平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【ワークショップ】
実施団体名【福島市教育委員会】
名称 | 文部科学省指定「JSLカリキュラム実践支援事業」研修会 |
研修目的 | 「学校におけるJSL(第2言語としての日本語)カリキュラム」を活用した指導方法の普及・充実を図るため,JSLカリキュラムを活用した指導実践を行い,効果的な実践事例を全国に発信するとともに,教員の指導力向上を目的としたワークショップを開催し,地域におけるJSLカリキュラムに関する普及活動の継続的な実施を促進する。 |
受講対象 受講者数 |
1 受講対象者 実施小・中学校教頭・授業実施教諭等,授業サポーター,国際交流協会職員,県内外のJSLカリキュラムを研修希望する教職員や大学生など 2 受講者数 (1)平成19年度 第1回受講者数 47名 第2回受講者数 50名 第3回受講者数 49名 第4回受講者数 24名 第5回受講者数 23名 (2)平成20年度 第1回受講者数 34名 第2回受講者数 23名 第3回受講者数 17名 第4回受講者数 23名 第5回受講者数 19名 合計10回延べ309名 |
開催期日 | 平成19年7月31日~平成20年10月16日(計10日間) |
実施内容及び講師 | 平成19年度 第1回研修会 ・日時:平成19年7月31日(火曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 301号室 ・講師名 池上 摩希子(早稲田大学大学院日本語教育研究科准教授) ・講話題 「JSL児童生徒教育の現状と課題‐受入れ体制とJSLカリキュラムをめぐって」 ・内容要旨:「JSLカリキュラム」の概要,特に「トピック型」と「教科志向型」,AU(Activity Unit)カード,どんな「力」をどのようにつけるのかなどについて研修した。 第2回研修会 ・日時:平成19年8月17日(金曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 第2ホール ・講師名 大蔵 守久(財団法人波多野ファミリースクール執行理事・主管) ・講話題 「外国人児童生徒への学習指導方法の在り方」 ・内容要旨:授業づくりの《道具》としてのJSLカリキュラム,AU(Activity Unit) カードの活用,教科内容・教科概念用語・学習活動用語,JSLの授業の組立,理解支援・表現支援・記憶支援,さらに具体的支援方法5原則について研修した。 第3回研修会 ・日時:平成19年9月4日(火曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市蓬莱学習センター分館 ・講師名 関口 明子(社団法人国際日本語普及協会地域日本語教育担当理事) ・講話題「JSL対象の子どもたちへの具体的な指導にあたっての考え方と指導法」 ・内容要旨:各地区の日本語教室,生活言語能力(BICS)と学習言語能力(CALP),ことばの発達と認知能力の発達,核となる言語の確立,自己表現・思考に用いられる言語,自文化の確立と自己のアイデンティティ,生活・学習言語の語彙量,構文力,漢字学習と教科語彙を関連などについて研修を行なった。 第4回研修会 ・日時:平成19年9月21日(金曜日)13時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 401号室 ・講師名 金子 正人(横浜市教育センター研究研修指導課 指導主事) ・講話題 「JSLカリキュラムを使用した指導案の作成【1】」 ・内容要旨:福島県の在住外国人,福島県の国際交流,在籍学級でのJSLカリキュラムの活用,日本語の負荷を軽減させ,外国につながる子どもたちを生かす活動・単元作りについて研修を深め,実際に指導案を作成した。 第5回研修会 ・日時:平成19年9月28日(金曜日)13時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 401号室 ・講師名 菅原 雅枝(東京学芸大学附属国際中等教育学校日本語担当講師) ・講話題 「JSLカリキュラムを使用した指導案の作成【2】」 ・内容要旨:JSL対象生徒の日本語力,経験・知識をもとにした支援,具体物を使って行なう学習活動,母国での経験・知識を生かせる場を設ける配慮,理解・表現・記憶・自立・情意の各支援とその具体的例について研修を深めた。 平成20年度 第1回研修会 ・日時:平成20年7月31日(木曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 301号室 ・講師名 田所 希衣子(宮城県仙台市外国人の子ども・サポートの会事務局) ・講話題「外国人児童生徒へのサポートのあり方」 ・内容要旨:臨界期前に来日,臨界期後に来日,日本生まれの3つの子どものタイプで問題点を考えた。また,サポートの前に,2つの言語と文化を持っていることを尊重すること,温かい心と冷静な目でサポートすること,大人との違い,伝え方の工夫などを研修した。 第2回研修会 ・日時:平成20年8月20日(水曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 501号室 ・講師名 山中 文枝(茨城県神栖市立植松小学校教諭) ・講話題 「JSLカリキュラムによる授業実践と指導」 ・内容要旨:通常学級でも活用できる授業の実践として「やさいを育てよう」という教材単元の1時間を体験研修した。多くの教材から,種と花と実の組み合わせについて考えたり,観察カードへの工夫について研修したり,視聴覚教材の大切さや,言葉以外の手がかりの重要性を理解した。また,行政と学校と地域が協力して子どもの成長にかかわる必要性を再認識した。 第3回研修会 ・日時:平成20年9月1日(月曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 501号室 ・講師名 市川 昭彦(群馬県大泉町立東小学校教諭) ・講話題 「算数科の指導とJSLカリキュラム」 ・内容要旨:取り出し指導を中心に,児童一人ひとりの実態を十分に汲み取った方法で,折れ線グラフ・円・分数の指導を研修者を児童に見立てて実際の授業を体験研修した。 第4回研修会 ・日時:平成20年9月22日(月曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 501号室 ・講師名 菊池 聡(神奈川県横浜市立いちょう小学校教諭) ・講話題「JSL対象の児童生徒への具体的な指導についての考え方と指導法」 ・内容要旨:国際教室での2つの実践(トピック型と教科志向型)の紹介とAUを十分に 活用した指導,教室環境や指導手順についても理解を深めた。 ・講師名 齋藤 ひろみ(東京学芸大学准教授) ・講話題 「JSLカリキュラムについて」 ・内容要旨:菊池先生の実践の意味について理解を深めた。子どもの知識体系(スキーマ)と言葉で表現することについて研修を深めた。 第5回研修会 ・日時:平成20年10月16日(木曜日)14時~16時30分 ・場所:福島市市民会館 401号室 ・講師名 近田 由紀子 (静岡県浜松市立瑞穂小学校教諭) ・講話タイトル 「JSL対象の児童生徒への学習指導方法のあり方」 ・内容要旨:JSL対象児童への丁寧な支援・指導と在籍学級での他の児童へのよい影響,外国人指導学級の立ち上げについてや保護者との関わり方について研修を深めた。 |
ワークショップを行う上で工夫した点や留意点 | 平成19年度,平成20年度とも研修会の案内は北海道・東北の各道・県教育委員会に通知すると同時に県内各市町村に案内を送付した。 平成19年度はJSLカリキュラムについての理論を学ぶこと,さらに指導案作成についての研修を深めようとした。平成20年度は実際の授業について実践例を具体的に学ぶことを中心とした。また,教員・サポーターとしての心得や児童生徒に対する支援方法についての配慮や工夫などについて研修を深めた。 |
成果 | 平成19年度の研修ではJSLカリキュラムの概略とAUについての理解を深めることができた。生活言語と学習言語について配慮するようになり,児童生徒の学習実態を再確認し,支援のあり方について工夫がなされるようになった。平成20年度は,さらに体験的に授業に参加し,具体的な支援の在り方や児童生徒理解の方法について研修が行われ,実際の授業で視聴覚教材への工夫やJSL対象児童生徒を授業で生かす場面がよく見られるようになった。 |
課題 | 本市ではほとんどが在籍学級における指導であるため,JSL対象児童生徒の担任や担当している教員だけでなく,JSLカリキュラムについて各学校で推進できるようにしなければならない。現在まで取り組んできた研修会や授業実践の成果を,本市を中心にさらに普及・促進させる必要がある。 |
総合教育政策局国際教育課
-- 登録:平成22年01月 --