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平成25年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(津市)

平成25年度に実施した取組の内容及び成果と課題【実施団体 津市教育委員会】

1.事業の実施体制(運営協議会・ 連絡協議会の構成員等)

 

2.具体の取組内容
[2]初期指導教室やセンター校等の設置
平成24年4月より初期日本語教室「きずな」を開設し日本語指導が必要な児童生徒の指導に当たっている。「きずな教室」では毎日、津市版初期日本語指導カリキュラム(話す聞く・読む・書く)を活用し、その指導案に沿って、基本的にワンツーマンの直接法にて子供たちの指導に当たっている。指導は日本語指導ボランティア(登録者数46名)・巡回担当員・津市教育委員会指導主事である。個に応じた指導が可能になり、短期間で効果的な指導を行うことができる。期間として3、4か月で修了することを基本としているが個に応じて延長することもある。
また、朝の会や帰りの会、きずなタイム等での活動を通し、集団生活での日本語を覚えたり、自己表現することの抵抗感をなくしたりすることができ、在籍校で過ごすための1つのステップとなった。また、卒業までには常に在籍校との連絡を密にし、きずな教室での姿を伝え、卒業後の流れをスムーズにできるよう相談している。卒業式にはこれまで関わったボランティアも駆けつけ門出を祝うことで、「きずな教室」が日本語指導の場だけでなく、外国につながる子どもたちが様々な人と関わり、自分を支えてくれる人の存在を感じる場になっている。

[3]日本語能力測定方法の活用
本年度は常勤の国際化対応加配教員が配置されているすべての小中学校で、津市版日本語能力把握スケールをもとに日本語能力判定会議を実施し、在籍する子どもたちの日本語能力のレベルを判定・把握するとともに、どのような支援が必要かを話し合った。その際、人権教育課指導主事が一定のものさしを持ちコーディネーターとして判定会議に入った。

[4]日本語指導ができる支援員の派遣
日本語指導ができる支援については、2校に教科へとつなげる日本語指導の支援員を派遣し有効的な学習支援の在り方について研究実践した。
日本語指導ボランティアについては、主に初期日本語教室「きずな」において、津市版初期日本語指導カリキュラムに沿った、直接法による日本語指導を行った。
本年度より「きずな教室」に通級できない児童生徒を対象に「移動きずな教室」を開始した。「移動きずな教室」は現在巡回担当員1名と日本語指導ボランティア3名がチームを組み在籍校での初期日本語指導を、きずなの指導パックを使って行っている。

[5]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
津市所属の巡回担当員は現在8名で(ポルトガル語、スペイン語、タガログ語)、主に母語通訳による初期適応指導、直接法による日本語指導、配布物等の翻訳、学校と保護者との連絡調整を担っている。
母語支援協力員は、転入児童生徒の初期適応指導や懇談会等の保護者通訳、就学・進学ガイダンス等における通訳も行った。言語としては、中国語、タガログ語、ビサイア語、インドネシア語、スペイン語、ポルトガル語、英語など、三重大学や鈴鹿国際大学、津市国際交流協会、その他市民活動団体の協力を得ながら、有償ボランティアとしてできるだけ多くの言語に対応できる体制をとった。

[6]その他(教育委員会と関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施)
「学校へ行こう!in津市(就学ガイダンス)」実行委員会を、人権教育課が事務局となり、市教育委員会事務局教育研究支援課(幼稚園担当)・学校教育課(就学事務担当)・市健康福祉部子ども家庭課(保育園担当)・市民部国際国内交流室(多文化共生担当)の行政各課と津市国際交流協会・「エスペランサ」・「がんばる会」・「ボリビア人協会」・外国につながる子どもたちの預かり施設等の多文化共生の市民活動グループといったメンバーで組織し、そこに三重大学や三重短期大学の先生方にもアドバイザーとして参加いただいている。
本年度も外国人が多く集まるイベントに「就学案内ブース」を設置して、多言語パンフレットや学用品の実物展示、就学相談事を実施した。これまで日本語教室のシュハスコパーティ、千里夏祭り等でブースを出してきた。
さらに、市内の幼稚園・保育園に出かけての就学ガイダンス・就学相談会も行い、小学校での入学説明会への通訳派遣を行い、保護者の日本の学校への不安の軽減を行ってきた。

 

3.成果と課題
[2]初期指導教室やセンター校等の設置
<成果>
・ 平成25年9月より成美小学校の1室からセンターパレスに移転することで、周辺の学校の子どもたちが通級しやすくなり、バスでの通級も可能になった。
・「きずな教室」で集中して日本語指導を受けた場合と、学級の中で日本語を覚えていった場合とでは、助詞の使用や文章を書く力等での差が明らかになった。そのことから、地理的な理由で「きずな教室」に通級できない児童生徒に対して、津市内すべての学校において「きずな教室」と同等の指導を受けることができることをねらいとした「移動きずな教室」を実施した。

[3]日本語能力測定方法の活用
<成果>
・本年度は常勤の国際化対応加配教員が配置されているすべての小中学校で、津市版日本語能力把握スケールをもとに日本語能力判定会議の実施を行うことができた。在籍する子供たちの日本語能力のレベルを判定・把握するとともに、どのような支援が必要かを話し合った。その際、人権教育課指導主事が一定のものさしを持ちコーディネーターとして判定会議に入った。その結果、児童生徒の日本語のレベルが明らかになることで、日本語指導が必要なのか、学習支援が必要なのかが明らかになった。また、学校内での支援の仕方についても具体的に話し合うことができた。
・外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)については、日本語担当者会議等での情報の周知を行い、次年度への引継ぎ・受け継ぎをスムーズに行える体制づくりを進めた。
<課題>
・外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)の研修を今年度はできなく活用のところまではいかなかったので、日本語教育担当者への研修等で活用についての研修等を行っていきたい。

[4]日本語指導ができる支援員の派遣
<成果>
・日本語指導ができる支援員が直接法による日本語を指導することで、初期の子供たちにサバイバル日本語の習得でなく、日本語文法を意識した言語習得を行えることができた。1対1での日本語指導を原則行ってきたことで、子供たちによりきめ細やかな日本語指導を行うことができた。日本語指導を受けた場合と、学級の中で日本語を覚えていった場合とでは、助詞の使用や文章を書く力等での差が明らかになった。
<課題>
・巡回担当員や支援協力員、日本語指導ボランティアを派遣し初期適応指導補助、日本語指導補助、教科学習指導補助に当たっているがまだまだ十分ではない。今後、そのような児童生徒がどの学校に転入しても同じレベルの日本語指導が受けられる体制作りを行いたい。また、本年度の実践をもとにカリキュラムや指導案の見直しを行う予定である。

[5]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
<成果>
・母語支援協力員の存在は子供や保護者に安心感を与えるという意味で大きな効果があった。本来、初期適応は在籍校教職員で行われるべき指導内容ではあるが、日本に初めて来て言葉も通じない中で、学校のルールや学校生活についての必要事項の理解は母語を使ってできるだけ細やかに分かりやすく短期間に指導することで、その後の学校生活についての不安を大きく軽減することができた。
   ・学校内や家庭訪問での通訳という点では、様々な文化の違いや考え方の違いなどで学校と保護者の間に誤解が生じる事案など、より簡潔により的確に両者の思いを伝えてもらい、その後の学校に対する意識が変わった事例も多くある。
<課題>
・学校側も子供も保護者も巡回担当員や母語支援者の存在に安心してしまい、本来は学校・担任が子供や保護者の思いを直(じか)に聞き取ろうとすべきところを、通訳者に任せてしまっているところがまだある。
・家庭への連絡においても、学校・担任が翻訳文書を渡すだけでなく、どうしたら伝えたいことを伝えられるか、理解してもらえるかを考えながら、保護者と話をしに行く学校側の体制作りを行っていきたい。
・今後、学校がすべきこと、巡回担当員・母語支援教員、それぞれの役割を明確に整理し、母語支援協力員の期間と内容・役割を校内で確認しておく必要がある。

[6]その他(教育委員会と関係機関との連携による就学ガイダンス実行委員会の実施)
<成果>
・就学前の子供たちと関わる行政各課及び外国人住民と関わる行政各課と連携することで就学案内の周知だけでなく、外国につながる子供たちの抱えさせられている課題や保護者を取り巻く社会情勢について情報の共有化を図ることができた。
・多文化共生に関わる市民活動団体と協働することで、より外国につながる子供たちの教育保障や進路保障についての課題、外国人保護者の教育に対する考え方や価値観、就労などの生活状況など、学校や行政の立場では見えてこない様々な面について知ることができた。
・今年度も、「学校へ行こう!in津市(就学ガイダンス)」をブース出展方式で行ってきた。 就学ガイダンスの狙いを、「外国につながる子供の不就学をなくす」「日本の学校に対する子供と保護者の不安感をなくす」「日本の教育制度や学校に対する理解を深める」という3つに重点をおき、子供の教育にあまり熱心でない・日本の教育制度についての情報が届かない」という方に情報を届けてきた。
ブースを訪れた方からは、「学校で使う道具が実際に手に取れてよかった。」「日本の学校の様子が分かった。」などの声が聞かれた。その他、就学対象児がいない方も「知り合いに渡しておきます」とパンフレットを持っていかれるなど、幅広く様々な方に情報を届けられた。また、日本語指導のボランティアに関心のある方や、外国につながる子供たちの教育に関心を持ってみえる方に資料を見ていただくなど、さまざまな立場の方に情報を発信することができ、他への広がりを感じることができた。さらに、「より情報を届けなければならない保護者に対してピンポイントで情報を届けよう」「情報の一方的な周知だけではなく、保護者が心配されていることや供たちの教育について考えていただく機会をつくっていこう」という実行委員会の意見から、外国人が集住している地域の外国につながる園児が在籍している幼稚園や保育園を会場にして、出前就学ガイダンスを行った。公立幼稚園・保育園に市内の私立保育園を加えガイダンス開催の希望を取った。希望に応じて通訳者(ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・英語・インドネシア語)も同行してガイダンスを行う中で、保護者の方の不安を解消することができた。参加者からは「よくわかった」「聞かせてもらってよかった」等の非常に高い評価と感謝の声をいただいた。外国につながる子供たちの不就学を防ぐ取り組みが、こうした事業をきっかけにしていろいろな団体に草の根的に広がっていくことは、とても重要なことだと考えている。
     5月30日 第1回就学ガイダンス実行委員会
    7月 5日  第2回就学ガイダンス実行委員会
    7月28日 日本語教室のシュハスコでのパンフ配布(於:久居中央スポーツ公園)5部
    8月10日  千里夏祭りでのブース出展(於:河芸千里ヶ丘団地中央通り)17部
    8月23日 第3回就学ガイダンス実行委員会
    9月11日 公立私立保育園長会 348部配布
    9月13日 幼稚園長会 228部配布
       11月  8日 第4回就学ガイダンス実行委員会
         1月30日 第5回就学ガイダンス実行委員会

○外国人保護者への出前就学ガイダンス・就学相談会(11月9日~1月29日)
幼稚園3園、保育園6園、外国人児童の預かり施設1
会場:高茶屋幼稚園、香良洲幼稚園、敬和幼稚園、香良洲保育園、中央保育園、相愛保育園、橋南保育園、さつき保育園、高茶屋保育園、アートヴィーダ)

<課題>
・外国人対象イベントでの就学ガイダンスブース出展では、より幅広い対象に情報提供できたが、お祭りでのブース出展ということもあり、教育相談をゆっくりと行うという雰囲気ではなかった。しかし、日本の学校へ入学するのが心配な外国籍保護者がまだまだ多いことが分かった。情報発信の場として、立ち止まってみていただけるような興味付けやより分かりやすい展示方法を考える必要がある。
・幼稚園や保育園の外国人保護者に向けての出前ガイダンスでは、より細かい情報提供や個別相談をしっかりと行うことができた。さらにこの取り組みを広げていくためにも、就学への事前学習の必要性を保護者に届け、「来てよかった」といっていただいている保護者の声を横に広げていくことも必要である。また、外国人児童預かり施設と連携して、就学年齢の子供の家庭や次年度就学予定の家庭への家庭訪問も実施し、日本の学校への理解を広げていきたい。
・今後も、就学や教育について保護者に関心をもっていただけるような取組を実行委員会で検討していきたい。

 

4.その他(今後の取組等)
[2]今後、「移動きずな教室」を拡大させていくにあたり、日本語指導ボランティアの充実が必要となる。「きずな教室」を母体にしながらボランティアを育成し、「移動きずな教室」を充実させていきたい。

[3]来年度は国際化対応加配教員の非常勤が在籍する学校でも行い日本語能力判定会議をさらに広めていきたい。また、小中学校の日本語教育担当者が集まる会議の中で、外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)につていての周知を行っていきたいと考えている。

[4]本年度の実践をもとにカリキュラムや指導案の見直しを行う予定である。また、その際の支援の方法についても、より効果的に行えるよう考えていきたい。

[5]市内小中学校における日本語能力把握スケールのよる判定会議の実施により、より正確に児童生徒の日本語能力を把握、母語支援員が必要なのか、学習支援員が必要なのかを明確にしていきたい。

[6]イベントを利用した就学ガイダンスにおいては、ブース設営においてさらなる工夫を行い、より多くの方に知ってもらうしかけをしていきたい。今回、就学ブースや就学ガイダンスで使用した多言語資料を、津市内の様々な施設等で設置していきたい。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成26年10月 --