神戸基礎学力向上推進委員会(神戸市検証改善委員会)
神戸市の全国学力・学習状況調査の結果について、小学校国語B、算数B、中学校国語A、数学A・Bは全国平均を上回り、中学校国語Bは全国平均を下回ったが、全体としては全国と同程度であった。
小学校、中学校ともに、A問題(主として知識に関する問題)よりもB問題(主として活用に関する問題)の平均正答率が12~18ポイント下回り、全国の結果と同様に課題が見られた。
児童生徒質問紙からは、「朝食を毎日食べている」と答えた児童生徒の割合が全国平均に比べ、小中学校とも低く、また「(普段)家や図書館で全く読書をしない」児童生徒が同じく小中学校とも低い等、生活習慣の一部に課題が見られた。
神戸市では、平成18年に「分かる授業推進プラン」を策定した。前述した全国学力学習状況調査の結果をふまえた学力・学習意欲の向上の取組(神戸基礎学力向上推進プラン)は、「分かる授業推進プラン」の一環であり、それをいっそう充実させるものと捉えている。
「分かる授業推進プラン」は、児童生徒の学力と学習意欲の向上を目的とし、
の四つのフレームで事業を推進している。
神戸基礎学力向上推進委員会(神戸市検証改善委員会)は、神戸市教育委員会事務局参与:洲脇一郎を代表者として、兵庫教育大学、兵庫県立大学、神戸大学、親和女子大学、大阪教育大学等の学識経験者7名と、神戸市立中学校長2名(神戸市中学校教育研究会国語部長、数学部長)、教諭2名(国語科・数学科指導委員)、神戸市立小学校長2名(神戸市小学校教育研究会国語部副部長、算数部長)、教諭2名(国語科・算数科指導委員)、ならびにPTA代表者2名、市教委事務局幹部3名の計20名で組織した。
なお、本委員会(全体会)の下部組織として、調査結果の分析と改善策を集中的に協議するために、各教科担当の指導主事を中心とした教科部会と児童生徒質問紙、学校質問紙調査の分析を担当する作業部会を設け、検討を行った。
9月に第1回目の検証改善委員会を行い、2回の作業部会を経て、20年1月までに5回の委員会(全体会)で検討を進め、「神戸基礎学力向上推進プラン(学校改善支援プラン)」としてまとめた。
各学校では、神戸市の全小中学校で取り組んでいる「分かる授業の推進」をさらに充実させるために、自校の調査結果を踏まえた「改善プラン」を策定し、特に課題のある教科・領域を中心にPDCAサイクルに基づいて指導の改善を図る。
神戸市では平成18年に「分かる授業推進プラン」を策定した。全国学力学習状況調査の結果をふまえた学力・学習意欲の向上の取組(神戸基礎学力向上推進プラン)は、「分かる授業推進プラン」の一環であり、それをいっそう充実させるものである。
「分かる授業推進プラン」は、児童生徒の学力と学習意欲の向上を目的とし、
全国学力学習状況調査の結果をふまえ、充実した教育課程を編成するとともに、学習指導を改善し、「分かる授業」を充実させる。
児童生徒がつまずきやすい箇所や繰り返し学習が必要な事項、その具体的な指導方法などをまとめたもの。図形や小数など、課題のある領域・単元を中心とする。
読解力・言語力の育成のために、国語科だけでなく、全教科で「読んで考えて書く」指導を徹底する。例えば、社会科で、表やグラフの読み取り、理科で実験・観察の記録の作成など指導を充実させる。
知識・技能の確実な定着のためには、反復し、繰り返し学習することが重要である。反復学習(スパイラル)を充実させていく。
模擬授業、参加型研修、大学教員等を招いた研修など、授業改善という目的意識を明確にした研修や参加型研修を充実させる。
少人数指導、習熟度別指導、複数指導、小学校での教科担任制など、学校や教科に応じた効果的な指導形態を工夫する。また放課後・長期休業中の補充学習を充実させる。
読書活動は広い意味での学力の基盤であるとともに、豊かな情操を養ったり、社会・自然に対する関心を高めたりする重要な活動である。図書館の活用、読書マラソン、朝の読書の定例化など読書活動を充実させる。
学習や学校生活の基盤となる学級の安定を図ることが学習効果を高める。そのためには、授業規律をいっそう確立していくことが必要である。
各学校での校内研修や学習指導の改善のために指導主事を派遣し、学校を支援する。
学校現場の実践例から先駆的な取組や効果をあげている取組をまとめて、今後の各学校での学習指導の改善の参考とする。
算数の単元ごとの追加的な練習問題や評価問題を組み合わせた「算数エース」(小学校1~6年生用)を開発する。
言葉や自然に対する興味・関心を高めるとともに、読んで考え書く習慣を培うために、小学校3、4年生用の「よみときブック」を開発する。
小学校では「算数ダッシュ」(全学年用)、「ことばひろがるよみときブック」(5、6年生用)、など、既存の教材を活用し、知識・技能の習得と活用する力を育成する。
各教科の学習の仕方や家庭での学習習慣の形成、基本的な生活習慣の形成のために、「学習の手引き」を作成し、保護者・生徒に配付する。
早寝・早起きなど家庭と連携して正しい生活習慣づくりをすすめる。
「家で30分読書」などの活動をすすめ、家庭でも読書に親しんだり、新聞を読んだりする習慣を形成する。
各学校が実践している「分かる授業」の先駆的な事例や効果的と考えられる事例を収集し発信していく。報告書では一部を掲載するが、平成20年3月に「分かる授業ハンドブック」として編集・発行する。各学校では、自校の状況に適した活動を選択し、教育課程・教育活動を編成する。
以下は、報告書に掲載した実践事例の項目の一部である。
等
4で述べた神戸市基礎学力向上推進プランについては、「中間まとめ」冊子を作成し、12月に小中学校への説明会を実施するとともに、小中学校全教員に冊子の配付を行った。
また、指導改善の実践事例集「分かる授業ハンドブック」を発行し、3月に「分かる授業報告会」を開催し、学識経験者の講演とともに、小中学校の実践発表を行った。
各学校では、全国学力・学習状況調査の結果を分析し、特に課題のある事項を中心として学習指導の改善計画を策定した。課題については、20年度においても各学校の「分かる授業推進計画」に組み込み、引き続き児童生徒の学力や学習意欲の向上と学習指導の改善を目指す。
各学校の改善計画の主な内容は、学習では重点を置いて指導すべき事項、指導の方法の改善、指導内容の充実、家庭学習の習慣づけ、生活では基本的生活習慣の確立のための家庭との連携などである。
(参考)「分かる授業ハンドブック」 (分かる授業を効果的に行うための教具等の活用) |
神戸市検証改善委員会では、文部科学省からの「平成19年度学力・学習状況調査」の結果提供を受け、神戸市における結果の分析を精力的に進め、全国的な状況との比較において、以下のような課題が明らかとなった。
これらの改善に向けては、従来の学校単位での地道な活動を継続する一方で、今回の全国調査を契機に、支援を必要とする児童生徒を中心として、基礎学力の定着・向上に向けた取組を一段と充実させていくことが重要な課題となる。そのため、授業改善、児童生徒の自主学習支援、良好な生活・学習習慣の形成、の三つの視点から、多面的・具体的な実践研究を行い、その成果をただちに神戸市の小中学校へ還元するとともに、全国へ向けて発信していく。
前述したように、「全国学力・学習状況調査」の結果を踏まえ、神戸市の児童生徒の一層の基礎学力の定着・向上に向けて、以下の三点を柱とする具体的な実践研究を行う。
(参考)小学校算数重点指導事項集 |
(参考)中学校数学重点指導事項集 |
(参考)算数エース本体部分 |
(参考)算数エース「算数ひろば」 |
(参考)算数エース「力だめし」 |
検証改善委員会内に三つのワーキングチームを設置し、連携協力大学等の支援も得ながら、上記促進事業を実施した。
平成19年度全国・学力学習調査結果は、国語、算数・数学のこれまでの
神戸市独自調査の結果を裏付けるものであり、児童・生徒、学校質問紙調査からは、これまで調査することのできなかった項目について、神戸市全体の傾向を把握することができた。
促進事業での教材作成等については、教材を作成すること自体が教員の資質の向上につながっている。活用的な問題づくりにも挑戦したことで、問題作成能力も向上した。今後、神戸市小学校教育研究会、神戸市中学校教育研究会で、各教科教員の問題作成能力の向上を引き続き図っていこうという声も上がっている。
各学校においては、既に指導の改善が行われている。平成20年度には、促進事業で作成した教員向けの授業力を高める重点指導事項集や新しい教材等を活用し、「分かる授業」のさらなる推進を目指す。
選択教科テキスト(エンパワー国語) |
選択教科テキスト(エンパワー数学) |
-- 登録:平成21年以前 --