はじめに

 文部科学省は、平成19年4月、小学校第6学年及び中学校第3学年の全児童生徒を対象に、「平成19年度全国学力・学習状況調査」を実施しました。
 本調査は、1全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、各地域における児童生徒の学力・学習状況等を把握・分析することにより、教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ること、2各教育委員会、学校等が全国的な状況との関連において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し、その改善を図り、併せて児童生徒一人一人の学習改善や学習意欲の向上につなげることを目的としています。
 調査においては、教科に関する調査(国語と算数/数学)と生活環境や学習環境等に関する質問紙調査(児童生徒対象と学校対象)を実施し、教科に関する調査については、知識・技能の定着を測る「知識」に関する問題だけでなく、知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力を測る「活用」に関する問題についても出題しました。
 これらの調査結果については、平成19年10月に公表するとともに、各教育委員会、学校に対してそれぞれの調査結果の提供を行いました。また、平成20年1月に、「平成19年度全国学力・学習状況調査報告書」を公表・提供しました。
 これに加え、平成19年12月には、「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議」を設置し、同専門家検討会議内に組織された「分析ワーキンググループ」を中心として、教育学、心理学、統計学等の専門家の方々のご協力をいただきながら、平成19年度調査結果データを用いた様々な観点からの分析等を行ってきました。
 本書は、この分析ワーキンググループにおけるこれまでの分析等の成果をもとに、文部科学省初等中等教育局教育水準向上プロジェクトチームにおいて、「平成19年度全国学力・学習状況調査追加分析結果」として取りまとめたものです。

 本書においては、以下の4つの柱の分析等を掲載しています。

  • (1)児童生徒の生活の諸側面等に関する分析
     質問紙調査から得られたデータを用いて、正答数を基準変数とする重回帰分析を行い、児童生徒の正答数と質問紙調査で尋ねた各項目との関係について鳥瞰した。また、重回帰分析の結果を踏まえ、家庭における生活習慣・学習習慣や生活学習習慣と正答数との関係について分析を行った。
  • (2)習熟度別・少人数指導について
     習熟度別・少人数指導には、習熟の遅い児童生徒の学力を底上げする効果や習熟の早い児童生徒の学力を伸ばす効果等があると考えられる。このことを検証するため、習熟度別・少人数指導を実施した学校とそうでない学校における児童生徒の学力層の割合の違いについて分析を行った。
  • (3)学力層に着目した指導方法等に関する分析
     各学校における児童生徒の教科別の学力層の状況に着目し、学校の指導方法に関する取組の違い等と学力層の比率の増減や児童生徒の関心・意欲・態度との関連について分析・検証を行った。
  • (4)全国学力・学習状況調査結果チャートを用いた学力・学習状況に関する分析・検証手法の開発
     各学校、教育委員会等における自らの教育及び教育施策の成果と課題等の把握、改善を支援するため、教科に関する調査及び質問紙調査の結果をスコア化し、チャートを用いることで、各学校等における児童生徒の学力・学習状況等の特徴を視覚的に把握することができる分析・検証手法を開発した。

 本書に掲載した分析等の成果は、平成19年度全国学力・学習状況調査の調査結果データを用いて、当該調査の実施時点における児童生徒の学力・学習状況や学校の状況等について分析を行ったものです。今後、平成20年度以降の調査結果データの分析等も用いながら、経年的な視点も含めて、追加的な分析・検証をしていくことを予定しています。さらに、必要に応じて、実地調査等を含む専門的な研究による分析を実施するなど、多面的な分析を行うことも重要であると考えています。

 本書が、各教育委員会や学校等における今後の分析・検証や改善に向けた取組のヒントとなるなど、それぞれの教育や教育施策の改善の参考となることを期待します。

 最後に、本書の取りまとめ御協力いただいた、分析ワーキンググループ委員をはじめ、「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議」の皆様に心より御礼申し上げます。

平成20年8月

文部科学省初等中等教育局
教育水準向上プロジェクトチーム総括リーダー
藤野 公之

-- 登録:平成21年以前 --