第3章 専門教育に関する各教科 第7節 情報

第1款 目標

 情報の各分野に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、現代社会における情報の意義や役割を理解させるとともに、高度情報通信社会の諸課題を主体的、合理的に解決し、社会の発展を図る創造的な能力と実践的な態度を育てる。

第2款 各科目

第1 情報産業と社会

1 目標

 情報産業と社会とのかかわりについての基本的な知識を習得させ、情報への興味や関心を高めるとともに、情報に関する広い視野を養い、創造する力を伸ばし、社会の発展を図る能力と態度を育てる。

2 内容

(1)情報化と社会

 ア 情報化と社会生活
 イ 情報産業の発展と社会
 ウ 高度情報通信社会のモラル

(2)情報化を支える科学技術

 ア ハードウェアの基礎
 イ ソフトウェアの基礎
 ウ コンピュータの利用形態

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、コンピュータを活用した学習や産業現場の見学等を通して、理解を深めさせるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、情報化が社会生活に及ぼす影響を扱うこと。また、情報伝達手段の変遷を簡単に扱うこと。イについては、情報産業の現状を取り上げ、情報産業の発展と社会とのかかわりについて理解させ、情報産業の今後の在り方について考えさせること。ウについては、高度情報通信社会を主体的に生きるための個人及び産業人としての在り方、著作権やプライバシーの保護、情報発信者の責任などの情報モラルの必要性及び情報のセキュリティ管理の重要性について理解させること。

 イ 内容の(2)のアについては、コンピュータが扱うデータ及びコンピュータの基本的構成要素について総合的に理解させること。イについては、基本ソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアの役割と特徴について総合的に理解させること。ウについては、集中処理及び分散処理の概念について理解させること。

第2 課題研究

1 目標

 情報に関する課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。

2 内容

(1)調査、研究、実験

(2)作品の制作

(3)産業現場等における実習

(4)職業資格の取得

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 生徒の興味・関心、進路希望等に応じて、内容の(1)から(4)までの中から個人又はグループで適切な課題を設定させること。なお、課題は内容の(1)から(4)までの2項目以上にまたがる課題を設定することができること。

 イ 課題研究の成果について発表する機会を設けるよう努めること。

第3 情報実習

1 目標

 各専門分野に関する技術を実際の作業を通して総合的に習得させ、技術革新に主体的に対応できる能力と態度を育てる。

2 内容

(1)基礎的な情報実習

(2)システム設計・管理に関する実習

(3)マルチメディアに関する実習

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(2)及び(3)については、学科の特色や生徒の進路希望等に応じて、選択して扱うこと。

 イ 他人の著作物を利用するに当たっては、著作権等の取扱いに留意させること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、内容の(2)及び(3)に共通する基礎的な実習を扱うこと。

 イ 内容の(2)については、アルゴリズムに関する実習、情報システムの開発に関する実習、ネットワークシステムに関する実習などを、学校や生徒の実態に応じて扱うこと。

 ウ 内容の(3)については、コンピュータデザインに関する実習、図形と画像の処理に関する実習、マルチメディア表現に関する実習、モデル化とシミュレーションに関する実習などを、学校や生徒の実態に応じて扱うこと。

第4 情報と表現

1 目標

 情報と表現に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、表現力を伸ばすとともに、情報を適切に表現する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)情報活用とメディア

 ア メディアの種類と特性
 イ コミュニケーションの基礎

(2)情報活用の基礎

 ア 文書による表現技法
 イ 図形・画像による表現技法
 ウ 音・音楽による表現技法

(3)情報発信の基礎

 ア プレゼンテーションの基礎
 イ プレゼンテーションによる情報発信
 ウ 情報通信ネットワークを活用した情報発信

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 情報機器に固有な表現や特性などについて理解させ、その機器の基本的な操作を習得させること。

 イ 内容の(1)については、文字、画像、音など、コミュニケーションを行う際のメディアを扱うこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、それぞれのメディアの基本的な特性について理解させること。また、メディアの変遷と今後の展望について、情報関連機器の発達と関連付けて考えさせること。イについては、コミュニケーションの基本的な技法を扱うこと。

 イ 内容の(2)については、ソフトウェアを利用した文書、図形・画像及び音・音楽による基礎的な表現技法を扱い、その活用方法を習得させること。

 ウ 内容の(3)のアについては、プレゼンテーションツールとしてのアプリケーションソフトウェアや関連機器の特色に触れるとともに、効果的なプレゼンテーションの技法を扱うこと。イについては、プレゼンテーションの対象に即した企画書や報告書などの作成技法を扱うこと。ウについては、情報通信ネットワークを活用した情報の検索、収集及び発信の技法を習得させること。

第5 アルゴリズム

1 目標

 データ構造と代表的なアルゴリズムに関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)数値計算の基礎

 ア 基本的なアルゴリズム
 イ 数値計算

(2)データの型とデータの構造

 ア データの基本的な型と構造
 イ データ構造とアルゴリズム

(3)整列
(4)探索
(5)データベースの概要

 ア ファイルとデータベース
 イ データベースの仕組み
 ウ データベースの設計と操作

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、コンピュータを活用した実習や演習を通して、解決すべき課題の内容に応じて、アルゴリズムを適切に選択し、改善していくことの重要性について理解させること。

 イ 使用するプログラム言語及びアプリケーションソフトウェアについては、生徒や学校の実態に応じて適切なものを選択すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、アルゴリズムとプログラムに関する基本的な内容を扱い、順次、選択、繰り返し構造で表現できるアルゴリズムについて理解させること。イについては、簡単な統計処理などを例に、数値計算のアルゴリズムについて理解させること。その際、コンピュータが扱う数値の表現における誤差も簡単に扱うこと。

 イ 内容の(2)のアについては、数値型、文字型及び論理型並びにレコード及び配列を扱うこと。イについては、具体的な事例を通して、データ構造の選択と効率的なアルゴリズムの重要性について理解させること。

 ウ 内容の(3)については、複数の基礎的な整列法を取り上げ、それぞれの基本的な考え方、具体的なアルゴリズム及びその違いについて理解させ、効率的なアルゴリズムについて考えさせること。

 エ 内容の(4)については、線形探索法と二分探索法を取り上げ、それぞれの基本的な考え方、具体的なアルゴリズム及びその違いについて理解させ、効率的なアルゴリズムについて考えさせること。

 オ 内容の(5)のアについては、ファイルとデータベースの意義と目的及びデータベースの有用性について理解させること。イについては、リレーショナルモデルを取り上げ、基本的なデータベースの仕組み及びデータベース管理システムについて理解させること。ウについては、データベースの設計の概要及び正規化の必要性について理解させ、データベースの基本的な操作を習得させること。

第6 情報システムの開発

1 目標

 情報システムの設計に関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)情報システムの概要

 ア 情報システム化の技法
 イ ソフトウェア開発の基礎

(2)情報システムの設計

 ア プログラム設計
 イ プログラミングと単体テスト

(3)ソフトウェアテスト
(4)運用保守

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、開発する情報システムに応じて適切なプログラム言語を選択し活用できる能力の育成に留意すること。

 イ 内容の(2)については、構造化設計の考え方について理解させること。なお、オブジェクト指向設計も、生徒の興味・関心に応じて扱うことができること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、情報システムの対象となる業務や工程のモデルの作成、システム構成や機能の分析及び設計を行うときに利用される代表的な技法を扱うこと。イについては、システム設計の具体的な事例を通して、ソフトウェア開発における工程の内容とライフサイクルについて理解させること。

 イ 内容の(2)のアについては、開発対象に適した設計方法を取り上げ、プログラム設計で行う作業内容について理解させること。イについては、プログラミングから単体テストまでの工程を扱うこと。

 ウ 内容の(3)については、ソフトウェア開発におけるテスト工程とテストケースの設計手法を扱うこと。

 エ 内容の(4)については、情報システムの運用保守体制について、具体的な事例を通して理解させること。

第7 ネットワークシステム

1 目標

 情報通信ネットワークシステムに関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)ネットワークの基礎

 ア ネットワークの種類
 イ 伝送の手順と接続方式
 ウ 関連技術

(2)ネットワークの構築

 ア ネットワークの分析
 イ ネットワークの設計

(3)ネットワークの運用と保守

 ア 運用管理
 イ 保守

(4)ネットワークの安全対策

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア ネットワークシステムの全体像について情報通信ネットワークシステムの設計と運用保守の視点から理解させるとともに、通信回線や関連機器のハードウェアの概要について理解させること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のアについては、基本的なネットワークの種類及び代表的な区分によるネットワークの概要を扱うこと。ウについては、変調方式、ネットワークアーキテクチャなどを扱うこと。

 イ 内容の(2)のアについては、ネットワークシステムの要求分析及びそのための必要条件について理解させること。イについては、具体的な事例を通して、ネットワークシステムの設計の基礎的な内容について理解させること。

 ウ 内容の(3)については、ネットワークシステムの運用管理と保守の必要性及びその具体的な手法を扱い、業務管理や分散システムの管理などの高度な内容に深入りしないこと。

 エ 内容の(4)については、具体的な事例を通して、自然災害や人為的過失などに対する安全対策の基礎的な内容を扱うこと。

第8 モデル化とシミュレーション

1 目標

 様々な現象を数理的に捉え、コンピュータで解析し、視覚化するための知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)モデル化とその解法

 ア モデル化の基礎
 イ モデルの種類と特性
 ウ シミュレーションの基礎

(2)現象のモデル化とシミュレーション

 ア 連続的に変化する現象
 イ 離散的に変化する現象
 ウ その他の現象

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、モデル化やシミュレーションが自然現象や社会現象の将来予測や問題解決の有効な手段であることについて、具体的な事例を通して理解させること。その際、アプリケーションソフトウェアを活用して体験的に理解させるよう留意すること。

 イ 内容の(2)については、生徒の興味・関心等に応じて適切な課題を設定し、その解決を通して理解させること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、モデルの種類に応じて適切なシミュレーションの解法があることについて理解させること。アについては、構造決定や関数関係の決定の基礎的な内容について具体的な事例を通して理解させることとし、理論的に深入りしないこと。イについては、様々なモデルの特性やその概要について理解させること。ウについては、システムのシミュレーション等の概要を扱い、理論的に深入りしないこと。

 イ 内容の(2)については、身近な現象を取り上げ、モデル化とシミュレーションの技法やその有効性について理解させること。

第9 コンピュータデザイン

1 目標

 コンピュータによるデザインに関する基礎的な知識と技術を習得させ、実際に創造し応用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)造形表現の基礎

 ア デザインの意義
 イ デザインの条件
 ウ 数理的造形

(2)コンピュータデザインの基礎

 ア 表現と心理
 イ 記号の操作と意味の演出

(3)コンピュータデザインの基本要素と構成

 ア デザインエレメント
 イ エレメントの視覚的構成

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、手作業及びコンピュータによるデザインの作業を通して、表現力や造形力を身に付けさせること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)については、造形表現の基本的な要素と働き及び構成の基本的な考え方について理解させること。ウについては、表現技術として必要な数式等を活用する程度にとどめ、数学的に深入りしないこと。

 イ 内容の(2)については、造形の意図を適切に表現するための心理学的な知識や技術に触れるとともに、作品を通して作者が伝えようとしている考えや意味について理解できるようにすること。

 ウ 内容の(3)のアについては、コンピュータデザインの基本要素の特性や各要素の表現技法について理解させること。イについては、表現意図に合わせた空間や時間における要素の構成について理解させること。

第10 図形と画像の処理

1 目標

 コンピュータによる図形と画像の処理技法に関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)図形の表現

 ア 基本図形の表現
 イ 座標変換の利用
 ウ 立体図形による表現

(2)画像のディジタル化

 ア ディジタル画像
 イ 画像の標本化と量子化

(3)画像の変換と合成

 ア 幾何変換
 イ 色彩変換
 ウ 合成
 エ 動きの表現
 オ アニメーションとシミュレーション

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、コンピュータによる図形の処理及び画像の処理にかかわる技法を習得させること。なお、数学的に深入りしないこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)のア及びイについては、点と線、多角形と面などの基本図形及び座標変換による図形と投影図の生成を扱うこと。ウについては、立体図形の表現という視点から、モデルの種類と特徴、モデルの生成法等を扱うこと。

 イ 内容の(2)については、具体的な事例を通して、画像のディジタル化に関する基本的な原理について理解させること。

 ウ 内容の(3)については、学校や生徒の実態に応じて適切なアプリケーションソフトウェアを使用して、画像の変換と合成の基礎的な仕組みについて理解させること。

第11 マルチメディア表現

1 目標

 マルチメディアによる表現活動を通して、マルチメディアによる伝達効果とその特質について理解させ、作品を構成し企画する実践的な能力と態度を育てる。

2 内容

(1)静止画の設計と表現

 ア 静止画の処理
 イ 静止画による表現

(2)動画の設計と表現

 ア 動画の処理
 イ 動画による表現

(3)音・音楽の設計と表現

 ア 音・音楽の設計
 イ 音・音楽の表現

(4)作品制作

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 指導に当たっては、作品制作を通して、企画力、構成力、表現力など、マルチメディアを効果的に活用することができる基礎的な知識と技術を習得させること。

 イ 他人の著作物を利用するに当たっては、著作権等の取扱いに留意させること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。

 ア 内容の(1)から(3)までについては、各素材の性質とアプリケーションソフトウェアを利用した素材の取り込みや編集及び作品の作成技法を扱うこと。

 イ 内容の(4)については、作品の制作に利用するメディアの検討、内容の計画、素材の収集及び作品の組立の一連の過程を扱うこと。

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)情報に関する各学科においては、「情報産業と社会」及び「課題研究」を原則としてすべての生徒に履修させること。
(2)情報に関する各学科においては、原則として情報に関する科目に配当する総授業時数の10分の5以上を実験・実習に配当すること。
(3)地域や産業界との連携を図り、就業体験を積極的に取り入れるとともに、社会人講師を積極的に活用するなどの工夫に努めること。

2 各科目の指導に当たっては、コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を図り、学習の効果を高めるよう配慮するものとする。

3 実験・実習を行うに当たっては、施設・設備の安全管理に配慮し、学習環境を整えるとともに、事故防止の指導を徹底し、安全と衛生に十分留意するものとする。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --