コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(東京都杉並区立向陽中学校)

学校名 杉並区立向陽中学校
所在地 東京都杉並区下高井戸3-24-1
電話番号 03-3302-2989 

1.なぜ「学校運営協議会」制度を導入したのか(個別の事情等)

 東京都杉並区教育委員会は平成17年度から地域運営学校の設置を推進しており,平成17年度に小学校2校,中学校2校に学校運営協議会を設置して地域運営学校にした.その際,前校長が「学校・家庭・地域の共生のもと,共創教育と称して,新しい公教育のあり方を探ってみたい.地域の声を取り入れた学校経営が,公立学校の姿として必要」との理由で地域運営学校を希望し,現在に至っている.なお,前年度までは学校評議員制度が導入されていた.
 また向陽中学校区は従来から地域活動が盛んで,特に向陽中のプール開放に端を発して生まれた地域住民を主体とした「向陽スポーツ文化クラブ(略称KSCC)」というクラブがある[1].昭和51年の発足当初はスポーツのみであったが,54年に文化部ができ,学校開放事業のリーダー的な存在である.既に30年以上続いており,会員は1,000名を超えている.このような地域住民主体のクラブが存在するために,地域運営学校になる際に地域住民の協力を得られやすいと考えられた.
 この他,「子どもの居場所づくり」(ひまわりクラブ)や「向陽スタディ」(土曜日学校)を地域の方々や学生ボランティアの力で実施してきている.

 なお,向陽中学校の沿革と概要[2]は以下の通りである.

昭和22年4月1日:新教育制度に基づき杉並区立下高中学校設立
昭和31年4月1日:校名を向陽中学校と変更する
平成13年7月7日:学校評議員会発足
平成17年4月1日:地域運営学校として指定を受ける(学校評議員会廃止)
平成17年5月2日:学校運営協議会発足
〔学級数〕8学級(1年生:3学級,2年生:2学級,3年生:3学級)
〔生徒数〕292名(男子 170名 女子 122名)
〔校長〕岩谷 俊行(平成18年4月1日着任)
〔職員数〕34名

参考資料

2.自校のコミュニティスクール(地域運営学校)の特色

 本校の運営協議会は校長を含めて12名の委員で構成されている.特色としては,部会単位で活動を行っている点,保護者や生徒にアンケート調査を実施している点などが挙げられる.現在までの活動状況を以下に説明させて頂く.

1.図に示すように,平成18年度から4部会を立ち上げて活動を始めた.部会は,地域部会,教育力部会,評価部会,広報部会である.各部会には,主査1名を含む3名の委員がコアメンバーとして所属し,その他に支援メンバーとして3名の委員,事務局メンバーとして教員が1名所属している.各委員は,コアメンバーあるいは支援メンバーとして2つの部会に所属している.通常は,コアメンバーが各部会の課題と具体的な方策を検討するが,協議事項によっては支援メンバーが参加して協議を行う.各部会で協議された事項は,毎月一回開かれる学校運営協議会の場で審議される.

部会構成図

2.保護者アンケート調査と生徒へのアンケート調査を実施した.保護者アンケート調査は,平成17年度と18年度に実施し,本年度も実施する予定である.生徒へのアンケート調査は,平成18年度に初めて実施し,本年度も予定している.
保護者アンケート調査の内容は,「生徒の家庭生活や学校生活」,「学校からの情報提供」,「学校からの連絡・協力」,「生徒への指導」,「学校に対する要望や意見」,「育てるべき生徒像」,「地域運営学校のあり方」についてなどである.生徒へのアンケート調査の内容は,家庭生活について(朝食を取るか,就寝時間,勉強時間,テレビやゲームの時間,学校のことを家族に話すかなど),授業について(各教科の授業内容や方法について,授業態度など),学校生活について(勉強,部活,学校生活全体,先生に望むことなど),学校教育に関する意見,などである.これらのアンケート調査の結果は集計後,分かり易く整理して保護者や生徒,教職員に公開している.

3.教職員との懇談会を実施している.夏,冬,春の各長期休暇前に教職員との懇談会を実施して教職員との意見交換を行い,互いの理解を深めるよう努力している.

4.学校内に相談窓口を開設し,広く意見を聞くことができるようにしている.

5.種々の学校行事に学校運営協議会委員が参加して講師を務めている.

6.第1期(平成17~18年度)の任期終了時には報告書を作成し、報告会を開催した。

3.過去の課題と克服方法

  1. 学校の状況把握や学校運営についての把握が不十分であった.この点については,学校に来る機会を増やすことに努めるとともに,生徒アンケート調査によって学校生活の実態と生徒の要望把握を行った.
  2. 学校内外へ情報発信が十分でなかった.とりわけ,保護者全体や地域に対しては,運営協議会の活動はまだ十分に認識されていない.PTAの会合やPTA広報誌,その他の機会を捉えて保護者に対して学校運営協議会の説明を重ねてきた.また,学校運営協議会の広報誌の発行や校内に専用掲示板の設置,相談窓口の開設,報告会の実施などを行い広く情報を発信するように努めている.
  3. 教職員とのコミュニケーションは,まだ十分ではないと考えている.地域運営学校として機能するためには,教職員の協力が重要である.教職員との懇談会を定期的に実施しているが,さらに十分コミュニケーションを図れるようにしたい.
  4. 委員が学校行事に参加して講師を務めるなどは行ったが,地域と連携した学校支援活動は特に行っていないので、今後5(2)1.の取り組みを行う予定である。
  5. 委員としての力量を高めるために,勉強会や講演会等の開催について検討の余地がある.

4.コミュニティスクールによる成果と携わっているものとしての実感(手応え)

  1. 保護者アンケート調査に加えて,生徒アンケート調査を実施したことにより,学校の実態が多面的に把握できた.また,保護者や生徒の意見要望を学校へ伝えて学校の改善につなげた.
  2. 保護者アンケート調査の結果によると,保護者の学校教育に対する満足度が大幅に高まっており,さらに学校運営協議会への期待も大きく,一定の成果を上げたと考えている.また,保護者への説明を重ねてきた結果,保護者の理解が深まってきたと感じている.
  3. 当初,委員としての自覚は必ずしも十分とはいえなかったが,毎月の協議会,研究発表校視察やフォーラムへの参加などにより,学習環境づくりにとって重要な役割を担う立場にあることを認識するようになり,委員としての自覚も高まった.
  4. 教職員との懇談会の実施等により,ようやく教職員に学校運営協議会が受け入れられつつあるとの感触を持っており,これは成果であると感じている.

5.今後に向けて(検討課題,取組予定等)

(1)課題

  1. 生徒にとって望ましい教育環境作りに貢献することが学校運営協議会に課せられていると考える.しかし,教育環境の現状把握で時間が過ぎてしまった感がある.今後は,望ましい教育環境の実現に向けて検討を進めたい.
  2. 地域住民の意見・要望の把握が課題であるが,どのような方法で実現するか,把握後の対応も視野に入れて検討する必要がある.
  3. 学校運営協議会の活動を積極的に発信しているが,地域運営学校であることがまだ保護者に十分浸透しているとはいえない面がある.より一層の努力と工夫が必要である.
  4. 学校運営協議会の役割(学校運営への参画の程度,学校への関わり方)の細部については,委員の中でも合意に至っていない.今後,個別に具体的な活動を検討していく中で詰めていく必要がある.
  5. 学校運営協議会委員が活動のために十分な時間を確保できないでいることが課題となっている.

(2)取り組み予定

  1. 平成19年度中には,地域部会が中心となって学校支援隊を立ち上げる予定である.学校支援隊は,保護者や地域の方々から広くボランティアを募集・登録し,学校の様々な活動を支援しようとするものである.
  2. アンケートの報告や広報誌の配付,校舎内の専用掲示板の利用,PTAなどの会合への積極的な参加などを通して,保護者や地域の方々,教職員に十分に理解され,協力して頂けるように努力する.
  3. 保護者および生徒へのアンケート調査を実施し,実態の把握に努める.また,その結果を反映できるように努力する.
  4. 平成19年度は,文部科学省「平成19年度コミュニティ・スクール推進事業」を実施する.調査研究課題は,「学校評価を反映した教育力向上のためのシステム設計」と「教職員との連携・協力体制の構築」である.

 

-- 登録:平成23年11月 --