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(参考資料2)「特別の教育課程」による日本語指導の標準授業時数の設定について

(委員・協力者への事前意見照会の集約)

 授業時数を示すかどうか、またその示し方について

・ 初めて受け入れる学校にとっての「目安」になるので、示した方が良いと思う。
・ 上限・下限・目安など、示し方はいくつかあるが、「上限」にすると、現在、示した時数より多い時数で指導をしている学校の足を引っ張る形になる。また、「下限」にすると、そこまで予算的に組めない地域の負担になることから、「目安」「標準」としてはどうか。 

指導時数の目安(下限)はあった方が良い

・ 現在、日本語指導の授業時数については、子どもの日本語レベルや課題に対応して基準になる時数が定められているわけではなく、市町村や各学校の指導体制の状況に応じて時間数を独自に決めて実施しているところがほとんどである。言い換えれば予算に応じた支援であり、初期段階であるにもかかわらず、全く指導を受けていない児童生徒も存在する。この状況を改善するためには、ある程度の指導時数の目安(下限)はあったほうが良いのではと考える。

授業時数の上限は設けない方が良い

・ 日本語初期指導の場合、集中的に指導できる体制が整備されていれば、授業時数の全てが「特別な教育課程」であっても良いと考える。
・ 集住地域の集中校では、1学年に多くの日本語指導が必要な児童生徒が在籍をしており、学年の時間割をそろえて、集団指導を行っているケースがある。例えば、小学校1年生の国語や算数を全て国際教室に取り出して、「教科と日本語の統合学習」の考えで指導しているケースがある。指導者は少人数対応教諭ではなく、国際教室担当教諭で、教科の評価も国際教室担当教諭が行っている。
・ 第1回の検討会議の参考資料1に特別支援教育の「通級による」指導の授業時数が書かれていたように、上限ではなく、標準の時間を示すのがいいと考える。
・ 第1回の検討会議の資料3に示されているように、指導時間数や指導期間はばらつきが多く、一つの市でも地域差、学校差があるのが実態だと思う。
・ 集住地域では、在籍校に籍を置きつつ、初期日本語は早期適応教室に3~4か月ほど通級して集中的に指導を受けることができる。しかし、その後の在籍校での指導はさまざまで、週0~10時間以上まで差がある。
   一方、散在地域でも、通級は100時間と決まっている市や、週3時間を2年間続ける学校や、ほとんど取り出し指導がない学校までさまざまである。
・ 「取り出し指導」は週10時間以上を超えると、在籍学級での友人関係が築きにくくなり、居場所がないという現場の声を聞いている。調査結果の週5~10時間が一番多いという実態からも、週8時間くらいが標準として考えられる。
できれば、初期日本語は手厚くするのが望ましいという補足を付けられるといいと思う。

授業時数について

・ 当検討会で配布された文科省の調査資料、および、米国ニューヨーク州のESL時間数の双方から判断し、下記のような授業時数を提案したい。

・ レベル別 週当たりの授業時数

レベル

指導に要する標準的な時間数

期間

1

小学校低学年は週に8時間程度。それ以上は10時間程度。

1か月程度

2

小学校低学年は週に6時間程度。それ以上は10時間程度。

3か月程度

3

小学校低学年は週に3時間程度。

小学校中高学年は8時間程度、中学生は8時間程度。

8か月程度

4

小学校低学年は週に3時間程度。

小学校中高学年は6時間程度、中学生は6時間程度。

1~2年程度

5

取り出し指導は行わず、課外または入り込み指導、授業者の配慮により適宜対応する。

2~4年程度

*上記レベルの概要

レベル

日本語(聞く・話す)の習得状況

1

全く分からない。または、分かる単語がいくつかある程度で、意思疎通が図れない。

2

日常繰り返される事象に限れば、半分ぐらい聞いて分かる。

3

日常繰り返される事象については、ほぼ聞いて分かるが、授業での言葉はよく分からない。

間違いが多く含まれるが、3語~4語での会話ができる。

4

日常生活に関する会話はほぼ聞いて分かるが、授業での言葉はよく分からない。

間違いは目立たなくなったが、授業での言葉を使った会話はまだ不十分である。

5

日常生活に関する会話には、ほとんど問題がない。

小学校中学年以上では、授業での言葉がまだよく理解できない。


・参考:ニューヨーク州のESL時間数
http://www.p12.nysed.gov/biling/docs/LAPtable12-09.pdfl ほか同州教育庁のホームページ及び日本人を多く受け入れており、かつESLの授業時間数を公開しているスカースデイル学校区の学校のホームページなどを参考にまとめたもの。

レベル

指導に要する標準的な時間数

初級

週6時間(360分)日本の授業時間に換算すると小学校8時間、中学校7.2時間。

(中学3年生~高校3年生相当は週9時間540分なので、日本では約11時間相当。)

中級

週6時間(360分)日本の授業時間に換算すると小学校8時間、中学校7.2時間。

上級

週6時間(360分)日本の授業時間に換算すると小学校8時間、中学校7.2時間。

最上級

ESLはなし。担任が教室で対応。


・参考:日本の現状(文部科学省会議資料)

参考:日本の現状(文部科学省会議資料) 


日本語指導が必要な児童生徒特有の配慮事項~指導時数を検討するにあたって

(児童に関すること)
・言語能力として学校生活に必要な口頭言語力と教科学習言語能力とがある。
・年齢相応の教科学習言語能力が育つには5年以上かかる。
・児童の個人差が大きく、多様である。(言語・文化的背景のみならず社会経済的背景、心理的側面、学校の指導体制、家庭環境等、複雑に影響。)

(児童以外に関すること)
・判断ツールの準備
・学校体制、地域の支援体制の格差
・指導者の専門性・力量

 上記について鑑みると、画一的な枠は決定しがたいと考える。しかし、教育課程上の制限も否めない。そこで「特別支援教育通級指導の上限、週当たり8時間までに習い、年間280単位時間までとし、個々の実態に合わせて柔軟に対応する。」(この根拠も示せるとよい。)という案はいかがか。その上で、

(初期指導に関して)
 年間総単位時数内であれば、児童の実態によって初期指導時期においては週時数8単位時間を超えても可とするといった柔軟性が必要かと思う。

(発達障害との関連について)
 発達障害がある児童生徒の場合は、日本語の年間単位時数を超える指導時数が必要な場合も想定されるが、それはまれではないかと思う。重篤な場合は別の問題があるように思う。例えば、日本人の子どもでも保健室登校をしているようなケースと似ている。

(通常の教育課程とのバランス)
 JSLカリキュラムの考え方で、在籍学級の学習に参加する力を育むとすれば、問題とならないのではないか。

(指導形態からの視点)
 上限年間280単位時間は、取り出し指導の時間と考え、TT指導は別枠となるか。

(指導時数決定・実績等の評価)
 学校管理職・教育委員会担当指導主事のみでなく、各地域に専門性を備えたサポートチームを編成して行う必要性があると思う。管理職や担当指導主事は、この教育の専門性を身に着ける機会がほとんどないためである。サポートチームが指導時数を切り口にして専門的な指導助言もできると考える。 

中学校の視点から

・ 学習指導要領に則して、各教科の時間数以外の時間について、120時間(第1学年)~140時間(第2・3学年)、さらに標準時数の枠外での選択教科を実施する際は、さらに35時間の編成が可能だと考える。
・ そのうち、総合的な学習の時間については、地域・生徒の実態に応じ、また生徒に主体的な課題意識や自己学習力を身につけさせるねらいをもって行うものなので、50時間~70時間の枠で日本語指導を中心に実施することは可能だが、実際には防災学習や福祉体験、職場体験などまとめ取りをする場合が多いため35時間程度と考える。
・ 道徳の時間は、私立学校で宗教に置き換えることが可能なように、日本語指導の必要な生徒に対しては、日本語指導を通して、文化や習慣等を理解するプログラムが実施可能と考える。
・ 特別活動は、学級活動や行事等を通して、日本の学校生活に慣れさせたり、仲間作り等の重要性から、全時間を日本語指導に充てることは難しいのではないかと考える。
・ 選択教科は今回の学習指導要領では設定されていないが、標準時数の枠外で実施が可能なので、年間35時間程度の枠組みで実施が可能と考える。(ただし、生徒全員が対象ではないので自主選択ということになる。)
・ 各教科の時間(875時間~895時間)はそれぞれの教科のねらいに沿って、少人数指導や「取り出し授業」の形態により、日本語の習熟の程度に応じた教科指導が可能である。
・ 以上を総合して、各学校が、生徒の実態に応じて、独自に相当時数を日本語指導に充てる特別な教育課程の編成が可能であると考える。 

学習評価について

・ 「特別の教育課程」による指導を受けた児童生徒の場合、在籍学級で行われている教科の「評価」との関係はどうなるのだろうか。学校現場には、「指導時数」と教科の評価の関係についての何らかの情報を提供していただきたい。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成25年03月 --