本県では,昨年度,徳島県検証改善委員会において,「学力調査結果に基づく徳島県版:『学力・学習状況』改善サイクルの確立」をめざし,「みんなでするつづけてするとことんする」をキャッチフレーズに,学力向上及び学習状況の改善に取り組んだ。特に,1.各学校等の課題把握・検証システムの構築,2.課題に応じた児童生徒フォローアップシステムの構築,3.授業改善及び望ましい生活習慣等の育成に向けた取組の推進,4.学校・家庭・地域社会が一体となった取組の推進の4つを柱として打ち出し,文部科学省から学校改善支援促進事業の指定を受け,実践研究を進めてきた。
全国学力・学習状況調査等の結果から知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や,朝食の摂取習慣が全国平均を下回っており生活習慣等に課題があることが明らかとなった。そこで,学力や学習状況等の課題の改善に資するため,徳島県「学力・学習状況」改善推進委員会を設置するとともに,改善に向けて意欲的な市町村を「調査活用協力地域」,所管の学校を「調査活用協力校」として選定し,それぞれの協力を得て,実践研究を推進した。
具体的には,「徳島県学校改善支援プラン」等を踏まえた実践研究課題を設定し,「調査活用協力地域(徳島市・海陽町)」及び「調査活用協力校(加茂名南小学校,応神小学校,川内中学校,海部小学校,宍喰小学校,宍喰中学校)」の取組に対して指導・助言等の支援とともに,徳島県「学力・学習状況」改善推進委員会の委員による提案授業を行うなど,課題の改善に向けた実践を進め,実践事例の収集等を行い,成果の普及を図った。
徳島県「学力・学習状況」改善推進委員会は,平成19年度徳島県検証改善委員会の元会長である,世羅博昭四国大学教授を会長に,学識経験者4名,市町村教育委員会関係者2名,小・中・高等学校教育研究会関係者3名,PTA関係者2名,県教育委員会事務局関係者2名の計13名の委員で構成される委員会である。また,県教育委員会学校政策課,県立総合教育センター学校経営支援課の指導主事等が事務局員となり,連絡協議会等の運営や改善推進委員会からの提言の原案作成等の作業を行った。
さらに,全国学力・学習状況調査等の結果から明らかになった学力及び学習状況等の課題の改善に向けて意欲的な徳島市・海陽町の4小学校・2中学校を調査活用協力校として選定し,実践研究を推進した。
○全国学力・学習状況調査及び本県学力調査結果に基づいた学力向上策や学習状況の改善策について協議を重ね,提言「徳島の子どもの学力向上及び生活習慣・学習習慣の改善に向けて」を,まとめるに至った。
○徳島県「学力・学習状況」改善推進委員会の委員による提案授業の実施及び提案授業に基づいた指導助言を行うことで,調査活用協力校における実践研究に具体的な示唆を与えることができた。また,そのことにより,教師の意識改革,授業改善の取組を一層進めることができた。
○県PTA連合会と連携し,その広報紙を通じて,県内全ての小・中学校の保護者に対し,全国学力・学習状況調査結果及び提言に基づいた家庭教育の役割や学校,地域と連携した取組等に関する効果的な啓発活動を行うことができた。
○「徳島県学校改善支援プラン」に基づいた実践研究の在り方や各調査活用協力地域及び調査活用協力校の実践研究内容,進捗状況等について共通理解を図ることができ,実践研究に深まりを持たせることができた。
HPアドレス http://tgn.tcn.ne.jp/~kamona_es/
○専門部会(学習研究部・生活調査部・交流学習研究部)を組織し,生活習慣や学習習慣の定着,コミュニケーション能力の向上を図る。
○朝の活動の充実や「学習のきまり」を全学年で指導することで学習習慣の定着を図るとともに,あらゆる機会を捉えて時と場に応じた言葉遣いができるように指導する。取組例1
○生活調査を継続的に行うことで,生活習慣や学習習慣の改善を促す。取組例2
○体験活動や交流を増やすことで,自ら考え,判断し,表現する力を育てる。取組例3
◇朝の活動の充実や「学習のきまり」を全学年で指導することで学習習慣の定着を図るとともに,あらゆる機会を捉えて時と場に応じた言葉遣いができるように指導する。
○朝の活動(火曜日・算数,水曜日・国語,木曜日・読書)を活用して,基礎的・基本的な力を育成する。
○「学習のきまり」について全教職員が共通理解し,指導する。また,「学習のきまり」について,子どもの自己評価や教師による評価を行い,学習習慣の改善に努める。
○「声のものさし」「話形」について掲示し,あらゆる機会を通じて指導する。
○毎月1回,音読集会を実施し言葉に親しむ機会をもつ。
◇生活調査を継続的に行うことで,生活習慣や学習習慣の改善を促す。
○調査の回数を増やすこと。(現在は年2回)
○指導と評価(調査)を一体化し,努力目標を設定して,全校あげて指導にあたること。
○調査結果を保護者に公開し,家庭の協力を呼びかけること。
※取組例3はホームページ上で紹介しています。
HPアドレス http://tgn.tcn.ne.jp/~oujin_es/
○フラッシュカードや国語辞典を積極的に活用し,言語についての理解の定着を図る。取組例1
○適切なワークシートの活用や計画的な板書の工夫,ICTの積極的な活用等を取り入れることにより,課題(文)の読み取りや理解の深まりを図る。取組例2
○読書活動について,質・量の改善を図る。
○100マス計算や音読・群読を取り入れ,学習前の脳の活性化を図る。
○低学年では日記指導の充実を,中~高学年では家庭学習の質的・量的な改善を図る。
※取組例1.・2.以外の取組例の詳細については,上記HPにて公開。
◇フラッシュカードや国語辞典を積極的に活用し,言語についての理解の定着を図る。
・語彙を増強して,文章表現や日常会話の中で生かすことにより,内容をより深く,聞き取ったり読み取ったりできることを目指し,より良いコミュニケーションにつなげる。
○国語科の授業に帯の時間帯を設定し,漢字フラッシュカードを活用して,既習漢字の全体読み,個別読みをテンポ良く進める。
○語彙量の増強を図るため,国語辞典を使った意味調べ活動を取り入れる。調べた語句については,付箋を付け,活用量を確かめるとともに意欲向上に結びつける。
○使用漢字数を増加させたり,既習言語を積極的に使わせたりすること等により,日記指導の充実・改善を図る。
◇ワークシートやICTの活用,板書設計等の工夫から,理解の深まりを図る。
・自分の思考を再確認したり,根拠を明確にしたりしながら説明する力を養うためには,ワークシートの活用は効果的である。ICTを積極的に導入することは,視覚的に情報理解を深める上で役に立つ。また,目標に沿った明確な板書を計画することにより,学習履歴を確認しながら,活動の振り返りができ,理解の深まりに結びつけることができる。
ICTの活用(分度器の拡大図)
○ワークシートは,内容を読み取るための部分と,読み取った内容を自分の言葉でまとめる部分とで構成する。
○動画やフラッシュコンテンツを含め,ICTを積極的に活用することにより,理解を促したり,深めたりする。
○思考の過程や根拠を説明するための資料としても,ワークシートを活用する。
○黒板に,「めあて」だけでなく,「学習順序」等を示し,学習の見通しを持たせる。読み取った内容や課題解決のためのキーワード等を,ミニ黒板を使ってわかりやすくまとめ,ノート指導に生かす。
HPアドレス http://www.kaifu.v‐ed.jp/
○授業研究会を中心として,教師の授業力を向上させる研修を工夫する。取組例1
○すべての教育活動において,人権学習を中核にして自尊感情や仲間意識を育てる。取組例2
○家庭学習の出し方,量,内容の工夫をする。
○基本的な生活習慣や道徳的な規範意識を育てる。日記,心のノート,道徳ノートなどを活用し,自分の生活をしっかりと振り返らせる。
○朝の始業前20分間(火曜日~金曜日)を活用し,言語事項を中心とする基礎トレーニングを行う。
○放課後(月曜日・水曜日・金曜日)の30分間を活用し,全校一斉の個に応じた補充学習を行う。
○学校・学級通信を通じて,子どもたちのよさや課題を家庭に広げ,連携を図る。
◇国語・道徳・総合的な学習の時間を中心とした人権学習の授業研究会を重ねることで,教師の授業力を伸ばし,児童の学力の向上を図る。
道徳での人権学習(2年生) 講師の示範授業での研修
朝会後の群読発表
縦割班活動掲示 しあわせメールボックス掲示
なかよし集会(人権劇) 人権集会(意見発表)
【学校全体としての取り組み例】
○基本的な生活習慣や道徳的な規範意識を育てていく。(日記,心のノート,道徳ノートなどで自分を振り返らせる)
○補充学習として視写・聴写・群読・漢字・読解・読書・放課後支援を行う。(学期ごとに評価も行う)
◇児童会活動・教育環境・縦割班活動・ふるさと学習を工夫する。
・一人ひとりを大切にする活動や環境づくりが,人権感覚・意識を高め行動化する。そして,支え合う学習活動に効果的に働き,「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」の三つの要素からなる「生きる力」を育む。(これらは相互補完的,螺旋的に関連し,発展していく。)
【工夫した活動例】
○なかよし集会・人権集会・挨拶運動・人権標語と一人一鉢・全校作業・全校体育・ふるさと体験活動・しあわせメールボックス
HPアドレス http://www.nmt.ne.jp/~sisisyo/
○文章題を解く過程で有効な絵や図を取り入れることにより,児童が文章題の内容を正しくとらえることができるようにする。取組例1
○数を扱う上での基礎となる十進位取り記数法の指導を丁寧に行う。
○計算のミスを少なくするために,かけ算筆算,繰り下がり引き算の指導を丁寧にする。
○漢字を正しく読む力を身につけ,自信をもって楽しく漢字学習に取り組めるようにする。
○児童が喜んで取り組める音読の仕方を工夫し,すらすら音読ができるようにする。取組例2
○児童の生活実態調査を行い,保護者と連携して意欲的に学ぶ態度を育てる手だてとする。
◇文章題を解く過程で,テープ図や三段ボックス,かけわり図を取り入れる。
○1・2年の加法・減法の文章題を解く上で大切なのは,書かれている文章の内容を正しく理解すること。そのために,右のようなテープ図を取り入れ,与えられた数を整理した上で演算決定するよう指導する。
○2年以上の乗法・除法の文章題を解く過程では,文章を整理し理解する方法として,右のような三段ボックスやかけわり図を取り入れ演算決定できるようにする。
◇子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定,音読の仕方を工夫する。
○全校朝会時,学年ごとに音読発表会を開き,学年相互に感想や意見を発表し合うことにより,音読への意欲を高める。
(全校児童の前で発表するため練習にも熱心に取り組んだ。)
○月末には,自己反省チェック表を使って音読のポイントを押さえた指導を行う。
(低学年は,チェック表の得点を意識して音読に気をつけるようになった。高学年は,グループ学習や群読を取り入れると効果的であった。)
○授業の中では,発達段階に応じて,様々な音読の手法や形態を取り入れた指導を行う。
(速読み,リレー読み,追い読み等)
HPアドレス http://tgn.tcn.ne.jp/~kawauchi_jh/
○基礎的・基本的な知識・技能の習得
○思考力,表現力の育成
◇実験や観察の結果をもとに考察し,根拠を明らかにして考えをノートに書かせるとともに,筋道立てて説明させたり,練習問題を解かせることを通して,学習内容の定着を図る。
(例)【理科】授業の流れ
◇授業の始めに,前時の学習内容を自分の言葉で説明させ,前時の学習内容における理解度を確認するとともに,学習内容の定着を図る。
(例)【社会科歴史的分野】授業の流れ
HPアドレス http://www.nmt.ne.jp/~sisichu/
○朝の自習時間を利用したコラム学習を実施し,書く力(作文,原稿用紙の使い方など)の向上,読む力(世の中のいろいろな出来事への関心など)の向上を図る。取組例1
○数学・英語に関しては,1・2年は2名の教師によるティーム・ティーチングを行い,3年では3名の教師によるティーム・ティーチングを行い,より細かく個に応じた指導による「基礎的・基本的な知識・技能」の向上を図る。取組例2
○教師の指導力の向上を図る。取組例3
◇朝の自習時間を利用したコラム学習を実施し,書く力・読む力などの向上を図る。
○朝の自習時間を活用し,新聞のコラムを読ませ,世の中のいろいろな出来事への関心を持たせる。
○コラムの記事に関する感想や自分の意見を120~150字程度にまとめさせる。
○意味の分からない語句や漢字を調べ,提出させる。
○教師は帰りの学活までに,誤字・脱字・原稿用紙の使い方・内容などをチェックし生徒に返却する。
(毎朝取り組むことにより,次第に文章を読んだり,書いたりすることになれ,世の中の出来事などにも少しずつだが関心を持つようになってきた。)
生徒のコラムプリント1
生徒のコラムプリント2
◇数学・英語に関しては,1・2年は2名,3年では3名の教師によるティーム・ティーチングを行い,より細かく個に応じた指導による「基礎的・基本的な知識・技能」の向上を図る。
○1単位時間の中に一斉指導・個別指導などを取り入れ,指導形態の工夫を図る。
○単元によっては,少人数指導や習熟度別指導などを行い,指導体制や方法の工夫を図る。
○T1が一斉指導を行っているときは,T2,T3が生徒の様子を観察し,つまずきがあるなどの生徒に初期の段階で即座に対応し,個に応じた指導を行う。
※取組例3はホームページ上で紹介しています。
初等中等教育局参事官付学力調査室
-- 登録:平成22年03月 --