1.学校選択制[特認校制]

(7)特色ある教育を希望して学校選択する学区外通学(新潟県長岡市)

1   制度の概要
 
(1)   実施の経緯、趣旨
   長岡市立太田小学校・中学校では、長年にわたり小学校・中学校連携をしながら、学校と地域が一体となった教育活動を展開してきた。文部省(現:文部科学省)が、平成9年1月に「通学区域制度の弾力的運用について」を各教育委員会に通知したことを受け、当市では、平成12年4月から、希望する児童生徒が学区外から就学できるオープンスクールを開始した。平成16年度からは、名称を「太田スモール&グレイトスクール-小中連携学区開放校-」として募集することとした。
 小学校・中学校併設校である太田小学校・太田中学校では、小学校・中学校が連携し、小規模校のよさを生かして9年間の中での児童生徒の育成を目指している。
 
《特色ある教育活動》
マンツーマンに近い少人数授業
 少人数を生かした授業を行い、一人一人に基礎・基本の確かな定着を図り、学力の一層の向上を目指す。
小学校中学校併設を生かした教育活動
 小学校中学校教師の連携した教育活動や小中合同行事を行い、学習意欲を一層高めるとともに、小学生と中学生の交流、触れ合いを深める。
太田から学ぶ体験活動
 太田の資源を生かした活動を行い、豊かな自然を体験するとともに、地域の歴史や文化について学ぶ。
   この特色ある教育を希望し教育活動に積極的に参加できる児童生徒に、学区外からの就学を認めている。
 
 長岡市立太田小学校:学級数3(複式)、児童総数16名
 長岡市立太田中学校:学級数2(複式を含む)、生徒総数11名
  (平成17年5月1日現在)

(2)   条件等
 
1  長岡市内に保護者とともに居住し、太田小学校・太田中学校の教育計画に沿った学校生活ができること。
2  1年以上通年通学すること。
3  おおむね片道1時間以内で通学できること。
4  原則として路線バス利用により通学すること。なお、通学にかかる交通費については、保護者が負担することを了承すること。
5  太田小学校・太田中学校の教育活動及びPTA活動について賛同し、協力できること。
6  「太田スモール&グレイトスクール」への就学を許可した後において、申請の事実と異なり、またはこの制度の趣旨に沿わない事由が生じ、支障があると認められるときは、就学許可を取り消すことがある。

(3)   募集定員及び受入枠
   太田小学校・中学校の全学年について、学区内児童生徒を含めて各学年10人程度とする。

2   事務の流れ(平成18年度入学予定の児童・生徒を対象とした事務手続)
 
内容 時期 配付先、場所等
市政だより11月号への募集概要の掲載
11月初旬
各家庭、公共機関等(全市)
募集要項、募集案内の配付
11月7日
市立小中学校
国公私立幼稚園
市立、私立保育所
学校説明会及び見学会
11月12日
太田小学校・中学校
学校見学会
  ※見学は希望があれば随時受け付ける。
11月8日~12月22日
太田小学校・中学校
募集期間
11月8日~12月22日
市教育委員会
審査
12月26日~1月6日
市教育委員会
申込者に対する通知
1月20日ころまでに
各家庭

3   実績と傾向
    《学区外就学者の推移》
 
  12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
人数 3 12 16 18 13 16
   太田地区の過疎化が進むとともに、太田小学校・中学校がへき地校ということもあって、地元出身の子どもは減少する傾向にある。オープンスクール制度を開始してから、学区外就学者数はほぼ横ばい状態が続いているが、地元太田地区の子どもの人数を上回るようになった。しかし、学区外の子どもと太田地区の子どもとが相互に刺激し合い、好ましい人間関係を築いて成長している様子がうかがえる。
 また、平成16年10月23日に発生した中越大震災の影響で、太田小学校・中学校は地震直後から平成18年3月現在に至るまで市内の前川小学校に間借りしている。

4   評価等
   長岡市教育委員会では、小中連携を研究課題として太田小学校・中学校を研究指定校にしている。小中併設、小規模校のよさを生かして、小中学校が一体となって、運動会や文化祭、登山などの学校行事に取り組むことにより、子ども同士の触れ合いを深め、豊かな心の育成に努めている。小中連続した教育活動の展開により中1ギャップのような傾向が見られず、一人一人の子どもが自分の持ち味を発揮し、元気に伸び伸びと過ごしている。
 学習指導においては、地域から学ぶ「太田学」(総合的な学習の時間)の中で、子どもたちに自分自身の生き方を考えさせている。太田地区の豊かな自然や資源を生かした体験活動を行うとともに、地域の歴史や文化について学習している。また、特色ある教育活動を一層充実させるために、外部講師を活用した「オープンスクールセミナー」において、紙すき、絵手紙、短歌・俳句などの授業を行っている。小学校では、中学校教師とのTTによる授業を年間20時間以上位置づけており、その結果、学習意欲が一層高まり、子どもたち個々の学力は向上してきている。
 保護者は、この制度や教育活動の趣旨に賛同し理解を深めている。しかし、近年は保護者からの要請が多様化してきており、その要請への対応が今後の課題である。

本事例の問い合わせ先
長岡市教育委員会 学校教育課
電話 0258-39-2249


(8)通学区域の弾力化-全市域選択制-(愛媛県松山市)

1   制度の概要
 
(1)   実施の経緯
   本市では、市立小中学校について校区制を敷いているが、『開かれた特色ある学校づくり』に向けた教育改革の一環として「通学区域弾力化検討委員会」を立ち上げ、様々な協議・検討を行ってきた。その結果、平成14年度より、翌年の新入学生(イコール平成16年度よりその兄姉も)を対象とした隣接校選択制(イコール校区校より近い隣接校への入学希望申請)を導入し、通学区域の弾力化を図ってきた。
 また、平成16年度より、少子化・ドーナツ化現象の影響で年々児童数の減少している市中心部の3校について、隣接校区在住者に限定せず、市内在住者であれば翌年からの(編)入学希望申請が可能な「全市域選択制」を導入した。

(2)   目的
   公共交通機関の発達により市内のほとんどの地域から登校が可能であることから、隣接校区在住者に限定せず、市内全域から(編)入学希望者を募り、学校や地域の活性化を図る。

(3)   対象学校および対象者・条件
 
対象校
松山市立番町小学校~学級数12 (1年/2学級、2年~6年/1学級、知的/1学級、情緒/4学級)児童総数208名
松山市立東雲小学校~学級数12 (1、2、4年/2学級、3、5、6年/1学級、知的/2学級、難聴/1学級)児童総数260名
松山市立八坂小学校~学級数7 (全学年/1学級、知的/1学級)児童総数138名
松山市立立岩小学校~学級数4 (1、2年/1学級、3~4、5~6年/複式学級)児童総数29名
  *  立岩小学校については、松山市と平成17年1月に合併した旧・北条市が「豊かな自然環境を生かした特認校」として全市域からの募集対象校としていたため、合併に伴いそのまま引き継いだ。実際、旧・北条市の時代から希望申請者はゼロであり、今後どう扱っていくかは未定である。
対象者・条件
新入学者及びその兄姉(東雲小学校・立岩小学校のみ全学年児童可)
学校の教育方針に賛同し、学習活動が続けられる者
各学校の行事やPTA活動に保護者が協力し参加すること
保護者の責任のもと、徒歩または公共交通機関を利用して一人で登校できること
進学先の中学校は入学小学校の校区の中学校となることを了承すること
原則として、卒業まで在籍すること

(4)   受入人数及び許可基準
 
受入人数  各校の施設及び学校の運営方針等を総合的に判断し、各校長と市教委が協議の上決定する。
許可基準  既に希望校に通学している兄姉がいる場合には、受入可能数の範囲内で優先受入する。希望申請者が受入可能人数を超えた場合には公開抽選とする。

2   事務の流れ
 
時期 内容 場所等
10月1日~
市広報10月1日号への募集記事の掲載
市ホームページへの募集記事の掲載
市内全小中学校/主要幼稚園・保育園での募集要項の配付
市内全世帯
市内全小中学校/主要幼稚園・保育園
10月15日~11月15日
対象校校長と児童・保護者が面談
対象校
11月15日~11月30日
申請受付(申請書と面談証明書が必要)
市教委
12月15日
公開抽選会
市教委
12月下旬
決裁の上「通学校変更許可書」発送
市教委→対象家庭
1月下旬
(入学校を許可校に直した上で)就学通知書の発送
市教委→対象学校→対象家庭
 
 制度開始後、受入可能数を超え抽選を行った学校はない。
 正規の受付期間後に松山市に転入してきた者及び入学式まで転入することが確定している者については、受入可能数の範囲内で3月末まで随時申請を受け付ける。

3   実績と傾向
 
  学校 受入可能数 申請者数 辞退者数 最終確定者数
平成16年度(17年4月編入学) 番町小 25 19 4 15
東雲小 55 22 2 20
八坂小 5 2 0 2
立岩小 14 0 0 0
平成17年度(18年4月編入学) 番町小 35 25 該当なし 該当なし
東雲小 30 21 該当なし 該当なし
八坂小 20 6 該当なし 該当なし
立岩小 18 0 0 0
  (*受入可能数は第1学年のもの。申請者数には一部第2学年以降の児童を含む。)
   隣接校選択制との併願は可としているが、併願者はわずかに平成16年度の1名のみ(全市域希望校が抽選になった時のための保険代わりの申請)である。辞退者のほとんどは国立大学附属小学校への入学者であり、全市域選択制がごく一部の受験者の受け皿となっているようである。
 八坂小の希望者が少ないのは、他の中心部2校と違い、バス・電車の停車場所から少し距離があるという立地条件が影響しているものと思われる。

4   評価等
   制度による(編)入学者が(編)入学してから1年しかたっておらず、具体的な評価について判断できる時期ではまだない。だが、対象校に入学した児童及びその保護者とも概ね積極的に学校行事やPTA活動に参加しており、地元児童・保護者との関係も良好である。
 また、今年は昨年より申請者が増えていることから、制度の意義が浸透してきているものと思われる。

本事例の問い合わせ先
松山市教育委員会 学校教育課
電話 089-948-6870


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