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平成24年度「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」に係る報告書の概要(三重県津市)

平成24年度に実施した取組の内容及び成果と課題
1.事業の実施体制
4指導補助者・支援員等の配置
5初期指導教室(プレクラス)の実施
7教育委員会と関係機関との連携による就学支援

 

2.具体の取組内容 
4指導補助者・支援員等の配置
  現在、在籍校での初期適応指導や日本語指導については学校からの支援要請に応じて、県所属の国際化対応教員及び巡回相談員、津市所属の巡回担当員が行っている。津市所属の巡回担当員は現在8名で(ポルトガル語、スペイン語、タガログ語)、主に母語通訳による初期適応指導、日本語指導、配布物等の翻訳、保護者との連絡調整を担っている。しかしながら日本語指導が必要な児童生徒への対応については十分とは言いきれない。そのため支援協力員という形で支援を行っている。母語支援協力員は、主に母語通訳者として各学校の初期適応指導の状況に応じて、巡回担当員が対応できない言語やどうしても対応しきれない状況が生まれた時に、初期適応指導、取り出し学習補助や一斉授業での通訳を行っている。また、学校から保護者への説明の通訳も行う。言語としては、中国語、タガログ語、ビサイア語、インドネシア語、スペイン語、ポルトガル語、英語など、三重大学や鈴鹿国際大学、津市国際交流協会、その他市民活動団体の協力を得ながら、有償ボランティアとしてできるだけ多くの言語に対応できる体制をとった。教科学習補助は、三重大学教育学部日本語教育コースの学生や外国人児童生徒への学習支援サークル「ジョイア」と連携し、無償ボランティアとして学校に入り、対応した。
5初期指導教室(プレクラス)の実施

  平成24年4月より日本語基礎指導教室「きずな」を開設し日本語指導が必要な児童生徒の指導にあたっている。 「きずな教室」には現在4名(中国語2名、スペイン語1名、インドネシア語1名)の子ども達が通級し、12月までに4名(タガログ語2名、ビサイア語1名、ポルトガル語1名)が卒室している。午前中は「きずな教室」で学び、給食から午後の授業については在籍校で過ごしている。「きずな教室」では毎日5、6名の体制で、日本語を日本語で教える直接法にて子ども達の指導にあたっている(人権教育課指導主事・初期適応指導教室指導員・巡回担当員(1日1名)・日本語指導ボランティア(登録者数30名)1日2、3名)。期間としては3、4か月で修了することを基本としているが個に応じて延長することもある。卒室の際には卒室式を行い、在籍校の職員・保護者などを招き、卒室生が気持ちを新たにしながら在籍校に帰る決意を共有してもらっている。また、常に在籍校との連絡を密にしきずな教室での姿を伝え、卒室後の流れをスムーズにできるよう相談している。
7教育委員会と関係機関との連携による就学支援
  「学校へ行こう!in津市(就学ガイダンス)」実行委員会を人権教育課が事務局となり、市教育委員会事務局教育研究支援課(幼稚園担当)・学校教育課(就学事務担当)・市健康福祉部子ども家庭課(保育園担当)・保健センター・市民部国際国内交流室(多文化共生担当)の行政各課と津市国際交流協会・「エスペランサ」・「がんばる会」・「ジョイア」・津カトリック教会等の多文化共生の市民活動グループといったメンバーで組織し、そこに三重大学や三重短期大学の先生方にもアドバイザーとして参加いただいている。本年度も外国人が多く集まるイベントに「就学案内ブース」を設置して、多言語パンフレットや学用品の実物展示、鈴鹿市教育委員会からお借りした学校案内多言語ビデオの上映を行うなど出前事業として実施した。これまで日本語教室のシュハスコパーティ、千里夏祭り、津市国際屋台村等でブースを出してきた。また、本年度からカトリック教会のミサの後ガイダンスを行うことで、よりたくさんの外国人に対して日本の学校制度について周知を行った。さらに、市内の幼稚園・保育園に出かけての就学ガイダンス・就学相談会も行った。

 

3.成果と課題   
4指導補助者・支援員等の配置
 初期適応指導において、母語支援協力員の存在は子どもや保護者に安心感を与えるという意味で大きな効果があった。本来、初期適応は在籍校教職員で行われるべき指導内容ではあるが、日本に初めて来て言葉も通じない中で学校のルールや学校生活についての必要事項の理解は母語を使ってできるだけ細やかに分かりやすく短期間に指導することでその後の学校生活についての不安を大きく軽減することができた。また、学校内や家庭訪問での通訳という点では、様々な文化の違いや考え方の違いなどで学校と保護者の間に誤解が生じる事案など、より簡潔により的確に両者の思いを伝えてもらい、その後の学校に対する意識が変わった事例も多くある。学校における外国につながる児童生徒の指導に関して、国際化対応教員、巡回相談員、母語支援協力員に任せられている部分があったため、日本語教育ネットワーク会議や日本語教育担当者会、校内研修会等で昨年度よりその役割について整理してきた。また、学校側も子どもも保護者も巡回担当員や母語支援者の存在に安心してしまい、本来は、学校・担任が子どもや保護者の思いを 直に聞き取ろうとすべきところを通訳者に任せてしまっているところがまだある。また、家庭への連絡においても、学校・担任が翻訳文書を渡すだけでなく、どうしたら伝えたいことを伝えられるか、理解してもらえるかを考えながら保護者と話をしにいく学校側の体制づくりを行っていきたい。今後、学校がすべきこと、巡回担当員・母語支援教員のそれぞれの役割を明確に整理し、母語支援協力員の期間と内容・役割を校内で確認しておく必要がある。現在、当課が外部からの母語支援協力員・学習支援員のバンクとなり学校のニーズに応じて調整と派遣を行おうとしているが、各校における母語支援協力員・学習支援員の受け入れ体制についてはまだ十分に把握できていない。次年度以降、外部からの支援をシステムとして機能させるために受入側の体制作りをすすめたい。
5初期指導教室(プレクラス)の実施
 津市版日本語指導カリキュラム(話す聞く・読む・書く)を作成し、カリキュラムに即した指導案づくりを行った。その指導案に沿って初期適応教室指導員・日本語指導ボランティア・巡回担当員・人権教育課指導主事が1対1の指導をおこなった。そのため、個に応じた指導が可能になり、短期間で効果的な指導を行うことができた。「きずなタイム」では遊びやゲームを通して日常生活で使う日本語を繰り返し学習したり、日本の行事や日本学校での行事についてわかりやすく説明をしたりした。「きずな教室」に通級し連続して日本語初期指導をうけた児童生徒については一定レベルの効果が見られた。直接法での指導であるため、通訳者が確保できないインドネシア語の生徒に対しても効果的な指導を行うことができた。また、朝の会や帰りの会、きずなタイム等での活動を通し、集団生活での日本語を覚えたり、自己表現することの抵抗感をなくしたりすることができ、在籍校で過ごすための1つのステップとなった。「きずな教室」卒室後の在籍校での授業見学では、指導者の指示通り活動し、わからないことをたずねている児童の姿があった。津市は、10市町村が合併してできた市であるため大変広域にまたがる。そのため交通手段の関係で「きずな教室」に通級できない児童生徒も多い。そのため初期適応指導をそれぞれの在籍校で行っているのが現状である。その場合、学校からの支援要請に応じて、巡回担当員や支援協力員を派遣し初期適応指導補助、日本語指導補助、教科学習指導補助にあたっているがまだまだ十分ではない。今後、そのような児童生徒がどの学校に転入しても同じレベルの日本語指導が受けられる体制作りを行いたい。また、本年度の実践をもとにカリキュラムや指導案の見直しを行う予定である。
7教育委員会と関係機関との連携による就学支援
 就学前の子ども達と関わる行政各課及び外国人住民と関わる行政各課と連携することで就学案内の周知だけでなく外国につながる子ども達の抱えさせられている課題の共有化を図ることができた。また、多くの市民活動団体と協働することで、外国につながる子ども達の教育保障や進路保障についての課題、外国人保護者の教育に対する考え方や価値観、就労などの生活状況など、学校や行政の立場では見えてこない様々な面について知ることができた。今年度も、「学校へ行こう!in津市(就学ガイダンス)」を前年度の実行委員会からの申し送りを受けて、ブース出展方式で行ってきた。就学ガイダンスのねらいを、「外国につながる子どもの不就学をなくす」「日本の学校に対する子どもと保護者の不安感をなくす」「日本の教育制度や学校に対する理解を深める」ということにおき、子どもの教育に関心があまりない、日本の教育制度についても無関心という方に情報を届けてきた。ブースを訪れた方からは、「学校で使う道具が実際に手に取れてよかった。」「日本の学校の様子が分かった。」などの声がきかれた。その他、就学対象児がいない方も「知り合いに渡しておきます」とパンフレットを持っていかれるなど、幅広く様々な方に情報を届けられた。また、日本語指導のボランティアに関心のある方や、外国につながる子ども達の教育に関心を持ってみえる方に資料を見ていただくなど、さまざまな立場の方に情報を発信することができ、他への広がりを感じることができた。また、今年度は、前年度のブース出展方式に加え、より多くの外国人が集まる機会として、教会のミサの後にガイダンスを行った。同じ国の方が集まるミサということもあり、参加者同士が日本の学校についての情報を交換し合ったり、母国とは違う様子に驚いたりするなかで、日本の教育制度や内容、就学支援のことをじっくり説明することができた。さらに、「より情報を届けなければならない保護者に対してピンポイントで情報を届けよう」「情報の一方的な周知だけではなく、保護者が心配されていることや子ども達の教育について考えていただく機会をつくっていこう」という実行委員会の意見から、外国人が集住している地域の外国につながる園児が在籍している幼稚園や保育所を会場にしてより丁寧なガイダンスを行った。本年度は、公立幼稚園・保育園に市内の私立保育園を加えガイダンス開催の希望を取った。園でのガイダンス参加者は少ないが、希望に応じて通訳者(ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・英語・インドネシア語・中国語)も同行してガイダンスを行う中で、保護者の方の不安を解消することができた。参加者からは「よくわかった。」「聞かせてもらってよかった。」等の非常に高い評価と感謝の声をいただいた。外国につながる子ども達の不就学を防ぐ取り組みが、こうした事業をきっかけにしていろいろな団体に草の根的に広がっていくことは、とても重要なことだと考えている。
  6月  1日  第1回就学ガイダンス実行委員会
  7月  2日  第2回就学ガイダンス実行委員会
  7月29日   1 千里夏祭りでの出展 (於:河芸千里ヶ丘団地中央通り)33部
  8月25日   2 日本語教室のシュハスコでのパンフ配布(於:久居中央スポーツ公園)10部
  8月  7日  第3回就学ガイダンス実行委員会
10月14日   4 2011津市国際交流デー国際屋台村での出展(於:お城西公園)48部
10月16日   第4回就学ガイダンス実行委員会
11月11日   5 津カトリック教会での説明会 (於:津カトリック教会65部)
11月26日   第5回就学ガイダンス実行委員会
6外国人保護者への就学ガイダンス・就学相談会11月30日~1月30日 幼稚園4園、保育園6園
会場:高茶屋幼稚園、栗葉幼稚園、桃園幼稚園、のむら幼稚園、三重保育院,、中央保育園、高洲保育園、津愛児園、乙部保育園、北口保育園
 2月  2日  第6回就学ガイダンス実行委員会
※市役所の窓口や保健センター以外に、公的施設の他に、市内の小児科の医院やいくつかの日本語教室などで就学案内多言語パンフをおいていただいている。
外国人対象イベントでの就学ガイダンスブース出展では、より幅広い対象に情報提供することができたが、お祭りでのブース出展ということもあり、じっくりと話を聞く雰囲気ではなかった。しかし、たくさんの外国籍の方と出会う中で日本の学校へ入学するのが心配な外国籍保護者がまだまだ多いことが分かった。情報発信の場として、立ち止まってみていただけるような興味付けやより分かりやすい展示方法を考える必要がある。教会での取組ではしっかりと説明を聞いていただける雰囲気があるので、関わっている団体からの資料提供や伝えたいことなどもあわせて発信する機会にしていけた。内容についてもこれまで行ってきたような「日本の学校へ子どもを通わせていた外国人保護者からの経験談やアドバイス」や「日本の学校に通っていた(通っている)外国につながる子の経験談」などを通じて日本の学校について知ってもらうことも可能である。幼稚園や保育園の外国人保護者に向けての出前ガイダンスでは、より細かい情報提供や個別相談をしっかりと行うことができた。ただ、今後、出前ガイダンスを数多く実施することで通訳者や実行委員の負担が過重になってしまうことも懸念されるので地域からの希望と開催回数の調整も必要になってくる。合わせて、今回、就学ブースや就学ガイダンスで使用した多言語資料を、津市だけでなく様々な市町で使ってもらえるように基本的共通事項のみのシンプルなものにし、数年間使えるようにしたいと考えている。

 

4.その他(今後の取組等)
4指導補助者・支援員等の配置
市内小中学校における日本語能力把握スケールによる判定会議の実施により、児童生徒のより正確な日本語能力を把握することが必要である。母語支援員が必要なのか学習支援員が必要なのかということを明確にしていきたい。また、その際の支援の方法についても、より効果的に行えるよう考えていきたい。
5初期指導教室(プレクラス)の実施
きずな教室における津市版日本語カリキュラムが、きずな教室に通級できない児童生徒においても在籍校で指導が受けられるように「移動きずな教室」を実施していきたい。そのためには、日本語初期指導用パック及び指導案の作成を行い、そこで指導する日本語指導ボランティアの育成を行っていきたい。
7教育委員会と関係機関との連携による就学支援
各保育園・幼稚園における就学ガイダンスの時期を来年度はもう少し早い時期に実施していきたい。また、イベントを利用した就学ガイダンスにおいては、ブース設営においてさらなる工夫を行い、より多くの方に知ってもらうしかけをしていきたい。今回、就学ブースや就学ガイダンスで使用した多言語資料を、津市だけでなく様々な市町で使ってもらえるように基本的な共通事項のみのシンプルなものにし、数年間使えるようにしたいと考えている。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成25年09月 --