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平成27年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(津市)

平成27年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  1. 初期指導教室の設置
  2. 日本語能力測定方法の活用
  3. 「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施
  4. 日本語指導ができる支援員の派遣
  5. 児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  6. その他(教育委員会と関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施)

2.具体の取組内容

[2]初期指導教室の設置

 初期日本語教室「きずな」(平成24年4月開設)に、教室長1名を配置し、市民ボランティア・巡回担当員とともに、日本語指導が必要な児童生徒の指導にあたっている。
 また「きずな」に通室できない児童生徒に対しては、在籍校での「移動きずな教室」を開設(H25.10月)し、在籍校の日本語教育担当者をはじめとする教員と巡回担当員、ボランティア数名がチームを組み、在籍校での初期日本語指導を行っている。
 「きずな教室」及び「移動きずな教室」では、津市版日本語指導カリキュラム「話す・聞く」「読む・書く」)を使って、基本的にマンツーマンの直接法での指導を基本としている。
 さらに、「きずな教室」では、朝の会や帰りの会、きずなタイムの活動も行うことで、初期の日本語だけでなく、集団生活での日本語を覚えたり、自己表現をしたりすることへの抵抗感を少なくすることになり、在籍校で過ごすための1つのステップとなっている。

[3]日本語能力測定方法の活用

 今年度は日本語指導が必要な外国につながる児童生徒が在籍する小中学校47校で、津市版日本語能力把握スケールをもとに日本語能力判定会議を実施した。在籍する子どもたちの日本語能力のレベルを判定・把握するとともに、学校や家庭での生活状況などを共有し、日常生活や授業の中でどのような支援が必要かを話し合った。
 また、日本語教育担当者会のグループ研修の内容に、「日本語能力判定会議」と「JSLカリキュラムに係る授業」の公開を位置づけ、外国につながる児童生徒の学びを支える支援のあり方についての研修の機会とした。
 さらに、日本語教育担当者会でDLAを活用した実践について共有化し、有効な活用について検討するとともに、その周知を図った。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 三重大学の林准教授をアドバイザーとして、日本語教育担当者会の中で「特別の教育課程」による日本語指導の平成28年度からの導入にむけて研修を実施した。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 日本語指導ができる支援については、昨年度に引き続き、2校(小中1校ずつ)に支援員を派遣し、教科の一斉授業へつなげる有効的な学習支援のあり方について研究実践した。
 また、初期日本語教室「きずな」において日本語指導を重ねたボランティアの中から、在籍校において開設した「移動きずな教室」へ日本語指導ボランティアとして派遣した。

[6]母語支援のできる支援員の派遣

 日本語が全くわからない状態で転入した児童生徒への初期適応指導の補助や学校と保護者との連絡調整を行うことを目的とし、一定期間(2週間程度)、母語支援協力員の派遣を行った。
 また、家庭訪問・懇談会・進路指導等の保護者通訳、就学・進学ガイダンス等における通訳としても、母語支援協力員の派遣を行った。

[7]関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施

 日本の学校に入学することの不安を軽くし、不就学状態の子どもをなくすことを目的として「学校へ行こう!in津市(就学ガイダンス)」を人権教育課の直接事業として行った。市教委学校教育課(就学事務担当)・市健康福祉部子育て推進課(保育園担当)・市民部市民交流課(多文化共生担当)の行政各課、「エスペランサ」・「がんばる会」・「日本ボリビア人協会」・「アートヴィーダ」等の多文化共生に関係する市民活動団体で実行委員会を組織し、そこに三重大学及び三重短期大学の先生方にもアドバイザーとして参加いただき、実行委員会を4回実施した。その活動として、小学校での入学説明会が行われる前に市内の幼稚園・保育所に出向いて出前就学ガイダンスを12の幼稚園・保育所で行った。

3.成果と課題

[2]初期指導教室の設置

 「きずな教室」を母体にしながら、「移動きずな教室」を中学校5・小学校12校に開設することができた。今年度、2月末現在、「きずな教室」及び「移動きずな教室」に37名が通室(32名卒室)した。
 地理的な理由等で母体の「きずな教室」に通室できない児童生徒に対して、津市内どこの学校に在籍しても「きずな教室」と同等の初期日本語指導を受けることが保障できる体制ができてきたことは大きな成果である。また「移動きずな教室」を在籍校に開設することで、在籍校の教員も初期日本語指導に関わる機会となり、集中してその指導を受けた成果を、学校とも確かめ合える機会となっている。
 しかし、本年度は、一つの小学校に多くの転入が重なった時期があり、その学校で開設した「移動きずな教室」に11名の児童が集中して通室することになった。そのような状の中、本来であれば母体である「きずな教室」で経験を積んだボランティアを「移動きずな教室」に派遣するべきところを、経験の浅いボランティアを派遣しなければ支援体制を整えることができなくなった。
 今後、市内のどこの学校に在籍しても「きずな教室」と同等の初期日本語指導が受けられるよう「移動きずな教室」の取組を充実させていくために、日本語指導ボランティアの新たな人材の確保やその養成と合わせて、学校と連携したボランティアの支援体制を整えていく必要がある。

[3]日本語能力測定方法の活用

 日本語教育担当者会のグループ研修の内容に、「日本語能力判定会議」の公開を位置づけて、他校の判定会議を見ることで、判定会議のイメージをつかんだり、自分の学校での判定会議を再考したりする機会となった。
 また、判定会議を実施したすべての学校から「判定会議実施報告書」を提出してもらい、その報告書をもとに日本語教育担当者会で交流・協議することで、判定会議の意義である「いろいろな場面でその児童・生徒と関わり、その日本語能力を把握するだけでなく、子どもの生活背景を語り合い、支援のあり方を考えあう場である」とのとらえが広がりつつある。しかし、まだまだ日本語能力のレベルを判定・把握するというとらえに留まっていたり、公開された会議の形態のみが判定会議のあり方と思いこんでしまったりしてしまいがちな学校もある。判定会議の経験が少ない教員がまだまだ多い中、その意義を実感できるように研修内容を工夫していく必要がある。
 さらに、グループ研修では外国につながる児童生徒にとってわかりやすい授業のあり方の研究も行ってきた。どのような支援が有効か、どのような課題があったか等、授業を公開し合うことで具体的に協議することができた。特に、その子どもたちのつまずきが、教科の内容の理解が不十分なのか、日本語の能力が十分でないのかを把握したうえで支援の方法を具体的に考えていくためにも、判定会議を開くことの必要性について確認できる機会ともなった。
 今後もさらに、児童生徒に一斉授業の中で力をつけていくことをめざしながら、外国につながる子どもたちの居場所づくりと進路保障について、日本語教育担当者会を中心に考え合っていきたい。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 「きずな教室」で、日本語指導を行う児童・生徒については、津市版日本語カリキュラムに沿って指導を行っている。授業後、児童生徒の様子や評価を行っている。
 「きずな教室」を卒室する際には、在籍校へその児童生徒の日本語の習得状況の引継ぎ、卒室後の指導の計画についても、連携することができている。
 また、日本語教育担当者会で、「特別の教育課程」について、周知を図れたことは成果であると考えるが、今後は、教務主任会議等でも周知を図り、導入を進めていきたい。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 日本語指導ボランティアの登録者数が62名となり、各在籍校での「移動きずな教室」で指導にあたれるボランティアの量的・質的な充実もできつつある。今年度、小学校と中学校を合わせて17校に開設した「移動きずな教室」において、35名の児童・生徒に対し、原則としてマンツーマンでの日本語指導を行い、きめ細やかな初期日本語指導を行うことができた。また、在籍校で初期日本語指導を行うことで、在籍校の教職員も初期日本語指導に触れる機会にもなっている。

[6]母語支援のできる支援員の派遣

 母語支援協力員は、転入児童生徒の初期適応指導や懇談会等の保護者通訳、就学・進学ガイダンス等における通訳も行った。言語としては、中国語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、英語など、三重大学や鈴鹿大学、津市国際交流協会、その他市民活動団体の協力を得ながら、有償ボランティアとしてできるだけ多くの言語に対応できる体制をとった。
 母語支援協力員の存在は子どもや保護者に安心感を与えるという意味で大きな効果があった。保護者に対する学校内や家庭訪問での通訳については、文化の違いや考え方の違いなどで学校と保護者の間に誤解が生じることがないように支援を行い、学校と保護者をつなぐ役割を果たしてもらっている。

[7]関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施

 就学前の子ども達と関わる行政各課及び市民活動グループ・大学の先生と連携することで、市内に暮らす外国につながる子ども達の現状や、そこから抱えさせられている課題、保護者を取り巻く社会情勢について、それぞれの立場で把握している情報の共有化を図ることができた。外国人保護者の教育に対する考え方や価値観、就労などの生活状況など、学校や行政の立場では見えてこない様々な面について知ることができた。
 また、外国につながる園児が在籍している幼稚園や保育園を会場にしての出前就学ガイダンスを行った(幼稚園6園、保育園6園、計12回)。通訳者(ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・中国語)も同行してガイダンスを行う中で、保護者の方の不安を解消したり、子どもの教育を考えたりする機会となった。
 ガイダンスを通して、日本の学校へ入学させることへの保護者の不安が明らかになった。このような機会で、その不安を解消していくことが、外国につながる子どもたちの不就学を防ぐことにもつながっている。
 今後もこの取組を継続するとともに、家庭訪問等と合わせて、不就学を防ぎたい。

4.その他(今後の取組等)

[2]初期指導教室の設置

 今後、市内のどこの学校に在籍しても「きずな教室」と同等の初期日本語指導が受けられるよう「移動きずな教室」の取組を充実させていくために、日本語指導ボランティアの新たな人材の確保やその養成と合わせて、学校と連携したボランティアの支援体制を整えていきたい。

[3]日本語能力測定方法の活用

 来年度も日本語指導が必要な外国人児童生徒が在籍するすべての学校において、津市版日本語能力把握スケールをもとに判定会議を実施していく。また、日本語能力判定会議について、その意義や必要性を感じられるように、実践的な研修を実施するとともに、外国につながる子どもたちにとってわかりやすい授業の工夫についても、実践的な研修を中心に進めていきたいと考えている。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 次年度は、日本語教育担当者会だけでなく、教務主任会議等でも周知を図り、導入を進めていきたい。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 「移動きずな教室」の取組を充実させ、市内のどこの学校に在籍しても「きずな教室」と同様、きめ細やかな初期日本語指導が受けられるよう、日本語指導ボランティアの新たな人材の確保や
 その養成を進めていきたい。

[6]母語支援のできる支援員の派遣

 津市内に在籍する児童生徒の言語は、20言語以上あり、多言語化の傾向にある。必要な時に、より適した支援ができるよう、大学や国際交流協会の協力を求めていくとともに、学生や市民ボランティアの発掘し、母語支援員の拡充を図りたい。
 学校が自力で保護者に働きかけることが保護者とのつながりをより深められる場合もあることから、その機会を奪うことにならないように配慮しながら支援したが、今後も学校がすべきこと、巡回担当員や母語支援協力員、それぞれの役割を明確に整理していく必要がある。

[7]関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施

 外国につながる子ども達の不就学を防ぐ取組を、様々な団体と連携しながら進め、広げていくことは重要なことだと考えている。今後も、就学や教育ついて保護者が関心をもてるような取組を実行委員会で検討し、実施していきたい。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成29年02月 --