第2章 各教科 第7節 保健体育

第1 目標

 心と体を一体としてとらえ、運動や健康・安全についての理解と運動の合理的な実践を通して、積極的に運動に親しむ資質や能力を育てるとともに、健康の保持増進のための実践力の育成と体力の向上を図り、明るく豊かな生活を営む態度を育てる。

第2 各分野の目標及び内容

体育分野

1 目標

(1)各種の運動の合理的な実践を通して、課題を解決するなどにより運動の楽しさや喜びを味わうとともに運動技能を高めることができるようにし、生活を明るく健全にする態度を育てる。

(2)各種の運動を適切に行うことによって、自己の体の変化に気付き体の調子を整えるとともに、体力の向上を図り、たくましい心身を育てる。

(3)運動における競争や協同の経験を通して、公正な態度や、進んで規則を守り互いに協力して責任を果たすなどの態度を育てる。また、健康・安全に留意して運動をすることができる態度を育てる。

2 内容

A 体つくり運動

(1)自己の体に関心をもち、自己の体力や生活に応じた課題をもって次の運動を行い、体ほぐしをしたり、体力を高めたりすることができるようにする。
 ア 体ほぐしの運動
 (ア)自己の体に気付き、体の調子を整えたり、仲間と交流したりするためのいろいろな手軽な運動や律動的な運動
 イ 体力を高める運動
 (ア)体の柔らかさ及び巧みな動きを高めるための運動
 (イ)力強い動きを高めるための運動
 (ウ)動きを持続する能力を高めるための運動

(2)体つくり運動に対する関心や意欲をもって互いに協力して運動ができるようにする。

(3)自己の体力や生活に応じて、体ほぐしの行い方と体力の高め方を工夫することができるようにする。

B 器械運動

(1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、その技能を高め、技がよりよくできるようにする。
 ア マット運動
 イ 鉄棒運動
 ウ 平均台運動
 エ 跳び箱運動

(2)互いに協力して練習ができるようにするとともに、器械・器具を点検し安全に留意して練習ができるようにする。

(3)自己の能力に適した技を習得するための練習の仕方を工夫することができるようにする。

C 陸上競技

(1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、その技能を高め、競技したり、記録を高めたりすることができるようにする。
 ア 短距離走・リレー、長距離走又はハードル走
 イ 走り幅跳び又は走り高跳び

(2)互いに協力して練習や競技ができるようにするとともに、勝敗に対して公正な態度がとれるようにする。また、練習場などの安全を確かめ、健康・安全に留意して練習や競技ができるようにする。

(3)自己の能力に適した課題の解決を目指して、練習の仕方や競技の仕方を工夫することができるようにする。

D 水泳

(1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、その技能を高め、続けて長く泳いだり、速く泳いだりすることができるようにする。
 ア クロール
 イ 平泳ぎ
 ウ 背泳ぎ

(2)互いに協力して練習ができるようにするとともに、水泳の事故防止に関する心得を守り、健康・安全に留意して練習ができるようにする。

(3)自己の能力に適した課題の解決を目指して、練習の仕方を工夫することができるようにする。

E 球技

(1)チームの課題や自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、その技能を身に付け、作戦を生かした攻防を展開してゲームができるようにする。
 ア バスケットボール又はハンドボール
 イ サッカー
 ウ バレーボール
 エ テニス、卓球又はバドミントン
 オ ソフトボール

(2)チームにおける自己の役割を自覚して、その責任を果たし、互いに協力して練習やゲームができるようにするとともに、勝敗に対して公正な態度がとれるようにする。また、練習場などの安全を確かめ、健康・安全に留意して練習やゲームができるようにする。

(3)チームの課題や自己の能力に適した課題の解決を目指して、ルールを工夫したり作戦を立てたりして練習の仕方やゲームの仕方を工夫することができるようにする。

F 武道

(1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、その技能を身に付け、相手の動きに対応した攻防を展開して練習や試合ができるようにする。
 ア 柔道
 イ 剣道
 ウ 相撲

(2)伝統的な行動の仕方に留意して、互いに相手を尊重し、練習や試合ができるようにするとともに、勝敗に対して公正な態度がとれるようにする。また、禁じ技を用いないなど安全に留意して練習や試合ができるようにする。

(3)自己の能力に適した技を習得するための練習の仕方や試合の仕方を工夫することができるようにする。

G ダンス

(1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い、感じを込めて踊ったり、みんなで楽しく踊ったりすることができるようにする。
 ア 創作ダンス
 イ フォークダンス
 ウ 現代的なリズムのダンス

(2)互いのよさを認め合い、協力して練習したり発表したりすることができるようにする。

(3)グループの課題や自己の能力に適した課題の解決を目指して、練習の仕方や発表の仕方を工夫することができるようにする。

H 体育に関する知識

(1)運動の特性と学び方
 各種の運動の特性に応じた学び方や安全の確保の仕方について理解するとともに、自己の生活の中での生かし方を理解する。

(2)体ほぐし・体力の意義と運動の効果
 体ほぐしの意義と行い方及び体力の意義と体力の高め方について理解する。また、運動の心身にわたる効果について理解する。

3 内容の取扱い

(1)内容の各領域については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア 第1学年においては、「A体つくり運動」から「E球技」まで及び「H体育に関する知識」については、すべての生徒に履修させること。「F武道」及び「Gダンス」については、これらのうちから一を選択して履修できるようにすること。
 イ 第2学年及び第3学年においては、「A体つくり運動」及び「H体育に関する知識」については、すべての生徒に履修させること。「B器械運動」から「D水泳」までについてはこれらのうちから一又は二を、「E球技」から「Gダンス」までについてはこれらのうちから二をそれぞれ選択して履修できるようにすること。

(2)内容の「A体つくり運動」から「Gダンス」までに示す事項については、各学年において次のとおり取り扱うものとする。
 ア 「A体つくり運動」の(1)のアの運動については、「B器械運動」から「Gダンス」までにおいても関連を図って指導することができるとともに、心の健康など保健分野との関連を図ること。「A体つくり運動」の(1)のイの運動については、これらのうちから(ウ)に重点を置いて指導することができるが、調和のとれた体力を高めることに留意すること。
 イ 「B器械運動」の(1)の運動については、これらのうちから選択して履修できるようにすること。
 ウ 「C陸上競技」の(1)の運動については、ア及びイに示すそれぞれの運動のうちから選択して履修できるようにすること。
 エ 「D水泳」の(1)の運動については、これらのうちから選択して履修できるようにすることとし、泳法との関連においてスタート及びターンも取り上げること。その際、スタートの指導については、段階的な指導を行うとともに安全に十分留意すること。なお、水泳の指導については、適切な水泳場の確保が困難な場合にはこれを扱わないことができるが、水泳の事故防止に関する心得については、必ず取り上げること。また、保健分野の応急手当との関連を図ること。
 オ 「E球技」の(1)の運動については、これらのうちから二を選択して履修できるようにすること。なお、地域や学校の実態に応じて、その他の運動についても履修させることができること。
 カ 「F武道」の(1)の運動については、これらのうちから一を選択して履修できるようにすること。なお、地域や学校の実態に応じて、なぎなたなどその他の武道についても履修させることができること。
 キ 「Gダンス」の(1)の運動については、これらのうちから選択して履修できるようにすること。なお、地域や学校の実態に応じて、その他のダンスについても履修させることができること。

(3)内容の「A体つくり運動」から「Gダンス」までの領域及び運動の選択並びにその指導に当たっては、地域や学校の実態及び生徒の特性等を考慮するものとする。その際、指導に当たっては、内容の「H体育に関する知識」との関連を図るとともに、内容の「B器械運動」から「Gダンス」までの領域については、それぞれの運動の特性に触れるために必要な体力を生徒自ら高めるように留意するものとする。

(4)自然とのかかわりの深いスキー、スケートや水辺活動などの指導については、地域や学校の実態に応じて積極的に行うことに留意するものとする。

(5)集合、整とん、列の増減、方向変換などの行動の仕方を身に付け、能率的で安全な集団としての行動ができるようにするための指導については、内容の「A体つくり運動」から「Gダンス」までの領域において適切に行うものとする。

保健分野

1 目標

 個人生活における健康・安全に関する理解を通して、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力を育てる。

2 内容

(1)心身の機能の発達と心の健康について理解できるようにする。
 ア 身体の機能は年齢とともに発達すること。
 イ 思春期には、内分泌の働きによって生殖にかかわる機能が成熟すること。また、こうした変化に対応した適切な行動が必要となること。
 ウ 知的機能、情意機能、社会性などの精神機能は、生活経験などの影響を受けて発達すること。また、思春期においては、自己の認識が深まり、自己形成がなされること。
 エ 心の健康を保つには、欲求やストレスに適切に対処するとともに、心身の調和を保つことが大切であること。また、欲求やストレスへの対処の仕方に応じて、精神的、身体的に様々な影響が生じることがあること。

(2)健康と環境について理解できるようにする。
 ア 身体には、環境に対してある程度まで適応能力があること。また、快適で能率のよい生活を送るための温度、湿度や明るさには一定の範囲があること。
 イ 飲料水や空気は、健康と密接なかかわりがあることから、衛生的な基準に適合するよう管理する必要があること。
 ウ 人間の生活によって生じた廃棄物は、衛生的に、また、環境の保全に十分配慮し、環境を汚染しないように処理する必要があること。

(3)傷害の防止について理解を深めることができるようにする。
 ア 自然災害や交通事故などによる傷害は、人的要因や環境要因などがかかわって発生すること。また、傷害の多くは安全な行動、環境の改善によって防止できること。
 イ 応急手当を適切に行うことによって、傷害の悪化を防止することができること。

(4)健康な生活と疾病の予防について理解を深めることができるようにする。
 ア 健康は、主体と環境の相互作用の下に成り立っていること。さらに、疾病は主体の要因と環境の要因がかかわりあって発生すること。
 イ 健康の保持増進には、年齢、生活環境等に応じた食事、運動、休養及び睡眠の調和のとれた生活が必要なこと。また、食事の量や質の偏り、運動不足、休養や睡眠の不足などの生活習慣の乱れは、健康を損なう原因となること。
 ウ 喫煙、飲酒、薬物乱用などの行為は、心身に様々な影響を与え、健康を損なう原因となること。また、そのような行為には、個人の心理状態や人間関係、社会環境が影響することから、それらに適切に対処する必要があること。
 エ 感染症は、病原体が主な要因となって発生すること。また、感染症の多くは、発生源をなくすこと、感染経路を遮断すること、主体の抵抗力を高めることによって予防できること。
 オ 個人の健康と集団の健康とは密接な関係があり、相互に影響し合うこと。また、健康を保持増進するためには、保健・医療機関を有効に利用することが大切であること。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)は第1学年、内容の(2)及び(3)は第2学年、内容の(4)は第3学年で取り扱うものとする。

(2)内容の(1)のアについては、身体機能の発達の順序性及び呼吸器、循環器を中心に取り扱うものとする。

(3)内容の(1)のイについては、妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする。また、生殖にかかわる機能の成熟に伴い、性衝動が生じたり、異性への関心が高まることなどから、異性の尊重、情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うものとする。

(4)内容の(1)のエについては、体育分野の内容の「A体つくり運動」の(1)のアの指導との関連を図って指導するものとする。

(5)内容の(2)については、地域の実態に即して公害と健康との関係を取り扱うことも配慮するものとする。また、生態系については、取り扱わないものとする。

(6)内容の(3)のイについては、包帯法、止血法、人工呼吸法など傷害時の応急手当を取り扱い、実習を行うものとする。また、効果的な指導を行うため、水泳など体育分野の内容との関連を図るものとする。

(7)内容の(4)のイについては、必要に応じて、コンピュータなどの情報機器の使用と健康とのかかわりについて取り扱うことも配慮するものとする。

(8)内容の(4)のウについては、心身への急性影響及び依存性について取り扱うこと。また、薬物は、覚せい剤や大麻等を取り扱うものとする。

(9)内容の(4)のエについては、後天性免疫不全症候群(エイズ)及び性感染症についても取り扱うものとする。

(10)保健分野の指導に際しては、積極的に実験や実習を取り入れたり、課題学習を行うなど指導方法の工夫を行うものとする。

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)授業時数の配当については、次のとおり取り扱うこと。
 ア 保健分野の授業時数は、3学年間で、48単位時間程度を配当すること。
 イ 体育分野の授業時数は、各学年にわたって適切に配当すること。
 ウ 体育分野の内容の「A体つくり運動」から「H体育に関する知識」までの領域の授業時数は、その内容の習熟を図ることができるよう考慮して配当すること。
 エ 保健分野の授業時数は、3学年間を通して適切に配当し、各学年において効果的な学習が行われるよう適切な時期にある程度まとまった時間を配当すること。
(2)第1章総則第1の3に示す学校における体育・健康に関する指導の趣旨を生かし、特別活動、運動部の活動などとの関連を図り、日常生活における体育・健康に関する活動が適切かつ継続的に実践できるよう留意すること。
 なお、体力の測定については、計画的に実施し、運動の指導及び体力の向上に活用するようにすること。

2 第2の内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての生徒に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができること。

3 選択教科としての「保健体育」においては、生徒の特性等に応じ多様な学習活動が展開できるよう、第2の内容その他の内容で各学校が定めるものについて、各種の運動の学習及び体育に関する知識、健康・安全に関する事項についての課題学習などの学習活動を各学校において適切に工夫して取り扱うものとする。

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初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --