学校選択制等就学校指定に係る制度の弾力化について

1 就学校の指定の流れ

 市町村教育委員会は、市町村内に小学校(中学校)が2校以上ある場合、就学予定者が就学すべき小学校(中学校)を指定することとされている。(学校教育法施行令第5条)
 この際、多くの市町村教育委員会は、就学校の指定にあたり、あらかじめ通学区域を設定し、それに基づいて指定を行っている。
 また、市町村教育委員会の判断により、この指定に先立ちあらかじめ保護者の意見を聴取することもできることとなっている(いわゆる学校選択制)。(同施行規則32条第1項)
 指定された就学校について、保護者の意向や子どもの状況に合致しない場合等において、市町村教育委員会が相当と認めるときには、保護者の申立により、市町村内の他の学校に変更することができる。(学校教育法施行令第8条)
 市町村教育委員会は、就学校を指定する通知において、この保護者の申立ができる旨を示すこととなる。(学校教育法施行規則第32条第2項)
 さらに、住所を有する市町村以外の市町村の学校に就学させることも、両市町村間の協議を経て、受入れ校を設置する市町村教育委員会が承認した場合には可能である。(学校教育法施行令第9条)

2 学校選択制等に関するこれまでの主な提言等

 平成8年12月に行政改革委員会から出された「規制緩和の推進に関する意見(第2次)-創意で造る新たな日本-」において、学校選択の弾力化について、
1  市町村教育委員会に対して、学校選択の弾力化の趣旨を徹底し、保護者の意向に対する十分な配慮や選択機会の拡大の重要性の周知を図ることにより、弾力化に向けて多様な工夫を行うよう指導すること、
2  市町村教育委員会の取組に役立てるため、学校選択の弾力化、調整区域の設定の拡大等の取組事例を継続的に収集し、情報の提供を行うこと、
3  保護者の意向を生かす一つの機会である学校指定の変更や区域外就学の仕組みについては、選択機会の拡大の観点から、現在、身体的理由、地理的要因、いじめの対応に限定されていると解釈されがちである「相当の理由」について、弾力的に取り扱えることを周知すべきであること
について提言がなされた。
 また、平成12年12月の「教育改革国民会議報告-教育を変える17の提案-」においても、「通学区域の一層の弾力化を含め、学校選択の幅を広げる。」と提言されており、この提言を踏まえて文部科学省が策定した「21世紀教育新生プラン」においても、各教育委員会における取組の促進を掲げている。
 さらに、平成13年12月に総合規制改革会議から出された「規制改革の推進に関する第1次答申」においては、保護者や児童生徒の希望に基づく就学校の選択を適切に促進する観点から、各市町村教育委員会の判断により学校選択制を導入できることや、導入した市町村にあっては、その手続きを明確にするとともに、就学校の変更要件や手続等について明確にすべきとの提言がなされている。
 その後、平成17年6月に出された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」では、「学校選択制について、地域の実情に応じた導入を促進し、全国的な普及を図る。」との閣議決定がなされている。

3 これまでの文部科学省の取組

 文部省(当時)では、平成8年12月の行政改革委員会からの提言を踏まえ、平成9年1月に「通学区域制度の弾力的運用について」を都道府県教育委員会を通じて全国の市町村教育委員会に通知し、教育上の影響等に留意しつつ、その弾力的運用を促している。通知のポイントは、
1  地域の実情に即し保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行うこと
2  就学校の変更や区域外就学を認める理由として、従来の理由に加え、児童生徒等の具体的な事情に即して相当と認めるときは、保護者の申立てにより、認めることができること
3  通学区域制度の仕組について、広く周知すること及び就学相談の体制の充実を図ること
の3点である。
 また、同年9月には、「通学区域制度の運用に関する事例集」を作成・配付することにより、市町村教育委員会が弾力的運用を検討する際の参考となるよう情報提供を行った。その後、この事例集については、平成12年7月に第2集を、平成14年3月には第3集を作成し、当時の先進的な取組の周知を図ってきた。
 さらに、平成15年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正を行い、1市町村教育委員会が就学すべき小学校又は中学校を指定するに当たって、あらかじめ保護者の意見を聴取することができることを明確化し、その場合、意見の聴取の手続きに関し必要な事項を市町村教育委員会が定め、公表するものとし、また、2市町村教育委員会が指定した就学校に対する保護者の申立に基づき、市町村教育委員会が就学校指定校を変更する際の要件及び手続に関し、必要な事項を定め、公表するものとしたところである。

学校選択制等就学校指定に係る制度の弾力化に関する文部科学省のこれまでの取組
平成9年度
通学区域の弾力的運用について通知(平成9年度)通学区域制度の運用に当たっては、各市町村教育委員会において、地域の実情に即し、保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行うよう通知。
・平成9年度
・平成12年度 (第2集)
・平成14年度 (第3集)
通学区域制度の運用に関する事例集を作成し、市町村教育委員会等に配付
平成14年度
学校教育法施行規則の一部を改正
 
就学校の指定の際、あらかじめ保護者の意見を聴取できること、その際の手続等を公表することを規定。
就学校の変更の際、その要件及び手続を明確化し公表するものとすることを規定。

4 現在の取組

 平成17年12月21日に、規制改革・民間開放推進会議が「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」をとりまとめ、同月22日には、この答申のうち「具体的施策」について尊重する旨の閣議決定が行われている。具体的には、
(1)  学校選択制について、
 
1  好事例を集めた事例集を市町村教育委員会に配付する。
2  これにあわせて、市町村教育委員会に対して学校選択制の導入の是非について児童生徒や保護者を含む地域住民の意向を十分に踏まえた検討を行うよう求める。
(2)  保護者が就学する学校の変更申立ができる現行制度について
 
3  就学を指定する通知に変更の申立ができる旨を示すよう省令(学校教育法施行規則)で規定する。
4  就学する学校の指定の変更が相当と認められる具体的な場合を、予め明確にして公表するよう、いじめへの対応、通学の利便性、部活動等学校独自の活動等、国としても例示しつつ、市町村教育委員会に求める。
とされているところである。

 これを受け、文部科学省では、本事例集を配付し、これにあわせて市町村教育委員会に対して学校選択制の導入の是非について児童生徒や保護者を含む地域住民の意向を十分に踏まえた検討を行うよう求めることとしたところである。
  また、学校教育法施行規則を本年3月に改正し、市町村教育委員会が就学校を指定する通知において、その指定の変更についての保護者の申立ができる旨を示すものとした(p87参照)。さらに、当該省令の改正に係る施行通知において、上記閣議決定の趣旨に沿って、就学校の指定の変更が相当と認められる具体的な場合を予め明確にして公表するよう、市町村教育委員会に対して求めたところである。

5 学校選択制等に関する市町村の取組について

 就学校指定に係る制度の運用については、地域の実情や保護者の意向等に即して、市町村の判断と責任において適切に行われるべきものである。
 多数の市町村で導入されているいわゆる学校選択制については、保護者が学校により深い関心を持つこと、保護者の意向、選択、評価を通じて特色ある学校づくりを推進できることなどのメリットが指摘されている反面、学校の序列化や学校間格差が発生するおそれがあること、学校と地域とのつながりが希薄になるおそれがあることなどのデメリットも指摘されている。
 このため、いわゆる学校選択制の導入については、地域の実情に応じたメリット、デメリットを十分検討の上、保護者の意向等に即して各教育委員会において適切に判断することが重要である。
 なお、最近の市町村の実施状況については、以下の調査結果を参照されたい。

【参考】

公立小学校・中学校における学校選択制の実施状況について調査結果

(平成16年11月1日現在)
 導入時期が不明なものは、便宜上平成16年度分に計上している。
※※  調査当時、同一市町村内において小学校(中学校)が2校以上ある市町村が対象
文部科学省調査〔平成17年3月発表〕

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