学校改善支援事業における取組例;静岡市検証改善委員会放課後学習システムによる学力・学習意欲の向上-算数プリント添削指導と放課後学習支援-

静岡市立清水三保第一小学校

本校の概要

 本校は、静岡市清水区に位置し、三保半島の先端地域を学区としています。北側は造船工業地帯が広がり、南側は天女伝説が残る三保の松原を中心とする観光施設と農業地帯が広がっています。本校からは、霊峰富士や駿河湾が一望でき、自然環境に恵まれたとても風光明媚なところにあります。本校の児童数は13学級の461人で、教職員数は20人となっています。

学力調査の結果に対する分析

 全国学力・学習状況調査の結果については、校内検証改善委員会を設置し、10月末の公表を受けて、国語科、算数科及び学習習慣の分析を校内検証改善委員を中心に行いました。それぞれの分析結果は次の通りです。この結果を受けて、「算数の基礎学力の定着」と「学習意欲の向上」を目標として設定しました。

校内検証改善委員会

◆ 国語科の分析

○着目したデータ
  • 国語ABの平均正答率や領域ごとの平均正答率を国や県と比較
○分析結果
  • 活用問題については、やや課題が見られる。

校内検証改善委員会

◆ 算数科の分析

○着目したデータ
  • 算数A1(2)~(7)
    算数B1(3),23(2),4(1)(2),5(1),6(2)
  • 児童質問紙(79)~(91)
○分析結果
  • 小数や分数の基礎的な計算の定着に課題が見られる。
  • 活用問題や多様な問題に課題が見られる。
  • 算数に対して苦手意識がある。

6年部の学級担任

◆ 学習習慣の分析

○着目したデータ
  • 児童問紙(6),(21),(22),(2),(32)~(35)
○分析結果
  • 宿題以外の学習習慣が身に付いていない。
  • 家庭学習に課題が見られる。

検証改善サイクル事業について

 静岡市検証改善委員会が公募した「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究(学校改善促進事業)」に対して、応募し指定を受け、上記の分析結果等を踏まえて、実践研究を行いました。

(1)校内検証改善委員会の設置

 静岡市検証改善委員会が求める校内検証改善委員会を学校の職員構成を考慮し、次のように構成しました。また、第6学年だけでなく、各学年の教務主任・研修主任を加え、各学年で成果を活用できる体制にしました。

学校責任者(校長)、調査担当者(教頭)、情報セキュリティ責任者(教頭)、教務主任、6年学年主任、研修主任

(2)校内での分析手法

 学力・学習状況調査をもとに、校内での分析を次のように進めました。

1 校内検証改善委員会による分析

  • ア 国語、算数の平均正答率や学習状況を国や県と比較し、本校6年生の学力・学習状況の傾向を分析しました。
  • イ 国語、算数の「学習指導要領の領域」「評価の観点」ごとの平均正答率を国や県と比較し、定着度を分析しました。

2 学級担任による分析

 学習状況調査について、個票を基に学級の児童一人ひとりの学習状況を分析し学習環境の実態を探りました。

(3)活動内容

 校内検証改善委員会を3回開催し、学力・学習状況を分析するとともに、改善目標を実現するため、改善計画を作成し、実施しました。

実施月日 活動内容
10月9日 校内検証改善委員会により学力・学習状況調査分析方法の検討
10月24日 校内検証改善委員会により学力・学習状況調査の分析
10月26日 6年保護者会にて、学力・学習状況調査における本校の傾向と放課後学習システム(プリント添削指導と放課後学習支援による学力向上計画)の概要について説明。校内検証改善委員会により改善計画検討
11月1日 放課後学習システム開始
11月17日 学校評議員会にて、学力・学習状況調査における本校の傾向と放課後学習システムによる学力向上計画について説明
11月22日 「三保一小の教育を語る会」で保護者あてに、学力・学習状況調査における本校の傾向と放課後学習システムによる学力向上計画について説明
12月17日 校内検証改善委員会で、放課後学習システムについての成果と課題について検討

(4)実施体制

 事業を実施するにあたっては、学校内の組織を活用するとともに、保護者と連携することにつとめました。
実施体制

(5)校内検証改善委員会の改善計画

1 日々の授業へ的確な反映

  • 個々の課題別カルテ作成
  • 習熟度に応じた指導
  • 個別指導
  • プリントによる反復練習
  • 特に算数科における指導に生かす

2 家庭における学習習慣の確立

  • 宿題の取り組みの徹底
  • 生活表の活用
  • 個に応じた生活指導

3 教育課程へ確実な反映

  • 児童の実態把握の資料
  • 年間指導計画の見直し
  • 基礎基本の定着を図るための少人数指導や個に応じた指導充実

(6)静岡市検証改善委員会の支援

 校内検証改善委員会の改善計画に基づいて、静岡市検証改善委員会より、次のような支援を受け、11月から「添削指導」「放課後学習支援」を実施しました。

  • 学力向上専任指導員(添削指導、放課後学習支援)の派遣
  • 学校担当指導主事の指導参観及び助言

研究内容;添削指導と放課後支援による学力・学習意欲向上の取組

 添削指導と放課後支援は、「算数の学力向上と学習意欲向上」をねらいに行いました。

(1)概要

指導内容 対象 時間(時間帯) 方法 実施回数
赤マル添削指導 6年生全員 10分(帰りの会を使って) プリント 週3~4回程度
放課後赤マル教室 6年生全員 45分~60分(放課後) プリント 1人当たり週1回程度

(2)内容

  • 1 専任指導員は、帰りの会の時間を使って、全児童のレベルアップのための10分間テスト(専任指導員作成)を行い、添削指導をしたものを返却します。この際、アドバイスや励ましの言葉も書き添えます。
  • 2 結果を個人支援カルテにまとめ、個別指導計画を作成します。
  • 3 放課後赤マル教室による個別指導は、学年を各20人程度の4グループに分け、放課後の時間の45分から1時間を使って行います。個人支援カルテを基に、個々の習熟度に合わせたプリントで学習を行います。(常時3種類のプリントを用意し、専任指導員が個々に選択して手渡していきます。)

(3)成果

1 学力定着に関する成果

 12月初旬、6年生児童全員で、平成18年度の定着度テストを実施してみました。その結果、「分数の四則計算と最大公約数、最小公倍数」について、課題が見られました。そのため、赤マル指導では、特に、この2領域に重点をおいて指導を行いました。その結果、19年度に行われた定着度調査(20年1月実施)では、「分数の四則計算と最大公約数、最小公倍数」において、全問正答者の比率に大幅な伸びが見られました。
学力定着に関する成果

2 学習意欲向上に関する成果

 12月になるとプリント学習による添削指導、放課後の赤マル教室による学習支援が定着しました。12月17日に算数学習についてのアンケート調査をしたところ、児童の意識の変化が確認できました。

  • (ア)「算数が好きですか」の設問では、赤マル指導後に「算数が好き」と答えた児童が増え、「やや嫌い、嫌い」と答えた児童が減少しました。
  • (イ)算数の勉強で、「こうやってやればできるんだとあきらめないで考えることができるようになりましたか」の設問では、「できる」と自信をもって答えた児童が増え、「ややできない、できない」と答えた児童が減少しました。
  • (ウ)プリント学習や放課後赤マル教室により、今まで苦手だった所や分からなかった所を指導してもらえるため、自信がつき、学力向上にもつながった。

<赤マル教室の感想より>

…赤マル教室はABCDに分かれて行います。私が先生に「ここの問題が分かりません。」と聞くと先生は「黒板を見て。」と言って分かりやすく丁寧に教えてくれます。先生は自分にあったプリントをわけてくれます。…
…用事があるときは、誰かと交代することもできて、都合のよい日に合わせることもできます。少人数で行うので分からないところがあるとすごく聞きやすいです。復習をしているので、忘れてしまった所などがあると、最後まで教えてくれます。私は、その中でも割合が苦手でしたそこを先生はやさしく最後まで教えてくれました。私は先生の一生懸命さはすごいと思いました。…

研究の成果と課題について

  •  校内検証改善委員会の分析結果を保護者や学校評議委員に伝えることにより、全国学力・学習状況調査の意義と活用についての理解を深めることができました。
  •  日常の算数科の授業において、児童は自信をもって取り組み、教師は個に応じた指導を一層心がけるようになってきています。
  •  校内検証改善委員会の分析結果を生かした授業改善や校内研修の在り方について、更に校内で検討していく必要があることです。

-- 登録:平成21年以前 --