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大阪府教育委員会 「確かな学力」をはぐくむ‐学習指導ツールの活用‐

はじめに

 平成19年度,20年度の2回の全国学力・学習状況調査の結果から,大阪の子どもたちの学力は「知識・技能」については概ね定着しているものの「その知識・技能を活用する力」においては少なからず課題があることが明らかになった。
 また,同質問紙調査からは,学習態度や家庭生活等において,望ましい生活習慣が定着していないことが明らかになった。
 このことは大阪府教育委員会が実施した「平成18年度大阪府学力等実態調査」の結果からも把握されていたが,全国の状況との比較から,その課題の深刻さがより明らかになったところである。
 大阪府教育委員会では,平成18年度調査の結果を受けて「確かな学校力調査研究事業」を立ち上げ,「学力向上に効果のある学校が備えている条件」を明らかにする研究に取組んでおり,学校を中心として展開される教育活動の総合的な検証とともに学力部分における課題の分析とその改善に向けた取組みの検証を進め,昨年2月,「学校改善のためのガイドライン」としてとりまとめ発表した。

「力のある学校」号

 「学校改善のためのガイドライン」は,学校づくりの視点である「学校力向上のためのガイドライン」と授業づくりの視点である「授業力向上のためのガイドライン」の二部から構成されている。
 「学校力向上のためのガイドライン」は,学校が備えるべき8つの要素を「教職員集団」「学校運営」「生徒指導」「学習指導」「地域・校種間連携」「家庭とのかかわり」「学校環境」「学校文化」とし,それぞれの要素における重要なポイントがとりまとめられた。
 また,「授業力向上のためのガイドライン」は,主として「大阪府学力等実態調査」「全国学力・学習状況調査」の国語,算数・数学における課題の分析から,その改善に向けた方策を「授業改善」という視点でとりまとめたものである。

はぐくみたい力 身につけさせたい力

 この二つのガイドラインが大阪府における「学校改善支援プラン」である。各学校においては,府調査・国調査の結果と自校の結果を比較分析し,各学校の現状と課題を把握するとともに,本ガイドラインで示した内容を各校の学校体制づくりや授業改善の取組み等に生かすことが喫緊の課題となった。
 平成20年度,府教育委員会は,ガイドラインで示した「授業力向上のためのガイドライン」の具現化をめざし,「学習指導ツール活用・実践事業」に取組むとともに「学校改善推進事業」により,開発された「学習指導ツール」の活用実践及びその取組に対する分析・検討を行い,成果の普及を図ることとした。

1.大阪府教育委員会における取組

1.事業内容について

(1)事業概要

 学習指導ツールとは,「授業力向上のためのガイドライン」で示された「授業改善の視点」をもって開発された4つのツールから構成されており,府教育委員会の小中学校専用Webサイトから配信されている。

【学習指導ツール】

  1. 優れた授業を,指導案と動画で紹介する「モデル授業」
  2. 単元毎に身に付けるべき学力が習得できたかどうかを検証し,指導の改善に役立てるための形成的評価用問題「単元別テスト」
  3. 児童生徒の自学自習力をはぐくむための問題シート「ワークブック」
  4. 小学校4年生から中学校3年生までの児童・生徒の学習到達度を把握するための「学力テスト」

学習指導ツールWebサイト

学習指導ツールWebサイト

※平成20年度末現在で,26のモデル授業,1427問の単元別テスト,556シートのワークブックが 開発され配信されている。「モデル授業」「単元 別テスト」「学力テスト」は著作権・肖像権の関係で一般には公開できないが「ワークブック」については,各家庭でも活用できるよう,府教 育委員会の一般向けHPでも配信している。
大阪府教育委員会HP
(http://www.pref.osaka.jp/kyoisomu/)

 府教育委員会としては,優良な指導事例や教材を「学習指導ツール」として提供することをめざし,開発のための組織体制の構築を中心に取組んできたが,その活用方法や有用性についての検証体制は構築できていなかった。
 そこで,本実践研究により,府内11市町村14校において,その重点的な普及促進及び効果測定を実施し,その活用事例の収集及びその効果検証を行うこととした。
 府教育委員会は,「学習指導ツール」を活用し,自校の課題の改善に向けて積極的に取組む学校を調査活用協力校に選定し,各調査活用協力校には「学習指導ツール」を活用した効果的な教育実践の蓄積をもとめ,府教育委員会は,各活用調査協力校の取組に対し指導・助言等の支援をするとともに,その実践成果の検証を行った。

調査活用協力校

(2)実施体制

 府教育委員会では,「学習指導ツール」の開発にあたり,府教育委員会指導主事・教科指導の経験豊富な小中学校教員・教科の専門性に優れた市町村教育委員会指導主事及び大学研究者等からなる開発プロジェクト委員会を組織した。
 「学校改善推進事業」における指導・助言等の支援及び実践成果の検証も,同組織で進める体制をとった。

(3)研究成果

 調査活用協力校において,「学習指導ツール」は概ね有用との評価を得た。

○「学習指導ツール」について,活用事例とともに成果と課題という形で現場教員による評価を収集したことで,個々のツールについての有用性や効果的な活用方 法の検証ができた。
○「学習指導ツール」の活用場面として各協力校の課題に応じ,授業活用・校内研修・補習学習・家庭学習等,様々な事例を収集したことで,授業改善や自学自主力の育成など,各校の様々な課題に対応した効果的な活用方法について検証することができた。

大阪府学習指導ツール開発プロジェクトチーム

 詳細は後述の取組紹介で述べるが,「単元別テスト」を活用した日々の授業改善・「ワークブック」を活用した朝学習や放課後学習教室・「学力テスト」での到達度評価・「モデル授業」による校内研修会等々,各小中学校における授業改善の様々な取組に「学習指導ツール」が効果的に活用できることが,この調査により明らかになった。
 ただ,今回の取組で個々の「ツール」の有用性や学習における効果的な活用方法については実証されたが,「学習指導ツール」の4つのツールすべてを効果的に活用し,学校全体として学力向上に向けてのPDCAサイクルを構築するまでにはいたらなかった点は今後の改題である。
 また,「学習指導ツール」は教員の“授業改善”を支援するためのツールとして開発された側面があるが,その“授業改善”の考え方が全ての学校・教職員に共有され,より効果的な活用がなされるためには,さらなる取組の必要性があることも明らかになった。
 大阪府教育委員会としては,本実践研究の成果をもとに,「学習指導ツール」の更なる活用を推進し,府内すべての学校において“授業改善”に向けた大きなうねりを生み出すことで,学校力の向上をはかり,大阪の抱える課題の改善に努めたい。

2.普及啓発と今後の取組について

(1)成果の普及啓発に関する取組

 大阪府教育委員会では,本事業の実践研究の成果の普及に向けて,次のとおり取り組んだ。

○調査活用協力校における優良な実践事例を取りまとめ,指導場面等の資料画像を含めた事例紹介用シートを作成し,府教育委員会のWebサイトから配信。
○調査活用協力校における優良な実践事例を取りまとめ,「学習指導ツール」の効果的な活用方策を紹介するリーフレット「学びを創る10のアイデア」を作成し,府内全小・中学校に配付。

学びを創る10のアイデア

○府内全市町村教育委員会の学力向上担当指導主事を招集し,本事業の成果についての報告をおこない,優良な実践事例や「学習指導ツール」の効果的な活用方策を周知。
 また,府教育委員会では,本事業と併行して,21市町村,延べ2400人の教員,管理職及び市町村教育委員会指導主事を対象として研修会を実施するとともに,授業改善のためのDVD「確かな学力をはぐくむ」を作成し,府内全小・中学校に配付し,普及を図った。

(2)来年度以降の取組

 府教育委員会としては,本事業の成果と課題を踏まえ,今後さらなる取組を進めることとした。

○「学習指導ツール」の有用性や効果的な 活用方法が実証されたことから,今後も「学習指導ツール」の開発をすすめ,その質・量ともに充実をはかる。
○「学習指導ツール」が“授業改善”だけ でなく,児童生徒の自学自習力の育成 や基礎的・基本的内容の反復学習等で も効果的に活用できることなどをふま え,学校現場の様々な指導場面で有効に活用することを周知・普及する。
○「学習指導ツール」は教員の指導力向上 をはかるものであり,その活用方法に ついては教員の創意工夫が必要である。 しかし,実際の場面では便利な課題プリントとして安易に活用されている 傾向もあることから,「学習指導ツール」 本来の目的である「授業改善など教員 の指導力向上」の考え方をより周知徹 底する。

2.調査活用協力校における取組事例

取組事例1.「学習指導ツール」を活用して教員の授業力を高める取組 ‐岸和田市立城北小学校‐

(1)本校の課題と改善目標

〔課題〕

1.児童の課題
 府・全国調査の結果から子どもたちの学力面では「考えること」や「活用の力」に課題があることがあきらかになった。
 また学習状況や生活の面では「自己肯定感」,「規範意識」に課題があることが明らかになった。

2.学校の課題
 学校全体での学力向上の取組みをどのように推進していくかが大きな課題であり,その中で,経験の浅い教員の授業力の向上を図ることが必要である。

【改善目標】
  • 学習指導ツールの適切な活用の推進
  • 校内研修による教員の授業力向上

(2)学習指導ツールを活用した取組の概要

○経験の浅い教員の「学習会」
設定:月に1回 4:30~
参加者:経験年数6年目までの教員
管理職,初任者指導教員
内容(3月2日の例)

  • ワークブックの効果的な活用
  • モデル授業を題材とした授業研究
  • モデル授業をもとに作成した指導案検討

主な討議内容

  • ワークブックを朝の学習で活用することの効果と留意点
  • モデル授業から学ぶ,授業のあり方と自らの授業の改善点
  • 学習指導ツールすべてを活用することによる授業改善の手だて
  • 言語活動の進め方と重要性

学習指導ツールを活用した取組の概要

(3)取組みの成果と課題

○学習指導ツールの目的と有効な活用方法について,共通認識を持つことができた。
○学習指導ツールを活用しての授業改善に取り組む気運が高まった。
○朝の学習を授業改善の場面の一部としてとらえ,具体的にどう取り組むか,イメージが広がった。
○経験の浅い教員が,まず自分の考えでワークブック等を一定期間活用し,学習会において「活用して良かったことや問題点」を出し合う中で,授業や朝の学習,家庭学習に対するそれぞれの考え方,位置づけ,めざす方向が実感を持って整理された。

取組みの成果と課題

○考える力・自学自習力を高めること,授業の中での言語活動の重要性と進め方など,具体的な課題について,どのように ツールを活用することが有効か,共通理解ができた。
○モデル授業をもとに,指導教員が実際に授業を行うために指導案を作成。その時に感じたことを経験の浅い教員に問題提起することで,ポイントをはずさずに論議が深められた。

(4)今後の取組

○「朝の学習」の充実をはかる。
 学習指導ツールを活用し,考える問題や活用する問題にふれる機会を増やし,自学自習できる子どもの育成をめざす。
○モデル授業の活用によって教員の指導力向上をはかる。
目の前の子どもにどんな力をつけなければならないのか,スモールステップの到達点をはっきりさせ,それにむけて学習を構築していけるよう指導者の力量を高める。
○学習指導ツールの活用を学校全体として推進し,授業改善のPDCAサイクルを確立する。

取組事例2.「学習指導ツール」の活用による授業改善のPDCAサイクルづくり ‐大阪狭山市立第七小学校‐

(1)本校の課題と改善目標

〔課題〕

○府・全国調査の結果から,「必要な内容を読み取り把握する力」や「自分の考えをまとめ,適切に伝える力」に課題があることが明らかになっており,「書くこと」への抵抗感や読書量の少なさを克服し,「言語力」を育成する取組が必要である。
○国語では,グラフや表などから必要な内容を読み取ったり,効果的にまとめたり,文章を推敲したりする,「書く」領域に課題
○算数では量感覚やグラフを基に論理的に考え,自分の言葉で説明・記述することに課題

〔改善目標〕

○すべての学習活動において自分の考えをまとめ,適切な方法で表現・説明し,検証し合う授業作りと活用力の向上
○基礎・基本の定着と読解力の向上
○授業改善のPDCAサイクルの確立

(2)学習指導ツールを活用した取組の概要

○「学習指導ツール」ライブラリーを開 設し,各ツールを授業等の学習課題として活用
〔算数での取組〕
学年:5年
単元:円の面積
活用ツール:単元別問題「円の面積」

課題提示

課題提示

一人で考える

一人で考える

考えを説明

考えを説明

※「学習指導ツール」で示された授業改善のポイントに沿って授業を展開。

○モデル授業による初任者等の指導
指導の流れ

  1. 初任者指導教員が,指導案と映像をじっくり視聴。
  2. 初任者指導教員が,授業のポイントについて指導。
  3. 初任者は,再度映像を止めたり,くり返し見ながら授業のポイントを確認。
    ※通常の研究授業では,同じ場面を何度も確認できないが,Web上であれば何度でも確認できるので初任者の指導に適している。

○学力テストの分析と課題の共有によるP DCAサイクルの構築
取組みの流れ(平成20年度中)

  1. 学年別,教科別の観点別正答率レーダーチャートの作成。課題となる観点の把握。
  2. 全国学力・学習状況調査と結果を比較。課題となる観点の把握。
  3. 課題となる観点を含む問題の分析と改善プランの土台の作成(平成21年度)
  4. 職員が共通認識し,学年ごとに具体的な計画を作成。
  5. 計画に基づき,授業改善の実施。
    校内研修の実施。
  6. テストの実施→1.へ

(3)取組の成果と課題

〔成果〕

○大阪府学力テストによる年度末の検証を終え,学習指導ツールを活用しての授業改善のPDCAサイクルを確立しつつある。
○従来から取り組んできた授業作りに学習指導ツールを取り入れ,多面的に授業を構築することができた。
○国語で「読む・書く」の絶対量を増やすため年間構想表をもとに指導を進めており,その過程で「ワークブック」を活用することで,子どもたちが基本的な約束事を手軽に学習することができた。
○算数で「単元別テスト」を活用した習熟度別指導をおこなうことで,子どもたち一人ひとりが自分のペース,自分に合った学習の積み上げが出き,できる楽しさから問題解決の楽しさへと学びの内容が深まっていった。
○初任者指導が充実した。

(4)今後の取組

○国語科での年間構想表の取り組みをさらに充実させる。
○自分の考えを持ち,説明し,聞き合い,練り上げる学習がおこなえるよう,問題解決型の一問題多答の授業づくりをすすめる。
○家庭との連携により,家庭学習の習慣化と自学自習力の育成に努める。

取組事例3.「学習指導ツール」の活用による放課後学習の取組み‐太子町立中学校‐

(1)本校の課題と改善目標

[課題]

1.生徒の課題
 府・全国調査の結果等から,本校生徒の自学自習力が十分でないことが明らかになった。

2.学校の課題
 放課後学習会などに取組むにあたって自学自習力向上のための適切な教材や指導方法を確立する必要がある。
 日々の授業において,学習のプロセスを大事にした指導法を確立する必要がある。

[改善目標]

 放課後学生チューター学習会等を通じて生徒の自学自習力の向上を目ざす。

(2)学習指導ツールを活用した取組の概要

 学生チューターの支援による放課後学習で「学習指導ツール」の「ワークブック」を活用するとともに,その効果検証に「単元別テスト」を活用する。

  1. 対象者:中学3年生希望者
  2. 支援者:学生チューター
  3. 内容
    ◆英語(発展コース) ワークブック活用
    ◆英語(基礎コース) 単元別テスト活用
    ◆数学
    ワークブック活用
  4. コース教科の選択:生徒の希望
  5. 支援の方法
    • 英語発展コース
      コース全体をチューター1人が支援
    • 英語基礎コース
      チューターが生徒一人ひとりの理解度に合わせて支援
    • 数学
      ほぼマンツーマンで支援

 学習指導ツールを活用した取組の概要

[生徒の声]
  • 友だちや学生チューターと一緒にできる放課後学習が楽しい。
  • 学生チューターがていねいに教えてくれる。
  • 受験勉強に役に立っている。

(3)取組の成果と課題

 生徒たちは,学生チューターとの良好な関係のもとで,意欲的に取り組むことができた。
 これまでは適切な教材を模索している状況があった。「学習指導ツール」を活用することで,学生チューターが,教員と協力しながら教材の選択,編集などにも意欲的に取り組んでくれ,教員も刺激を受け,意識も高まった。生徒からも,わかりやすいと好評であった。
 さらに,今回の実践研究により,学校 として少人数指導の充実や,自学自習力の育成に長期間取り組んできた成果を感じることもできた。
 定量的に効果を検証するには至らないが,学習指導ツールを活用した放課後学習が,個々の生徒の自学自習力の高まりにつながり,さらに学級・学年全体に「学習に対する前向きな姿勢」が芽生え,落ち着いて学習する雰囲気を作ることにつながっていると感じられた。
 また,それぞれの生徒の学習の進み具合や,苦手なところに対応できる「単元別テスト」や「ワークブック」から教材を選択できることは,よりいっそう生徒の学習意欲を高めることに結びついていると思われる。
 学生チューターを活用した自学自習力育成の取り組みは,既に5~6年前から始めており一定の手応えを感じており,平成16年度には自学自習力育成の効果検証を行った。
 今回の活用実践践研究も,それらの継続した取組みの流れの中で行うことができた。

取組の成果と課題

(4)今後の目標

 大学との連携も強化し,学生チューターを活用した自学自習力育成の取り組みをいっそう充実させるとともに,学習指導ツールの活用により,高めるべき学力の目標を明確にし学習会のシラバスを作成するなど,多くの生徒が参加できる体制を構築し「生徒の自学自習力の向上」を推進したい。
 また,今後,学習指導ツールを計画的に各教科の授業でも取り入れることを通じて,学校全体として,本校生徒の実態に応じた自学自習力向上のための適切な教材づくりや,学習のプロセスを大事にした指導方法の確立をめざしたい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --