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実施報告書【まとめ】姫路市教育委員会

平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】

実施団体名【姫路市教育委員会】

2年間の取組内容及び成果と課題

1.具体の取組内容

 姫路市における日本語指導が必要な外国人児童生徒は,平成19年9月1日現在、136名である。外国人児童生徒の在籍する学校は70校あり,当該児童生徒の在籍する学校は、小・中・特別支援学校28校にわたっており40%を占める。多くは,分散して在籍しているが,日本語指導を必要とする児童生徒が集中して5名以上在籍する学校が25%ある。
 また当該児童生徒の転出入が多く、その時期は年度途中突然であることが多い。最近,未就学であった児童生徒が在籍する場合も出てきている。その場合,生活言語はある程度習得できていても,学習言語はほとんど習得できておらず,学校生活に支障をきたしている。
 さらに,姫路市は以前からベトナム人の集住地域ではあったが,近年,登録外国人の国籍も多様化している。学校に在籍する児童生徒の国籍も多様化しており、保護者が外国にルーツをもつ児童生徒も在籍しており,突然に転入してきた場合に,適切な対応が困難になりつつある。
 このような状況の中,日本語指導の在り方については,JSLカリキュラムを活用し有効な実践・研究を行うため,2年間JSLカリキュラム実践支援事業を実施してきた。取組の柱として,平成19年度はJSLカリキュラムの理解・普及に,平成20年度はその活用に重点を置いて事業を推進してきた。
 以下は,この事業の取組の概要である。

【1】校内JSLカリキュラム実践推進委員会の開催

 校長,教頭,JSLカリキュラム研究推進委員,支援教員,学級担任,日本語指導協力者代表,市教育委員会担当者

【平成19年度】

 校内JSLカリキュラム実践推進委員会,校内研修会
 (6月・7月・9月・12月・2月の5回開催,6月・9月は校内研修会も開催)
 校内授業研究会
 (1月1回開催)

【平成20年度】

 校内JSLカリキュラム実践推進委員会
 (4月・5月・6月・9月の4回開催,6月は校内研修会も開催)
 校内研修会
 (11月1回開催)

【2】日本語指導担当者等研修会(ワークショップ)の開催

【平成19年度】

 姫路市日本語指導担当教員等研修会
 (8月1日~3日までの3日間開催,延べ80名参加)

【平成20年度】

 日本語指導担当者等研修会
 (6月4日,11月11日,2月17日の3回開催,延べ116名参加)

2.成果

【1】JSLカリキュラム実践研究校における推進委員会の開催と日本語指導の充実

  • 姫路市におけるJSLカリキュラム実践研究校では,在籍児童の10%が外国人児童でありその半数以上が日本語指導を必要とする児童である。推進委員会を開催することにより,日本語指導の相談・対応・推進等の窓口が一本化された。
  • 研修会への参加により,より良い実践を学び自校の実践の改善を図ることができた。また、日本語指導先進校の視察により,他校の取組や課題を知り,自校の課題解決への道を探ることができた。
  • 外部の日本語指導支援者を配置し,児童一人一人の実態・能力に合わせた指導を行うことができ,日本語習得が前進した。
  • 児童が,今まで以上に多くの指導者と出会い,日々のかかわりの中で「できる」こと,「できた,分かった」と感じることが増加し、自尊感情が高まった。

【2】ワークショップの開催と他市のワークショップへの参加

  • JSLカリキュラムについての基本的な概念・理論研修,授業研究等の研修を通して,外国人児童への日本語指導の方法等を学び,JSLカリキュラムを活用しようとする意欲が高まった。
  • 市内外からの参加者があり,参加者相互の取組の交流や悩みに関する情報交換もでき,「課題解決に向けての糸口がつかめ,参加できてよかった」という声が多く聞かれ、充実した研修会となった。
  • 「JSLカリキュラムを知ろう!‐日本語を母語としない子どものための学習支援を充実させるために‐」を印刷製本し,市立小・中・高・特別支援学校に配付することにより,外国人児童生徒の在籍や日本語指導を必要とする児童生徒の有無にかかわらず,JSLカリキュラムの理解・普及を図ることができた。
  • 市内外・県外からの参加もあり,外国人児童生徒教育にかかわるネットワークが広がった。
  • ワークショップ(授業公開)において,教科志向型・トピック型それぞれのタイプの授業公開を行い,平成19年度のJSLカリキュラムの理論研修からその活用へとステップアップした研修会を開催できた。
  • 日本語指導の必要性についての理解・認識が高まった。
  • 交流・支援の面から,民間の支援団体や姫路市国際交流協会・県内外の大学との連携をさらに深めることができた。
  • 平成19年度の小・中学校を中心としたつながりが,高校・大学まで校種が広がり,さらに民間の支援団体や県・市の国際交流協会,学習支援者,県・市教育委員会等とのネットワークが強力なものになった。
  • 外国人児童生徒の受入促進等についても,広域の視点からの研修ができ,参加者の視野が広まった。

【3】姫路市の日本語指導の充実

  • 2年間のJSLカリキュラム実践支援事業の推進により,外国人児童生徒の在籍する学校で,日本語指導の必要性が理解され認識されつつある。
  • 日本語指導に関する図書・資料等の購入により,日本語指導をより効果的に行うための環境を整えることができた。
  • 日本語指導を受けている市内のベトナム人が日本語能力を公開する場である「ベトナム語・日本語スピーチコンテスト」の開催も定着してきており,彼らの日本語活用能力を高めるための手立ての一つとなり,これも今まで築いてきたネットワークが生かされている。

3.課題

【1】日本語指導のさらなる充実

  • 日本語指導を必要とする児童生徒の日本語能力について的確な実態把握を行い,どのような支援をどのような方法で進めるのが効果的か見極める必要がある。
  • 日本語指導等の学習支援者を発掘し,できるだけ早い時期から長期間継続して配置する必要がある。
  • 日本語指導を充実させるための教材を蓄積したり開発したりするとともに,校内あるいは学校間で情報を共有し指導のための環境を充実させる。
  • 全教職員へのJSLカリキュラムの浸透と実践の推進を啓発する。
  • 指導者の日本語指導の技能を高める研修を定期的に行う。

【2】校内の日本語指導の推進体制の確立

  • 増加する外国人児童生徒及びその国籍の数に対応できるように校内での支援体制の確立について管理職や担当者の研修を行う。
  • 研修会への参加を呼びかけ,日本語指導の必要性について全職員が理解・認識を深める。
  • 校内の推進委員会を立ち上げ,情報交換及び課題解決への話し合いを定期的にもつ。

4.その他(今後の取組等)

 2年間の実践の中で,課題として浮かんできたことは,学校間の取組の格差である。日本語指導が必要な児童生徒に的確に対応した授業や学校運営が進められていないという現実があった。
 その課題を解消するためには,研修により関係者の意識を高める必要がある。また、指導者の転勤を視野に入れて,学校での組織的な取組を継続していくために,効果的な研修会を開催することが必要である。
 研修会の開催により,【1】対象児童生徒の生活言語・学習言語の習得状況の的確な把握,【2】日本語指導の必要性についての職員の理解,【3】日本語指導力の向上,【4】情報交換による課題解決への糸口発見等を図ることが必要である。
 また,同時に外国人児童生徒の受入促進に対する理解・多文化共生の精神を培う啓発活動の推進,外国人児童生徒の在籍校内での異文化理解の促進などの多文化共生に向けた取組の充実を図ることが必要である。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成22年01月 --