コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成18年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(岡山県岡山市立岡南小学校・岡南幼稚園)

学校名 岡山市立岡南小学校・岡山市立岡南幼稚園
所在地 岡山市岡南町2-4-5・岡山市七日市西町1-20
電話番号 086-225-3526、086-223-1051

1 実践発表のテーマ

中学校区を地域とした学校運営
-子どもたちが愛されていると実感できる学校づくり・地域づくりをめざして-

2 実践の推進体制

(1)コミュニティ・スクールについて

 岡輝中学校区は,平成14年度から16年度の3年間文部科学省による「新しいタイプの学校運営のあり方に関する実践研究」の指定を受け,幼稚園・保育園も研究協力園として取り組んだ。この指定により「地域学校協議会」が設置され,地域運営学校として動き始めた。その後,平成17年度・18年度の2年間,新たに「コミュニティ・スクール推進事業」の指定を受けるとともに,岡山市教育委員会より岡山市地域協働学校第1号として指定され,3年間の成果を基盤に学校園運営の更なる発展と定着が図れるよう実践を進めている。学校・家庭・地域が協働で「子どもたちが愛されていると実感できる学校づくり・地域づくり」に取り組み,それぞれの教育力を高めることを目指している。

(2)地域学校協議会の設置

 岡輝中学校区を地域とした学校運営を推進するための中心組織として,平成14年度に「地域学校協議会」を設置した。地域と学校園を緊密に結びつけるための情報の共有やさまざまな取組の基本的な方針について協議を行い,また,地域や保護者のニーズを代表して校園長に意見具申をすることがその主な機能である。協議会は意思決定機関であるが,協議会委員の基本的な位置づけは,学校運営にかかわるコーディネーターである。
 委員は24名で構成されている。内訳は,6校園(中学校1校・小学校2校・幼稚園1園・保育園2園)の校園長6名,PTA代表4名,地域代表7名,学識経験者3名,行政関係者3名,事務局1名である。原則的に月に1回の定例会をもち,事前に定例会の議事の整理を行う役員会を,委員のうち7名で行っている。
 6校園共通の取組である(1)学校園の教育力を高める取組(2)地域の教育力を高める取組(3)家庭の教育力を高める取組(4)学校園を支援する取組について,方法や内容の協議・調整等をし,取組の充実・発展と定着を図る。

3 実践の成果と課題

(1)学校園の教育力を高める取組

 子どもたちの直面する課題として不登校,問題行動,学力不振等があげられる。その背景には,基本的生活習慣や学習習慣が十分定着していなかったり,人間関係の希薄さが恒常化されていたりして,学校だけでの取組では限界を感じることが多い。そこで,地域に住む子どもたちを健全に育てるには,中学校区を地域とし,学校・家庭・地域がそれぞれの持つ役割を果たしながら子育てをすることが不可欠であるとし,地域とともに育つ学校園をめざし,「0歳から15歳までの責任ある教育」に取り組んでいる。

1.6校園合同研修会

 夏季休業中に6校園の全教職員が集まり,学区の研究のあゆみや本年度の研究テーマを確認した後,授業づくり班等の10の班会に分かれ本年度の具体的な取組について検討した。このことは,保育園・幼稚園と小学校,小学校と中学校の垣根を取り払い,子どもたちのスムーズな入学進学にも大きく貢献している。

2.保幼小連携班の取組

 学区の課題の一つである基本的生活習慣の定着への取組として,共通のがんばりカード「いってきまーすカード」を作成した。早寝,早起き,朝食,排便,忘れ物をしないための準備等の項目を共通のものとして各校園で実施する。幼稚園・保育園児が入学後も親しみのあるカードとして意欲的に活用され,内容も継続されることで基本的生活習慣の定着に効果的と考えた。
 保護者の関心の高まりにもつながって欲しいと期待している。

(2)地域の教育力を高める取組

1.シニアスクール

 平成16年度に,岡輝中学校と清輝小学校に開校され,今年で3年目を迎えている。児童生徒とシニアとの交流も順調に行われ,子どもたちが高齢者を慕い,精神状態の安定が図れたのが何よりも大きな成果である。最近では,中学生の部活動の試合等で,シニアの方が手作りのうどんを選手たちに振る舞うなど,より一層交流を深めている。岡南小学校には,まだシニアスクールが開設されてはいないが,両校のシニアの方4名が,「算数のできるおかやまっ子」支援事業で,夏休みや放課後,算数の苦手な子どもたちに算数を教えている。また,3年生の国語の時間には,手作りの紙芝居で戦争体験を話してくださり,子どもたちに戦争の悲惨さや平和の大切さ等を感じさせることができた。

2.地域情報誌「ちくたく」による広報活動

 「ちくたく」を年3回発行し,岡輝中校区全戸に配付している。この「ちくたく」は,子どもたちの学校園での様子やさまざまな地域活動,生活に密着した話題を取り上げているため,今,この地域でどんなことが行われているのかがよく分かり,協力も得ることができる。この情報誌により,少しでも「地域力」が高まればと思う。

(3)家庭の教育力を高める取組

1.「改訂 岡輝版子育て法」の活用と「子育て in 岡輝2006」の開催

 6校園では,生活4原則である「早寝・早起き・朝食・うんち」を合言葉に基本的生活習慣の確立に取り組んでいる。学区の教職員と保護者で独自に作成した冊子「岡輝版子育て法」の活用と普及により,家庭の教育力の向上に努めているが,文字による普及には限界があるため「子育て in 岡輝」のイベントを行った。昨年度は山英男氏を講師に,今年度は,朝食に視点を当て,食の大切さを保護者により理解してもらうため,県の栄養士会の方を講師として招き,「みなおそう!朝ごはんの力」というテーマで講演をしていただいた。子どもたちにも分かりやすいようにとペープサートや紙芝居を用いて説明された。講演後は,昨年度同様,各校の栄養士と給食調理員の方でつくった「けんちん汁と一口おにぎり」が振る舞われた。また,簡単な朝食のレシピも渡された。今回約200名の参加があったが,朝食や基本的生活習慣への関心が低い家庭の方の参加がほとんどなかったので,その人たちにいかに足を向けさせるかが課題である。

2.積極的なPTA活動

 PTAの運営委員会を中心に,「早寝・早起き・朝食・うんち」を目標に掲げ,基本的生活習慣を子どもたちに身に付けさせるために,いろいろと取り組んだ。PTA教育講演会では,川崎医療福祉大学の保野孝弘氏に「夜更かしが心と身体をダメにする」という演題で講演をしていただいた。子どもの実態から十分睡眠がとれていない状況であるので,睡眠の大切さを認識してもらうために,5、6年生の子どもたちも保護者・地域の方々と一緒に話を聞いた。子どもたちの中には,自分の生活を振り返り,少しでも生活をよくしていこうとする気持ちが芽生えた。

3.保幼の保護者交流

 保護者同士がもっと親しみ合う必要性を感じた3園の保護者は,保護者主催の「クリスマスお楽しみ会」を行っている。幼保の保護者代表が連携を図りながら,内容・方法を工夫して世話係の負担を少なくし,楽しく継続する交流となるよう努めている。保育園保護者の参加が次第に増え,保護者同士がもっと話ができる場も欲しいという意見も出るなど,保護者交流への姿勢も積極的になっている様子が見られている。

(4)学校園を支援する取組

1.ビオトープを育む会

 地域の方が中心になって,「ビオトープを育む会」を立ち上げ,ビオトープの環境整備等を行って,子どもたちに心の安らぎの場を提供してくださっている。
 また,行政には人的支援等をしていただき,少しでも個に応じた指導ができるように配慮していただいている。

2.各種団体との連携

 学校園のために労を惜しまず様々な支援をしてくださっている。学校園も学区団体の催し物がある場合は,極力参加して学校の様子等を伝えている。

〈民生児童委員協議会〉

 毎月の定例会が小学校で開催されており,その会に学校園長が出向いて学校園の様子などを伝え地域の方の協力を仰いでいる。特に,不登校の子どもたちについて様子を具体的に話し,地域で見守っていただくようにお願いしている。
 保育園では,民生児童委員が毎週火曜日と金曜日の朝,門の前で「おはよう運動」をしている。この運動をすることにより,保護者の登園が早くなったり,園児・保護者ともにあいさつがよくできたりしている。また,民生児童委員と保護者との面識ができ,問題行動等が起きた場合でもいろいろとご支援をいただいている。
 また,幼稚園と保育園の間のフェンス撤去後になかよし花壇を作り,維持管理を一手に引き受けてくださっている。

〈婦人会〉

 開かれた学校づくりの一環として行っている「手作り野菜・親子料理教室」で,子どもたちに料理の仕方を教えてくださっている。
 幼稚園の保護者対象にはクッキング教室を開催してくださり希望者が参加。おやこクラブの保護者の参加もあり,保護者は,食への意識を高めるとともに地域の方々との親睦も図れた。

〈老人クラブ〉

 毎月学区防犯デーに小学校に来てくださり,子どもたちと一緒に下校し,子どもたちの安全確保に努めてくださっている。

4 今後の取組

(1)「岡輝中学校区研究推進委員会」各連携班の取組の充実に努め,保幼小中一貫した子どもの育ちを求めて校種間の段差を低くし,学びのつながりについての研究を深める。そのためには連携班で,6校園間の連絡調整,企画・運営の核となるミドルリーダーの育成が不可欠である。

(2)シニアスクールの生徒が年々減少傾向にある。病気や配偶者の介護等でやむを得ない理由でやめていく生徒もいる。リピーターの生徒が多く新規の入学者が少ない。いかに新入生を獲得するかが大きな課題となっている。新入生を獲得するために,シニアスクールのPRを行い,市内の3公民館で移動講座を行う。また,岡南小学校に子どもたちとの交流を主としたシニアスクールの開校を予定している。小学校を拠点にし,保育園児や幼稚園児たちとの交流も行い,おじいちゃんやおばあちゃんと触れあうことにより心の安定を図っていきたい。

(3)地域住民の気持ちを聞きながら,魅力ある地域情報誌「ちくたく」を発行していく。ただ,予算的な措置がないため,スポンサー等を募集し広告料でまかなうことについて検討していきたい。

(4)「改訂 岡輝版子育て法」の活用を含め,有効な子育て支援を考えていきたい。子育て,親育ちとなる支援が必要である。

 

-- 登録:平成23年11月 --