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(議事要旨)日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する検討会議(第1回)

1.日時

平成24年4月24日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館16階1会議室
(東京都千代田区霞が関3-2-2 中央合同庁舎第7号館東館16階)

3.議題

日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する今後の検討の方向性等について

4.出席者

委員
 佐藤座長,臼井委員,大蔵委員,佐々木委員,鈴木委員,築樋委員,松本委員
協力者
 近田委員,三好視学官
文部科学省
 中井国際教育課長,関課長補佐 外

5.議事要旨

○議事に先立ち,佐藤委員が本検討会議の座長に選任された。

【1】公立学校における日本語指導に係る「特別の教育課程」創設について

【座長】 まず,日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する今後の方向性等について,事務局から説明を頂きたい。

【文部科学省】 (配布資料3 P.1~7について説明)

【座長】 日本語指導の位置づけ方については,いろんな意見が出された。また在籍する学校以外での日本語指導についても議論があった。さらに,在籍校以外へ通級する際の,安全上の問題や費用負担の問題は留意事項として挙げられている。これらを踏まえて,この先どうするかが今回の検討会の課題である。

【文部科学省】 (配布資料3 P.8~12について説明)

【座長】 子供への日本語指導が注目されて20年近く経(た)つが,制度改革にまで踏み込もうとするのは初めてである。事務局から示された,日本語指導を「特別の教育課程」として位置付けるという方向性を踏まえながら,日本語指導が必要な児童生徒を対象にした指導の在り方について,自由に討論をしたい。

【委員】 特別の教育課程として位置付けるという案とは別に,習熟度別指導での対応という案が挙げられている。中学校の視点からは,教育課程の編成も必要だが,どちらかといえば,個々の差が大きいため,一人一人の習熟度に応じた対応を大事にしたいと考えるが,どうか。

【文部科学省】 習熟度別指導で対応できるかを検討したところ,一つは,「取り出し」指導を行う際,教科の内容を扱っていれば習熟度別指導といえるが,初期段階の例えば「あいうえお」を教えているような日本語指導の内容は,教科の習熟度別指導と整理するのは難しい。もう一つは,習熟度別指導は本来自校において1クラスを複数グループに分けたり,複数のクラスを編成し直したりすることで行われているものであり,特に散在地域で行われている自校外での指導について考えたときに,自校外での学習を習熟度別指導で行っているという拡大解釈は通りにくい。この2つの要素から,「特別な教育課程」として位置付けるという整理に至ったところである。

【委員】 日本語指導が必要な児童生徒が少ない地域に日本語指導を位置付けるためにも,新たな「特別の教育課程」として位置づけることが必要だと考える。

【委員】 「特別の教育課程」として位置づけることで,実際に国として予算が獲得できるのか。

【文部科学省】 制度として位置付けた際に,外国人児童生徒の課題に対してすぐ予算がつくというより,このような教育課題があることを政策課題として共有した後,初めて予算措置につながっていくかと思う。『外国人児童生徒受入れの手引き』でも触れているが,特に対象児童生徒が少ない地域においては,関心をまず喚起することも大きな効果だと思う。

【座長】 制度設計をするということは日本語指導を公立学校において保障するということであるから,我々も予算の獲得や周知徹底も是非協力していきたい。

【協力者】 「特別の教育課程」への位置づけは,大きな意味がある。外国人の子供は第二言語習得の過程であるというところに,日本人の子供と大きな違いがあることや,学習の困難さの質が違うことに,教員が気づかずに,日本人の子供と同じ対応をしてしまう。その結果,時間が確保されても,子供が思うように伸びなかったり,途中で挫折したりすることが多々ある。制度化によって教員の意識を変えることにもつながる。

【委員】 中学校でどちらかというと教科指導に軸を置いている立場からだが,他校での指導も含め全体的な立場で考えると,特別の教育課程で位置づけることで大きなメリットがあることを理解した。ただ,現段階では「特別の教育課程」が非常に混とんとしており,どのようなものになるのかが見えにくい。学校では教科学習につながる指導や,次の授業のための「取り出し」指導など,教科指導と非常につながった内容で指導を行っている。「特別の教育課程」に位置付ける内容として,初期指導に絞り込むのかどうか。現場で取り組んでいることをすべて許容していけるのか。

【委員】 制度的に一歩前進するためには,教育課程として位置づけていく方向で良いと思う。しかし実際には,「特別の教育課程」で指導を受けた子供の進路がどうなっていくかや,教室・指導者・教材・教科書の問題など現実的なことをどうするか。また指導と評価についても,大きな関わりがある。これらのことも十分議論して提示していかなければ,現場が混乱するおそれがある。

【文部科学省】 「特別の教育課程」とする範囲については,1 日本語能力の向上と2 在籍学級において日本語で各教科等の学習活動に参加できる能力の育成とあり,2 はJSLカリキュラムなど教科学習につなげるための指導も含むため,そこまで広く入る。児童生徒は,「特別の教育課程」のまま卒業するわけではない。学習指導要領に基づいている在籍学級での学習に戻るためのものである。その内容として,最初から教科につながる日本語指導の場合もあれば,初期指導の場合もある。また,日本語指導が必要な児童生徒ばかりが集まっている状態では,日本語指導のためだけということで習熟度別指導とは見なしにくい。ただし,日本語指導が必要な児童生徒が一部の教科を「特別の教育課程」で指導を受け,一部の教科を他の児童生徒と一緒にその理解の程度によって習熟度別指導で受けるという形態は考えられる。

【委員】 制度上打ち出していかないと,学校教育における日本語教育については教員の理解が得られないので有り難い。「特別の教育課程」を位置付けるに当たっては,特別支援のように個別の指導計画等を作成するなど指導者のノウハウが要求される。また,非常に長い期間を通じて在籍学級の授業の理解が難しい状態の児童生徒もいる。日本語指導が必要な児童生徒の全体数や小学生は減少している中で,中学生が増えているのは,在籍年数が長くなる一方,在籍学級で学力不振に陥っている子供たちが増えているという現状でもある。

【協力者】 「特別の教育課程」としての位置付けは非常に難しいが,一定の条件整備につながっていくだろう。何でもありでは制度にならないので,一定の方向性や留意点を示すことになるが,基準を示すということは一定の枠をはめることにもなり難しい。今後行う意見調査で,今後の検討に参考になるデータを収集することがポイントである。

 

【2】「特別の教育課程」として位置付ける日本語指導の在り方について

(指導内容,形態及び場所について)
【座長】 「特別の教育課程」として位置付けることについて,基本的な方向性としては了承されたと思うが,習熟度別指導を排除するものではないということを前提にしたい。次の論点として,具体的な指導の在り方について検討したい。初期の日本語指導や教科学習に参加できるための日本語の力をつけていく指導という点で,中学校の現状からの御意見をうかがいたい。

【委員】 中学校は3年間しかなく,出口の問題があるとよく言われる。日本語能力が不十分な子でも,初期指導を行いながら,並行して教科学習の内容をできる範囲で行っており,日本語指導に特化した時間はとれていないのが現状である。教科のある部分で「取り出し」指導をしたり,在籍学級に戻したり,多様な対応が中学校現場では行われているので,その多様性に「特別の教育課程」がうまくかみ合うのか。ただし「特別の教育課程」を位置づけることで,学校現場で認知されることは大切な視点である。

【委員】 日本語で各教科の学習活動に「参加できる能力」という考え方が良い。教科指導を通した日本語指導,教科指導から入る日本語指導というものがあることを認識してもらいたい。

【委員】 中学校の場合,仮に「特別の教育課程」を組んだ場合も,限られた時間数の中では,初期日本語指導を行いながら,教科学習についていけるための指導がイメージされる。ただ,例えば3年生で「特別の教育課程」の編成が必要な子供が入ってきた際,進路実現をするために評価をどうするかなども検討していく必要がある。全てのケースで通常の教育課程に戻っていくわけではない。

【委員】 中学校はそれまでの学習の積み上げもあるため,母語による指導によって教科内容を学習し,教科で使う一部の日本語を獲得しながら進路につなげていく場合もある。「特別の教育課程」によって日本語を勉強していくということではあるが,このような多様なケースがあることも考えていきたい。

【座長】 現場の多様性が「特別の教育課程」を位置付けることによって,どうなるのだろうかという意見に対し,事務局の見解はあるか。

【文部科学省】 「特別の教育課程」は,初期段階で集中して組む場合もあれば,特定の教科指導を行う場合もある。その子供にどのような指導が必要なのかを指導計画で明示することや,在籍学級との学習進度と対応させることなどを,「特別の教育課程」の中身の整備として必要だと考えている。

【座長】 基本として提案されているのは,教員が責任を持って正規の授業の中で指導を行うことと,児童生徒の実態に合わせて指導計画を組むことを可能にすることである。指導計画や指導記録の作成について御意見があるか。

【委員】 例えば特別支援が必要な子供が在籍学級にいて,通級指導を受ける際に「特別の教育課程」を組んでいるように,外国人の子供も「取り出し」指導については「特別の教育課程」として行い,在籍学級での「入り込み」指導については「特別の教育課程」ではないという整理の仕方でよいか。

【文部科学省】 特別支援教育における通級指導についてなど,従来ある制度との整合性を見ていく必要がある。どれだけの時間数を「特別の教育課程」として認めるかなどの検討課題もある。以前の会議では,特別支援教育と外国人児童生徒教育は似ているようだが異なるということに留意したいという御意見もあった。それらを踏まえて今後検討することとしたい。

【委員】 加配措置が行われていない地域では,何の支援も行われていないこともある。地域によって異なる状況があることを念頭において,今後の具体的な議論が大切である。

【座長】 自校における「取り出し」指導と他校での通級指導を同じ枠組みの中で考えていく必要があるのではという議論があるが,散在地域の中で少数の子供たちを通級させる「仕掛け」に関して,御意見を頂きたい。

【委員】 教員が巡回する形の方がむしろ多いのではないか。子供の場合には,市内循環バスの運行など通級のための移動手段が課題であり,教員の方が巡回する形の方がより現実的である。加えて地域ごとにセンター校を設置し,教員の指導のノウハウや教材を集約して,そこを拠点として域内に派遣することが考えられる。

(主たる指導者について)
【協力者】 指導者について「教員(又は教職経験者)」とあるが,教員1人が巡回できる時間数は限られており,地域格差が生まれるだろう。教職経験者という人材が加わることにより,指導の幅の広がりや,子供の認知発達や教育の総体なども踏まえた指導を行うことが期待でき,子供の教育が保障されるのではないかと考える。ただし教職経験者も1年目は戸惑いがあり,経験や研修を積み重ねることで力量を高めている。外国人児童生徒への指導の専門性が求められる。

【座長】 教員又は教職経験者というのは,どのように解釈すれば良いか。

【文部科学省】 「取り出し」指導を行う際の指導者について,どのような要件を考えるかということである。メインの指導者は教員とするが,その他に在籍学級への「入り込み」指導やTTなどには,地域人材や外部人材など,様々な方からの協力を得ることは,大いに考えられる。

【座長】 整理すると,1 教員ないし教職経験者が正規の授業の枠の中で日本語指導を行うということ,2 日本語指導については,子供の実態に応じた指導計画を作成し,初期日本語指導と,教科学習に参加できる能力を育成するための日本語指導を行うということ。つまり学校という場の中で責任を持って行うということであり,そのために「特別の教育課程」を組む際の要件を検討する必要があるということだろう。教育課程外や学校外における様々な支援や取組とは,区別して議論したい。

【委員】 子供たちの教育を保障していくという意味では,いい流れである。指導者については教員以外も認めるのであれば,拡大解釈できるように改めた方が,地域の実情に合う。しかし,指導の一定水準を保つということであれば,教員や教職経験者に絞ることも必要と思われるので,どのような要件を満たすものを認めるかという議論が必要である。

【文部科学省】 正規の教育課程に位置づけることにより,日本語指導に対する意識を形成していこうという面もある。現状をそのまま含めるだけでは,今の状況から変わらないという懸念もある。

【委員】 最近,国際交流協会などの研修では,日本語ではなく教科の指導方法を教えてほしいと言われるが,実際の対応が難しいことは認識する必要がある。一方日本語教師でも,教科指導が上手な人もいる。誰が評価をするかは別だが,指導力があると判断されれば臨時免許を与える方向で対応ができないか。

【協力者】 学校における外国人の子供の教育をどう考えるのかというときに,教育課程の中で教員が教えるというスタンスを動かさない方が,外国人の子供の人権も認めながら,教育を保障していくことにつながっていくのではないか。

【委員】外国人児童生徒の在籍の有無に関わらず受入れの体制を整えるために,全ての学校に校務分掌として外国人児童生徒教育担当を位置付けている自治体もある。急な編入生に対応するには,まず学校の中での日本語指導の位置づけをはっきりさせ,できるだけ早い時期にサポート体制を整えられるよう,教育委員会などで指導者を登録しておくなどの取組を進めていくことも必要なのではないか。

(他校における通級指導について)
【座長】 外国人を含めた日本語指導を必要とする子供の教育について,ボランティアや支援者の方々に大きく依存してきたのは事実である。今回は学校の授業の中に正規に位置づけるという提案であるが,放課後指導やTTや「入り込み」指導などを排除するものでは決してない。もう一つ「特別の教育課程」の中で,他校において個別又は小集団で日本語指導を行うという通級指導について,御意見を頂きたい。

【委員】 通級指導の場合,在籍をどこに置くかという点については,初期指導を集中的に1箇所で行っている自治体があるが,まず教育委員会で編入手続をとり在籍校を決め,そこからの通級という形をとっている。3か月後に在籍校に戻るので,学校長等が様子を見に行ったり,在籍校に戻す時期を初期指導教室の担当者と相談したりしている。どこにも在籍しないまま,虹の架け橋教室(定住外国人の就学支援事業)で学び,その後本来通学する学校に編入するという地域もあるが,通級指導形式が一般的だと思う。

【座長】 通級指導の際には,安全面・費用面の留意点が挙げられているが,その他に何か課題があるか。

【委員】 市の循環バスなどが整備されていると通いやすいが,地域によっては保護者の送迎が必要である場合も多いので,限られた地域の子供が恩恵を受けることになる。

(児童生徒の指導計画について)
【座長】 ただいま,委員より「個別の支援計画や指導計画が整っていることが大事である」との意見が出たが,他校の通級指導の場合も,指導目的をはっきりさせ,指導計画と指導実績があるところを「特別の教育課程」として認めていくという提案だろう。基本的な方向性として,「特別の教育課程」として位置付ける方向で,意見の一致を見ているだろうと思う。次回以降の検討事項となるが,指導時数や対象となる児童生徒の指導計画等について,具体的にどういうものをイメージしたら良いか,御発言いただきたい。

【協力者】 個別の指導計画と支援計画を各校で作成している特別支援教育の考え方が参考になるのではないか。『外国人児童生徒受入れの手引き』にも「コース設計」として記載されている。子供の実態は多様であるため,指導計画を立てる教員の力量が問われるが,まず仕組みとして整えた上で教員の資質向上を目指していくのが良いと思う。

【委員】 教科内容と密接に関係した日本語指導の場合,教科内容によって日本語指導の内容も異なってくる。それを教科の単元ごとに記載するとなると,膨大な量になってしまう。「特別の教育課程」としてどのように記載するのかを考えておく必要がある。

【委員】 『外国人児童生徒受入れの手引き』の「コース設計」のような指導計画をイメージしていた。ただし,初期指導の部分と教科指導の部分は分ける必要があるのではないか。

【座長】 指導計画については,次回の検討会議で試案を出し,それをもとに具体的な検討を行いたい。

【文部科学省】 先ほど巡回指導について話題となったので確認だが,以前の会議でも日本語指導を行う体制についてまずは自校における指導,自校で指導者が確保できない場合は巡回指導,それでも対応できない場合は他校通級という3ステップが要るという意見があった。巡回指導がどういう指導体制の区分に入るかというと,自校における「取り出し」指導となり,「特別の教育課程」を組む対象に整理される。

○最後に,次回検討会議の日程について事務局より提案がなされ,閉会。

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-- 登録:平成24年08月 --