平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【ワークショップ】
実施団体名【東京学芸大学】
名称 | ■平成19年度 【1】日本語指導担当教員のための外国人児童生徒教育“初任者”研修〜明日からできる,わたしの日本語指導教室づくり〜 【2】学校管理職のための外国人児童生徒教育研修〜まず,校長先生が味方になって〜 ■平成20年度 【3】「イチから学ぶ,外国人児童生徒教育と日本語指導」研修会(日本語指導担当者講座) 【4】「イチから学ぶ,外国人児童生徒教育と日本語指導」研修会(学校管理職講座) |
研修目的 | 本研修の目的は,外国人児童生徒の指導に携わる教諭,日本語指導員,学校管理職などが,外国人児童生徒教育や日本語指導,JSLカリキュラムなど,外国人児童生徒を指導する上で必要となる基礎的な知識を習得することである。そのために,日本語指導担当者向けの研修と学校管理職向けの研修の2種類を用意した。 具体的には,日本語指導担当者向けの研修(【1】【3】)では,外国人児童生徒教育の現状,指導上の留意点,日本語指導の方法,JSLカリキュラムを実践するための環境作り,日本語指導教室の運営上の工夫点,学校内での他の教員等との連携関係の築き方などについて,知識と理解を深めることを目的とした。 学校管理職向けの研修(【2】【4】)では,日本語指導教室や日本語指導担当者の現状を知ることによって,外国人児童生徒教育を進めていく上での学校経営上の留意点,他の教員に対する指導助言のあり方や啓発の方法,保護者や関係機関との連携のあり方など,指導環境を整備していく上での管理職としての役割について,理解を深めることを目的とした。 |
受講対象受講者数 | ・日本語指導を担当している教員など(日本語学級担当教員,日本語指導員など) ・外国人児童生徒が在籍する学校の校長,副校長,教頭など ・計40名 |
開催期日 | ■平成19年度(【1】計5日間,【2】計2日間) 【1】初任者研修(5月25〜27日),フォローアップ研修A(8月25日),フォローアップ研修B(2月2日) 【2】8月4〜5日 ■平成20年度(【3】計6日間,【4】計2日間) 【3】基礎研修(5月9〜11日),フォローアップ研修A(8月4〜5日),フォローアップ研修B(2月7日) 【4】5月9〜10日 |
実施内容及び講師 | 当センターで実施したワークショップの概要は以下の通りである。なお,実施内容及び講師の詳細は,別途【まとめ】のページにおいて記載した。 ■平成19年度 【1】日本語指導担当教員のための外国人児童生徒教育“初任者”研修 講義,演習,グループ討議,全体討議などを通して,日本語指導教室作りの方法,外国人児童生徒の実態把握及び個に応じた指導の方法,日本語指導(初期指導,JSLカリキュラム)の方法について,知識と技術の習得を図った。講師として講義や演習をリードしたのは,文部科学省「JSLカリキュラム作成協力者会議」メンバーであった当センター教員のほか,現在,小・中学校で外国人児童生徒の指導に実際に携わっている教員などである。 【2】学校管理職のための外国人児童生徒教育研修 講義と演習を通して,日本語指導担当者の職務内容や抱える課題などを知るとともに,学校管理職として自らが果たすべき役割や自校の課題を検討することによって,校内体制作りの方法について理解を深めた。 講師として講義や演習をリードしたのは,当センター教員のほか,外国人児童生徒が在籍する小・中学校の校長や,教育委員会で外国人児童生徒教育部門を担当し,実際に外国人児童生徒の在籍校に対して指導助言経験のある元指導主事などである。 ■平成20年度 【3】「イチから学ぶ,外国人児童生徒教育と日本語指導」研修会(日本語指導担当者講座) 講義,演習,グループ討議,全体討議などを通して,日本語指導教室の運営の方法,外国人児童生徒の個に応じた指導の方法,日本語指導(初期指導,JSLカリキュラム)の方法,日本語指導案と効果的な教材の作成方法について,知識と技術の習得を図った。また,JSLカリキュラムの目的を理解し,JSL指導を行うための授業力の向上を図った。 講師として講義や演習をリードしたのは,当センター教員のほか,現在,小・中学校で外国人児童生徒の指導に実際に携わっている教員などである。 【4】「イチから学ぶ,外国人児童生徒教育と日本語指導」研修会(学校管理職講座) 日本語指導担当者講座と一部プログラムを共有しながら,講義と演習を通して,日本語指導担当者の職務内容や抱える課題などを知るとともに,学校管理職として自らが果たすべき役割や自校の課題を検討することによって,校内体制作りの方法について理解を深めた。また,日本語指導担当者講座の受講者(実際に外国人児童生徒の指導や日本語指導に携わっている教員など)とともにグループ討議を行う機会を設け,他地域や他校の外国人児童生徒教育の様子や日本語指導担当者の実態についての情報の入手を図った。 講師として講義や演習をリードしたのは,日本語指導担当者講座の講師のほか,当センター教員,外国人児童生徒が在籍する学校の管理職経験者などである。 |
ワークショップを行う上で工夫した点や留意点 | ワークショップを行う上で,次の点を工夫ないし留意した。 ・ワークショップ参加後からすぐに実践に役立つような知識や技術の提供を心がけたこと。また,効果的に内容を理解してもらうため,講義,演習,参観など,多様な形態を組み合わせたこと。 ・日本語指導担当者向けのワークショップの場合,年間に3回,継続研修として実施することによって,受講者の抱える指導上の課題について,時期に応じた支援を行うよう心がけたこと。 ・ワークショップの演習時に,グループ編成を工夫したこと(抱える実践事例の類似性が高い受講者同士でグループ編成した場合と,多様な実践事例を持つ受講者でグループ編成した場合を,演習のテーマに応じて使い分けた)。また,グループ討議を密に行えるよう,グループを4〜5名程度の少人数で編成し,各グループに1名以上,講師を割り当てたこと。 ・講師として,外国人児童生徒の指導や日本語指導の経験が実際にある小・中学校の教員などを多く招いたこと。また,ワークショップで使用した演習資料なども,外国人児童生徒の指導経験のある教員の協力のもとで作成したこと。 ・受講者の研修ニーズを把握するため,数人の受講者の学校を訪問し,実際の指導場面を参観したこと。 |
成果 | ワークショップなどを通じて得られた成果は,大きくは次の3つにまとめられる。 ・日本語指導をはじめとする外国人児童生徒の指導に関して,知識や経験がなく戸惑いの多かった現場の担当者(学校管理職,教諭,日本語指導員など)に対して,体系的,継続的に,知識や技術の習得機会を提供することができたこと(平成19年度の受講者数41名に対し,平成20年度の受講者数92名の大幅な増加から,研修会の内容が受講者にとって有効であったことが推察される)。 ・研修の場を設けたことによって,現場の担当者同士のネットワーク作りの契機を生んだこと(その結果として,受講者同士あるいは講師と受講者との間で,互いの学校を訪問しあったり,実践を参観しあったりして,研修会の場だけでは得にくかった,より詳細な情報交換が行われていること)。 ・数多くの受講者や講師との情報交換を通じて,地域差や学校差の大きい外国人児童生徒教育の実態についてのデータを収集することができ,外国人児童生徒教育の充実を図っていくために,研究機関としての当センターが今後果たすべき役割と研究課題を明確にすることができたこと(本事業終了後も,引き続き当センターの独自事業として,教員研修会の実施を検討している)。 なお,平成19年度,20年度それぞれについて,当センターの実施したワークショップの講義録や講師配布資料などを掲載した『JSLカリキュラム実践支援事業報告書』を作成し,当日参加の受講者だけでなく,JSLカリキュラムや外国人児童生徒の指導に関心のある教員などが,JSLカリキュラムなどについて学習できるように配慮した。 |
課題 | ワークショップなどを通じて浮かび上がった課題は,大きくは次の2つである。 ・外国人児童生徒の指導や日本語指導に関する教員研修会を継続的に実施していくための体制作り ・年に数回の研修会の場だけでなく,日常的に現場の担当者などの指導改善に貢献するための,研究機関としての支援のあり方 |
総合教育政策局国際教育課
-- 登録:平成22年01月 --