栄養教諭の配置促進について(依頼)

別添

19文科ス第156号
平成19年7月11日

各都道府県教育委員会教育長 殿

文部科学省スポーツ・青少年局長
樋口 修資

文部科学省初等中等教育局長
金森 越哉

 近年、児童生徒の食生活の乱れが深刻化する中で、学校における食に関する指導を充実し、すべての児童生徒が望ましい食習慣を身に付けることができるようにすることが求められています。このため、「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成16年5月21日法律第49号)の施行により、栄養教諭制度が創設され、平成17年度より栄養教諭の配置が開始されました。
 全国すべての地域の学校において、児童生徒が生涯にわたって心身の健康を保持増進していけるよう、正しい食事のとり方や望ましい食習慣を身に付け、食事を通じて自らの健康管理ができる子どもを育成することが必要であり、学校教育活動全体を通じた食に関する指導を一層充実していくことが今後ますます重要となります。
 そのためには、平成18年3月に策定された政府の食育推進基本計画に掲げられているとおり、学校における食育推進の中核的な役割を担う栄養教諭の全都道府県における早期の配置が求められ、また、その更なる配置拡大が強く求められています。
 しかしながら、平成19年4月1日現在の公立学校における栄養教諭の配置状況は、別添資料「平成17~19年度の栄養教諭の配置状況」のとおりであり、未だ配置がされていなかったり、配置されていても配置数が十分とはいえない都道府県がある状況です。食育推進基本計画の趣旨等を踏まえ、各都道府県における栄養教諭の配置の一層の充実に努めていただく必要があります。
 各都道府県教育委員会におかれては、下記諸点を踏まえつつ、栄養教諭の配置及び配置拡大について、特段の御配慮をいただくようお願いします。

  1.  子どもたちに正しい食事のとり方や望ましい食習慣を身に付けさせ、学校において継続的に食育を推進することは喫緊の課題であり、各学校における食の指導体制を早急に整備する上で、現職の学校栄養職員の栄養教諭への円滑な移行を促進することが望まれます。
     このため、国としては、3年以上の勤務経験を有する学校栄養職員については通常の栄養教諭免許状の授与要件を軽減する措置(教育職員免許法附則第18項)を講じるとともに、各都道府県が実施する免許法認定講習への経費補助を行っていることを踏まえ、各都道府県においては、免許法認定講習の適切な実施を通じ、希望するすべての学校栄養職員が円滑に栄養教諭免許状を取得できるよう配慮願います。栄養教諭免許状取得には、栄養教育実習の単位を修得することとなっていますが、上記教育職員免許法附則第18項の軽減措置による栄養教諭免許状の取得については、教育職員免許法施行規則附則第6項に基づき、特別非常勤講師制度の活用により、栄養教育実習を免除することが可能(ただし、同施行規則附則第6項の表の備考第3号に規定する修得方法により、最低修得単位数を修得することが必要)となっていることにも御留意願います。
     なお、「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律」が、平成19年6月27日に法律第98号として公布され、上記教育職員免許法附則第18項の改正規定が即日施行されました。従来、栄養教諭免許状の授与要件の軽減措置の対象は、義務教育諸学校に在籍する学校栄養職員に限られていましたが、今回の改正により、幼稚園、高等学校及び特別支援学校の幼稚部・高等部において学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員や、教育委員会事務局において学校給食の適切な実施に係る指導を担当する者にも対象が拡大されましたので、その趣旨を十分御理解の上、適切な対応をお願いするとともに、域内の各市町村教育委員会及び所管の学校に周知を図るようお願いします。
  2.  「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」に規定する栄養教諭の標準定数については、「栄養教諭及び学校栄養職員」として算定することとしており、学校栄養職員の任用替えにより栄養教諭を配置する場合においても、定数算定上、他の教職員定数減とはならないこと、また、国では食育の推進のために教育課題に対応した緊急定数措置を講じていることを踏まえ、対応願います。
  3.  栄養教諭の給与については、教諭としての給料及び手当等が支給されるため、学校栄養職員としての給与より若干増となりますが、学校栄養職員の任用替えにより栄養教諭を配置する場合の給与上の差額分の一定部分については義務教育費国庫負担金制度を通じ措置されています。
  4.  栄養教諭の配置については、以下の栄養教諭の職務と役割の特性に十分御留意の上、関係者の共通理解を図りつつ、促進願います。
    • (1) 栄養教諭は、学校教育法上「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」ことを職務としており、その学校のすべての児童生徒の栄養の指導と管理をつかさどる職責を担う教育職員であること。
    • (2) 栄養教諭は、食に関する指導に係る全体計画の作成及び実施について中心的な職責を担うとともに、授業や給食の時間における児童生徒に対する食に関する指導や食に関しての個別的な相談指導の業務及び学校給食の栄養管理者としての業務があること。
    • (3) 栄養教諭は、栄養に関する専門性と教育に関する資質を併せ有する教育職員として、その専門性を十分に発揮し、特に学校給食を生きた教材として有効に活用することなどによって、学校全体の食に関する指導を充実していく役割を担うこと。
    • (4) 学校栄養職員によるティーム・ティーチングや特別非常勤講師制度を活用した食に関する指導は、学校栄養職員の食に関する専門性を最大限に生かす取組であり、個々の力量に基づき、授業の一部にその専門性を発揮することはできるが、学校全体の食育の推進を担うことは、その本来の職務として位置付けられておらず、実際上困難な面があること。
       したがって、栄養教諭と学校栄養職員が行う食に関する指導を同様のものとしてとらえるのではなく、学校における食育の推進に果たす役割の違いを十分に認識し、栄養教諭の配置を進める必要があること。
    • (5) 栄養教諭制度の創設により、食に関する指導が栄養教諭の職務として位置付けられているが、このことは、栄養教諭自身が、食育に関して、その学校における児童生徒に対する指導の全てを自ら行うことを想定しているものではなく、学校における教育活動全体で取り組んでこそ、その効果をあげることができるものであり、学校全体の食育の推進体制の整備が必要となること。
       この職責を担う者が「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」栄養教諭であり、具体的には、栄養教諭が中心となって食に関する指導の全体計画を作成し、その計画に従って各教職員の役割を十分に果たしていくことができるような体制をつくりあげ、継続させていくことが栄養教諭の本来的な職務であることを十分に認識し、栄養教諭の配置に当たっては、現職の学校栄養職員を栄養教諭へと計画的に移行することが望まれること。

-- 登録:平成21年以前 --