングに係る教職員の研修は、教職員の力量を高めるための環境を整備する上で当然必要。また、アクティブ・ラーニングはパッケージ化された教材やカリキュラムでは対応できない。総合的な学習の時間等でも、教科書がなく、自らカリキュラムを考え、教材開発をしなければならないが、それに対してこれまで十分な条件整備を行ってこなかったことが前回の学習指導要領改訂の反省点の一つ。その意味において、カリキュラム・マネジメントの重要性が中教審でも議論されていた。実際、子供たちの主体的な活動について考えると、1人の教員が40人の子供集団からなる教室空間で一つの活動だけが行われている状況から、全体を個別化していく方向に進まざるを得ない点がある。教室空間の中で、個々の子供たちやグループの活動をフォローして適切な指導を行うためには、マンパワーが必要。また、全国学力・学習状況調査の結果を見ても如実に分かることだが、学習集団が小さければ小さいほど、子供たちはよりたくさん発表でき、よりたくさんフィードバックを受けることができる。新たな学習活動と関連づけた教職員等の指導体制について、新しいイメージを提示していかなければならないと思う。今日のご指摘を踏まえて考えていきたい。

【委員】

  • そのイメージ化については、中教審全体でも議論することが必要。ティーム・ティーチングが始まったときも、国は国が一定の型を設定する性質のものではないと主張したが、学校現場からは実施方法が分からないという声があった。その結果、国は手引きを出した。アクティブ・ラーニングも最終的にはそうなるのではないか。
  • 一斉授業を通して、きちんと知識を身につけ、理解をしてもらう教育も引き続き必要。一方、主体的・協働的な学習を行うために、学習集団を小さな単位にしなければ効果が出ないこともある。そこでアクティブ・ラーニングがイメージ化される。これは小中高大いずれも共通。学習集団を小さな単位にして学習を行うことが効果的であるということが学校現場で具体的にイメージされれば良い。

【委員】

  • 学校事務職員が経営への参画と事務の総轄を行う管理職的な役割を担うことが想定されているが、提言(案)の書きぶりはざっくりとしている。学校事務職員が管理職的な役割を担うのであれば、カリキュラム・マネジメントとの連動が必要。アクティブ・ラーニング実施により、恐らく教材配置、教材整備、消耗品、備品の発注の仕方に至るまで、年間スケジュールやお金の流れが変わる。ともすれば、私費負担管理の手間が増えることも想定される。私費負担管理やカリキュラム・マネジメントといった、より学校事務職員の参画が期待される業務を前面に出していく方が良いのではないか。教頭や副校長は、未納・私費負担管理から解放されるべき。就学援助の事務についても、より確実に対象層をターゲッティングするためには、学校事務職員がかなり活躍しなければならない。その点も貧困対策として重要。
  • 提言(案)では、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを国庫負担の対象にしなければならない理由がはっきり読み取れない。教員は児童生徒に対して、確かに直接指導上の責任を負うが、教員だけではその責任を背負いきれないから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに参画してもらうのではないか。
  • 提言(案)では、教員がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに責任を丸投げしないように注意がなされているが、重要なのは、それぞれの専門性を発揮した役割分担とスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを教育委員会配置ではなく学校配置にすること。後者は特に現場で共有されていない。スクールソーシャルワーカーの配置目標が1万人という数字であるのもこのため。このことも教職員定数算定の根拠として書いてほしい。
  • これらの職の配置のイメージを現場はつかみ切れてない。スクールカウンセラーはともかく、スクールソーシャルワーカーについては、教育委員会配置で良いと思い込んでいる自治体が多い。定数化する前提として、学校に配置すべきという点は強調してよいのではないか。

【委員】

  • 専門家に学校に入ってもらって、教育効果、そして教育の質を高めていこうというイメージになれば良いのではないか。

【委員】

  • おっしゃるとおり。教員が学校で課題を丸抱えするのではなく、家庭やスクールソーシャルワーカーと連携しながら、学校に地域資源を投入することが効果的。モンスターペアレントへの対応等の周辺的な業務を軽減でき、教員が子供と向き合う時間を確保できる。

【委員】

  • 今回の提言に入れるべきか分からないが、高校の事務職員は授業料無償化に係る所得制限導入によって事務量が増えている。国の施策として実施していることだから、この点について提言に書くべきと判断されるなら明記してほしい。

【委員】

  • 地域とともにある学校作りを考えたとき、地域連携の仲介を事務職員が担うことを追加するのはどうか。これは学校事務職員会も行いたいと言っている。こうした業務があることで、事務職員が重要なポジションにあるということを強調することも大事。

【委員】

  • 中学校におけるアクティブ・ラーニングについて。私はアクティブ・ラーニングを学びの個別化、協働化、プロジェクト化の融合という表現で提案しているが、これは一朝一夕にできるものではなく、20年くらいかけて完成するのではないかと思っている。それぞれの子供の興味・関心、そしてニーズも異なる中で、個別化が基本になると思う。しかし、個別化は公立学校で最も難しく、現場の抵抗も強い。だからこそ、この部分にフォーカスするのは重要。
  • 中学校におけるアクティブ・ラーニングは小学校よりも難しい。中学校でアクティブ・ラーニングを成功させるには、教員間の連携・協働環境を創出することが重要。ラディカルにいえば、カリキュラムの半分以上はプロジェクトで良いと思う。自分で考えて、自分で問題を解決していくことが必要とされるなら、プロジェクト中心の授業がモデルとなる。中学校におけるプロジェクト化の総合的なビジョンを示せば、例えば、午前中は各自が個別に計画に沿って学習に取り組み、子供の間に緩やかな学び合いが起こるしかけを作る。このような取組を行っている学校はいくつかあり、未来の学びの姿を表していると思う。ここでは緩やかな学び合いが行われており、個別化と協働化が融合している。午後には、学習指導要領に沿う形でプロジェクト中心の授業を行う。中学校でこのようなプロジェクトを行うとなると、教職員の協働が必要となる。専門的な知見を持ち、プロジェクトを教科横断的に実施できる人材の配置が非常に重要。加配の事由にも値すると思う。
  • アクティブ・ラーニングにおいて肝となる、教員が協働するカリキュラムではカリキュラムの市民化を視野に入れ、子供たちや地域の人々と協働することが重要。

【委員】

  • 今の委員のお話には、カリキュラムコーディネーター、つまり、2人目の教務主任のような存在をある一定規模の学校に置くというイメージがあると思う。しかし、そうした立場の教職員の職名や校務分掌上の位置付けを確立しなければ、特に中学校におけるアクティブ・ラーニングは機能しないと思う。こうした立場の教職員は力量がなければ務まらない。職名も具体的に特定しても良いと思う。

【委員】

  • 確かに、現実的に人を増やすとなると、新しい職名を設定した方が良い。

【委員】

  • その場合、教務主任の役割を限定的にすれば良い。アクティブ・ラーニングが提案され始めた当初、授業革新がキーワードであったが、これはまさに授業革新だと思う。それぞれの学校のオンデマンドで実施していかなければならない。職名は授業革新主任・主事でも良い。学習指導要領で定められた規定授業時数のようなものの管理や各学級担任の支援が教務主任の役割だとしたら、指導要領の完成年度まで、アクティブ・ラーニングによる授業革新のための加配措置が必要となる。

【事務局】

  • 今回ご指摘のあった小学校と中学校におけるアクティブ・ラーニングの違いは重要な着目点。小学校と中学校には子供の発達段階の違いや教員の授業が全科中心かそうではないかという違いもあるし、仕事のスピードも違う。単純に小学校で中学校教員を代用すれば良いということではないことを明らかにしつつ、小中学校の教職員定数について議論の整理をしないといけない。
  • 中学校におけるアクティブ・ラーニングの難しさについても同様。アクティブ・ラーニングには依然として様々な考え方がある。コアな点は一致していると思うが、アクティブ・ラーニングには漠然としている部分もある。この点についても今日の議論を踏まえて引き続き考えていきたい。
  • アクティブ・ラーニングは必ずしも教科横断とは結びつかないだろう。アクティブ・ラーニングはあくまでも授業方法であるから、個別の教科指導といえども、反復による基礎知識の定着等は大切。必ずしも教科横断的な指導にこだわらないようにしないと、中学校のアクティブ・ラーニングについては説明できない。
  • 議論を伺って思ったことだが、学校マネジメントのみならず、カリキュラム・マネジメントをきちんとすることが重要。新たな職を作るのも一つの方法だが、職を作りすぎるのも問題。主幹教諭等の職の位置付けや機能等も整理して議論したい。
  • アクティブ・ラーニングの方法論を考えたとき、教科横断的な面があるとすれば、教科間のコンセンサスをどうとるかという課題がある。学校内で校長、主幹教諭、指導教諭がどのように力を発揮できるのか。チーム学校として取り組んでいかなければならない。それを支えるにあたってコミュニティスクールの仕組みがある。現場が実感を持てるような説明の工夫をしなければならない。

(3) 主査より、追加の意見がある場合には後日事務局まで提出すること、また、最終的な提言の取りまとめは主査に一任されたい旨の発言があり、出席委員から同意が得られた。引き続いて、事務局より、事務連絡の後、閉会。

以上

お問合せ先

初等中等教育局財務課

-- 登録:平成27年09月 --