平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】
実施団体名【兵庫県教育委員会】
本県における日本語指導が必要な外国人児童生徒数は、平成19年9月1日現在、634名であり,近年減少傾向にある。しかし,当該児童生徒の在籍校数は218校と横ばい状況であり,従来の特定地域,学校に集中して在籍するとともに,近年は分散化傾向にある。
集住地域における学校では,日本語指導の内容や方法は蓄積されてきているが,在籍する外国人児童生徒の実態は多様化しており,一人一人に対応したきめ細かな指導ができにくいという課題がある。一方,分散地域における学校では,日本語指導の経験が浅いため,日本語指導が必要な外国人児童生徒が転入した場合,適切に対応できにくいという課題がある。
そのため,日本語指導の在り方については,平成16~18年度,日本語指導研究推進校を4校指定し,日本語指導の在り方について実践的な研究を行った。しかし,指導の在り方を示した段階にとどまり,日本語指導に関する指導案やワークシートの作成までには至っていない。また,各学校の日本語指導は,試行錯誤の中でそれぞれ独自の取組を進めている状況である。
そこで,平成19・20年度,文部科学省「JSLカリキュラム実践支援事業」の委嘱を,兵庫県、神戸市,芦屋市,伊丹市,姫路市の5地域で受け,県内の公立小学校3校,中学校1校,中等教育学校1校,計5校において,本事業の研究推進を行ってきた。
事業実施にあたっては,組織的・計画的な取組となるよう,JSLカリキュラム実践支援事業連絡協議会(構成員:大学教員,国際交流協会日本語教育指導員,市教育委員会担当指導主事,研究推進校担当教員)を平成19年度は4回,平成20年度は3回,計7回開催し,JSLカリキュラムを活用した日本語指導の在り方について,日本語指導の専門的な観点から助言を受け,研究 協議や情報交換等を行った。
また,JSLカリキュラムを活用した指導方法の普及を図るため,「日本語指導担当教員等研修会」(ワークショップ)を平成19・20年度とも2日間ずつ開催した。さらに,各学校においてJSLカリキュラムを活用した日本語指導を推進するリーダーを養成するため,平成20年度,「日本語指導リーダー養成講座」(ワークショップ)を3日間開催した。
以下は,この事業の取組概要である。
各研究推進校においては,JSLカリキュラムを活用した授業実践を行うとともに,平成20年 度は研究授業・公開授業を行い,相互に見学をし,JSLカリキュラムを活用した日本語指導の あり方について情報交換を行った。
第1回:講義及び情報交換(7月10日)
・JSLカリキュラムを活用した日本語指導のあり方について
第2回:研修報告(10月23日)
・教員研修センター主催日本語指導指導者養成講座
・文部科学省主催外国人児童生徒教育研究協議会
第3回:事業及び実践報告(1月15日)
第4回:事業及び実践報告と研究協議(2月3日)
第1回:事業・実践状況の報告及び研究協議(9月16日)
第2回:日本語指導研究中間報告及び指導(12月9日)
第3回:JSLカリキュラム実践支援事業の総括(2月3日)
第1回:講義及び協議(11月15日)
・日本語指導が必要な外国人児童生徒の理解と学校の受入体制の整備
第2回:講義及び演習(12月17日)
・JSLカリキュラムを活用した日本語指導のあり方
・指導案作成
第1回:講義及び協議(7月1日)
・外国人児童生徒への日本語指導のあり方
第2回:講義及び演習(8月5日)
・JSLカリキュラムを活用した日本語指導のあり方
・指導案作成
第1回:講義・実践発表・演習(10月24日)
・JSLカリキュラムの考え方を踏まえた授業づくり
第2回:講義・実践発表・演習(11月14日)
・JSLカリキュラムによる教科指導
第3回:講義・実践発表・演習(11月28日)
・効果的なJSL指導の実現に向けて
JSLカリキュラム実践支援事業連絡協議会を開催し,日本語指導の専門的な観点から指導助言を受けることにより,JSLカリキュラムを活用した日本語指導の充実を図ることができた。
兵庫県及び関係市合わせて,平成19年度7日間,平成20年度19日間のワークショップ(日本語指導担当者研修会,日本語指導リーダー養成研修)を開催し,JSLカリキュラムの普及を図ることができた。
平成19・20年度,JSLカリキュラムを活用した授業実践にあたっては,学校を中心に県・市教育委員会,国際交流協会,日本語指導担当者,日本語ボランティア等が連携し,ネットワークを活用した事業の推進を行うことができた。具体的には,財団法人兵庫県国際交流協会の主催する「日本語指導ボランティア養成講座」に参画し,関係団体とともにJSLカリキュラムを活用した日本語指導についての理解を深めることができた。
平成19年度,神戸市,芦屋市においては,日本語指導を専門とする大学教授の指導を受け,カリキュラム開発について研究を深めることができた。平成20年度は,加えて伊丹市,姫路市,県立芦屋国際中等教育学校においても日本語教育を専門とする大学教授等を招き,研究を深めることができた。
研究推進校5校の取組により,日本語指導専門家等からの指導助言を受けながら,JSLカリキュラムを活用した実践事例を開発することができた。
また,開発に携わった指導者が,日本語指導リーダー養成研修会で講師をつとめるなど,実践事例の普及にあたった。
さらに,研究推進校や日本語指導リーダー養成研修会で作成された優れた実践事例を子ども多文化共生センターホームページに掲載し,JSLカリキュラムの普及と活用を図っている。
学校の日本語指導の核となる担当者が転勤等により分掌を離れ,その後を担う後継者が十分に育成されていないという課題がある。学校の日本語指導のリーダーとなる人材育成に焦点をあてた研修の充実が求められる。
JSLカリキュラム実践支援事業等で研究・開発した実践事例や日本語指導担当者研修会等の研修内容などを広く県内の各学校へ発信し,校内においてJSLカリキュラムの周知や外国人児童生徒への教育の充実を図っていく必要がある。
JSLカリキュラムに基づく効果的な実践事例を,VTRなどの機器を活用しながら、多くの指導者に具体的に提示し,指導者の意欲や技能をさらに高める必要がある。
学校や日本語指導を行っているボランティアの中にはJSLカリキュラムの研究や実践に主体的に取り組むグループが芽生えつつある。これらのグループと連携し,JSLカリキュラムの普及を図るとともに,ネットワークを活用し地域で日本語指導など外国人児童生徒の教育を推進する必要がある。
総合教育政策局国際教育課
-- 登録:平成22年01月 --