平成28年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(大阪市)

平成28年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

「帰国した子どもの教育センター校」(以下「センター校」)担当者会(月1回)、全体連絡会(年2回)
  • 大阪市教育委員会(指導主事、教育相談員)
  • 大阪市教育センター(指導主事)
  • センター校(校長、担当者)
日本語指導協力者会議
  • 大阪市教育委員会(指導主事、教育相談員)
  • 日本語指導協力者
日本語指導担当者会議
  • 大阪市教育委員会(指導主事、教育相談員)
  • 日本語指導担当者(日本語指導が必要な児童生徒のための児童生徒支援加配)
母語支援者(通訳者)連絡会
  • 大阪市教育委員会(指導主事、教育相談員)
  • 母語支援者(通訳者)

2.具体の取組内容

[1]運営協議会・連絡協議会の実施
  • 大阪市において小学校4校、中学校4校にセンター校を設置し、その中に日本語指導・適応教室を置いている。月に1回、指導主事・教育相談員・担当者がセンター校担当者会議を行い、情報交換や指導法の研修を行う。
  • 日本語指導、教科指導等の研究活動、研修会の企画・運営を行う。
  • 各センター校の学校長も含めた全体会を5月と3月に開催し、実施計画および研究報告を行う。
[2]初期指導教室やセンター校等の設置
  • 小学校4校、中学校4校をセンター校に指定する。
  • 児童生徒および保護者の教育相談や教職員の相談を受けて助言を行う。
  • 日本語指導が必要な小学校4年生以上の児童生徒への日本語指導をセンター校で行う。
  • 指導用教材や図書の整備と貸し出しをする。
  • 多文化スピーチ大会(ワールドトーク)を実施する。
  • 日本語指導に関わる研究、教科指導に関わる研究活動を行う。
[3]日本語能力測定方法の活用
  • センター校担当者が日本語指導指導者養成研修に参加し、DLAの活用方法について研修を受け、センター校担当者に受講内容を周知する。
  • 年度末のセンター校担当者会において、各センター校でDLAを活用した結果について交流し、今後の活用方法について意見交換を行う。
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた研修会の実施
  • 各校から提出される「特別の教育課程編成・実施計画書」により、児童生徒の日本語指導の状況を把握し、在籍校の学級担任等が日本語指導の担当者と協力して作成している「個別の指導計画」をより充実させ、児童生徒の学びが継続するように進める。
  • 日本語指導が必要な児童生徒の受け入れが少ない学校には、「個別の指導計画」の作成方法や進め方等を具体的に伝え、周知・徹底を図る。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣
  • 日本語指導が必要な小学校1年生~3年生の児童が在籍する学校へ日本語指導協力者を派遣する。
  • 母語支援者(通訳者)や日本語指導協力者との連絡調整、教職員への教育相談や日本語指導等に関わる指導助言を行うコーディネーター(教育相談員)を配置する。
[6]児童生徒の母語がわかる支援員の配置
  • 初期対応、懇談会、説明会、教育相談等への母語支援者(通訳者)を派遣する。
  • 月1回程度、センター校で母語支援者(通訳者)が母語で授業を行う母語教室を開催する。

3.成果と課題

[1]運営協議会・連絡協議会

 成果

  • 通級児童生徒の情報交換を行ったことで、課題解決に向けた話し合いができた。
  • 研究委員会を設置して情報収集したことで、研修会で効果的な指導法を報告することができた。
  • 文部科学省の施策を周知できた。
  • 「特別の教育課程」による「個別の指導計画」の目標の立て方や指導法の工夫について検討を重ね、研修会で全体周知することができた。
  • 全体会でセンター校の計画や成果を報告することで、センター校の役割を明確にすることができた。

 課題

  • 新たにセンター校担当者になる教員への指導法の教授や申し送りができる担当者会の運営方法を改善する必要がある。
  • DLAや「特別の教育課程」による「個別の指導計画」について、日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校の教員へさらに周知していく必要がある。
  • 文部科学省の施策を研究実践するための研究委員会を設立する必要がある。
[2]初期指導教室やセンター校等の設置

 成果

  • センター校に約200名の児童生徒が通級し日本語指導を受けた。彼らは、日本語能力の習得だけでなく、日本の学校に適応するための力をつけることができた。
  • 児童生徒や保護者および在籍校の教職員へ助言を行い、未然にトラブルを防ぐことができた。
  • 教材や資料を提供し、在籍校における日本語指導や教科学習の指導の充実を図ることができた。
  • 帰国した子どもの教育研修会の企画・運営にセンター校の担当者が携わることで、在籍校の教員が各校で活用できる日本語指導の方法や教科指導の方法等を周知できた。

 課題

  • センター校への通級が長期(1年以上)になる場合があり、できるだけ早く通級修了ができるための指導方法、通級するシステムの改善が必要である。
  • 「特別の教育課程」の導入により、センター校と在籍校が学習面の支援をどのように連携していくべきか研究していく必要がある。
  • センター校が蓄積してきた日本語指導や教科指導法を、受入れ経験が少ない学校に情報発信する必要がある。
[3]日本語測定能力の活用

 成果

  • 担当者全員が測定方法について確認することができた。
  • 各センター校での実施結果を交流することで、次の段階として日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校でDLAを活用する方法について話し合うことができた。

 課題

  • センター校の担当者はDLAについての理解はできているが、在籍校の教員へ教授できるように経験を積んでいく必要がある。
  • 日本語指導が必要な児童・生徒の在籍する学校でのDLAの活用方法について、検討を続けているが、在籍校でどのように活用するか、測定した後、どのように日本語指導に活かしていくか検討する必要がある。
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた研修会の実施

 成果

  • 研修会の参加教員とセンター校の担当者は「個別の指導計画」の作成および運営方法等の理解を深めることができた。

 課題

  • 学校現場で運用することに温度差があり、「個別の指導計画」の必要性についてより一層周知していく必要がある。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 成果

  • 初期の日本語指導を行うことで、日本語指導が必要な児童生徒が友達との会話も積極的になり、学級の中での人間関係も構築することができた。周りの子どもたちと話す事と日本語指導を行う事の相乗効果によって以前よりも楽しく学校生活を送ることができるようになった。
  • 日本語指導協力者の派遣において、連絡会を数回行うことでより効果的な日本語指導ができ、日本語指導が修了した後も学校での継続した取組に活かすことができた。

 課題

  • 日本語指導協力者の派遣回数(25回)が決まっているため、習得が遅くカリキュラムが終了しない場合も派遣の延長ができない。指導方法の工夫を図る必要がある。
  • 小学校1~3年生の帰国・来日等の子どもの編入学が、この数年増加傾向にある。そのため派遣が滞ることがあり、日本語指導協力者の増員や現状のシステムを見直す必要がある。
[6]児童生徒の母語がわかる支援員の配置

 成果

  • 母語支援者(通訳者)の派遣において、要請が集中する懇談会時や緊急の要請にも学校の要望に応える派遣ができた。課題のあるケースでは教育相談員が直接対応に入り、子ども・保護者との教育相談を受け課題解決に至った。
  • 高校の進路説明会に派遣し、進学するための制度や入試に対する特別な配慮事項等(時間延長、辞書の持ち込み可)について、伝達することができた。
  • 母語教室において、学習指導をしたり、話し合い活動の支援にあたったりすることで、子どもの母語に対する理解を深めたり、自己のアイデンティティを高めたりすることができた。

 課題

  • 母語支援者(通訳者)の派遣および母語教室の開催は、生徒や在籍校の教員から好評ではあるが、1回につき2時間という制限があるため、回数を増やしてほしいという要望がある。しかし、編入学する児童生徒数は増加傾向にあることから、予算面を考慮すると、回数を増やすことは容易ではない。

4.その他(今後の取組等)

  • 日本語指導が必要な児童生徒が、待機する事なく日本語指導を受けられるような新たなシステムの構築
  • センター校担当者や日本語指導協力者の指導力向上
  • 日本語指導、教科学習教材の研究と作成
  • 「個別の指導計画」等、日本語指導の重要性をより周知するための効果的な研修会の実施
  • 在籍校で学習支援を行うための情報提供
  • 日本語指導や学習支援等を行う外部機関、NPO、ボランティアとの連携
  • 市内各区で実施する日本語指導が必要な児童生徒に対する支援事業の連携

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

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