第3章 専門教育に関する各教科 第8節 福祉

第1款 目標

 社会福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術を総合的、体験的に習得させ、社会福祉の理念と意義を理解させるとともに、社会福祉に関する諸課題を主体的に解決し、社会福祉の増進に寄与する創造的な能力と実践的な態度を育てる。

第2款 各科目

第1 社会福祉基礎

1 目標

 社会福祉に関する基礎的な知識を習得させ、現代社会における社会福祉の意義や役割を理解させるとともに、社会福祉の向上を図る能力と態度を育てる。

2 内容

(1)現代社会と社会福祉

 ア 社会構造の変容と社会福祉
 イ ライフサイクルと社会福祉

(2)社会福祉の理念と意義

 ア 自立生活支援と社会福祉
 イ 社会福祉の理念

(3)社会福祉の歴史

 ア 欧米における社会福祉
 イ 日本における社会福祉

(4)社会福祉分野の現状と課題

 ア 公的扶助
 イ 児童家庭福祉
 ウ 高齢者・障害者福祉
 エ 地域福祉

(5)社会福祉の担い手と福祉社会への展望

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)から(3)までについては、日常生活に社会福祉が深くかかわっていることについて理解させ、社会福祉の全体をとらえさせること。

 イ 内容の(5)については、特に、人間の尊厳についての理解に重点を置くとともに、社会福祉に関する学習の基本的な心構えを身に付けさせるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、社会構造の変容について概観させ、家族形態や生活構造の変容と社会福祉とのかかわりの概要を扱うこと。イについては、ライフサイクルのモデルケースを用いて人の一生と社会福祉とのかかわりについて理解させること。

 イ 内容の(2)のアについては、自立生活支援の視点から基本的な社会福祉サービスを扱うこと。イについては、社会保障を中心に扱い、社会福祉の理念について理解させること。

 ウ 内容の(3)のアについては、英国における社会福祉の発展の概要を中心に扱うこととし、アメリカ合衆国やスウェーデンなどにおける歴史的展開についても触れること。イについては、日本における歴史的展開について具体的に理解させること。

 エ 内容の(4)については、各分野ごとに、制度が生まれてきた社会的背景、理念、現状と課題などについて考えさせること。

 オ 内容の(5)については、福祉社会を創造していくためには、社会福祉従事者だけでなく、相互扶助の精神に基づいた国民一人一人の意識変革が必要であることについて理解させること。

第2 社会福祉制度

1 目標

 社会福祉の法制度、社会福祉施設、社会福祉サービスなどに関する知識を習得させ、社会福祉の現状を理解させるとともに、社会福祉サービスの向上を図る能力と態度を育てる。

2 内容

(1)社会福祉の法と制度

 ア 社会福祉に関する基本的な法と社会福祉サービス
 イ 社会福祉行政の組織とその財源

(2)高齢者・障害者の福祉

 ア 高齢者福祉と社会福祉サービス
 イ 障害者福祉と社会福祉サービス

(3)児童家庭福祉
(4)社会福祉関連施策

 ア 社会保険制度
 イ 社会福祉関連サービス
 ウ その他の公共施策

(5)社会福祉施設

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、身近な地域の実状を把握させ、全国的な制度と各地域の制度及びサービスの実態とを対比させながら社会福祉の法体系及びサービスの種類と体系の概要について理解させること。

 イ 内容の(5)については、地域の施設を訪問し、施設利用者のプライバシーに配慮しつつ、生活実態やサービス内容などについて調査する機会を設けるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、公的扶助を含む社会福祉に関する基本的な法規に基づき、社会福祉の法理念と制度の概要を扱い、社会福祉サービスの多元化と非営利団体の活動などに触れること。

 イ 内容の(2)及び(3)については、具体的な施策や統計資料などを取り上げ、社会福祉制度の現状について理解させること。また、(3)については、関連する母子保健制度についても触れること。

 ウ 内容の(4)のアについては、医療保険制度、公的年金保険制度、介護保険制度などを扱うこと。イについては、社会福祉に関連する教育施策、住宅施策、労働施策などの概要を扱うこと。ウについては、サービス利用者の保護に関する施策を扱うこと。

 エ 内容の(5)については、社会福祉施設が果たしてきた歴史的な役割と現在求められている役割について理解させ、施設の在り方と行政との関係について考えさせること。

第3 社会福祉援助技術

1 目標

 対人援助に関する知識と技術を習得させ、社会福祉援助活動に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)社会福祉援助活動の意義と方法

 ア 社会福祉援助活動の意義
 イ 社会福祉援助技術の概要

(2)社会福祉援助技術の方法と実際

 ア 個別的な援助
 イ 集団及び家族への援助
 ウ 地域を基盤とした援助

(3)レクリエーションの考え方と展開

 ア レクリエーションと社会福祉
 イ レクリエーションの展開と実際

(4)コミュニケーションの技法

 ア コミュニケーションの方法と実際
 イ 点字、手話

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 高齢者と障害者を中心とした対人援助の知識と技術を取り扱うこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のイについては、具体的な事例を通して、個別的な援助、集団及び家族への援助並びに地域を基盤とした援助の概要について理解させること。

 イ 内容の(2)のアについては、日常生活の身近な問題を想定し、疑似場面を設定して、具体的に個別的な援助の方法を扱うこと。イについては、プログラムに基づいた活動を通して援助の展開過程について理解させること。ウについては、地域を基盤とした実践的援助の方法について、社会福祉従事者やボランティアなどとの連携を通して理解させること。

 ウ 内容の(3)については、レクリエーションが自立生活支援に必要な援助であること及び高齢者や障害者の生きがいと社会参加を進める上でも有効であることについて理解させること。また、レクリエーションをプログラムに基づいた活動に発展させることができるようにすること。

 エ 内容の(4)については、コミュニケーションの基本である傾聴及び共感の態度を育成するとともに、社会福祉サービス利用者が自己表現していくことの必要性について理解させること。また、点字は基本的なルールを扱い、手話は簡単な日常会話を扱う程度とすること。

第4 基礎介護

1 目標

 介護の意義及び高齢者と障害者における介護の役割を理解させ、介護に関する基礎的な知識と技術を習得させるとともに、介護を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)介護の意義と役割

 ア 介護の意義
 イ 介護の分野
 ウ 介護の過程
 エ 介護従事者の倫理

(2)高齢者の生活と心身の特徴

 ア 高齢者の生活と介護
 イ 加齢に伴う心身の変化

(3)障害者の生活と心理

 ア 障害者の生活と介護
 イ 障害者の心理

(4)自立生活支援と介護

 ア 自立生活の概念
 イ 自立生活とリハビリテーション

(5)地域生活を支えるシステム

 ア 保健・医療・福祉の連携の在り方と実際
 イ 在宅サービスと施設サービス

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、介護従事者としての職業観の基盤を育成するよう留意すること。

 イ 内容の(3)については、障害児も含めて扱うこと。

 ウ 内容の(5)については、地域の社会福祉施設や医療機関などとの連携を図るとともに、具体的な事例を通して理解を深めさせるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、介護の目的と役割について理解させること。イについては、介護活動の現状について理解させること。ウについては、問題把握からフォローアップまでの一連の過程について理解させること。また、介護記録と情報の共有化の重要性について理解させること。エについては、社会福祉サービス利用者のプライバシーや人権の尊重を基盤とする介護従事者の専門性と基本姿勢について理解させること。

 イ 内容の(2)のアについては、高齢者の生活への援助としての介護技術を総合的に扱うこと。イについては、身体的機能低下と心理的影響を踏まえた高齢者介護の特質について理解させること。

 ウ 内容の(3)のアについては、障害者の生活への援助としての介護技術を総合的に扱うこと。イについては、主な機能障害と心理的影響を踏まえた障害者介護の特質について理解させること。

 エ 内容の(4)のアについては、生活における自己決定の意義や生活の質の向上が求められていることなどと関連させて、自立生活の概念について理解させること。イについては、自立生活を目指した援助の理論と実際について理解させること。また、リハビリテーションの概要を扱うこと。

 オ 内容の(5)のアについては、地域生活を支える保健・医療・福祉関係諸機関の機能と役割を扱うこと。イについては、在宅サービスと施設サービスの特性について理解させ、その一元化を目指した取組などを扱うこと。

第5 社会福祉実習

1 目標

 介護等に関する体験的な学習を通して、総合的な知識と技術を習得させ、社会福祉の向上を図る実践的な能力と態度を育てる。

2 内容

(1)介護技術の基本と実際

 ア 日常生活の理解
 イ 基本的介護技術
 ウ 環境の整え方
 エ 食事の援助
 オ 排泄の援助
 カ 清潔の援助
 キ 衣服着脱の援助
 ク 運動、移動の援助
 ケ 福祉用具の活用

(2)高齢者と障害者の介護

 ア 高齢者の介護
 イ 障害者の介護

(3)社会福祉現場実習

 ア 意義と目的
 イ オリエンテーション
 ウ 現場実習の実際
 エ 反省、記録

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(3)については、社会福祉サービス利用者や施設職員などとの適切な人間関係の構築と事故防止や保健衛生に関する指導に十分留意すること。また、現場実習の効果を高めるよう、事前及び事後の指導を適切に行うこと。ウについては、高齢者の施設だけでなく、身体障害者、知的障害者、精神障害者の施設など多様な場所での実習が可能となるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、社会福祉サービス利用者の心身の状態に応じた介護の展開過程を扱うこと。ケについては、日常生活で多く使用されている機器を扱うこと。

 イ 内容の(2)については、高齢者や障害者の心身の状態に応じた日常生活における介護を扱うこと。

 ウ 内容の(3)のイについては、施設の概要や主な業務内容などを扱うこと。

第6 社会福祉演習

1 目標

 課題研究や事例研究などの学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。

2 内容

(1)調査、研究

(2)事例研究

(3)ケアプラン

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 生徒の興味・関心、進路希望等に応じて、内容の(1)から(3)までの中から、個人又はグループで適切な課題を設定させること。なお、課題は内容の(1)から(3)までの2項目以上にまたがる課題を設定することができること。

 イ 内容の(3)については、社会福祉サービス利用者を想定し、その人にふさわしい自立生活支援の過程を考えて、ケアプランを作成させること。

第7 福祉情報処理

1 目標

 社会における情報化の進展と情報の意義や役割を理解させるとともに、情報処理に関する知識と技術を習得させ、福祉の各分野で情報及び情報手段を活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)高度情報通信社会と福祉サービス

 ア 高度情報通信社会
 イ コンピュータの利用分野と福祉サービス
 ウ 情報モラルとセキュリティ

(2)コンピュータの仕組みと活用

 ア コンピュータの仕組み
 イ コンピュータによる情報処理

(3)福祉サービスとコンピュータの活用

 ア 情報の収集、処理、発信
 イ 福祉サービスの各分野におけるコンピュータの活用
 ウ コンピュータを活用した高齢者・障害者の自立生活支援

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(2)及び(3)については、実習を中心として扱うこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のア及びイについては、高度情報通信社会における生活の変化と、福祉サービスにおけるコンピュータの役割や利用状況について具体的な事例を通して理解させること。ウについては、個人のプライバシーや著作権の保護、収集した情報の管理、発信する情報に対する責任などの情報モラル及び情報通信ネットワークシステムにおけるセキュリティ管理の重要性について理解させること。

 イ 内容の(2)のイについては、生徒の実態等に応じてアプリケーションソフトウェアを選択し、その基本操作を扱うこと。

 ウ 内容の(3)のアについては、情報機器や情報通信ネットワークを利用して情報の収集、処理、発信ができるようにすること。イについては、福祉サービスの中でコンピュータシステム化されたサービスや情報の活用法を扱うこと。ウについては、コンピュータを活用した自立生活支援の方法について具体的に理解させること。

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)福祉に関する各学科においては、「社会福祉基礎」及び「社会福祉演習」を原則としてすべての生徒に履修させること。
(2)福祉に関する各学科においては、原則として福祉に関する科目に配当する総授業時数の10分の5以上を実験・実習に配当すること。
(3)地域や福祉施設、産業界などとの連携を図り、就業体験を積極的に取り入れるとともに、社会人講師を積極的に活用するなどの工夫に努めること。

2 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)「社会福祉実習」や「社会福祉演習」における現場実習及び具体的な事例の研究やケアプラン作成に際しては、プライバシーの保護に十分留意すること。
(2)各科目の指導に当たっては、コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を図り、学習の効果を高めるようにすること。

3 実験・実習を行うに当たっては、施設・設備の安全管理に配慮し、学習環境を整えるとともに、福祉機器などの取扱いには十分な注意を払わせ、事故防止などの指導を徹底し、安全と衛生に十分留意するものとする。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --