CLARINETへようこそ

実施報告書【まとめ】大阪府教育委員会

平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】

実施団体名【大阪府教育委員会】

2年間の取組内容及び成果と課題

1.具体の取組内容

 大阪府内の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒数は,平成19年度9月調査で小学校では745人,中学校では358人,高等学校では213人の合計1,316人となっており,年々増加している。言語別では,中国語を始め,アジアの言語の割合が非常に高いことが本府の特徴となっているが,近年は,その言語数も増加し,居住地域についても,府内広域に分散化する傾向が見られる。
 日本語指導が必要な児童生徒にとっては,生活する上で必要な日本語を習得するだけでなく,学習に必要な言語の習得や,進学・就職等の進路選択,児童生徒と保護者の使用言語が異なることによる家族内のコミュニケーションの問題など,多様な課題がある。
 このような状況を踏まえ,生活言語や思考言語の習得のために「JSLカリキュラム」を活用した指導実践と教員の指導力向上を目的としたワークショップを以下のように進めた。

【1】「JSLカリキュラム」周知のための取組

(1)「JSLカリキュラム」ワークショップ
「JSLカリキュラム活用読本」および「AU(アクティビティ・ユニット)一覧」を作成し配付した。 
「JSLカリキュラム」ワークショップを府内および他府県で実施した。
・府内各地区および全体会<平成19年度・5回・531人,平成20年度4回・129人>
・他府県<平成19年度・奈良県・40人,平成20年度・和歌山県・30人>     

(2)事業担当者連絡会
市町村教育委員会における帰国・外国人事業担当者に「JSLカリキュラム」について研修を実施した。
・平成19年度・1回・府教育センター・40人,
・平成20年度・2回・府教育センター・80人  

(3)日本語指導担当者連絡協議会(小学校)(中学校)(高等学校)(合同)
各校種における日本語指導担当者に,「JSLカリキュラム活用読本」および「AU(アクティビティ・ユニット)一覧」を配付し,「JSLカリキュラム」について研修を実施した。
・平成19年度・4回・府教育センターおよびクレオ大阪西・194人
・平成20年度・3回・府教育センター・192人

【2】「JSLカリキュラム」実践研究のための取組

(1)「JSLカリキュラム」プロジェクトチーム研修・交流会,学習会
JSLカリキュラムを活用した指導方法の普及・充実を図ることを目的とするワークショップにおいて,指導・助言が行えるように,プロジェクトチームメンバーの指導力向上を目指した。
・平成19年度・4回・府教育センター・80人
・平成20年度・3回・府教育センター,浪速人権センター,大阪ガーデンパレス
60人

(2)先進地区・先進校での訪問協議
「JSLカリキュラム」先進地区・先進校を訪問し,府内及び近隣府県におけるワークショップの効果的な実施や「JSLカリキュラム」を活用した指導方法を取り入れ,普及・充実を図った。
・平成19年度・5回
久留米市立南薫小における九州地区のワークショップ
京都市立池田小,神戸市立本庄小,横浜市立いちょう小,岡山市立岡山中央小
・平成20年度・2回   京都市立小栗栖小,東浦町立石浜西小,

(3)日本語力調査
「JSLカリキュラム」の実践をより効果的な形で進めるために,児童生徒の日本語力について,特に課題となる読解力に焦点を当てた調査を行った。
JSLカリキュラムにおいてアクティビティ・ユニット(AU)をその評価基準表の中に位置づけることによって,児童生徒の読解力の実態との関係性を明らかにし,児童生徒に対して何をどのように教えるべきか再検討を行い,授業作りの指標とした。

【3】研究実践指定をした門真市での取組

(1)大阪府教育委員会及び門真市教育委員会,3校(砂子小学校・脇田小学校・第四中学校)の教職員,学識経験者・通訳者などで構成する『門真市JSLカリキュラム研究事業推進連絡協議会』を1か月に2~3回程度実施し,授業案や授業づくりについて検討・検証を重ね,検討された指導案に基づいて,各校で研究授業を行った。
 また,その連絡協議会の中に事務局を設け,年度計画及び研究発表大会や研究紀要作成などの調整を図り,事業を推進した。

(2)各校において,児童生徒の実態の把握とともに課題解決に向けて,校内研究委員会を中心にしながら,全教職員でJSLカリキュラムの取組を進めた。
 また,平成19年度より2年間,校内研究組織に「JSLカリキュラム研究」を中心課題として位置づけた。  

(3)3校の授業研究には,京都大学・大阪産業大学非常勤講師の櫻井千穂先生を始めとして,継続的に大学などの研究者を招聘した。
 また,門真市全体の教職員対象の学習会や講演会を行い,3校以外にもJSLカリキュラムの普及を図った。

(4)3校合同の「JSLカリキュラム研究発表大会」を開催して,門真市内の学校だけでなく,他の地域の学校にも2年間の研究成果を発信し,JSLカリキュラムの普及を図った。

2.成果

【2】「JSLカリキュラム」周知のための取組

(1)「JSLカリキュラム」ワークショップ
 計11回。のべ700人を超える参加者があり,府内外で「JSLカリキュラム」について広めることができた。

(2)事業担当者連絡会
 計3回。「JSLカリキュラム」についての周知ができた。

(3)日本語指導担当者連絡協議会(小学校)(中学校)(高等学校)(合同)
 計7回。「JSLカリキュラム」について具体的な周知ができ,授業で取り入れるための啓発ができた。ワークショップへの参加希望者が増加した。 

【2】「JSLカリキュラム」実践研究のための取組

(1)「JSLカリキュラム」プロジェクトチーム研修・交流会
 「JSLカリキュラム」についての学習や,「JSLカリキュラム活用読本」および「AU(アクティビティ・ユニット)一覧」の冊子を作成し,実践研究に活用できた。また,ワークショップでの指導案の検討などで,参加者への指導助言ができた。

(2)先進地区・先進校での訪問協議
 ワークショップの効果的な実施及び実践研究を進める参考となり,ワークショップの運営や指導案作成などに生かすことができた。

(3)日本語力調査
 分析結果をもとに,児童のレベルにあったリライト文を作成し,「JSLカリキュラム」を活用した授業の教材を作成し,日々の授業に活用した。また,個々の児童生徒の特徴を共有し,読解力を付ける指導に生かすことができた。

【3】研究実践指定をした門真市での取組

(1)3校合同で研究を進めるにあたり,授業研究や指導方法及び研究発表会など,小・中学校が連携して進めていくことを基本としたことにより,中学校区の教職員の連携と小・中一貫 のカリキュラムの考え方を学ぶことができた。

(2)JSLカリキュラムの活用により,児童生徒の読解力の向上を目指し,指導方法の工夫などの研究に取り組んだ結果,日本語指導が必要な児童生徒にわかりやすい授業ができ,子どもたちが主体的に学習する姿勢が見られるようになった。

(3)3校の日本語指導担当教員を中心に研究を進め,職員全体でJSLカリキュラムの研究に取り組むことができた。

(4)「授業を変えれば,子どもが変わる」というテーマで,3校合同での研究発表大会を開催し,公開授業や全体会での実践発表などを通して,研究成果を発信したことは,今後の「JSLカリキュラム」の指導方法の普及・充実に効果的だったと考えられる。

3.課題

【1】「JSLカリキュラム」周知のための取組

府内の少数点在地域や近隣府県でのワークショップの開催の実施が難しかった。地域の状況に応じて,具体的な指導方法の実践例の紹介の必要性があり,指導案の作成や実践交流だけではなく,公開授業を実施することで,周知することとした。

【2】「JSLカリキュラム」実践研究のための取組

日本語調査については,引き続き,児童生徒の読解力を詳細に分析し,学校現場での指導に役立てていく必要がある。

【3】研究実践指定をした門真市での取組

(1)日本語教室での授業を中心とした研究とともに,在籍学級とも連携した授業づくりについて,今後も,さらに研究していく必要がある。

(2)JSLカリキュラムについては,全ての児童生徒の指導にも有効活用できると思われるため,日本語指導担当者だけでなく,他の学校・教職員へも周知していくことが大切である。

(3)誰にとってもわかりやすい授業は,子どもの学習意欲や集中力を高め,学習成果を上げることができるので,渡日児童生徒の多い学校では,今後も継続してJSLカリキュラムの研究に取り組んでいく必要があると思われる。

(4)JSLカリキュラムは,基本的には初期の日本語指導後の導入を目標にしているが,実際には渡日児童生徒の言語能力や発達段階が異なるため,指導にあたっては児童生徒個人の日本語における読解力を的確に把握しておくことが重要である。

4.その他(今後の取組等)

【1】「JSLカリキュラム」周知及び実践研究のための取組

日本語指導が必要な児童生徒だけでなく,全ての児童生徒の学ぶ力の育成につながる「JSLカリキュラム」の効果的な周知及び実践研究を継続的に実施する。

【2】研究実践指定をした門真市での取組

(1)JSLカリキュラムの有効性をさらに広めるため,次年度以降にも門真市教育研究会や人権教育研究会などを利用して,実践報告の機会を設ける。

(2)研究した3校を中心にJSLカリキュラムの実践・啓発に継続して努める。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

Adobe Readerのダウンロード(別ウィンドウで開きます。)

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、まずダウンロードして、インストールしてください。

-- 登録:平成22年01月 --