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小林 実さん(山梨県 甲斐市立双葉西小学校 校長)

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「おじいさんのランプ」
 新美 南吉 著
小林 実さん
(山梨県 甲斐市立双葉西小学校 校長)

 私がこの本と出合ったのは、教科書「ごんぎつね」の授業の教材研究をしている時でした。著者である新美南吉さんの作品を「発展学習・読書」として,紹介するためにたくさんの作品を読みました。その中で心に残った,忘れられない一冊です。子どもたちに,「この物語は読ませたい・読んでもらいたい。」と思いました。
 題名「おじいさんのランプ」から予想される展開のおもしろさと会話文の巧みな心情描写が読者を引きつけます。温かい人間模様にほんのり笑いを誘われたり、励まされたり,また応援したくなるような近親観があります。テーマはわかりやすい反面,重いものがあります。だから,子どもなりの窓から、子どもなりに自由に、素直に考えて欲しいと思います。読み方,受け止め方によって,たくさんの窓を持っている内容です。時代背景の違いでイメージしにくい場面もあり,事前学習が必要な部分もありますが,是非、「道のほこり、牛車、白い蝶など」ことばが伝える情景を,じっくり読み取り,味わってもらいたいと思います。50年前の町の様子・商店の様子などを、一文一文丁寧に読むこと,文脈に沿って想像することが大切です。特に「花のように明るいランプをさげていた。胸の中にももう一つのランプがともっていた。文明開化におくれた自分の暗い村に~希望のランプがー」など一文一文じっくり自分のペースで読み味わって欲しいと思います。そのランプが結末で、電柱が立ち、電灯の明かりに変わっていく2つの「文明開化」に出会った主人公のとまどいや思いの深さは,目の前にいるおじいさんの人生模様です。昔の話として孫に語っています。お父さんやお母さんも一緒に読んで,家族で語り合って欲しい本です。新美南吉さんの作品に寄せる思いに気づくと思います。また,それぞれの時代の良さや人間関係を知り,今の自分を見つめるきっかけになる読書ができると思います。新美南吉さんの他の作品を読んでみたくなると思います。著者と友達になれるかもしれません。


―――子どもたちに対する読書メッセージ
 人は,たくさんの食べ物(えいよう)を楽しく食べて,丈夫な体をつくります。だから,家族の食事は大切です。
 人は、たくさんの読書(えいよう)を楽しくして、たくましく・やさしい心・賢い頭をつくります。だから、学校図書館は大切です。
 読書は,楽しさ・やさしさ・悲しさ・発見・驚きをみんなの心に届けます。
 
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-- 登録:平成21年以前 --