コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(愛知県東海市立明倫小学校・平洲小学校)

学校名 東海市立明倫小学校 東海市立平洲小学校
所在地 東海市荒尾町土取1番地の1 東海市荒尾町片坂1番地
電話番号 052-603-2011 052-603-0024

《平洲中学校区学校運営協議会調査研究委員会》

1 指定を受けるまでの経緯

 本校区は,以前,校内暴力や器物損壊による荒れを体験しており,地域住民や保護者の力を借りて,立て直しを図ってきた。平成12、13年度には,文部科学省から「道徳教育体験活動」の指定を受け,明倫小学校・平洲小学校・平洲中学校が連携を図り,地域の教育力を活用しながら地域連携による道徳教育に取り組んだ。それにより,学校を支える地域の基盤もでき,地域の中の学校づくりを進めることができた。
 しかしながら,教職員の異動にともない,せっかく確立した地域連携も活動が形骸化し,地域や保護者による協力体制も徐々に弱まってきていた。とりわけ明倫小学校区においては,形の上ではコミュニティ(地域の自治組織)は存在するが,基盤となる地域の横のつながりが弱く,学校が中心となって地域に呼びかけて何かを起こすことが必要な状態が続いていた。
 そうした中,この状況を改善し,地域と共に歩む学校をつくりあげることをねらいとして,平成17、18年度の2年間,平洲中学校区の3校(明倫小学校・平洲小学校・平洲中学校)が,文部科学省から指定を受け,学校運営協議会の在り方についての調査研究に取り組むこととした。

2 平成17年度の取り組み

(1)委員の選出

 小中連携を重視し,中学校区として学校運営協議会の調査研究に取り組むため,委員の選出は,3校区のバランスを意識して行った。また,保護者・地域住民・学識経験者・関係行政機関の職員など,学校に関わる様々な立場の方々に委員を依頼した。

(2)啓発活動

 教職員や委員に学校運営協議会とは何かという知識がなかったため,当時,文部科学省から出向されていた東海市教育委員会副教育長の田中正幸氏(現在,文部科学省大臣官房政策課情報化推進室長)に講演をしていただき,学校運営協議会制度の理解を深めた。
 また,保護者や地域住民に対しては,広報紙「トライアングル」を発行し,平洲中学校区の3校が学校運営協議会立ち上げに向けての調査研究を進めていくことと,その制度の概要についての啓発活動を行った。なお,広報紙「トライアングル」の名前は,地域の方々から広く公募し,「学校・家庭・地域の三角形(トライアングル)が響きあうように」との思いから名付けられたものである。

(3)保護者や地域のニーズを探る活動

 それぞれの学校が行う学校評価はそれまでにも実施していたが,保護者や地域住民が本当に求めている学校とはどのようなものであるのかを探るため,実態調査に取り組んだ。実施するにあたり,学校運営協議会調査研究委員会の中で,質問項目の検討から調査用紙の作成までを行った。3校それぞれが教職員・保護者・地域住民・児童生徒を対象とし,結果は「トライアングル」で広く紹介した。
 実態調査からは,子どもの夢や心を育ててくれる学校を望む声や,思いやりのある優しい子どもに育ってほしいという,保護者や地域住民の率直な意見を把握することができた。

3 平成18年度の取り組み

(1)話し合いの組織から活動の組織へ

 年度当初,保護者や地域住民にも呼びかけ,杉並区立桃井第四小学校学校運営協議会長の小松郁夫氏(国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長)に講演をしていただいた。また,それぞれの学校におけるPTAやコミュニティの総会においても,学校運営協議会調査研究委員長や3校の校長が学校運営協議会について話をし,理解と支援を求めた。
 17年度は,学校関係者による原案づくりや委員による話し合いが中心だったが,保護者や地域住民が活動しやすい組織に改めた。(下図参照)

話し合いの組織から活動の組織へ 

(2)ボランティアの募集

 3校それぞれの実情により,保護者や地域住民が学校に入り,学校を知っていただく機会を増やすために「施設・緑化整備」「読み聞かせ」「教科支援」「総合的な学習支援」「英語活動支援」「放課後支援」「安全支援」等のボランティアを募集した。
 これらのボランティアにより,仕事をリタイアされた方や保護者が学校に足を運んでくださるようになった。それまで,「何かをしたいが,学校へ行くのは抵抗がある」と感じていた人たちから,「気軽に学校に入ることができていい」という声も聞こえてきた。

(3)グラウンドゴルフ大会の開催

 児童生徒・保護者・地域住民・教職員が一緒に楽しく活動できる機会として,グラウンドゴルフ大会の開催をした。横のつながりや縦のつながりの少ない地域であるため,一緒に活動することにより少しでもつながりを深めることができたらという思いから実施することにした。150名ほどの参加があり,学校運営協議会制度についての啓発活動にもつながった。

(4)各校の課題と対策についての討議

 実際の学校運営協議会を想定し,委員をそれぞれの校区に分け,学校ごとに「学校における課題」と「よりよい学校づくりのための対策」について,具体的な話し合いを実施した。話題として取り上げられたのは,生徒指導への支援,給食費や学年費などの未納問題,遅刻する子ども・家庭への支援,基本的生活習慣の定着などであった。

(5)学校運営協議会規則の提言と予算要望

 これまでは学校運営協議会制度でできることを模索し,問題点を明らかにしてきた。しかし,実際に制度に基づく学校運営協議会を運営するにあたり,規則の作成と予算要望が急務となった。まず規則については,他地区のものを参考にして調査研究委員会としての規則案の検討を始め,作成したものを東海市教育委員会へ提言した。
 また,予算案については,案内や広報活動,交流活動にかかる必要最低限の費用は確保してほしいという調査研究委員会の話し合いをもとに作成し,市教委へ提出した。

(6)学校経営方針の策定

 2年間の調査研究期間を終え,明倫小学校と平洲小学校の2小学校に学校運営協議会を設置することになった。平洲中学校は平洲小学校と校区がほとんど重なっていることから,2校で同時に立ち上げると地域の力が分散されることが心配された。そのため,19年度は平洲小学校に委員を集約させ,学校運営協議会を軌道に乗せることにした。中学校の教職員にも委員として加わってもらい,小中連携を図りながら進められるようにした。
 学校運営協議会の指定を受けるにあたり,新しいシステムでの学校経営・学校運営が求められる。保護者や地域住民の参画を視野に入れた経営方針の策定や教育課程づくりに取り組み,学校運営協議会だからこそできる活動を仕組んでいきたい。

《明倫小学校学校運営協議会》

1 校区および学校の現状

 本校は東海市の中東部に位置し,昭和44年4月に開校した39年目の学校である。現在の児童数は273名(通常学級11,特別支援学級2),教職員数21名であるが,昭和47年度には児童数1,000名,教職員数30名を超える大規模校であった。学区は,雇用促進住宅や高齢者が暮らす集合住宅をいくつか有する地区で,新しい住宅街やマンションはないため,今後,児童数が急激に変化することはない。また,コミュニティは存在するが,基盤となる地域の横のつながりが弱いので,学校が中心となって地域に呼びかけて活動を始めることが必要である。
 児童は全体的に素直で明るいが,様々な問題を抱えた家庭があり,学校の指導と支援がなければ荒れを生じる要素はたくさんある。「学校だより」や「学年通信」を出してもその内容についての十分な周知徹底が図られなかったり,学年懇談会や地区懇談会を開催しても参加者が少なかったりするのが現状である。
 本校では,校訓「夢・汗・心」をもとに,教育目標「夢をもち,汗を惜しまず体を鍛え,心豊かな子の育成」をめざして,本年度の重点努力目標を,「学校が楽しい」と感じる児童90パーセント以上,「スポーツの記録」90パーセント以上の更新,「読書の記録」年間50冊以上をめざしている。

2 活動の経過

日時等 協議題等
1 平成19年4月18日
15時~17時5分

委員14名
1.平成19年度学校運営の基本方針について
 学校経営計画,教育課程の編成,学校組織編制,学校予算の編成・執行,施設管理
2.明倫小学校学校運営協議会について
 組織案,活動計画案,会議内容案
2 平成19年4月23日
15時~17時

委員10名
研修会
 講演「コミュニティ・スクールにより何がかわるか,何をかえるか」
 講師 岐阜大学教授 篠原清昭氏
  (東海市学校運営協議会アドバイザー)
3 平成19年5月7日
19時~20時30分

委員13名
1.本年度の重点目標の取り組み状況について
 表現活動の充実,体力づくりの推進,読書活動の推進
2.今後の具体的な取り組みについて
 学校支援室(旧用務員室)の改修,協議会の事務局,大学との連携,合同運動会の支援,子ども会の在り方,渡内川・中川クリーン作戦
4 平成19年6月7日
15時~17時

委員13名
1.本年度の重点目標の取り組み状況について
体力づくりの推進,読書活動の推進
2.今後の具体的な取り組みについて
学校支援室(旧用務員室)の改修,歴代PTA会長等へのお知らせ,子ども会の在り方,大学との連携,合同運動会の支援,ホームページの活用

3 課題と今後の取り組み

(1)第1回運営協議会を迎えるまで

1.委員の選定
 東海市学校運営協議会規則に基づいて,学識経験者,保護者,地域住民,指定学校の校長・教職員,市職員を校長が推薦し,市教育委員会が任命した。委員の任期は2年間である。会長には,調査研究委員会で幹事を務められた方に引き受けていただいた。

2.学校経営計画の作成
 前年度に学校経営案の教育目標を学校運営協議会会長等に見てもらったところ,明倫小学校がどんな学校をめざしているのか,理解できないとのことであった。そこで,校訓「夢・汗・心」に基づいた経営方針と具体的な教育内容を作成し,重点努力目標では数値目標を取り入れた。

3.協議会組織の作成
 先進校視察や推進フォーラムへの参加,2年間の調査研究の成果を踏まえて,学校支援部,環境整備部,地域活動部,保健・広報部の4部を作って,学校運営協議会の活動を推進していきたいと考えた。

(2)第1回運営協議会開催以降

 平成19年4月に愛知県下では初めて,平洲小学校とともに学校運営協議会制度がスタートした。第1回の協議会において,1.学校運営協議会は協議の場と考えるのか,活動主体と考えるのか,2.学校支援部会,環境整備部会,地域活動部会,保健・広報部会の4部会の設置について,PTAなど他の既存の組織との関わりをどうするのか,3.具体的に委員として何をすべきか,などの意見が出された。そこで,まず協議会としてできることから活動していこうということになった。
 また,この制度がうまく機能するかどうかは,保護者や地域の方の参画にかかっているので,地域で活動されている歴代PTA会長や副会長などに,協議会設置のお知らせと今後の支援・協力を文書で依頼した。
 今後は,1.学校教育活動に対する評価や意見,教職員の人事に関する意見の反映,2.実際に動いていただくボランティアなどの運営,3.大学との連携による大学生の学習支援,4.地域との合同による運動会,5.子ども会の在り方などについて,具体的にいつ何をどうするかを検討していきたい。
 子どもたちの健やかな成長を支えていくために,家庭と地域,学校が一体となってより良い教育の実現に取り組むとともに,地域の創意工夫を活かした特色ある学校づくりが進むことで,地域全体の活性化にもつなげていきたい。

《平洲小学校学校運営協議会》

1 校区および学校の現状

 本校は,100年の歴史を誇る学校であり,旧来の地域住民の学校に対する思いには大きなものがある。その一方,東海製鉄(現在の新日本製鐵)の工場建設に伴い,県営住宅や丘陵地を切り開いた宅地開発により,他府県や他市町からの大規模な転入があった。さらに現在でも,新たな宅地開発により,戸建てやマンション・アパートの建築が進み,児童数は年々増加している。現在,児童数は953名(通常学級27,特別支援学級2),教職員数39名である。
 本年度設置された学校運営協議会の委員には本校卒業生が多く,PTAや平洲コミュニティのメンバーとして本校に関わりのある方も多い。そのため,本校に対する愛着心には確かなものを感じる。一方,平洲コミュニティや子ども会の組織は大変しっかりしているが,加入していない家庭があることも事実である。地域行事には,地域住民,保護者や児童だけでなく教職員も参加しており,一方,地域住民や保護者がボランティアとして教育活動に参加もしている。
 平成19年度4月に行われた学力検査では,学校全体で国語は全国平均を若干下回り,算数は平均程度という結果であった。この学力面での課題については,子どもたちの生活面にも関わっていることであり,「早寝・早起き・朝ごはん」など生活習慣の改善を保護者にも呼びかけている。今年度に入って生活指導面や不登校傾向などの問題は減少傾向にあり,比較的落ち着いた学校生活ができているとはいえ,本校にとっては,保護者や地域住民の協力を得つつ,全校的な学習面・生活面への取り組みを欠かすことはできない。

2 活動の経過

日時等 協議題等
1 平成19年4月18日
13時30分~17時

委員15名
1.平成19年度学校経営方針について
 学校経営計画,教育課程の編成,学校組織編制,学校予算の編成・執行,施設管理
2.平洲小学校学校運営協議会について
 組織案,活動計画案,会議内容案
2 平成19年4月23日
15時~17時

委員11名
研修会
 講演「コミュニティ・スクールにより何がかわるか,何をかえるか」
 講師 岐阜大学教授 篠原清昭氏
 (東海市学校運営協議会アドバイザー)
3 平成19年5月31日
19時~21時20分

委員15名
1.本年度の重点目標の取り組み状況ついて
 体力づくりの推進,話し合い活動の推進,保護者・地域への情報公開
2.最近・今後の具体的な取り組みについて
 運動会,渡内川・中川クリーン作戦,学校公開日などの学校行事,各種ボランティア,星城大学との連携,幼保小中の連携,各種団体との連携,学校評価
4 平成19年7月17日
19時~

6月23日現在の予定
1.本年度の重点目標の取り組み状況ついて
 体力づくりの推進,話し合い活動の推進,保護者・地域への情報公開
2.1学期・今後の具体的な取り組みについて
 1学期の活動の反省,夏季休業中・2学期の学校行事

3 立ち上げ時の苦労・工夫

 調査研究の委員の半数以上が,今年度の協議会設立に際して変更となった。昨年度までの先進校視察や推進フォーラム等で「学校運営協議会は実働によって学校経営に参画している」ことを目の当たりにした委員と,今年度から参加される委員との間で,学校運営協議会は何をしていったらよいのかについての解釈の違いが感じられた。5月までに2回の協議会をもったが,全員が納得するまでには至っていない。また,今まで外から学校を眺めていた委員の中には,内情を知らないためどのような形で学校運営に参画していいのかわからない方もいる。
 そこで,学校行事を中心とした教育活動を知っていただくことから始めることにした。5月の運動会やクリーン作戦の前には職員会議要項を委員の方に配付し,計画を知った上で行事を参観していただいた。そして,第2回の協議会で感想や意見を伺った。
 6月以降も同様な形で,行事を通し学校の実情を知っていただこうと考えている。

4 今後に向けて

 学校の教育活動への支援,地域活動への支援などに対して,実際に活動していただく保護者(PTA)や地域住民(平洲コミュニティ)の方々が気持ちよくやっていただけるようにするには,学校運営協議会としてどのように関わっていくべきかを明らかにしていく必要がある。
 また,昨年度の学校評価の結果からは,学校運営協議会とは何か,何をする組織か,設置することによって学校にどのようなメリットがあるのかなどについて,保護者や地域住民に十分認知されていないことがわかった。したがって,保護者や地域住民への情報公開を積極的に行っていく必要もある。まず,理解を得ることから始め,保護者や地域住民が今以上に学校に関心をもち,「協働」という形で支援していただけるようにしていきたい。それが,地域に信頼される学校づくりの基盤となると考える。
 さらに,学校教育活動に対する評価や意見をもとにした学校経営の見直し,教職員の人事や学校予算を,時期に応じて協議会で検討していく必要もある。
 学校運営協議会を設置したことにより,学校に関わる様々な課題が明らかになってきている。これらを一つずつ解決していくために,保護者や地域の力を導入し知恵や人材を得るとともに,東海市で最も多くの保護者や地域の方たちと関わりをもつ学校にしていく。そのことで,学校と家庭,地域が一体となって地域に根ざしたよりよい学校づくりを進め,平洲小学校の新たなスタートとしたい。

-- 登録:平成23年11月 --