平成28年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(伊賀市)

平成28年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

伊賀市外国人児童生徒受入促進事業運営協議会・連絡協議会

 伊賀日本語の会、上野商工会議所、伊賀市国際交流協会、市民生活課、上野東小学校・上野西小学校・緑ヶ丘中学校の学校長と日本語指導担当者、伊賀市教育委員会学校教育課指導主事 計13名

  • 就学支援委員会 ・学習支援委員会 ・指導研修委員会の3部会に、以上の13名が所属。

2.具体の取組内容

[1]運営協議会・連絡協議会の実施

 「伊賀市外国人児童生徒受入促進事業運営協議会」を設置した。構成員は、NPO法人、ボランティア団体、企業関係者、国際交流協会、研究センター校、庁内関係部局、教育委員会で、外国人児童生徒の就学支援、学習支援及び受入支援等について協議した。

[2]初期指導教室やセンター校の設置

 上野東小学校に伊賀市初期適応指導教室(名称チャレンジルーム)を設置し、日本語指導員、日本語指導協力員を配置している。初期の日本語指導や学校への適応指導等をおよそ3ヶ月間集中して行った。
 外国人児童生徒在籍数が多く、これまで伊賀市における外国人児童生徒教育をリードしてきた伊賀市立上野東小学校と緑ヶ丘中学校をセンター校とした。また、近年外国人児童生徒の在籍数の増加が著しい上野西小学校を準センター校として位置付けている。センター校では教科指導型日本語指導によるわかりやすい授業作りのための教材開発を進め、生活言語だけでなく、学習言語としての日本語を教科学習指導の中で習得できるよう、実践研究と子どもたちへの支援を行った。また、個人カルテや個別の指導計画の作成についての研修も積み重ねてきており、児童生徒への継続的な指導、支援に取り組んでいる。

[3]日本語能力測定方法活用の活用

 日本語指導担当者が、各校で日本語能力測定方法(DLA)を用いて児童生徒の日本語能力を把握することができるよう協議した。また、市内すべての学校の担当者を対象に研修会を開催した。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 指導・支援体制の構築や「個別の指導計画」様式等について協議を行った。また、「個人カルテ」や「個別の指導計画」の作成の必要性について市内すべての学校の担当者を対象に研修会を開催した。
 個人票の様式については、本年度伊賀市試行版を作成した。次年度以降活用しながら、研修、協議を進め改善していく。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 小中学校に日本語指導コーディネーターを派遣し、外国人児童生徒の学習の様子を観察し、具体的な子どもの姿を通して指導を行った。また、日本語指導担当者等に対する指導や校内研修での指導助言を行うとともに、日本語指導担当者研修会において、受入体制や日本語指導等について指導した。

[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 生徒や保護者に対して、的確に情報を提供し把握するために母語通訳者を支援員として派遣した。多文化共生に関わる庁内関係部局と連携し、各校へ該当する母語の通訳者を派遣した。また、市内のNPO法人とも連携し、特に少数言語の通訳について派遣を依頼した。

3.成果と課題

 [1]伊賀市の外国人児童生徒教育については、関係団体や学校、庁内関係部局が連携して取り組む体制が維持されている。それぞれの立場から意見を出し合うことにより、児童生徒の現状認識が進み、学校の課題等が明らかになり、情報の共有化及び課題克服のための事業推進につなげることができた。
 受入体制については、持続的な指導を可能にする人的配置や学習環境の整備が欠かせない。そのための予算確保が必要である。また、課題に応じて、今後取組の改善、見直しも必要となってくる。

 [2]3人の指導員が日本語指導をはじめ算数の教科指導等、個々の状況、能力に応じた学習目標を設定し、ていねいに指導を行っているため、子どもたちへの初期日本語指導や学校への適応指導に一定の成果をあげている。
 指導員・指導協力員のさらなる指導力向上を図り、より充実した教室運営を図る必要がある。また、通級希望者の人数や母語による初期適応指導教室の運営上の課題について今後検討していく必要がある。
 センター校における取組を核として、そこで蓄積されてきた教育内容等を、他校に発信することができた。今後も様々な課題解決に向けて情報を交換・共有できる場をもち、ネットワークをさらに強化することが大切である。

 [3]本年度も「日本語能力の測定を指導に活かす」ための研修を行った。研修によって、その必要性については意識が高まっているが、具体的にDLAの活用を進めていくためには、さらに研修を積み重ねる必要がある。また、日本語指導コーディネーターの効果的な派遣をさらに進めていく必要がある。

 [4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けて協議する中で、「日本語能力の測定を指導に活かす」という研修を計画的に行っている。また、その必要性については意識が高まってきている。個別の指導計画の様式等について、協議会のメンバーも含め、さらに学習を重ね検討し、具体的な取り組み内容を協議していく必要がある。個人票の様式については伊賀市の試行版を作成した。次年度以降活用しながら、さらに研修、協議を進めていく。

 [5]日本語指導コーディネーターの配置により、訪問校の指導体制や日本語指導等に対する課題に適切に応えることができた。また、子どもたちの日本語能力に合わせて、適当な教材の紹介やその活用等、必要な情報を提供することができた。
 日本語指導者研修会では、外国人児童生徒への学習支援や多文化共生の視点にたった教育等について認識を深めることができた。

 [6]通訳者の派遣により、生徒や保護者に適切な情報の提供ができた。また、保護者の疑問や悩みに応えることができた。通訳者がいることで、保護者の不安を和らげ負担を軽減することにつながっている。
 外国人児童生徒が在籍している学校に対して母語話者の配置が難しいなか、今後も通訳や翻訳の支援を継続していく必要がある。

4.その他(今後の取組等)

  • 運営協議会の継続、日本語指導コーディネーターの派遣、初期適応指導教室の充実(指導力の向上、運営上の課題の改善)、センター校による実践研究と情報発信、日本語能力の把握、個別の指導計画様式の作成と活用、日本語指導担当者の資質向上とネットワークづくり、通訳・翻訳予算の確保。
  • 受入体制、初期対応、在籍学級での教科指導型日本語指導と日本語指導教室での個別授業の系統性、学力保障、進路保障等の流れの確立。

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