平成22年度全国学力・学習状況調査の結果の取扱い及び調査結果等の活用について(通知)

22文科初第748号
平成22年7月29日

各都道府県教育委員会
各指定都市教育委員会
各都道府県知事
構造改革特別区域法第12条第1項の
認定を受けた各地方公共団体の長
附属学校を置く各国立大学法人学長  殿

文部科学省初等中等教育局長
金森越哉

平成22年度全国学力・学習状況調査の結果の取扱い及び調査結果等の活用について(通知)

 平成22年度全国学力・学習状況調査(以下「本調査」という。)の抽出調査の結果(以下「抽出調査の結果」という。)については,「平成22年度全国学力・学習状況調査の実施について」(平成21年12月28日付け21文科初第381号文部科学副大臣通知)において示した「平成22年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」(以下「実施要領」という。)に基づき,7月30日に公表する予定です。

(1)調査の結果の取扱いについて
  今後,文部科学省から各都道府県教育委員会及び抽出調査の対象となった学校を設置管理する各教育委員会並びに抽出調査の対象となった各学校に対して,抽出調査の結果を提供することとなりますが,その取扱いについては,「平成22年度全国学力・学習状況調査の実施について」(平成21年12月28日付け21文科初第381号文部科学副大臣通知)において示した実施要領に基づき,適切に行われる必要があります。
   ついては,各教育委員会においては,下記(ローマ数字1)に示す,実施要領の該当部分及び留意事項(以下「実施要領の趣旨」という。)に基づき,序列化や過度な競争につながらないよう特段の配慮が必要であることなどを踏まえ,本調査の結果の取扱いを適切に行うとともに,所管の学校に対して指導,助言及び周知していただくようお願いします。
   都道府県教育委員会におかれては  域内の調査に関係する市町村教育委員会(指定都市教育委員会を除く。以下同じ。)に対して,国立大学法人学長におかれては調査に関係する附属学校に対して,同様に,実施要領の趣旨に基づき,本調査の結果の取扱いについて序列化や過度な競争につながらないよう特段の配慮が必要であることに関して指導,助言及び周知の徹底をお願いします。
   都道府県知事におかれては調査に関係する域内の私立学校及びそれを設置する学校法人に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては調査に関係する域内の株式会社立学校及びそれを設置する学校設置会社に対して,実施要領の趣旨を踏まえ,本調査の結果の取扱いについて序列化や過度な競争につながらないよう特段の配慮が必要であることに関して,十分周知をお願いします。

(2)調査結果等の活用について
   各教育委員会,学校法人,学校設置会社,国立大学法人及び学校(以下「各教育委員会,学校等」という。)においては,今後,抽出調査の結果及びこれまで3年間の悉皆調査による信頼性の高いデータ,地方公共団体や各学校における独自の調査の結果並びに必要があれば希望利用方式による調査の結果(以下,「調査結果等」という。)を十分活用して,児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図り,そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること,更には学校における教育指導の充実や学校状況の改善に役立てることが重要です。
   ついては,各教育委員会においては,下記(ローマ数字2)に示す留意事項を参考にして,調査結果等の活用に更に努め,調査に関係する所管の学校に対して,調査結果等の適切な活用について指導,助言,支援及び周知を行うようお願いします。
   都道府県教育委員会におかれては  域内の調査に関係する市町村教育委員会に対して,国立大学法人学長におかれては調査に関係する附属学校に対して,調査結果等の適切な活用について指導,助言,支援及び周知を行うようお願いします。
   都道府県知事におかれては調査に関係する域内の私立学校及びそれを設置する学校法人に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては調査に関係する域内の株式会社立学校及びそれを設置する学校設置会社に対して,本調査の結果の適切な活用について十分周知をお願いします。
   なお,文部科学省としては,各教育委員会,学校等における,本調査結果を活用した改善の取組を支援するため,別添に示す取組を行うこととしていますので,併せてお知らせします。

  記

1.本調査結果の取扱いについて

1.基本的な考え方
   本調査に協力した教育委員会は,実施要領を前提として調査に協力したものであり,本調査結果の取扱いについては実施要領に基づいて行うこと。

2.抽出調査の対象となった学校の各児童生徒の調査結果等の取扱いについての配慮事項
   抽出調査の対象となった学校に在籍する各児童生徒に関する調査結果及び学校質問紙に関する調査結果等の取扱いについての配慮事項は,以下のとおりとする。
(1)文部科学省は,抽出調査の対象となった学校に在籍する各児童生徒に関する調査結果及び学校質問紙に関する調査結果等について,これが一般に公開されることになると,序列化や過度な競争が生じるおそれや参加主体からの協力及び国民的な理解が得られなくなるなど正確な情報が得られない可能性が高くなり,全国的な状況を把握できなくなるなど調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられるため,行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第6号の規定を根拠として,同法における不開示情報として取り扱うこととする。
(2)教育委員会等は,文部科学省から提供を受けた抽出調査の対象となった学校に在籍する各児童生徒に関する調査結果及び学校質問紙に関する調査結果等について,アを参考に,それぞれの地方公共団体が定める情報公開条例に基づく同様の規定を根拠として,情報の開示により調査の適正な遂行に支障を及ぼすことのないよう,本実施要領の趣旨を十分踏まえ,適切に対応する必要がある。
(3)抽出調査の対象となった学校に在籍する児童生徒に関する調査結果及び学校質問紙に関する調査結果の提供を受けた教育委員会又は学校が,自らの教育及び教育施策の改善,各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげる趣旨で,調査結果を独自に集計する場合,集計結果の公表又は情報公開請求における開示については,本調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること,学校における教育活動の一側面に過ぎないことなどを踏まえるとともに,以下の点に十分配慮する。
(ア)教育委員会や学校は,保護者や地域住民に対して域内の教育及び当該学校の状況について説明責任を有していること
(イ)情報公開条例等との関係
(ウ)序列化や過度の競争につながらないようにすること
(エ)各児童生徒の個人情報の保護との関係

3.希望利用による調査の結果の取扱い
   希望利用による調査の結果の示し方,公表,提供,取扱いの配慮事項,活用については,学校の設置管理者において判断することとする。
   特に,2.(3)に記載の点については,希望利用による調査においても十分配慮すること。

4.平成19年度から21年度までの全国学力・学習状況調査の結果の取扱い
   平成19年度から21年度まで3の全国学力・学習状況調査の結果については,「平成19年度全国学力・学習状況調査の実施について(18文科初第317号文部科学事務次官通知)」において示した「平成19年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」,「平成20年度全国学力・学習状況調査の実施について(19文科初第865号文部科学事務次官通知)」において示した「平成20年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」及び「平成21年度全国学力・学習状況調査の実施について(20文科初第1067号文部科学事務次官通知)」において示した「平成21年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」に基づき,引き続き取扱うこと。

 

2.調査結果等の活用について

1.調査結果等の分析・検証について
   各教育委員会,学校等においては,調査結果等に基づき,自らの教育及び教育施策の成果や課題等を具体的に把握・検証したり,児童生徒の学力・学習状況等について多面的な分析を行い,その結果を踏まえ,調査結果の活用に取り組むことが重要であること。特に,本調査結果については,以下のようなことが考えられること。

(1)教科に関する調査結果の分析・検証について
   児童生徒の学力の状況や課題等を的確に把握・検証するため,1.教科ごとの平均正答数,平均正答率,中央値等の数値データによる分析だけではなく,2.児童生徒の正答数の分布の形状等から全体的な状況を把握・検証したり,3.設問別の調査結果から学習指導要領の領域や評価の観点,問題形式ごとの正答や無解答の状況を分析したり,4.解答類型別の結果から個々の設問における誤答や無解答の状況を分析したり,5.これまで3年間の調査結果の状況等との経年変化を比較分析したりするなど,それぞれの状況に即し,多面的な分析を行い,指導上の課題等を明らかにすること。

(2)質問紙調査の結果の分析・検証について
   児童生徒及び学校に対する質問紙調査の結果の検証・分析により,児童生徒の学習意欲・学習環境・生活習慣等,学校の指導方法に関する取組や教育条件の整備の状況等の具体的な状況を把握・検証をするとともに,これらの状況と学力との相関関係等について分析を行ったり,学力や学習状況等の調査結果を組み合わせて学校等における全体的な特徴を把握・分析したりすることなどにより,教育や教育施策の成果,取り組むべき課題等を明らかにすること。

2.学校における改善に向けた取組の推進について
(1)各学校においては,調査結果等の分析・検証の結果を踏まえ,指導計画等に適切に反映させるなど,教育指導等の改善に向けて計画的に取り組むこと。その際には,調査対象の学年や教科だけではなく,全学年,全教科等を対象として,学校の教育活動全体を見渡した幅広い観点から取り組むべき課題や改善に向けた取組について検討すること。

(2)各学校においては,教育指導等の改善に向け,具体的には,次の事項について取り組むことが考えられること。
(ア) 調査結果等の分析・検証の結果から見られる課題等を踏まえて授業の改善を行ったり,習熟度別指導や少人数指導,発展的な学習,補充的な学習などの個に応じた指導を適切に実施したり,家庭学習の課題を適切に与えるなど具体的な指導内容や指導方法等の改善に向けた取組を行うこと。特に,課題が見られた児童生徒に対しては,学習状況の改善や学習意欲の向上につなげていくという観点を十分考慮しながら,それぞれの課題に応じて,補充学習等の教育指導を適切に行うことなどにより,基礎的・基本的な学力の定着に努めること。
(イ) 保護者や地域等の理解と協力のもとに十分に連携をとりながら,家庭における学習習慣や生活習慣等の改善に向けた取組を行うこと。
(ウ) 調査結果等の分析・検証の結果から課題の見られた点を中心に,教職員の指導力の向上,指導内容や指導方法等の改善を図るため,校内研修等を適切に実施すること。
(エ) 平成19年度全国学力・学習状況調査の小学校調査の結果と,本調査の中学校調査の結果との分析結果等を踏まえ,小学校と中学校において課題を共有して改善に取り組むなど,十分に連携をとりながら取組を行うこと。

3.教育委員会における改善に向けた取組の推進
(1)各教育委員会においては,調査結果等の分析・検証の結果等を踏まえ,それぞれの役割と責任に応じて,改善計画等の新たな作成や必要な見直しを行うことなどにより,域内の教育や教育施策の改善に向けて総合的かつ計画的な取組を進めること。また,改善計画等に基づく取組の成果を踏まえ,改善計画等の必要な見直しを行うなど,継続的な検証改善サイクルの確立に向けた取組を進めること。その際,都道府県・指定都市教育委員会においては,「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」(平成19年度文部科学省委託事業)において作成した「学校改善支援プラン」,「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」(平成20年度文部科学省委託事業)において作成した「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究成果報告書」及び「平成19・20年度全国学力・学習状況調査追加分析報告書」等を適切に活用することが考えられること。
(2)各教育委員会においては,改善計画等に基づき,具体的には,次の事項について取り組むことが考えられること。
(ア) 学校における具体的な改善の計画や取組に対し,学校の状況等に応じて,必要な指導,助言や支援等を行うこと。その際,特に課題が見られる学校における意欲的な改善の取組について積極的に支援すること。(イ) 指導内容や指導方法等の改善を推進するため,指導資料や教材の作成,教職員研修の実施や授業研究等への支援,教職員や非常勤講師の配置等への配慮など,教育施策の改善に適切に反映させること。
(ウ) 優れた取組を行っている学校等の事例や調査結果等の検証・分析手法等の周知に努めるなど,域内における教育指導や家庭における学習習慣・生活習慣等の改善に向けた取組を推進すること。

4.教育における検証改善サイクルの確立等
   各教育委員会,学校等においては,上記の取組等を通じて,保護者等への説明責任を適切に果たしつつ,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することが求められること。そのため,調査結果等の分析・検証の結果を踏まえた改善の取組については,域内全体や学校ごとの教育や教育施策に適切に反映させるとともに,教育委員会や域内の学校の教職員等が情報を適切に共有しながら取り組むことが重要であること。
   また,平成19年度以降の調査の結果を活用した取組の成果を踏まえ,改善計画等の必要な見直しを行うなど継続的な検証改善サイクルの確立に向けた取組を進めることが重要であること。

(参考資料)

別添1 学校における平成21年度全国学力・学習状況調査を活用した取組の状況について

別添2 都道府県・市区町村教育委員会における平成21年度全国学力・学習状況調査を活用した取組の状況に関する調査について(速報)

別添3 文部科学省における全国学力・学習状況調査の結果を活用した平成22年度の取組

(参考)「全国的な学力調査について」のホームページ(文部科学省ウェブサイト)

URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/index.htm

 「平成22年度全国学力・学習状況調査 調査結果について」のホームページ(国立教育政策研究所ウェブサイト)

http://www.nier.go.jp/10chousakekka/index.htm

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成23年09月 --