コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

コミュニティ・スクール推進フォーラムにおける実践発表資料(岡山市立清輝小学校)

学校名 岡山市立清輝小学校
所在地 岡山市新道1番地
電話番号 (086)225-4875

1.実践発表のテーマ

中学校区を地域とした学校運営
-子どもたちが愛されていると実感できる学校づくり・地域づくりをめざして-

2.実践の推進体制

(1)コミュニティ・スクールに至るまでの経緯

 岡輝中学校区の岡南幼稚園・岡南保育園・清輝保育園・岡南小学校・清輝小学校・岡輝中学校の6校園は、学校園・家庭・地域住民がそれぞれの立場を明確にし、それぞれの教育力を有効に働かせることをねらいとして、平成14年度から16年度までの3年間、文部科学省より「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」の指定を受け実践してきた。その成果を基盤に、保護者や地域のニーズを取り入れた「学校園運営」の更なる発展と定着を図るため、地域運営学校として平成17年度・18年度の2年間、新たに文部科学省より「コミュニティ・スクール推進事業」の指定を受けると共に、岡山市より岡山市地域協働学校指定第1号に認定された。現在、保育園幼稚園小学校中学校の6校園が協力して0歳から15歳まで責任をもって保育・教育をし、「子どもたちが愛されていると実感できる学校づくり・地域づくり」をめざして取り組んでいるところである。

1.学校と学区の概要と経緯

清輝小学校は岡山市の中心部に位置し、学校の周辺部には商店と住宅が混在しており、自然環境、子ども達の生活環境については必ずしも最適の状態とは言えない。
 児童は総じて明るく、人なつっこく、子どもらしく、人前でも物怖じせず活動ができたり、周りの人の気持ちを考えて行動したりすることができる子が多い。
 しかし、数年前は、地域や学校が関わっているにもかかわらず、集団や社会の規範を無視した行動を繰り返したり、様々な原因で不登校に陥ったりするなど、大きな生徒指導上の課題を抱えていたが、生徒指導加配教員を中心に「全職員で全児童を育てる」という体制づくりと教職員の時間を惜しまない指導により、現在は落ち着いた学習環境の中で児童たちは生活している。 

2.地域の力を学校へ

 支援を必要とする児童の割合は年々増加傾向にあり、一人ひとりの児童の課題は、少人数といえども大きく、家庭環境の数値を見ても年々厳しい状況が続いている。そのため、学習面だけでなく生活面においても、学校が家庭の役割まで担わなければならない場面が多く、そうしなければ児童の安定が保たれないという状況である。
 しかしながら、普段から些細なことでも学校と家庭が密に連絡を取り合い、協力して子どもを育てているという本校のよい面が、地域や家庭に受け入れられ、徐々に今の落ち着いた状況に導いているといえる。また、学校や家庭だけでなく民生委員会をはじめ、地域安全推進委員会、保導協議会、少年警察協助員等、数多くの地域の団体によるサポート体制の充実が、多くの課題を抱えながらも安定した清輝小学校を支えてくれているように思う。

3.保育園幼稚園小学校中学校の連携(0歳から15歳までの一貫教育)

 岡輝中学校区の6校園は、0歳から15歳まで責任もって保育・教育していこうと、常に連携を取りながら様々な取組を実施している。

ア 清輝小学校流の支援体制
 清輝小学校は、教職員全員で「困り感」を抱える児童や保護者を組織的に支援する体制をとっている。特別支援を必要とする児童の「困り感」に寄り添い、「見立て」をし、「支援」できる学校をめざしている。同時に、同じ悩みを抱える保育園幼稚園小学校中学校で、支援が必要な園児・児童・生徒の情報や効果的な指導について情報交換を絶えず行い、地域・家庭・学校が一体となって子ども達を支援している。

現在の教育支援体制

イ 新1年生体験入学を実施するについて
 新1年生体験入学を実施するに当たって、特別支援教育専門家、保育園、清輝小学校関係者が一堂に会して体験入学について話し合い、以下のようなプランを立てた。 

体験入学の授業内容

ウ 就学前子育て講座「ちよっといい話」

 清輝保育園の参観日に、就学前児童の保護者を対象にした子育て講座「ちょっといい話」で、児童の想像力を引き出し、国語や算数の文章題学習に役立つ読み聞かせと読書の効用、岡輝中学校区6校園で指導の重点に挙げている「早寝・早起き・朝食・うんち」という生活リズムを整えることの大切さを中心に話をした。特に、「早寝・早起き・朝食・うんち」については、講座後、栄養士を迎えて「具だくさんのみそ汁」の講習が計画されていたので、6校園の課題である「生活習慣が身に付いていない。朝食を食べないで登園校する子が多い。夜遅くまで起きているので、朝起きられない」等の実態から、不登校解消、学力向上には生活習慣の徹底は必要不可欠であるという話をした。
 清輝小学校では、家庭・学校・地域との連携・協力による基礎学力の定着と生活習慣の育成、特に、入口である保育園と小学校との連携教育を重視し、小学生のいない夏休みに、清輝保育園児に、校内での蝉捕りや芝生の上での昼食、図書館でのバター作り体験や本の読み聞かせ等の行事に積極的に参加してもらった。反対に、保育園の園内研修に本校の職員が講師として出向き、「どのように保育園・幼稚園・小学校の連携を進めていけばよいか」や「小学校入学前に保育園・幼稚園で培っておいてほしいこと」等についてお互いの思いや意見をしっかり出し合った。
 それは、保育園・幼稚園から小学校へスムーズなスタートを切って、小学校6年間を楽しく、しっかり基礎学力を身に付けて出口の岡輝中学校に進学してほしいと言う気持ちからである。そのため、勉強がよく分かり、学校が楽しい場所になるように「読み書き仙人」「九九の勇者」等の基礎学力を定着させるための様々な取組を実施している。6年間の教育を担う小学校の責任は重い。

(2)地域学校協議会の設置

 岡輝中学校区を地域とした学校運営を推進するための中心組織として、平成14年度に「地域学校協議会」を設置した。地域と学校園を緊密に結びつけるための情報の共有や様々な取組の基本的な方針についての協議を行うことと、地域と保護者のニーズを代表して校園長に意見具申することが主な機能である。協議会は意志決定機関であるが、協議会委員の基本的な位置づけは、学校運営に関わるコーディネーターである。
 学校園は校園長の裁量権にあり、人事・予算・教育内容について地域・保護者代表から意見を聴く。
 委員は24名で構成されている。その内訳は、6校園の校園長6名、PTA代表4名、地域代表7名、学識経験者4名、行政関係者2名、事務局1名である。原則的に月1回の定例会をもち、定例会の事前に議事の整理を行う役員会を委員の内7名で行っている。 

3.実践の成果と課題

 岡輝中学校区では、平成14年度から文部科学省の研究指定を受け、その研究を推進するために「地域学校協議会」を設置した。この協議会は、中学校区の公立保育園・幼稚園・小学校・中学校が連携しながら、地域に根ざした学校園運営をすることをねらい、当初は月2回の会合を開いて運営の在り方について討議してきた。平成16年度からは、月1回の会合を開いて更に討議を重ね、平成17年度には、委員のメンバーを一部一新したり、公募で委員を募集したりして斬新な考えの導入と更なる飛躍を期した。

(1)6校園共通の具体的な4つの取組

1.学校園の教育力を高める取組
・「岡輝中学校区研究推進委員会」の立ち上げ・夏季休業中に、6校園の教職員による合同の研修会を2回実施
・学力支援サポーター、子育て支援サポーターの委嘱等

2.家庭の教育力を高める取組
・「岡輝版 子育て法」の作成とその活用
・子育て支援、保護者相互の連携活動等

3.地域の教育力を高める取組
・シニアスクールの設置…「子どもとともに学ぶ教室シニアスクール岡輝教室・清輝教室」の設置
・地域情報誌「ちくたく」の発行
・学校園と地域を結ぶ諸活動を通じての「地域力」の醸成等

4.学校園を支援する取組
・支援ネットワーク会議等

(2)コミュニティ・スクール設置の成果

  1. 中学校区の6校園(岡輝中学校・岡南小学校・清輝小学校・岡南幼稚園・岡南保育園・清輝保育園)の生徒・児童・園児の実情に伴う指導方針について情報交換し、0歳から15歳までの子ども達の自立をめざし、望ましい子育ての在り方について、様々な方面からの意見を出し合い、中学校区で一貫した子育ての方針を描くことができた。
  2. 学校園運営に参画する委員の発案により、シニアスクールの発足やコミュニティサポーターの登用等、子ども達にとって幅広い教育活動を推進することができた。
  3. 学校園運営や地域連携についてアンケートを実施し、評価を得ると同時に、今後の取組について検討する貴重な資料を得ることができた。また、地域情報誌「ちくたく」を発行して中学校区全戸に配付することによって、学校園の取組や地域での活動を啓発し、地域住民の意識向上を図ることができた。
  4. 昨年度の課題(一部の保護者、地域住民、教職員の活動にならず、もっと広く多くの人たちのものにする)解決のために、組織の再編成と広報活動に努めた。

(3)今後の課題

現在、清輝小の安定・落ち着きが出口である岡輝中の平穏に結びついているが、安定と荒れは紙一重であり、現在は安定の方に大きくふりこはふれているが、いつ荒れに転ずるか分からない危うさもある。その兆候は、2保育園で家庭支援を必要とする子どもが増加していることや親自身を支援していかなければならない状況が生じていることである。
 「教育の原点は家庭にある」という自覚を持った家庭、「地域の子どもは地域で育てる」という連帯感を持った地域、「保護者や地域の信頼に応える学校づくり」をめざす学校が一体となって、更に「コミュニティ・スクール推進事業」を推進していかなければならない。

(4)今後の取組

 清輝小学校内にシニアスクールが設置されたことで、学校が大きな三世代同居の家庭になり、昔のよき日本の家庭を形成することができた。シニアの方々から有形無形の素晴らしいプレゼントが子ども達に与えられ、やさしく穏やかで、人のことを思いやる子ども達が増えてきたように思う。これからももっと交流を推進すると共に、子育てに悩む母親のよき相談相手として支援してもらいたいと願っている。それは、母親の安定が子どもの安定につながるからである。地域・家庭・学校・シニアスクールと手を携えて子ども達を育成していきたい。

-- 登録:平成23年11月 --