日本人若手英語教員米国派遣事業 研修成果活用事例2(中学校)

【米国派遣研修からの学び  -Western Michigan University、 ESL、 Homestayを通して-】

 米国派遣研修を通し、現地で英語を学び、英語圏の人々や生活、文化に直面し、英語教育の本当の意義を改めて確かめることができた。英語を学ぶのではなく、その先にあるもののために英語を学ぶということである。それは、自分が伝えたいことであり、知りたいことである。それが英語を通して、未知であった人々、地域、時代とつながることができる、つまり2倍の人生が楽しめるという魅力、これこそが英語学習の目的だと痛感した。それならば、目の前の英語の授業においても生徒がこれまでの人生経験や知識が、2倍に自己の視野が広がる経験、つまり英語の有用性を感じ取ることができる授業が展開されるべきである。生徒が英語の有効性・有用性を感じ取れば、英語学習が主体的になり、卵か雛かは分からないが、次第に自己の夢や目標も持つきっかけが増え、自立的に英語を学び、使う原動力となると考えられる。英語の使用場面や働きについても同様で、人の意見が的確に聞け、その意図を読み取り、自分の考えを的確に伝わるよう論理的に伝える、または交渉、反論するという場面と共に英語力を育てていかなければならないと考える。本研修を通して、言葉を理解するとは、その背景の文化や人ごと理解するということ、また学習者となり、学習の視点から英語教育を観察できたことを経験として掴み取れたことが、私に英語教育の原点を見つめ直させてくれることになった。

【最終目標の明確化と系統的指導 -自己実現、中学卒業時、各学年、各単元- 】

 上記のことから、生徒の将来を見通した英語教育の目標を次のように設定した。「英語を通して2倍の人生を~生徒自身の知的好奇心を高め、自立した学習者を育てる-」現中学生から約10年後、社会人として、英語を通しさらに充実した自己実現を果たせる人材の育成を目指す。英語教育の入門期である小学校、自己実現の一つ手前の上級学校、そしてその橋渡しとなる中学校は生涯の英語教育の基盤と位置付け、各ステージの役割と生徒像を確認し、見通しをもって指導している。中学校卒業時の目指す生徒の姿を明確に持ち、それぞれの学年、その学年の中でのそれぞれの単元について明確な目標と生徒の姿を持つことが確かな英語力の育成に必要不可欠である。

【授業づくりの変容 -Theme-based LearningとBackward Designに基づいて-】

授業づくりの視点は次の四つである。(1)目標を明確にし、生徒と共有する。(2)4技能を統合した活動から自分の考えを練り上げる。(知識から思考へ)(3)文化的・道徳的価値のあるテーマを設定する。(4)本物と出会わせること。形式としては、Theme-based Learningで、教科書の課ごとにプロジェクト型の自己表現をゴールとして設定する。英語を学ぶことに終始するのではなく、英語で文化的・道徳的価値のあるThemeについて聞き、読み、書き、話す等の4技能を統合した学習をすることを通して、自分なりの考え、意見、感想を持ち、それを人に対して伝えるということを最終ゴールにするという流れが、米国研修を経て掴み取った英語学習の目的を達成するのに最適な方法であると考えたからである。研修前に課題に感じていた部分としては、それまで毎時における授業や活動の充実はある程度得られたものの、それぞれの活動に一貫した狙いや系統性があまりなく、単発のイベントに終わっている感があった点であった。NEW HORIZONでは、各単元が、導入、ダイアログ、読みものという三つのパートで成り立っており、それぞれで新出文法とその練習が出てくる。以前は文法事項をいかに使えるかというミクロ的な視点で授業を立案し、文法を使いこなす活動、そして本文、また次の文法へという手順で指導していた。そのため課を通してのThemeが分断されてしまい、各パートの内容(Theme)についての深まりもつながりもないままで、単元における文法事項とその活動の位置付けも、言語の役割などにもそれほど目を向けずに、活動自体の充実に終始していた。以前と大きく異なり、工夫・改善した点はそこにある。単元の指導の流れは、最終ゴールのプロジェクト型の自己表現に向けて、課の最初に3パートの文法事項を学び、その後Themeについて4技能を使って学ぶ。単元の終わりで、教師側で設定した、Themeや言語の役割等に合ったプロジェクトで、自己表現をする。

 授業の進め方の実際は、(1)単元に入る前に単元について生徒と共に単元の全体像を概観し、単元のゴールを共有する。(2)各単元の3パートの文法をできるだけ言語の働きに合った提示とプロジェクトで使いやすい形で使う練習を重ねる。(3)導入で、生徒の関心を高めるThemeの提示をする。(映像、映画、プレゼン形式、ニュース、実物等)(4)設定されたThemeについて既存知識等で生徒の意識、関心を活性化させる。(ブレインストーミング、マッピング、カテゴライズ等)(5)Starting Out→Dialog→Reading for Communicationを通して、聞いたことをもとに話し、話したことを踏まえて読み、読んだことをもとに話し合い、話し合ったことをもとに書くといったように4技能がTheme( Content )を追う中で何度も出し入れされ、自分の中にThemeについての学びを形成していく。(6)Themeについての自己の学びや考え、意見を個人やグループで発表する。(7)最後に文法事項を確認する単元テストやまとめを行う。(入試との整合性、文法が第2言語習得を効果的に手助けするため)

【成果と変容】

(1)プロジェクト発表の授業で、発表、生徒同士の質疑応答、生徒同士のフィードバックの全てを生徒が自主的に1時間オールイングリッシュで授業を進めた。言いたいことがあるが、言い方が分からないという場面でも、生徒同士が言い換えたり、アドバイスや提言をし合いながら、乗り切りってしまい、授業時間いっぱいに英語を駆使して生徒は自分の意見を表現し、教師の出る幕がない体験をして感動した。

(2)知識に終始する授業は、全員が輝けないが、発問や学習内容が考えや意見についてになると、どんな生徒も自分なりの参加ができるようになってきた。また意見交換することに抵抗がなくなってきた。
(3)プロジェクトで自分の考えを発表するに当たり、だいたいの生徒はThemeについて教科書以外でも調べ学習や情報を探してくるようになった。自学でも、単語や文法の練習等だけでなく、アメリカの各州ついて自分なりにまとめてくる生徒がいたり、ニュージーランドについての課では、自分でニュージーランドに住む親せきと連絡を取り、学んだことと実際を調べたり、追跡調査をして、レポートにまとめてくる生徒も出てきた。さらにその生の情報や現地の実物・写真を授業で共有し、発展的な授業の展開が可能になり、生徒の興味・関心がより高められた。また英語学習をする生徒同士での良い刺激ともなった。

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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成26年04月 --