徳島県検証改善委員会
本県では、児童生徒の「自ら学び、自ら考える力」を育成し生涯にわたる学びを保障するためには、まず、基礎学力の定着状況を把握することが重要と考え、平成14年度に小学校第5学年、中学校第2学年を対象に、国語、算数・数学科の2教科において「基礎学力調査」を実施した。その結果に基づき、平成15年度から「読み・書き・計算」及びこれらを基盤とする各教科の基礎的事項を確実に定着させることを目的とした「徳島県基礎学力定着化プロジェクト事業」を策定し推進してきた。その結果、「読み・書き・計算」等の基礎学力の定着に一定の成果を残すことができた。
平成18年度からは、本県「学力向上検討委員会」からの提言を受け、児童生徒の「確かな学力」を育成するために「徳島県学力向上推進事業」を立ち上げ、推進している。その一環として、小学校第5学年、中学校第2学年を対象に、国語、算数・数学科の2教科において実施している「徳島県学力調査」の結果から、「思考力・判断力・表現力」の定着状況が不十分であり、特に、自分の意見や考えを説明・記述することに課題が見られた。
また、本県学力調査において同時に実施している意識等調査によると、家庭学習時間や読書時間が短い児童生徒がおり、課題となっている。
徳島県検証改善委員会は、「平成17年度徳島県学力向上検討委員会」の元委員長であり、四国大学教授の世羅博昭を会長として、鳴門教育大学教授等の学識経験者3名、市町村教育委員会関係者3名、小中高等学校教育研究会関係者3名、学校評議員及びPTA関係者3名、県教育行政関係者3名の計16名の委員で構成される委員会である。また、県教育委員会学校政策課、県立総合教育センター学校支援課、情報教育課の一部指導主事等が事務局員となり、調査結果の分析やプラン原案作成等の作業を行った。
7月に検証改善委員会の設立と第1回会合を行い、3月までに計5回の委員会を開催し、学校改善支援プランをまとめるに至った。
「全国学力・学習状況調査」において、本県では、「活用」に関する問題については、「知識」に関する問題の平均正答率を小学校で約20ポイント、中学校で10~15ポイントほど下回っていた。また、「活用」に関する問題の平均正答率は、中学校数学以外はすべて全国平均を下回っており、特に小学校国語では4.0ポイントの差があった。また、学習状況調査の結果からは、学力との相関関係が見られた「朝食を食べる」など、その他複数の項目で肯定的な回答又は、その時間が長いと回答した児童生徒の割合が全国平均を下回るという傾向があった。
こういったことから、検証改善委員会では、知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や生活習慣等に課題があるととらえ、次の4点から本県の学校改善支援プランをまとめた。
前項の概要でも言及したが、本県の「全国学力・学習状況調査」の結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、次のような点が明らかになった。
◇は徳島県学力向上推進事業の成果、◆は課題、○は課題に対する指導改善のポイントを示す。
また、生活習慣等に関する質問紙調査からは、次のような点が明らかになった。
といった傾向が見られる。
児童生徒質問紙の回答結果と学力との相関関係については、
などの項目で肯定的な回答又は、その時間が長いと回答した児童生徒ほど、国語、算数・数学の正答率が高い傾向が見られた。
3で述べた分析結果を受け、本県における課題解決に向けた基本的な考え方として、「みんなでするつづけてするとことんする」というキャッチフレーズのもと、課題解決に向けた「徳島県版:『学力・学習状況』改善サイクル」の確立についてまとめ、本委員会からの提言を行った。
4で述べた学校改善支援プランについては、その周知を図るため、各市町村教育委員会及び小中学校に送付するとともに、ホームページにも掲載した。また、その概要をまとめたリーフレットを県内の小中学校の教員に対し配付を行った。
さらに、県内すべての公立幼稚園、小中学校、高等学校及び特別支援学校にそれぞれ1名ずつ指名している「学力向上推進員」の研修会を徳島県立総合教育センターにおいて開催し、学校改善支援プランの概要とともに、授業改善のポイントを示すなど具体的な取組について説明を行った。
徳島県教育委員会としても、本県学校改善支援プランに基づき、平成20年度徳島県学力向上推進事業の検証・改善に努めるとともに、児童生徒の学力向上及び学習状況の改善をより一層推進していくこととしている。
学校改善支援プランの先行的な実施として、文部科学省が募集した学校改善支援促進事業に応募し、11月に選定された。
本事業のテーマとして、徳島県検証改善委員会は、「学力調査結果に基づく徳島県版:『学力・学習状況』改善サイクルの確立」を設定した。そのための方策として、各学校等の課題把握・検証システムの構築、課題に応じた児童生徒フォローアップシステムの構築、授業改善及び望ましい生活習慣等の育成に向けた取り組みの推進、学校・家庭・地域社会が一体となった取組の推進を打ち出した。
以下、取組の概要について記述する。
学力調査結果に基づく「学力・学習状況」改善サイクルを確立するためには、教育委員会や各学校が児童生徒の課題を的確に把握した上で、それに応じた教育施策の改善や教師の授業改善、個々の児童生徒の学習方法の改善等を推進し、結果を検証する必要がある。
そのための改善支援方策として、学力調査結果の集計・分析ソフトを開発し、提供することとした。
集計・分析ソフトの主な機能は、次の通りである。
全国学力・学習状況調査結果等から明らかになった課題やつまずきに応じ、児童生徒一人ひとりがフィードバックして学ぶことができるための支援策として、フォローアップ教材を開発・提供することとした。開発した教材はCD-ROMに収め、各学校に配付し、プリントアウトして活用できるようにしている。それぞれの実態に応じ、授業中での活用はもちろん、朝の時間や放課後の時間を活用した補充的な学習や家庭学習においても活用できるよう、児童生徒が1枚15分程度で学習できるよう配慮した。
また、フォローアップ教材が各学校で効果的に活用されるよう本県の学力向上推進員研修会において、内容や活用方法等について丁寧に説明を行った。
今後は、この教材をベースとして各学校で独自に改善を加え、より実態に即したものにするなど、その可能性についても検討するとともに、学力向上推進員研修会等で情報交換し、効果的な活用方法等の成果を共有できるようにしていきたい。
全国学力・学習状況調査で特に課題となった学力は、知識等の実生活に活用する力であった。この学力を育成するためには、教師一人ひとりが強く意識して授業改善に取り組むことや学校全体ですべての教科において取り組むことなどが必要である。
そこで、主に活用力の育成に必要な重点的な能力について分析し、各教科等において授業改善のポイントや具体的な取組等をまとめ、小中学校のすべての教員に配付することにした。
課題が見られた学力向上及び生活習慣等の改善を図るには、家庭や地域社会の理解と協力を得ることが不可欠となる。
そこで、「全国学力・学習状況調査」、「徳島県学力調査」の結果から明らかになった学力や学習状況についての課題を基に、本県の子どもたちに求められる学力やその向上策について語り合い、学校・家庭・地域社会がより一層連携を深め、本県の子どもたちの学力向上をめざすことをねらいとし、「学力向上フォーラム」を開催した。(平成19年12月15日)「徳島の子どもたちに求められる学力」をテーマとし、全国学力・学習状況調査、本県学力調査結果、さらにはPISA調査結果等について説明し、本県検証改善委員会会長がコーディネーターを務めるシンポジウムを行った。
学力向上フォーラムには、一般県民の方々を含むPTA関係者を中心とした500名が参加し、本県児童生徒に求められる学力の育成や生活習慣等の改善についてフロアからも多くの意見が出され、議論を深めることができた。
今回の学校改善支援促進事業において得られた成果については、本県学校改善支援プランにおいて提言した支援策のいくつかを具現化できたことにある。この成果をさらに発展させていくとともに、文部科学省が平成20年度から実施する「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」においても取り上げ、より効果的な取組事例を収集し、その普及を図っていく必要があると思われる。
平成19年7月に16名の委員により本委員会を設立後、計5回にわたり協議を重ねてきた。全国学力・学習状況調査の公表後、限られた時間ではあったが、学校改善支援プランを作成し、県教育委員会に提出することができた。
先にも記述したが、本プランのキャッチフレーズは「みんなでするつづけてするとことんする」となっており、委員全員の思いを込めたものとなっている。本プランを、来年度本県学力向上推進事業の検証改善に活かし、「徳島県版:『学力・学習状況』改善サイクル」の確立に努めていただけるものと確信している。最後に、本委員会の運営にあたり、御協力をいただいた方々に心からお礼を申し上げるとともに、このたびの実践研究の機会を与えてくださった文部科学省に対し感謝申し上げたい。
(関連)徳島県教育委員会HP
-- 登録:平成21年以前 --