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実施報告書【まとめ】福島市教育委員会

平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】

実施団体名【福島市教育委員会】

2年間の取組内容及び成果と課題

1.具体の取組内容

【1】ワークショップの通知・開催

(1)ワークショップの通知
 平成19・20年度ともに,北海道・東北で唯一のJSLカリキュラム実践支援事業であることから,北海道・東北各道県へワークショップ開催について通知した。また,福島県については各市町村へ開催通知を送付した。その結果,秋田県,岩手県,宮城県からもワークショップへの参加があった。また,茨城県からは学生が参加した。さらに,県内からは伊達市,郡山市,須賀川市,会津若松市,喜多方市等から,教員だけでなく,サポーターの参加も多数あった。県内外への研修の機会提供という役目を果たす実践となったと考えられる。

(2)ワークショップの開催
 ワークショップの内容については,別添「ワークショップの開催について」で示したとおりである。
 平成19・20年度とも各5回の研修を行う機会を設定できた。平成19年度前半はJSLの概論を学び,後半は指導案の形式等について研修を深めた。平成20年度は主に実践的な研修会を目指し,サポーターの視点からの対象児童生徒との関わり方,在籍学級での指導や取り出し指導における指導法等について研修を積んだ。
 各ワークショップにおいて講師を務めた先生はそれぞれの分野を専門的に研究したり,授業でJSLカリキュラムを実践しているので,充実した研修会となった。                  

【2】授業実践

(1)平成19年度授業実践
 小学校7校,中学校7校 JSL対象児童生徒在籍の各学級で各4回の授業実践を行い,計140時間実施した。在籍学級の全授業(132時間)において支援者を派遣した。すべての授業が教科志向型のJSLカリキュラムであった。

(2)平成19年度授業実践内容(各学級4回の授業実践)
 小学校では国語科と算数科において,中学校では国語科,社会科,数学科,理科,英語科でJSLカリキュラム対象児童生徒の指導支援を行なった。
 平成19年度においては,小学校7校19学級でタガログ語5名,中国語10名,米語1名,モンゴル語1名,ビサヤ語2名,中学校7校14学級でタガログ語2名,中国語11名,ビサヤ語1名,計14校33学級で,中国語21名,タガログ語7名,ビサヤ語3名,米語1名に対して,サポーターを派遣した。なお,小学校1学年が6名,2学年が1名,3学年が3名,4学年が4名,5 学年が2名,6学年が3名であった。また,このほかに2つの取り出し指導学級にもサポーターを派遣した。サポーターは福島市都市間交流室を通して福島県国際交流協会に派遣を依頼した。
 サポーターの対象児童生徒への主な支援内容は授業中の通訳である。生活言語がある程度は理解できるが,学習言語の理解が難しい実態であり,サポーターの訪問回数は少ないが,学習の方法も含め,授業中の通訳として,また,学習相談者としてサポートした。

(3)平成20年度授業実践
 小学校7校,中学校6校JSL対象児童生徒在籍の各学級で各12回の授業実践を行う計画で実践した。打合せを含めて計262時間サポーターを派遣した。平成19年度に引き続き,授業は教科志向型のJSLカリキュラムであった。

(4)平成20年度授業実践内容 (各学級12回の授業実践)
 小学校では国語科,社会科,算数科,理科,中学校では国語科,社会科,数学科,理科,英語科でJSLカリキュラム対象児童生徒の指導支援を行なった。
 平成20年度においては,小学校7校14学級でタガログ語3名,中国語9名,韓国語1名,モンゴル語1名,ビサヤ語3名,中学校6校7学級でタガログ語2名,中国語3名,ビサヤ語2名,計13校21学級で,中国語12名,タガログ語5名,ビサヤ語5名,韓国語1名に対して,サポ ーターを派遣した。なお,中学校1学年が2名,2学年が4名,3学年が1名であった。平成19年度と同様にサポーターは福島市都市間交流室を通して福島県国際交流協会に派遣を依頼した。
 サポーターの対象児童生徒への支援内容も平成19年度と同じように主に授業中の通訳である。各学級に12回訪問したため,平成19年度と比べ,サポーターと対象児童生徒との信頼関係もさらによくなり,対象児童生徒の授業への意欲もさらに高まり,対象児童生徒以外の児童生徒へのよい影響も見られた。

(5)授業公開
 各学校各学級で授業公開を行い,JSLカリキュラムの実践の在り方を当該校や市内の教員の研修の機会とした。大学の先生から授業後に指導助言をいただく機会も得た。

【3】JSLカリキュラム関係書籍の配付

 福島市内各小学校には「学校教育におけるJSLカリキュラムの開発について(最終報告)小学校編(文部科学省)」を平成15年度に配付したが,平成19年度にはJSL対象児童在籍 の小学校へ『外国人児童の「教科と日本語」』シリーズ全5冊(解説,国語,社会,算数,理科)を配付し,研修の資料とした。また,各中学校へは「学校教育におけるJSLカリキュラムの開発について(最終報告)中学校編(文部科学省)」を各教科全5冊(国語,社会,数学,理科,英語)に分冊して配付し,研修の資料とした。また,平成20年度には「にほんごをまなぼう」(文部省)を福島市内全小・中学校に配付した。

【4】研修視察 (平成19・20年度実施)

(1)目的
 文部科学省指定「JSLカリキュラム実践支援事業」の一環として,福島市立小・中学校のJSL対象児童生徒の学級担任等が,先進的な教育委員会,研究実践校での研修を通して,日本語教育を必要とする外国籍児童生徒への指導状況及び学習状況等への理解を深め,その成果を本市におけるJSL対象児童生徒への教育に役立てる。

《平成19年度》

(2)期日 平成20年2月14日(木曜日),15日(金曜日)

(3)研修視察校等 

 (ア)群馬県太田市教育委員会,太田市立小・中学校 (2月14日)
 a 群馬県太田市立旭小学校(10時30分~12時30分)
 〒373‐0816 群馬県太田市東矢島町1249 TEL 0276‐46‐3463
 b 群馬県太田市教育委員会(12時45分~13時20分)
 c 群馬県太田市立旭中学校(13時30分~15時30分)
 〒373‐0816 群馬県太田市東矢島町1082 TEL 0276‐48‐5631

 (イ)横浜市教育委員会,横浜市立いちょう小学校(2月15日)
 a  横浜市教育委員会(10時00分~11時30分)
 〒231‐0017 横浜市中区港町1‐1
 横浜市教育委員会事務局学校教育部小中学校教育課  TEL 045‐671‐3588
 b  横浜市立いちょう小学校(13時45分~15時45分)
 〒245‐0018 横浜市泉区上飯田町3220‐4 TEL 045‐803‐1664・8625

(4)参加者 小中学校教諭4名,担当指導主事1名

《平成20年度》

(2)期日 平成21年2月18日(水曜日),19日(木曜日)

(3)研修視察校等

 (ア)埼玉県ふじみ野市教育委員会,ふじみ野市立小学校 (2月18日)
 a 埼玉県ふじみ野市立上野台小学校(10時30分~12時00分)
 〒356‐0011 埼玉県ふじみ野市福岡1丁目2番1号 TEL:049‐261‐1415
 b 埼玉県ふじみ野市教育委員会(13時30分~15時00分)
 〒356‐8501 埼玉県ふじみ野市大井中央1‐1‐1 TEL:049‐261‐2611

 (イ)東京都八王子市教育委員会,八王子市立第六小学校,打越中学校(2月19日)
 a 東京都八王子市立第六小学校(11時00分~12時30分)
 〒192‐0904 東京都八王子市子安町2丁目19‐1  TEL:042‐642‐4206
 b 東京都八王子市立打越中学校(13時30分~15時00分)  
 〒192‐0911 東京都八王子市打越町349‐1  TEL:042‐645‐3046

(4)参加者 小中学校教諭等6名,担当指導主事等2名

2.成果

【1】JSL対象児童生徒について

 サポーターが参加する授業では,学習言語を学ぶ,あるいは授業の進め方を理解する機会として貴重な時間となった。単なる通訳としてだけでなく,疑問を母語により理解してから日本語を学ぶことで,日本語の意味理解がより確かなものとなった。
 在籍学級において,他の児童生徒から認められる機会を支援の一環として与えられるため,自己有用感や自己存在感を得ることができ,学習や生活に意欲的に取り組む場面が増した。

【2】他の在籍児童生徒について

 授業中,JSL対象児童生徒への配慮として,困っていることがあれば助けてあげようとする児童生徒の姿がよく見られた。
 対象児童のために視覚的な工夫や体験的な学習を取り入れたことで,授業に対する意欲が高まった児童生徒がいた。

【3】教職員・サポーターについて

 JSLカリキュラムの理論と実践を研修することにより,在籍する対象児童生徒への指導の在り方を研修し,授業への工夫が今まで以上に行なわれた。
 特に,サポーターを迎える場合には,授業のあり方について今一度考えたり,サポーターから対象児童生徒の情報を知る機会を得たり,前回とどのように変容しているかを話し合ったりすることができたために,児童生徒への理解が進んだ。特に,授業担当教員とサポーターとが対象児童生徒を中心にして話し合うことは,授業を見つめなおすよい機会となった。

3.課題

【1】JSL対象児童生徒の増加が予想されるが,各児童生徒の状況がそれぞれ異なるために,支援のあり方が一人ひとり異なるものとなる。そのため,JSLカリキュラムの活用を図りながら指導できる教員の養成が今後さらに求められる。

【2】小学校高学年や中学校段階での外国からの転入については日本語学習に加わり,学習内容の難易度も高くなり,さらに,人間関係も新たな構築が必要であるため,心的なストレスも大きいものとなる。そのため,適応指導の充実のための工夫が必要である。

【3】学校教育全体を通して,対象児童生徒が認められる意図的な場面づくりを行なう必要がある。
 担任1人や担当者だけで対応するのではなく,さらに学校全体で取り組む必要がある。

【4】日本語学習の機会と日本文化理解,さらに母語や母国文化についての素養を高めることも併せて行なうことが人格形成にはなくてはならない。家庭と学校,さらに地域の教育力の連携が求められる。

【5】上記内容の推進のために財政的に難しいことが何よりの課題となっている。

4.その他(今後の取組等)

【1】2年間の研修の成果を次年度以降に生かすために,JSL対象児童生徒が在籍する学校における支援に係る研修の機会を校内で継続できるよう支援する。

【2】学級担任だけの負担になることのないように,学校全体が一体となって初期日本語指導が必要な児童生徒やJSL対象児童生徒に対して,教育活動全体を通した支援のあり方について研究を深める。また,来日初期の日本語教育については本市企画政策課都市間交流室,県国際交流協会等との連携を図り推進する。

【3】学校生活や家庭生活における対象児童生徒の言語環境における実態把握が必要である。複数の学校における環境の類型化を図ったり,各校の指導方法を類型化へ活用できるようにしたりするための資料収集を進めたい。

【4】一部の教職員には,日常会話ができれば授業等においてそれほど対称児童生徒が困難を感じることはないのではないかと考える傾向があるため,学習言語習得の必要性についての意識を高める必要がある。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成22年01月 --