学校図書館

子どもの読書サポーターズ会議 (第2回) 会議の概要

第2回会議(平成19年9月12日)

配布資料

議事概要

日時

 平成19年9月12日(水曜日)13時30分~16時00分

場所

 東京都新宿区立津久戸小学校 学校図書館

参加者

  松田 哲夫 氏 (筑摩書房専務取締役、ちくまプリマー新書編集長)
  浜尾 朱美 氏 (キャスター、エッセイスト)
  田辺 陽子 氏 (日本大学準教授、アトランタ・バルセロナオリンピック柔道銀メダリスト)
座長 片山 善博 氏 (慶應義塾大学教授(大学院法学研究科)、前鳥取県知事)
  小林 路子 氏 (元市川市教育センター指導主事)
  織茂 篤史 氏 (神奈川県横浜市立日吉台西中学校校長)
  小林 実 氏 (山梨県甲斐市立双葉西小学校校長)
  庄司 一幸 氏 (読書コミュニティネットワーク代表、福島県あさか開成高等学校教諭)
  小滝 岩夫 氏 (東京都新宿区立津久戸小学校長)
  小川三和子 氏 (東京都新宿区立津久戸小学校司書教諭)
  齋藤 明彦 氏 (鳥取県自治研修所長、前鳥取県立図書館長)
  小峰 紀雄 氏 (小峰書店社長、読書推進運動協議会理事、社団法人 日本書籍出版協会理事長)
  笠木 幸彦 氏 (社団法人 全国学校図書館協議会理事長)
  木村 滋光 氏 (社団法人 日本PTA全国協議会専務理事)

議題

  1. 東京都新宿区立津久戸小学校の学校紹介
  2. 平成20年度学校図書館関係概算要求等について
  3. 小川委員からの発表
  4. 小峰委員からの発表
  5. 意見交換

配付資料

  • 資料1 座席表
  • 資料2 第1回「子どもの読書サポーターズ会議」概要
  • 資料3 平成20年度学校図書館関係概算要求について
  • 資料4 平成19年度「読む・調べる」習慣の確立に向けた実践研究事業・実施地域の内示について
  • 資料5 小川委員からの発表資料
  • 資料6 小峰委員からの発表資料
  • 資料7 第2回「子どもの読書サポーターズ会議」論点例
  • 資料8・9 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」について
  • 別資料 学校要覧・研究発表会案内・学校図書館の利用状況集計表等(津久戸小学校)
    • 第10回読書コミュニティフォーラム全国大会(庄司委員)
    • 「子どもの読書サポーターズ会議」等ホームページのイメージ案(文部科学省)

1.委員自己紹介(前回欠席者のみ)

田辺委員
 柔道というスポーツの分野でオリンピックを3度経験し、その経験を元にエッセイを出したりした。本を通してスポーツの感動とかいうものを子どもたちに伝えられたらいいと思っている。

小峰委員
 日頃は小峰書店という児童書の出版社を営んでいる。また、現在、日本書籍出版協会の理事長をしており、読書環境をどう作っていくかという大きなテーマを課題とし、関係各者とその課題の解決に向けて努力してきている。

2.津久戸小学校の学校紹介(小滝津久戸小学校長より)

 以前勤務していた多摩市では、市独自で学校図書館担当職員(学校司書)を配置していた。その際、図書室というのは、読書センターとしての機能と学習情報センターとしての機能を併せ持つ必要があると感じ、研究に取り組んだという経緯があった。この学校に来たとき、すばらしい図書館を持っていること、非常に熱心に研究している小川教諭がいることから、3年間新宿区から予算を頂き、特色ある教育として、学校図書館の活用というのを取り入れたところである。津久戸小学校は3年前に100周年を迎えた、明治37年設立の学校である。神楽坂という土地が学区にあり、江戸情緒ある非常に落ち着いた学校である。
 →質疑応答

  • Q:新宿区からの予算は何に使われたのか。
  • A:検索システム用のパソコン、調べ学習に必要なもの、書籍等。
  • Q:新宿区は、こういう方面の予算を柔軟に出してくれるのか。
  • A:3か年の特色ある教育づくりということで出して頂いており、学校図書館について出してもらっているのは本校以外にも1校ある。

3.事務局資料説明

  • 概算要求等の動向
    • 「読む・調べる」習慣の確立に向けた実践研究事業を引き続き実施し、「子ども読書の街」の指定地域を15地域に拡大したいと考えている。
    • 学校図書館支援センター推進事業についても継続。
    • 司書教諭養成講習会についても継続。
    • 5か年計画に基づく地方財政措置の予定について
      →学校図書館図書整備費の予算措置状況についての調査を予定
  • 平成19年度「子ども読書の街」内示地域の概要について
     → 質疑応答
    • Q:モデル事業に広がりを持たせる仕組みはあるのか。
    • A:モデル事業を行った場合、成果発表会やフォーラム等の開催を通じて広がりを持たせる。また、指定した地域には必ず報告書を作成してもらい、それらを全国の教育委員会に送付するという形でも広がりを持たせる工夫はしている。

4.小川委員からの発表

 小滝校長からもお話したように、3か年計画で学校図書館の施設・設備を拡張し、さらに資料を充実させ、子どもたちが「自ら学び、よりよく問題解決しようとする児童」になるように学校図書館を活用しようという研究をしている。1年目は先進的な取組を行っている学校を訪問したり、講演をしていただいたりということで、とにかく学校図書館を使って授業してみようというところから始めた。本格的な授業研究というのは2年目から始めた。
 本校の学校図書館を作るにあたってのコンセプトがあり、1つ目が学校図書館法2条にも書かれているように、「学校図書館資料」とは、図書だけではなく「視聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料」を含むという立場に立つということ。さらに、利用者は児童生徒及び教員ということで、教員も利用者であるということを押さえ、「学校の教育課程の展開に寄与する」ということと、「児童生徒の健全な教養を育成する」という2点から、学習情報センター、読書センターとしての役割ということを念頭において学校図書館づくりをしている。
 まず、学習情報センターとしては、資料として印刷資料、図書資料だけでなく、視聴覚資料、電子資料、学校図書館外からの資料などを全て子どもの学習材としている外、公共図書館資料の団体貸し出しを利用している。また、学校図書館の設備を整理・拡充し、調べ学習室などを作った。さらに、単学級なので、法律的には司書教諭の発令が猶予されているところであるが、司書教諭発令されており、学校図書館スタッフという形で人的支援も受けている。加えて、ボランティアによる活動も盛んで、それぞれが自分の出来ることをやってくれている。
 この学校図書館を作るときにまず必要だと感じたのは、授業で学校図書館を使うということ。さらに、パソコンを導入することによって蔵書検索を容易にした結果、子どもの調べる意欲が向上したり、人気のある本が順番に回ったりするようになった。加えて、蔵書点検をきちんとするようになり、1冊1冊の本に対する意識が高まった。
 教育課程の中に学校図書館というものがきちんと位置づけられていることがとても重要である。それは、研究授業の時だけではなく、通常授業の時にも学校図書館を利用して欲しいということ。小滝校長に、教育課程の中で学校図書館についてしっかり書いてもらったことはとても大きかった。資料の収集計画や払い出し基準も明文化した。情報・メディア活用能力育成計画について現在研究を進めており、今後さらに、各教科、各指導計画の中でどのように使うかという表なども作りたいと思っている。

【学校案内】

 一、歴史資料館→二.調べ学習室→三.パソコンルーム→四.学級文庫→五.読み聞かせスペース→六.展示スペース
一昨年度までは学級を担任しつつ司書教諭をしていたが、昨年度は算数の少人数加配を担当し、司書教諭をしていた。今年度は日本語の加配にまわり、図書の時間として6学級に司書教諭として授業に入っている。

【質疑応答】
  • Q:学校図書館を日常的に教科の中で使っているということだったが、例えば、どんな教科でどの程度活用しているのか。
  • A:去年は国語が多かったが、国語と総合的な学習の時間だけにしたくないということで、当初から他教科の先生方にも学校図書館の授業での活用についてお願いしており、今年は理科や図工、音楽などでも活用事例があった。
  • Q:ボランティアを上手く活用する方策について。
  • A:無償ボランティアは、出来る時間に出来る仕事を、やりたいことをするものだと考えている。ボランティアは来られる日にきてもらい、来られないからどうこうとはしないようにしている。そのような方針で集まった人が25人程度いるのが現状。無理なく出来るというのがよい。
  • Q:読み聞かせは誰がしているのか。
  • A:月に1回、朝読書の時に読み聞かせの時間をとっており、ボランティアの方がやっている。以前は毎週水曜日の20分休みにやっていた。
  • Q:公共図書館からはなにか支援をうけているのか。
  • A:団体貸し出しを利用しているが、物流はあまり整っていない。また、こちらのお話し会に招いたのがきっかけで、今年度は児童室の方がお話し会に来てくれることになった。公共図書館への施設見学や意見交換会というような連携もとっている。
【その他の意見】
  • 公共図書館は、学校図書館のユーザーが次代の公立図書館のユーザーであることを認識するべき。公立図書館のサービスを学校図書館がしてくれているという考えに立てば、もっと機能的な連携をとることが出来るはず。
  • 公立図書館の利用者は、図書館に来てくれる人だけではなく、県内全体や市全体だという意識を持つべき。そうすれば、図書館の側から地域に出て行ってサービスを提供するということにつながる。
  • 学校図書館と公共図書館の連携は大事だが、学校図書館が公共図書館に頼るような状況はまずい。学校図書館はそれ自体としてきちんと運営されるべき。
  • 物流の整備も、確保できないような大きな金額ではない。小さな予算をつけることで、格段に学校図書館の利便性が高まり、公共図書館との連携がとれる。ただし、真に有益な連携をとるには、その前提として、それぞれが必要なものをしっかりと備えている必要がある。
  • 学校図書館はもっと公共図書館に対して遠慮なく要望をぶつけるべき。
  • 学校図書館には学校図書館担当職員(学校司書)が必要。異動のある司書教諭や校長先生が変わっても居続けられる専門家がいることが重要。

5.小峰委員からの発表

 ここ10年ぐらいの間のことを考えると、読書環境は随分変わってきていると感じる。
 子どもたちの作品を読む機会がある中で、子どもたちの大きな可能性を感じる一方、なぜこの子どもたちはこのような関心をもつようになったのかということが気になった。どういう言語環境の中で言葉を獲得し、それが読書とどういう関係にあるのだろうかと。母親のお腹の中にいる時から言語を得るべくして聞く力をもち、はじめは本を与えても破いたりなめたるするところから、次にはパラパラとページをめくるようになり、本の中に抽象化されたものと現実のものとの相関性を認知する。それは、絵から始まり、記号化された文字へと。そして、言葉を発することへとつながっていく。現代はそれを阻害している電子メディアが多いが、これらの母親と子どもを遮断するものがあふれている状況について対策をたてることが重要だと考えている。
 文化審議会の答申「これからの時代に求められる国語力について」が策定されるとき、「出版界から見た読書活動の現況と読書推進のための方策について」というテーマで意見発表をした。ポイントとしては、子どもの本の出版状況からの視点というところ。
 実は、読書離れの問題は、出版界から見れば80年代初頭から言われていた。小中学生向けの読み物がなかなか出ないとか、幼年童話の1冊のページ数が4分の1程度に減少したことなどがあった。出版業から言えば、93年頃の初版部数が半減した時が大きな転換期だと考えられているが、93年にはまだ書籍数そのものは上昇していたため、私は子どもの読書離れが出版状況に反映したんだと考えている。このままでは児童書自体が全部駄目になってしまうという危機感を感じ、子どもの本とは何か、出版とは何かということを考えようと、「子どもと本の出会いの会」を立ち上げた。40弱ぐらいの団体が集まったその中では、読書環境の問題についての意見が多く出た。そのポイントの1つとして出たのが学校図書館の整備・充実、そして公共図書館のさらなる充実であった。また、読書に至る前の言語環境のベースとしての重要性の認識もあった。活字以前の問題で、その上に読書の問題があるのではないかと。読書による言葉の獲得という面はあるが、基本的な考え方としては、読書は言葉の再生運動だという位置づけ。
 読書に関して、量的なものは90年代に比べると大きく改善されてきていて、これからは質の問題だと思っている。「子どもと本の出会いの会」を通じて、民間としてどういう読書推進運動をやってきたかというと、団体それぞれが様々な運動をやっているが、その根底にある子どもの読書環境をつくろうという思いを元にして、協力し合ったということ。 国の施策が必要であれば、全国組織と連携しながら要望を提出し、政治家とも協力し合った。現在、文字・活字推進機構というものの立ち上げにも関わっている。
 読書活動推進法と文字・活字文化振興法の具体化に向かって社会横断的に運動を起こしていきたいと考えており、コアになるのは出版界や新聞界だと思うが、それを超えて各界の方と連携を深めていきたい。
 世界の言語は少なくとも3,000語ぐらいで、そのうち文字言語を持っているのは78言語。どちらがいいというのではないが、両者には大きな差が出てくると思う。日本人の場合はもう文字を持ってしまっているので、自己の言葉を持つ、言葉の表現力を持つ、本を通してそれを獲得するという基本的な営みを欠かすことは出来ないだろう。逆説的にいえば、読書は大事だという話がある一方で、読書をしないとどういう状況が生まれてくるのかという設問もあるかとは思う。
 一時期、キレる子どものことが話題になったことがあったが、キレる子どもほど獲得語彙数が少ない。例えば7千語、8千語だとか。小学生ぐらいで2万語、3万語ぐらい獲得する子もいる。ジャーナリストは5万語とも言われているが。だから、豊かな言葉を獲得するということは、自分を表現するとか、対談化するとか、抽象化するとか、概念化するのに欠かせないもの。それが出来なければ、表現方法は直接行動になる。語らないことも含めて1つの表現方法ではあるが、暴力的なものも1つの表現方法であるから、そちらにいってしまう。
 これらは学校あるいは地域社会へ返ってくるわけだから、社会全体での言語の復権、文字の重要性について真正面に据えるべき。言語問題というのは、これからの子どもたちをどう上げていくか、日本はどうなるのかということに深く関わっているものと感じている。
 ひとつ補足すると、日本語の根底にある母語としての方言と家言葉を大切にして欲しい。共通語は作られた言葉であり、ここを大事にしなければ、地域社会にある伝承遊びなんかも廃れていく。

【意見交換】
  • スポーツ界でも言葉の数が少ないということは感じる。表現方法の上手い下手が分かれている。ある強い野球部の事例では、練習の前に読書をすることで想像する力が豊かになったということが言われている。また、そこから読み聞かせの運動へと広がったということもあった。
  • 大人のケンカが言葉を交わさずに突然殴り合いになるようになった。ここにも言語の乏しさが見られる。このような状況に危機感を感じさせ、読書推進運動へつなぐというやり方も考えられる。
  • コミュニケーションとしての読書のため、聞くだけでなく、書くことのトレーニングが必要。
  • 子どもが発した言葉から、マザーリングボイスの重要性を感じた経験がある。自らが感銘を受けたような言葉を子どもに与え続けることによって、その子の言葉は救われる。幸せな言語環境の中で育っていけるのではないかと思う。

6.「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」について

  • 第一次計画期間中の成果について
  • 読書活動の現状について
  • 読書推進についての地域間格差について

お問合せ先

総合教育政策局地域学習推進課

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(総合教育政策局地域学習推進課)

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