コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(熊本県菊池市立泗水小学校)

学校名 菊池市立泗水小学校
所在地 熊本県菊池市泗水町豊水3481
電話番号 0968-38-6557

1.なぜ「学校運営協議会」制度を導入したのか(個別の事情等)

 泗水小学校は、これまでも菊池市の中心校として数々の研究発表を行ってきた。研究に対しての地域や保護者の理解も深く、学校に協力的で教育への関心が高い地域である。また昔ながらの伝統を大切にする雰囲気が残っており、「学校のためなら」「子どものためなら」という思いが強い。学校や保護者も子どもたちにそんな地域のよさを感じ取らせたいという思いはあるものの、それらがうまくかみ合っていないところがあった。そこで、コミュニティスクールの研究指定を受け、学校運営協議会制度を導入した。本校と同時に泗水中学校もコミュニティスクールとなり、1年遅れる形で、同じ泗水中校区の泗水東小学校、泗水西小学校も運営協議会を設置するための研究を始めた。

2.自校のコミュニティスクールの特色

(1)本校コミュニティスクールの基本的な考え方

 研究の当初は、「学校運営協議会とは何か」「コミュニティスクールとはどのような学校か」研修会に参加したり、先進校の視察をしたりしながら模索していた。そんな中で、よその地域の真似ではなく、泗水という地域性の上に立ち、泗水でできる長続きのする地道な歩みを続けていくことが大切だという考えに至り「泗水方式」を築き上げていった。「地域の宝である子どもを地域でよりよく育てる」ことが目的であるという考えから、次の基本方針を打ち出した。

泗水小学校学校運営協議会は、校長のよき理解者であり、学校の応援団です。
泗水小学校は、学校・家庭・地域が協働して子どもを育てるコミュニティスクールです。

そして次のことをスローガンにして進んでいる。

学校・地域・保護がひとつの協働体となって教育にあたり、子どもの学びの質が深め、地域に信頼される開かれた学校になろう。

(2)学校・家庭・地域が協働する組織

 教員が自律的・創造的に教育に取り組むことが重要であるとの考えから、内部組織をプロジェクト制に再編した。「し・す・い」の頭文字からそれぞれ徳育を「しあわせプロジェクト」体育を「すこやかプロジェクト」知育を「いきいきプロジェクト」とし各プロジェクトリーダーを中心に動いている。
 さらに、地域とともに子どもを育てていくために、この校内運営組織に被せる形で地域と協働する組織を立ち上げた。(下図)学校運営協議会を頂点とし、その下に全体の方向性を探る企画・推進会議を、その両側に事務局と地域への説明責任を果たす情報発信部をおいた。各支援部は、校内運営組織の3プロジェクトとともに動いていく機関である。PTA役員や一人一役もこの組織の一員に位置づけた。子どもたちのために支援はするが、学校からは独立した組織も組み込み、学校・保護者・地域が協働する組織をつくったのである。泗水小学校の活動はすべてこの組織を基盤に動いていった。

-校務分掌から校内運営組織へ-

学校運営協議会

3.過去の課題と克服方法

○コミュニティスクールとしての基本的な考え方が定まるまでは、学校と運営協議会との摩擦も大きかった。論議に論議を重ね、お互いの意見を聞き合い、全ては泗水の子どものためによその地域の真似でない独自の路線を確立できた。
○ATへの授業協力依頼から実践に至るまでには、「担任が自分の学級または学年に向けてお願いのプリントを出し、集約し、事前に打ち合わせを行い、当日を迎える」という流れがある。この一連の流れは、大変な労力を伴うことであった。しかし、AT活用授業を繰り返し行う中で、ATのリピーターも増え、その流れに慣れるとともにATが学校の内側の立場に変わっていった。募集すれば、すぐに希望人数が集まり、打ち合わせの時間短縮も図れるようになった。ATの登録制も考えたが、今ではこの方法が定着してきた。

4.コミュニティスクールによる成果と携わっているものとしての実感

○子どものことに関して、苦情ではない情報が入ってくる。
○生活科や総合的な学習の時間に町探検などを実施する際、AT募集をかけると、すぐに多くの保護者が協力してくれる。ATとして授業に参加するということは、定期的な授業参観で外から学校を見る・授業を見る・先生を見るのではなく、先生の立場になって、学校の立場になって、学校の内側の立場になるということである。このようなことを繰り返しているうちに、学校の保護者や地域の方々が学校の理解者となっていったのは大きな成果である。
○AT・GTから「子どもたちから元気をもらった」「こんな機会がほしかった」「また来ます」などの感想が多く寄せられる。これらの取組は、学校だけでなく保護者・地域の方々にとってもメリットがあることがわかった。長続きするためにはこのような双方向性が必要だと実感している。
○独立組織(泗水っ子すこやか育成会・スクールガーデニングクラブ・泗水ひとものことバンク等)のおかげで、登下校の安全確保につながったり、学校の花壇が整備されたり、体験学習がスムーズに実施できたりするようになった。
○地域で学校のことが話題になるなど学校と保護者や地域の垣根が低くなった。
○コミュニティスクールの取組が地域の幼保や高校・高専・養護学校等との交流にも発展していったことは大きな成果であった。

5.今後に向けて

○都会とは違い、地域の方だけで組織を立ち上げたり、運営したりということは難しい。どうしても学校の職員が、事務局となりイベントの企画をしたり運営をしたり・・という部分が大きい。日常の学校の職務に加え、コミュニティスクール運営のための負担が職員にかかってくる部分をどう軽減していくのかが課題である。

-- 登録:平成23年11月 --