ここからサイトの主なメニューです

2PISA調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善

1 指導の改善の方向

(1) 基本的な考え方

 PISA調査のねらいとするところは、現行学習指導要領で子どもに身に付けさせたいと考えている資質・能力と相通じるものであることから、学習指導要領のねらいとするところの徹底が重要である。

 PISA調査は、義務教育修了段階の15歳児が、その持っている読解の知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としている。
 一方、学習指導要領では、子どもたちに「生きる力」をはぐくむことが求められており、それを知の側面からとらえた「確かな学力」は、知識や技能に加え、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力などである。
 また学習指導要領国語は、言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善が図られている。特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されている。
 中学校国語の「話すこと・聞くこと」の領域では、目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を理解しながら聞いたりする能力の育成を重視している。そのため、説明や討論などの言語活動例が示されている。
 「書くこと」の領域では、相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力の育成を重視している。そのため、通信文を書くこと、記録や報告をまとめること、資料を作成することなどの言語活動例が示されている。
 「読むこと」の領域では、目的や意図に応じて的確に読みとる能力や進んで読書に親しむ態度の育成を重視している。そのため、学校図書館を活用して様々な形態の文章を読み自分の考え方を深めるなどの言語活動例が示されている。
 このように、学習指導要領国語のねらいとするところも、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがあることから、指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいとするところを一層徹底することが重要である。

 PISA調査の結果から明らかになったことと、教育課程実施状況調査の結果とには共通点があることから、教育課程実施状況調査の結果を受けた改善の提言も併せて指導の改善に生かすことが重要である。

 「平成13年度小中学校教育課程実施状況調査」を受けて、中学校国語では、次のような指導の改善へ向けた提言を行っている。ここに示されている「根拠を明確にしながら自分の考えや意見を述べる力の育成」、「多様な言語活動を行うこと」をはじめとする指導上の改善を更に徹底して進めることが、今回のPISA調査を踏まえた指導の改善にもつながると思われる。

1  根拠を明確にしながら自分の考えや意見を述べる力の育成が必要であり、そのため、例えば、文章を読んで理解した内容について考えさせ、それを自分の言葉で表現させる学習や、具体的な叙述を踏まえて考えさせる学習が重要である。
2  文章の構成や展開を正確にとらえる力の育成が必要であり、そのため、例えば、各段落ごとに小見出しを付けるなど段落相互の関係を理解させる学習が必要である。
3  学習指導要領に例示されている言語活動などを活用した授業を展開する中で、根拠を明確にしながら自分の考えや意見を述べる力や、文章の構成や展開を正確にとらえる力を確実に育成することが大切である。
4  質問紙調査で明らかになった教師と生徒の意識の差を踏まえ、生徒の実態を一層十分に見据えて、例えば、文学的な文章を扱う場合には、導入の学習活動に工夫を凝らして、興味・関心を高める、あるいは詳細な読解に偏重することなく、多様な言語活動を行うといった指導の改善が求められる。
5  今後とも、国語科においては、学校図書館などを活用した生徒の読書活動を積極的に推進していくことが重要である。

 また、小学校、高等学校についても、平成13、14年度教育課程実施状況調査の結果を踏まえて、それぞれ提言を行っている。
 小学校では、相手や目的、意図を踏まえて内容を新たに構成しながら文章を書くことが設定通過率を下回っていると考えられる状況を受けて、次のように提言している。

 相手や目的などに応じ、自分の考えを明確にして内容を構成していくという問題について、通過率が設定通過率を下回ると考えられる結果がでている。取り上げる言語活動において、児童個々の考えをまとめることを一層重視し、相互評価などを活用してお互いの考えを高め合うような工夫を行うことにより、児童自身の考えを明確にし構成する力を育成できるような指導の充実が求められる。

 高等学校では次のような提言を行っている。

・表現に着目する力を育成する指導の充実
 「読むこと」については、筆者の考えの進め方や表現意図をとらえ、文章の主題について自分の考えを深めたりまとめたりする力を付けるため、何が書いてあるのかという読みにとどまらず、ワークシートなどを活用して、どのように書いてあるのか、なぜこのように書いているのかなどという表現の仕方にも着目する指導を行うことが求められる。また、生徒同士で意見の交換ができるようにグループ学習を取り入れるなどし、読む過程で得た考えや思いをまとめて、自分の言葉で表現しようという意欲を喚起するような指導を展開することも大切である。


 読解力は、国語だけではなく、各教科、総合的な学習の時間など学校の教育活動全体で身に付けていくべきものであり、教科等の枠を超えた共通理解と取組の推進が重要である。

 学習指導要領の総則には「学校生活全体を通して、言語に対する関心や理解を深め、言語環境を整え、生徒の言語活動が適正に行われるようにすること。」とある。このように、国語以外の各教科や総合的な学習の時間等においても、様々な言語活動を通して言語能力を身に付ける指導が必要である。
 例えば、数学では、この調査を踏まえて「数学的に解釈する力や表現する力の育成を目指した指導の充実」を求めているが、そのためには、与えられた状況やデータを数学的に解釈し、それに基づいて自分の考えを整理し、数学的な表現を用いて自分の考えを述べる力を育てることが大切である。
 また、理科では、「科学的に解釈する力や表現する力の育成を目指した指導の充実」を求めているが、そのためには、観察・実験において、結果を整理して科学的に解釈し、考察するとともに図やモデルなどを使って別の角度から考えることも大切である。また、観察・実験を探究的に行う中で、自分の予想や仮説、その検証方法や結果、考察等をまとめたり、観察・実験の結果についての自分の考えをまとめたりする表現活動も有効である。
 さらに、総合的な学習の時間は、「各教科で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け、学習や生活に生かし、それらが総合的に働くようにする」というねらいのもとに実施されるものであり、PISA調査における、知識・技能を幅広く活用する力を評価するとの趣旨と合致している。また、具体的な学習に当たっても、児童生徒が自ら調べ・まとめ・発表するなどの活動が行われているが、これは、テキストから情報を取り出し、解釈し、熟考し、自分の意見を論ずることを内容とする「読解プロセス」と相通ずるものがある。したがって、読解力の育成に当たっては、総合的な学習の時間において、体験活動等を通じて芽生えた課題意識を基にして、課題の解決に必要な情報を獲得し、それを自分の知識・技能と結び付け、自分なりの考えを深め、自分なりの言葉でまとめ、表現するところまで含めて学習を完結させることが期待されるところである。その際、統計資料や測定データなどを活用して論理的な文章を書くこと、自分の考えを数式などを使って説明することなどの活動も有効なものと考える。
 なお、高等学校の教育課程実施状況調査の結果を踏まえて、数学、理科では次のような提言を行っている。

(数学)
 生徒が自分の考えを表現し合い、お互いの考えを比較したり不備な点を指摘し合ったりして、よりよい考えに到達するような指導の工夫が必要。

(理科)
 物理(化学・生物・地学)にかかわりのある内容を扱った新聞記事や科学雑誌、図書などを授業で適切に活用し、生徒の興味・関心を高めるような指導の工夫が必要。

(参考:各教科等における指導例)

1社会科
 森林面積に占める人工林の割合の推移や林業に従事する人々の数の推移を示すグラフなどのように、特徴を捉えやすいグラフを複数示して、それぞれの内容についてその情報を読み取らせるとともに、相互の関連を議論させたり、簡潔に文章にまとめさせたりする指導。

2理科
 理科にかかわりのある内容を扱った新聞記事や科学雑誌、図書などを授業で適切に活用し、生徒の興味・関心を高めるような指導。

3総合的な学習の時間
 「ごみ収集は有料化すべきである」というテーマについて、賛成・反対の立場から、必要な情報(専門書、新聞や科学雑誌の記事等)を収集、整理し、論理を組み立て、議論し、自分の考えをまとめたレポートを作成させる指導。


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ