札幌市教育委員会 生きる力の育成を目指して‐検証改善サイクルの確立のために‐

はじめに

 札幌市教育委員会は,平成19年度の全国学力・学習状況調査の結果を踏まえ,札幌市検証改善委員会とともに,札幌市における調査結果の分析を行い,平成20年3月には,「札幌市学校改善支援プラン」及び「実施報告書」を作成・配付するなど,各学校において,調査を活用した学校改善の取組が進められるよう,理解啓発を図ってきた。併せて,家庭における学習習慣や読書習慣の確立について啓発を図るため「家庭向けリーフレット」をすべての児童生徒の家庭に配付した。
 この他にも,以下のような取組を進めてきている。

○研究・研修の充実
・教育センターにおける専門研修の充実
○指導資料等の充実
○教育課程編成への支援
・札幌市学習実現状況調査の実施
・新学習指導要領への移行に向けた手引の作成
○学校への人的支援の充実
・学生ボランティアの充実
・理科支援員事業の活用
○学校評価を活用した教育課程の改善
・「学校評価の充実・改善のための実践研究」の受託及び成果の普及
○読書活動の充実
・札幌市子どもの読書活動促進委員会の設置
○Web教材「問題データベース」の活用

 平成20年度は,文部科学省が本事業の委託を受け,実践研究に取り組む中で,学校改善支援プラン等を踏まえた指導方法等の工夫改善に関する具体的な取組について,実践的な研究を進めてきた。

1.都道府県・指定都市教育委員会における取組

1.事業内容について

(1)事業概要

 札幌市における教科に関する調査の結果を見ると,平均正答率は全体的に全国とほぼ同程度の状況となっているものの,一部の教科や領域・設問において,全国と比べて下回っているものが見られる。中でも,小中学校ともに,国語における「漢字を覚え,適切に用いること」や,算数・数学における「計算の意味や仕方を理解し,正しく計算すること」など,札幌市独自の学習実現状況調査と同様,課題が見られるものがあり,併せて,質問紙調査では,小中学校ともに,1日のうちの読書時間について,「全くしない」という回答が全国に比べて多いなど,学習習慣等においても独自調査と同様の課題が浮かび上がっている。
 これらの課題を踏まえ,札幌市学校改善支援に基づき,以下のような3つの観点から改善策を検討することとした。

○観点1「授業づくり」
・指導方法等の工夫改善
 ⇒少人数指導の工夫や研修の充実,授業改善の取組など
○観点2「習慣づくり」
・自ら学習する習慣・生活リズム・望ましい食習慣等
 ⇒家庭への啓発や子どもへの働きかけの在り方など
○観点3「環境づくり」
・教育環境や体制の整備
 ⇒学習教材の開発や学習機会の拡充,人的環境の整備など

(2)実施体制

 教育委員会においては,各学校における平成19年度全国学力・学習状況調査の結果と,全国平均との関係性を踏まえ,全国平均と比べ上回っている学校,ほぼ同程度の学校,下回っている学校をそれぞれ選定するとともに,地域のバランスを考慮しながら調査活用協力校として,小学校5校と中学校3校を指定した。
 また,各協力校における実践について方向性を定めることを目的として,各協力校の代表者及び実務担当者,教育委員会担当者による「札幌市指導方法等改善連絡協議会」を設置した。

実施体制

(3)研究成果

 研究成果の一つとしては,検証改善サイクルの確立に向けたサイクル・モデルの明確化がある。
 全国学力・学習状況調査等の結果を活用した学校改善を推進する上で,学校が,組織的・自律的に,取組調査結果を生かして,自校の教育課程や指導方法等に関する課題を把握し,具体的な改善策を実行していくことが重要であることから,各協力校の取組を基に,検証改善サイクルの確立に必要と思われる要点や有効と思われるサイクル・モデルの明確化を図った。
 各調査活用協力校の取組から,学校評価との関連の図り方や,そのために必要なサイクル・モデルを整理することができた。

【サイクル・モデル】

1.課題の明確化・・・「Research」
・各種調査の結果や学校評価の結果などを活用して課題を明確化。

2.重点目標の設定・・・「Plan」

3.改善策等の作成及び説明・・・「Plan」
・目標達成に向けた改善策を具体化。
・取組方法やスケジュール,達成状況に係る評価の在り方などを明確化。
・全校で取り組むこと,学年・学級単位で取り組むこと,家庭との連携で取り組むことなどを「授業づくり」「習慣づくり」「環境づくり」の観点から設定。
・具体化した改善策について,保護者等へ説明。家庭教育との連携を強化。

4.改善策の実行・・・「Do」
※実行の状況を校内で,また,指導主事の助言を受けるなどして点検。

5.進捗状況の把握・・・「Check」
・学校評価の中間評価や年度末評価において,児童生徒アンケート等も活用しながら改善策の実効性を検証。

6.改善策の実行・・・「Action」
・日常的な評価や中間評価,年度末評価等に基づき,改善策を実行。
 二つ目の成果としては,札幌市学校改善支援プランの検証が挙げられる。
 札幌市学校改善支援プランにおける「授業づくり」「習慣づくり」「環境づくり」のそれぞれについて,調査活用協力校の取組を基にして,これら3つの観点によるプランが学校において実行可能であるかの検証,3つの観点から具体的な取組を推進することによる効果の検証を行うことができた。
 具体的には,以下のようなものが成果として挙げれる。

●「授業づくり」について

  • 学校全体で改善策を実行し,進捗管理を行う「学年プログラム」
  • 板書や発問,指導案づくりのポイントをまとめた「授業のつくりかた」を発行
  • 課題が見られる学習内容に集中的にTTを行う工夫

●「習慣づくり」について

  • 家庭での学習習慣の確立に向け,家庭学習の意義などを啓発する資料を作成
  • 子ども自ら意欲をもって家庭学習に取り組めるよう,調べ学習や課題追究型の学習の取り組み方を啓発
  • 学習習慣づくりをサポートするため,放課後の自由参加型学習の時間を設定

●「環境づくり」について

  • 独自教材の開発
  • 独自に計算ドリルソフトを開発
  • 始業前や放課後を活用した学習機会の拡充
  • 退職教員等や学生ボランティアを活用して,放課後学習や少人数指導を充実
  • 読書量を向上することを目指した取組として,始業前の読書活動の時間を増設
  • 地域の図書館,寄託図書などを活用して読書に親しむ機会を拡充

2.普及啓発と今後の取組について

(1)成果の普及啓発に関する取組

 12月の協議会において,調査活用協力校の取組事例についての協議を行い,成果等の確認を行うとともに,それらがより分かりやすく伝わるよう,啓発用リーフレット及び研究集録の執筆内容を検討することで,小中学校8校からの意見を幅広く生かして,様々な形態の取組について示した。
 リーフレットについては,3月に市内全小中学校の教員分を配付した。また,研究集録については,市内全小中学校に小学校8部,中学校5部を配付した。(学年数+2部を配付)
 調査を活用した検証改善サイクルや具体的な改善策について,そのモデルケースを普及することができた。

成果の普及啓発に関する取組

 リーフレット及び研究集録については,教育委員会ホームページへ掲載し,積極的な情報発信を行った。
 4月8日(水曜日)には,全国学力・学習状況調査に係る説明会を開催し,その中で,本研究実践の成果等について,各学校に説明することとしており,年度当初に具体的な取組事例を踏まえて学校に啓発を図ることができた。

(2)来年度以降の取組

 平成21年度は,これまで行ってきた札幌市の学校研究委託事業について見直しを図り,札幌市独自の学習実現状況調査や全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた研究開発に係る事業を立ち上げ,研究校を指定して研究開発を推進していく。研究開発においては,調査結果等を活用して教育課程や指導方法等の工夫改善を図るための実践的な研究を進める予定である。
 また,研究開発を推進するに当たっては,本事業の成果を踏まえ,指定校と教育委員会担当者,学識経験者等の意見交換を行うための体制を整えるなど,研究推進の充実を図っていく。

2..調査活用協力校における取組事例

取組事例1.子どもが学びを実感できる授業を目指して 札幌市立北都小学校

1 本校における学力・学習状況に関する課題~全国学力・学習状況調査等から

(1)学んだことを活用することに課題

 表現や叙述に即して読むことや段落の内容をとらえることに課題がある。また,位取りや分数の意味などについての理解に課題がある。

(2)基礎的な学力に課題

 国語では,読み取ったことを要約したり,思ったことを表現したりすることが苦手である。また算数では,表現・処理の部分に課題が残る。

2 改善策の具体化

(1)個に応じた少人数授業(複数教師によるきめ細かい指導)

 国語・算数を中心にTTなどのきめ細かい指導を行い,学習した内容を理解すると共に応用発展できるよう,かかわりながら活用する力を育てる。

(2)基礎基本の着実な定着を図るための手立て

 子どもたちが自ら考え進んで取り組むためには,学習意欲・問題解決的な学習の方法を学ぶと同時にに,そのベースとなる基礎・基本の充実が欠かせない。そこで,朝と放課後に基礎学力の定着のための指導を行う。

  • 朝の国語・算数チャレンジタイム
     火曜日と木曜日に国語と算数のスキルタイムを実施する。
  • 全校一斉放課後指導
     会議のない火曜日の5校時終了後,全校一斉に放課後指導を行う。

3 取組の実際

(1)TT等を活用した算数の少人数授業~2クラス4人体制の少人数授業

1.4年生「分数」

 「分数」の理解度に,子どもたちのばらつきが見られることから,2学級を教師3人体制で3つのグループに分けて,4時間の少人数指導を行った。分数の仕組みの説明から,ドリルも含め,きめ細かいかかわりをすることで,子どもたちの理解が深まった。
 今まではノートを使用せず,余り紙に書いて済ませることの多い子が,ノートを用意し記録する姿が見られるなど,分かる喜びが,やる気へとつながっていった。
 単元末のテストでも,達成率が向上するなど,成果を上げることができた。

2.4年生「わり算の筆算」

 2桁÷2桁のわり算の前段階としての2桁÷1桁の理解が不十分な子に手厚い指導を行うため,学年の打合せにTT担当教諭も参加することとし,指導方法等の工夫について相談できるようにした。
 算数の時間割を学年内で統一し,TTによる授業を他学年よりも多くし,重点的な指導が行えるようにした。
 実際の授業では,学年でオリエンテーションを行った後,わり算の学習をスタートさせた。
 当初は,「よく分からない。」という子が4~5名であったが,学習が進むにつれ,多い時には20名近くまで理解が十分でない子が増えた。
 そこで,さらに,担任外の教諭をTTとして加え,少人数指導の体制を充実した。
 学習の進め方は別記のとおりだが,子どもの実態を的確にとらえ,それに応じて指導方法等の改善を図ることは,子どもの自信を引き出すことにつながった。
 「奇跡だ!俺できた!!」これは,筆算で商を出せた子の喜びの言葉である。また,理解が深まった子で,グループを替えようとしたところ,「まだここに居たい。だって,ここの方がよく分かるんだもん。」と言って困っている子に教えようとする動きも出てきた。「分からなくなったらわかりやすく教えてもらえるからここがいい。」など,やる気を出せる自分の居場所を見付けられた子も現れた。
 この取組では,学年の時間割をそろえて,学年で取り組むことで指導が一貫し,学級差が少なくなったという効果が見られた。
 また,グループのメンバーを固定せず,分からなくなったら,自ら児童会室へ移動し,分かったら,すぐに元のグループに戻るというシステムにしたことで,子どもたちに自己有用感を生んだ。
 学年打合せの時間に,TT担当教諭が加わって,子どもたち一人一人の理解について話し合い,各グループごとの進度や学習内容を確かめ合うことで,次時の指導に生かすことができた。

<「わり算の筆算」の取組の流れ>
1.事前調査・・傾向をつかむ
 ・学年研修で学習予定づくり
 時間・・共通時間割(13時間分)
 場所・・2教室+児童会室
 ・学習スタイルの確認
 担任+TTの3人体制
 (後に,4人体制に)
2.2桁の数でわる筆算
 ・学年を3つに分けて学習
 ・学年を4つに分けて学習
 ・放課後指導の活用
 ・学年研修で子どもの理解度の確認
3.各学級での学習
 ・学習のまとめ
 ・テスト
4.単元を終えて
 ・学年研修で子どもの育ちの確認
 ・成果と課題の整理

(2)学級内での少人数指導(主に1~3年生)

 低学年では,日常の生活基盤である学級内での少人数指導を行った。

1.2年生「かけ算」の実践

 かけ算九九を活用する場面ではどう工夫すると早く簡単に正確にできるかを考えることが重要になってくるため,考え方についてきめ細かに指導することが求められる。
 そこで,学級を3グループに分けて3人の教師が,1グループずつ担当して,個別にかかわるはたらきかけをした。授業の開始から30分間はグループ別の学習の時間とし,残り15分間は一斉学習形態にして,学びの成果を確認する方式をとった。
 また,九九の定着の場面では個人差が大きくなるため,再び3つのグループに分け,少人数指導を行った。

2.1年生「ひき算」の実践

 くり下がりのあるひき算では,加減法・減減法などの考え方を身に付けることがねらいであるが,数え引きから離れられない子どもも少なくない。
 そこで,考え方をみんなに説明する学習活動を行うようにした。
 担任とTT担当教諭が,一人一人の説明の仕方にじっくりと寄り添い,丁寧に指導することができた。子どもは,「はじめに」,「次に」,「最後に」,「だから」といった言葉を用いて説明したり,ブロックを使って操作活動をして説明したりすることで,自分の考えをはっきりさせるとともに友達の解き方を理解することにもつながった。

(3)朝や放課後の時間を活用した学習機会の拡充

 学級単位で,朝の国語・算数チャレンジタイムを行っている。チャレンジタイムでは,国語の漢字練習に加え,言葉のきまりや文章題・短作文など,また,算数では計算練習に加え,文章問題にも取り組み,本校の課題の一つである「考える力」や「書く力」の向上に取り組んだ。
 8時30分から15分間の設定であるが,チャレンジ学習を続け,定着してくることで,登校した子から順次取り組み,それぞれのペースで進めることができるようになったきた。
 放課後学習については,毎週火曜日の放課後全学年一斉に30分程度の時間で国語と算数の基礎基本の学習を行った。国語は,主に漢字の読み書きや文法などの言語事項や作文などを中心に,算数では計算問題を中心に取り組んだ。高学年では,TT担当教諭も含めて少人数コース別学習も取り入れた。

4 本校の取組における成果

(1)少人数指導の有効性

 少人数指導体制で,きめ細かな指導を行うことで,子どもたちの学習の理解が着実に深まってきた。子どもたちの授業への前向きな取組や単元終了後のテストの結果からもその効果がみられた。また,学年打合せなどを通じて,子どもの見とりや授業の進め方などを相談し合ったことで,結果的に教師の授業改善にもつながった。

(2)基礎基本の定着

 日常の授業の中における練習も含め,朝のチャレンジタイム・放課後学習でのスキル学習を続けたことで,子どもたちの学習意欲が高まると共に,基礎基本の定着が図られた。学力テストの結果を見ても成果が上がった。

5 本校の取組における今後の課題

 少人数指導が効果的であることが明らかとなった分かったが,学年の教師とTT担当の綿密な打ち合わせや進度別の教材づくりや学習場所の確保など,時間的な課題と日課表も含めた子どもの学習環境の整備を進めることが課題である。
 また,放課後学習については,新学習指導要領に基づく移行期間における授業時数増のため,実施方法等を変更する必要があるが,教員からは,その教育効果から継続を望む意見も多いため,何らかの方法で継続する予定である。

取組事例2.学ぶ意欲を高め,確かな学力をはぐくむ授業の創造 札幌市立啓明中学校

1 本校における学力・学習状況に関する課題

 全国学力・学習状況調査等から本校では基礎学力の定着が不十分な生徒の割合が年々大きくなる傾向にある。これらの生徒に確かな学力が身に付くようにするとともに,基礎学力が定着している生徒に対しては,活用する力が身に付くようにするなど,学力の向上を図ることが本校の課題であると考える。

(1)言語活動の取組に課題…国語科

1.「相手の立場や考えを尊重し,話合いが目的に沿って効果的に展開するように話したり聞き分けたりして,自分の考えを深めていくこと」に課題
・学習指導要領では「話すこと・聞くこと」の領域である。本調査結果から生徒は事前に用意した項目だけの質問に終始し,相手の話を聞いて疑問に思ったり,興味をもったりしたことなどを追加して質問することが不足していることが分かる。

2.「様々な種類の文章から必要な情報を集めるための読み方を身に付けること」に課題
・学習指導要領では「読むこと」の領域である。本調査結果から生徒は複数の資料を比較しながら読んで,共通して書かれている情報を読み取ることに課題がある。

(2)情報収集・活用に課題…数学科

1.「具体的な事象の中から二つの数量を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,一次関数について理解するとともに,関数関係を見出し表現し考察すること」に課題
・学習指導要領では「数量関係」の領域である。本調査結果から生徒は一次関数と比例の特徴を区別して,ある事象を一次関数とみなせることを説明することに課題がある。

2.「数量及び数量の関係をとらえるために文字式を利用できること」に課題
・学習指導要領では「数と式」の領域である。本調査結果から生徒は事柄が成り立つことを説明するために,結論となる事柄を明確にし,見通しをもって説明を構想することに課題がある。

(3)基礎学力の定着が不十分な生徒に対する取組に課題

 1日の家庭学習時間が2時間以上の生徒が約半数を占め,全くしない生徒もごくわずかで,生徒の学習習慣は確立されているととらえる。しかし,基礎学力の定着が不十分な生徒の割合が大きくなる傾向にあり,1年生入学時からこの傾向がうかがえることや,この傾向が顕著に表れている学級が出現してきていることが最近の特徴である。

2 取組の実際

(1)1年生国語科の実践話し方入門・スピーチ「思い出のひと品」

1.4人グループ学習を取り入れ

 本時の学習のねらいは,「分かりやすく伝えるために」である。このねらいを達成するために4人グループ内で練習を行い,友達からアドバイスを受ける授業形態を取り入れた。なお,「学び合い」の場面設定となる4人グループは,全員が意見交換をする機会を保障するためのものである。

2.スピーチ練習の場面から

 スピーチ練習においては,教師が活動のねらいと評価についてを明確に伝えることを大切にした。教師は「付かず離れず」の姿勢で,活動を観察し,必要に応じて助言を与えたり,望ましい活動に対しては評価を与えるなどした。
 スピーチ後,他の生徒からアドバイスを受ける場面では,どのグループも積極的な交流が行われるなど,「学び合い」の姿が見られた。
 この活動では,4人グループが適切であった。人数が少なすぎては,交流が進まず,「気付き」に到達しない。逆に多すぎると,交流に参加しない生徒が出てしまう。題材に応じた適切な指導方法が構築されつつある。その後の総合的な学習の時間におけるプレゼンテーションでは,この学習で習得した技能を駆使してどの生徒も「分かりやすく伝える」ことができた。

スピーチ練習の場面から

(2)1年生数学科TTの実践~比例・反比例「章のまとめ卒業試験」

1.4人グループ学習を取り入れて

 各グループの生徒各々がそれぞれ問題を担当し,自分の担当の問題をグループの友達に教える活動を取り入れた。この活動のねらいは,数学が不得意な生徒は,友達の援助を受けて理解を図り,得意な生徒は分かりやすく教えることで自分の理解を深めることにある。

4人グループ学習を取り入れて

2.TTの活用~TT配置の工夫

 T1の援助のもと各グループは学び合い活動を行い,別室でT2による卒業試験を受け,合格の際にはチャレンジ問題に取り組む。不合格の際にはグループで再度問題に取り組み,再試験を受ける。本実践では同一教室で2人の教師が指導を行うのではなく,別々の教室において指導を行うこととした。

3.「学び合い活動」の効果

 「卒業試験」は生徒の学習意欲を喚起するものであった。意欲的に活動するグループが多く見られた。
 理解が進んでいる生徒がつまずいている生徒に対して働きかけていく場面が多く見られた。前者にとっては他に教えることで一層の定着が図られ,後者にとってはつまずきの解消につながり,全体としての理解の向上につながった。

(3)放課後の有効活用「教科相談日」

 1年生において教科相談を,11月(1日日程で国・社・数・理・英)と2月(2日間の日程,1日目は国・数・理・音・英,2日目は国・数・音・体・英)に行った。ねらいは,「『努力を要する』状況の生徒を『おおむね満足』に」であり,基礎的・基本的な内容を中心に行った。対象生徒は希望生徒とした。参加生徒は11月では延べ40人程度であったが,2月では2日間で延べ120人の生徒が参加した。以後の定期テストに好結果を示す生徒が多く,この取組は効果的であったととらえる。

(4)家庭と連携した学習習慣の確立…啓発活動を中心に

 本調査の生徒質問紙調査結果を学校だよりやホームページで公表したり,教科だよりを通して家庭学習を促してきた。また,教科ごとに定期的に家庭学習の課題を課したりもしてきた。結果として,平成19年度では家庭学習時間が2時間以上の生徒が49.5%であったが,平成20年度には59.5%へと増加した。

3 本校の取組における成果

 学校評価における生徒アンケートにおいて「意欲的に学習に取り組んでいる」という質問に対して「強くそう思う」と回答した生徒が25.9%(平成19年度)から26.3%(平成20年度)へと微増した。また,1年生国語科1学期の観点「話す・聞く」における「努力を要する」状況の生徒は28人であったが,2学期は14人と半減した。
 これまでの取組によって,学習意欲や観点別学習状況に向上が見られている。

4 本校の取組における今後の課題

 「国語(数学)の勉強は好きですか」に対して「当てはまる」と回答した生徒の割合は,平成19年度で25.2%(28.4%),平成20年度で24.4%(29.3%)と高くはない。そこで,日常とのかかわりをより重視した授業を構築したり,数学科における実験・実測を通しての指導等生徒の学ぶ意欲が高まる教科指導の在り方を工夫する必要がある。また,朝の読書活動を導入し,国語好きの生徒を育てていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --