コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(東京都三鷹市立第二中学校)

学校名 にしみたか学園三鷹市立第二中学校
所在地 東京都三鷹市野崎3-14-1
電話番号 0422-31-6372

にしみたか学園

1 なぜ「学校運営協議会」なのか?

 学校のことは学校でという時代は終焉した。教育の質をより一層高めていくためには、学びの系統化を図る必要がある。小学校と中学校がそれぞれの役割を果たしているという状態では、子供の学びに一貫性は生まれてこない。さらに個性をはぐくみ生かす教育へと質の転化を図っていくには、地域社会がさまざまな場や機会を捉えて、学校にかかわっていくことが不可欠である。多くの人とのかかわりを通してこそ、自己を見つめる目が育っていく。最良の教育を創造していくためにも、学校、保護者、地域住民がともに歩む仕組みづくりが求められている。その仕組みこそが「学校運営協議会」である。

2 コミュニティ・スクールの特色

(1)にしみたか学園はコミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育校である。学校運営協議会は法に基づき学校毎に設置されるが、既存の学校を存続させた上で小・中一貫教育校としての活動を推進していくためには、学園としての連絡調整を密に行う必要が生じる。
 そこで、にしみたか学園では3つの学校運営協議会を「つなぐ」組織として、コミュニティ・スクール委員会を設置した。
 3校の学校運営協議会委員とコミュニティ・スクール委員を同一メンバーとし、会長・副会長は両組織の会長・副会長を兼務する。一斉開催をし、情報の共有と課題の協議を進めていく中で、委員の学園運営への参画意識が高まるところとなっている。

コミュニティ・スクールの特色

(2)組織
 3名の副会長の下に地域教育部会・コーディネート部会・評価部会を置く。コーディネート部会にはサポート部・情報推進部・キャリア教育部を置き、各部には事務局を設置し、各校の主幹がそれぞれメンバーとして名をつらね、学校の窓口となる。

組織

(3)活動の実際

1.地域教育部
*地域行事の充実と児童・生徒の参画による地域行事の開発。
*安心・安全な生活の確保(地域パトロールや通学路の点検)
*地域モニターとしての活動

2.コーディネート部会

コーディネート部会

1.)サポート部
サポート隊の募集・登録・調整等
守秘義務をはじめとして校長の学校経営方針の遵守等を確認した上で登録をする。
教科指導サポートとして算数・数学、国語・社会、英語活動・英語、家庭、図工・美術の授業へのサポート活動を展開している。平成18年度は延べ1,730名のサポート隊の方々がサポート活動に参加している。
さらに特別活動や総合的な学習の時間において、特にキャリア教育で多くの保護者・地域住民との協働による授業を創造している。また、三鷹市内のNPO法人夢育支援ネットワークの協力も得ている。
環境整備はもとより学校行事の際のきめ細かいサポート活動も忘れてはならない。
これらの活動に参画したサポート隊は570名である。

2.)情報推進部
イントラネットの参加募集・登録補助・ブログの更新・動画の作成補助をはじめ各種の広報活動に携わる。また「一貫だより」を通してコミュニティ・スクール委員会から保護者・地域住民への情報提供をおこなったり、学校のPC環境整備にもさまざまな助言をしてくれている。

3.)キャリア教育部
キャリア教育を推進していくために、外部団体や事業所との架け橋となる活動を推進している。職場訪問や職場体験の事業所の開拓、「職業人に学ぶ」や「人生シミュレーション」で学校と地域人材とを繋ぐ役を果たしている。

3.評価部会

評価部会

 評価の日常化を目指し、さまざまな場や機会を捉えて評価活動を実施し、教育活動がより一層前進するよう活動を展開している。学期毎の授業評価(児童・生徒、保護者・地域住民)や学校評価を実施している。前者は授業改善の資料の一つとして、後者は次年度の教育課程を編成していく上での方向付けとなる資料として活用している。
 また3校が同時に同一内容の評価活動をおこなうことは、約1,700件(児童・生徒数)のデータ処理が求められ、容易なことではない。SQSを活用することでスキャナーの読み取りが順調に進めば、20分程度で終了することもできるようになった。
 さらに集計結果を分析し、それぞれの項目毎に重要度と実現度で散布図(下図)を作成し、重要ではあるが、十分に実現されていない取組は何かを明示し、次年度の教育活動の重点課題として、具体的な方策を明示するよう提言することができた。
 また同一の評価項目で定点観測を数年間実施することで、コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育の成果と課題についても明確にしていくことができる。

学園について

3 成果と課題

(1)成果

1.コミュニティ・スクール委員会を設置し、3校の学校運営協議会を束ねていくことで3校の一体化づくりに大いに貢献し、学校との連帯感パートナー意識をはぐくんでいる。とりわけコーディネート部会のサポート部の活動はめざましく、昨年度は190名の保護者・地域住民の方々がサポート隊に登録をし、授業アシスタントはもとより校外学習や登下校時の安全確保、施設設備等のメンテナンスにまでサポート活動を展開した。そして特筆すべきことは、学校という壁を乗り越えたということである。「我が子の学級、我が子の学校」のサポート活動から「にしみたか学園の子供たち」へのサポート活動へと質的転換がなされたことは、サポート活動に参画している保護者や地域の方々の意識が、コミュニティ・スクールの活動を通して変わってきていることを物語っているのではないかと考える。本年度はサポート隊への登録がすでに270名となっている。(6月末)

2.地域の関係団体(青少年対策地区委員会・交通対策地区委員会)との連携はあったものの町会とのつながりがなく、学校と地域社会との連結が弱いという面がこれまであった。
 そこで、地域のコミュニティ・センターを核として活動をしている住民協議会に出席できるように働きかけた。現在では住民協議会の広報紙に学園の記事が記載され、全戸に配付されるようにもなった。

授業に保護者や地域の方が入ってくれ、授業が充実する

3.多くの方々の学校運営に参画する姿を通して、児童・生徒の教育活動の奥行きが深まってきた。またそれと同時に、サポート活動に携わっている方たちの生き方に触れ、自己の生き方も考える機会にもなってきている。

4.「生徒と一緒にまなびませんか」と保護者へのオープンクラスを呼びかける教師もでてきており、教師の地域に対する貢献意識が育ってきている。

(2)課題

1.にしみたか学園を学校・保護者・地域住民がともに創り上げていくことの重要性を多くの方たちが認識している。学園づくりに参画したいという意思をどのように具体的な行動へとつなげていくのかを、コミュニティ・スクール委員会で協議していくことが急務である。

2.サポート隊の登録者は多いが、恒常的に活動できる人たちは限られている。「無理せず、できるところから」が原則ではあるが、今後、シニアサポーターも組織していく必要があるのではないかと考える。

3.学校・保護者・地域住民が密に連絡を取り合い、情報を共有化していくために、インターネットなどの環境整備を行っていくことが不可欠である。

4 今後に向けて

(1)「コミュニティ・スクールってなーに?」という保護者もまだまだ多い。昨年度は「コミュニティ・スクールについてのパネルディスカッションを開催したが、まだ認知度は決して高くない。コミュニティ・スクールとしてどのような活動をしているのか、コミュニティ・スクールになったことによってどんなことができるようになるのか等を、より一層広報していく。

(2)コミュニティ・スクール委員(学校運営協議会委員)と教員との懇談の場を定期的に設けていく。まずは学園運営委員会への出席から始め、地域住民・保護者のニーズと学校の思いのすり合わせをおこなっていく。

(3)町会役員との定期的な意見交換会を開催し、スクールガバナンスの理念を広げるとともに地域人材のさらなる開拓に努める。

(4)先進的実践校から学び、実りある協議や活動を展開していく。

-- 登録:平成23年11月 --