学校改善支援事業における取組例;静岡市検証改善委員会個々に応じた学習方法や学習習慣の確立

静岡市立美和中学校

本校の概要

 本校は、静岡市の中心部より北へ8キロメートル、小高い丘陵と安倍川に挟まれた南北15キロメートルにおよぶ自然環境に恵まれた地域にあります。地域は、茶栽培を中心とする農家と新興住宅、市営・県営団地が併存しています。近年、新東名高速道路の工事が着々と進んでおり、近い将来、環境の大きな変化が予想されます。
 本校の生徒数は9学級の286人で、教職員数は22人となっています。

学力調査の結果に対する分析

 全国学力・学習状況調査の結果については、校内検証改善委員会を設置し、分析手法を検討をしました。10月末の提供を受けて、以下のような項目に着目するとともに、本校独自調査との比較分析を行いました。この結果を受け、「個々に応じた学習方法や学習習慣の確立」を改善の目標として設定しました。

教科部

○着目したデータ

  • 数学Aの2,10,12(計算、文字式、関数)
  • 国語Aの7,Bの3二(情報の読取り、記述問題の理解)

○分析結果

  • 上記の内容の理解が低い。
  • 基礎的基本的な事項のドリルが必要。自分で考えたり書かせたりする場面をより多く設定する。

学年部

○着目したデータ

  • 生徒質問紙6,22,23(家庭学習時間、休日の学習)
  • 基礎的学習テストとの比較

○分析結果

  • 独りで学習する習慣ができていない。
  • 学習量が多いと点数が高い。
  • 学習の習慣づけをする。

検証改善委員会

○着目したデータ

  • 生徒質問紙11,12(よいところ、将来の夢や目標)
  • Q-U検査と関連し考察

○分析結果

  • 自己肯定感が高い。
  • 目標をはっきりさせ細かな学習計画を立て取りくませ認める指導が有効。

検証改善サイクル事業について

 静岡市検証改善委員会が公募した「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究(学校改善促進事業)」に対して、応募し指定を受け、上記の分析結果等を踏まえて、実践研究を行いました。

(1)校内検証改善委員会の設置

 静岡市検証改善委員会が求める校内検証改善委員会を学校の職員構成を考慮し、次のように構成しました。また、第3学年だけでなく、各学年の教務主任・研修主任を加え、各学年で成果を活用できる体制にしました。

学校責任者(校長)、調査担当者(教頭)、情報セキュリテイ責任者(教頭)、教務主任、研修主任、3年主任、学習部長

(2)校内での分析手法

 学力調査の分析を中心に、校内での分析を次のように進めました。

1 本校の特性の分析

全国の結果と本校の結果を各項目ごとに比較し、顕著な表れ(差が2ポイント以上を顕著と考える)が認められた項目を抽出しました

2 本校独自調査との比較分析

  • ア Q-U検査結果分析との比較(自己肯定感を高める支援方法の検討)
  • イ 各学年部で実施している英語・数学・国語の基礎的練習や小テストの成果との比較(対象教科以外の傾向と指導法の検討)

3 生徒一人ひとりの分析

日常の教育方法、特に、個に対してどのような支援方法が有効かを検討しました

(3)活動内容

 校内検証改善委員会を4回開催し、学力・学習状況を分析するとともに、改善目標を実現するため、改善計画を作成し、実施しました。

  • 10月…第1回検証改善委員会
    (本校のデータと全国平均を比較し、本校の実態の分析)
  • 11月…第2回検証改善委員会
    (Q-U検査結果との比較、対象教科以外の傾向の比較、個への支援方法の検討)
  • 12月…第3回検証改善委員会
    (支援対象学年部による実施計画作成)
    • …日常の授業の改善(基礎的練習、小テストの活用)
    • …第4回検証改善委員会(実施計画検討)
    • …放課後学習・学力向上合宿の実施

(4)実施体制

 事業を実施するにあたっては、学校内の組織を活用するとともに、保護者と連携することに努めました。
実施体制

(5)校内検証改善委員会の改善計画

1 日常の授業の改善

自分の考えを書き発表する機会を設定する。基礎的ドリル学習の充実を図る。
近隣校研修での小学校との交流授業を行う。

2 放課後学習の実施

  • ねらい…英語、数学、国語についての学力補充
  • 実施内容…テスト形式のプリントを中心に、相談、解説を行う
  • 実施方法…3年生の全員を対象に放課後の学習を行う

3 学力向上合宿の実施

  • ねらい…各教科の学習方法や学習の深化・補充、独りで学習する習慣づくり
  • 実施方法…3年生の希望者を対象に、2泊3日で学習を中心にした合宿を行う

(6)静岡市検証改善委員会の支援

 校内検証改善委員会の改善計画に基づいて、静岡市検証改善委員会より、次のような支援を受け、12月を中心に「放課後学習」「学力向上合宿」を実施しました。

  • 学力向上専任指導員(国語・数学・英語の放課後学習支援)の派遣
  • 学力向上合宿支援
    • 学習指導に関する専任指導員派遣(国語・数学・理科・社会・英語各1名)
    • 宿泊指導に関する専任指導員を派遣
  • 学校担当指導主事による助言・支援

研究内容:放課後学習の取組1

 放課後学習は、「よりよい学習習慣を身につけるとともに、国語・数学・英語の学力向上」をねらいに行いました。

(1)概要

参加者

3年生全員

実施日時・実施場所

平成19年12月17日~20日14時~16時 (場所:学校)

参加学年・参加人数

中学3年生全員 100人 (3学級)

主たる学習内容

学校で購入したテスト形式のプリント

(2)実施内容

 放課後学習の実施にあたり、通常、数学で行っている小集団(6集団)を利用し1集団16人程度に編成しました。それを、専任指導員国語2人、数学2人、英語2人が時間割により指導する体制を組みました。生徒は1日2時間で2教科を学習できるようにしました。
 具体的には、30分でプリントにより問題を解き、20分で専任指導員が解説をするという方法をとりました。専任指導員は、30分で生徒の様子を観察し、課題を把握しながら解説をするように努めました。さらに、生徒からの質問を積極的に受けるようにしました。
 教材としたプリントは、過去の入学試験問題を中心に構成されたものであったため、基礎的な内容から活用まで、各領域の代表的な内容を含んでいました。また、生徒の意欲が高まるものでした。

研究内容;学力向上合宿の取組2

 学力向上合宿は、本校の改善目標を実現するための中心的取組でした。ねらいは、「独りで学習する習慣を形成する」ことにあります。その取組は次のようなものです。

(1)概要

事前説明等

11月30日 3年保護者会で本事業の趣旨説明及び参加申込書配付

参加者の決定

参加希望者42名のうち、通塾状況や学習の定着度を考慮して事前面接の上、30名を選出

実施日・実施場所

平成19年12月22日~24日(2泊3日、場所:J-ステップ)

参加学年・参加人数

中学3年生・30名(在籍数の10パーセント)

主たる学習内容

各自の持参した問題集で自習(講師が指導)、

 この合宿中の学習については、通常の授業とは異なり、生徒が自主的に質問することを中心にしました。そのため、教材は、事前に配付した各教科の問題と各自が持ち込んだテキストを使用しました。生徒は自分のペースで進め、自分のよくわからないところを学んでいきました。教科は5教科を対象に、講師が時間によりローテンションしました。生徒6人を講師1人が指導することにより、少人数の中で生徒は主体的に取り組むことができました。
 さらに、この合宿に参加できなかった生徒を中心に、25日から学校を開放し、自習したり、質問したりできるようにしました。

(2)成果

 合宿の最終日に一人ひとり講師が成果の確認と今後の学習のアドバイスをするために面接を行いました。そこでは、「こんなに勉強したことはなかった。だけど、やれることがわかった。疲れたけど、来てよかった」の声に代表されるように充実感が感じられました。生徒が記したアンケートからもそれが読み取れました。

<事前と事後の感想>

 この合宿では主に苦手分野をやり、意欲的に質問をして、苦手分野を克服したいと思います。わからない問題があるとすぐにあきらめてしまうので、先生方に説明してもらい、完璧に理解するまでやります。

勉強に対するやる気が前より上がりました。先生たちが何人もいてくださり、わからないところがあるとすぐに質問でき、その場で理解するまで教えてくれるので、あきらめることがありませんでした。

 最初は勉強だらけで、正直行きたくないと思っていました。それは、自分の勉強意識が低かったからだと思います。でも、高校へ行くためには、もっと勉強してテスト点を上げなければと思い、勉強合宿に参加しました。

勉強を始めれば楽しく、優しい先生方がとてもわかりやすく教えてくださり、集中して取り組めるようになりました。冬休みにつなげ、この合宿で学んだことを活かして学校生活を送りたいです。

 この合宿で、”受験生”らしい生活というのをしてみるのも良いかもしれない。生活を変え、学習に積極的に取り組みたいと思います。

最終日では、あれだけ長いと思っていた学習時間は全く気にならなくなっていた。このペースでいけば、家での学習も余裕な気がする。

研究の成果と課題について

(1)生徒の高い満足度が得られた

 実践研究の取組の成果を把握するために、生徒にアンケートをとり、集計しました。この結果から、生徒にとって有効な取組であったと確認しています。

項目 満足と回答した生徒
学習内容の定着があった 97パーセント
学習意欲が向上した 80パーセント
規則正しい生活ができるようになった 67パーセント
家庭学習時間の増加 平均72分増
学校の授業で質問する習慣がついた 37パーセント

(2)自校の課題が明確化された

 全国学力・学習状況調査から自校の課題である「個への対応」が明確になりました。そのため、基礎的・基本的学習の時間(週3回、20分、計算・英単語・漢字のくり返し指導)や放課後学習に取り組むことができました。

(3)課題解決の多様な指導が有効

 課題の改善のために、継続的な指導とともに、学力向上合宿において学習の仕方や学習習慣を定着させるための集中した密着指導も「わかるようになった」「勉強はおもしろい」という成就感や自信を生徒にもたせるためには有効だと確認できました。

(4)学校全体の教育課程・教育計画に生かす

 平成19年度は、全国学力・学習状況調査の結果から、改善目標をたて、3年生に改善指導を行いました。このことにより、成果はあったと受け止めていますが、さらに、学校全体の教育課程編成に生かし、具体的な教育計画を設計していくことが課題になりました。課題を改善するための1年生、2年生の活動や手立てを検討していく必要があります。
 平成20年度は、「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」事業における静岡市検証改善協力校として、取組を継続させていく予定です。

-- 登録:平成21年以前 --