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平成23年度「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」に係る報告書の概要(三木市)

平成23年度に実施した取組の内容及び成果と課題 【実施団体名 三木市教育委員会】

1.事業の実施体制(運営協議会・地域連絡協議会の構成員等)

事業の実施体制(運営協議会・地域連絡協議会の構成員等)

2.具体の研究内容 

(2) 城内で情報共有するための連絡協議会の開催
 散在地域における外国人園児児童生徒の指導・支援体制を充実するため、学校、三木市、三木市教育委員会関係各課及び三木市国際交流協会による運営協議会「三木市外国人児童生徒に対する指導推進委員会」を設置し、学校園と関係機関による指導・支援体制の在り方について、アドバイザー(大阪教育大学准教授)の指導・助言を受け協議する。

(5) 初期指導教室(プレクラス)の実施
 就学、編入学前の外国人の園児児童生徒に対し、センター校日本語指導担当教員による通級及び巡回による初期指導教室(プレクラス)を実施し、生活及び学習言語の定着に努めるとともに、心の安定を図る。

(6) センター校等の設置

  • 散在地域における外国人園児児童生徒の支援体制を整備し、支援の在り方について研究するためにセンター校を設置するとともに、JSLカリキュラムを活用した日本語指導を実施し、その定着及び普及に努めるとともに担任を中心とした組織的支援体制を充実させる。
  • 三木市公立学校園に在籍する外国人園児児童の担任及び多文化共生教育担当者等による連絡協議会を開催し、情報や指導方法の共有化を図るとともに、JSLカリキュラムを活用した日本語指導の普及に努める。
  • 散在地域(本市の実態)に応じた日本語指導を効果的に実施するため、センター校より日本語指導推進教員を日本語指導を必要とする園児児童生徒の在籍校に派遣し、JSLカリキュラムを中心とする巡回指導を実施するとともに、支援の方向性や実施計画等について担任等への巡回相談を行う。

 日本語指導を必要とする外国人園児児童生徒が在籍する学校園に対し、指導補助者を派遣し、学校生活への適応を図るとともに、外国人園児児童生徒の在籍数が少ない中での不安や悩みを払拭し、心の安定を図るとともに、保護者への相談活動を実施する。

3.成果と課題   

(2) 城内で情報共有するための連絡協議会の開催

【 成果 】

  1. 学校園、教育行政、福祉行政並びに国際交流協会等、関係機関による協議を行うことにより、本事業推進のための共通理解が深まり、支援体制の構築及びその支援を計画的に実施することができた。
  2. 関係課等(子育て支援課、人権推進課、三木市国際交流協会)の参加により、帰国外国人園児児童生徒の就学についての意識や理解が深まり、支援のためのネットワークが充実した。
  3. 就学事務に関する手続きが円滑化された。
  4. 通訳ボランティア等が三木市国際交流協会から円滑に派遣されるようになったほか、日本語指導を必要とする児童生徒に対し、三木市国際交流協会を通じて神戸YWCAの夏季集中講座の受講が可能となったり、同国際交流協会のボランティアにより夏季休業中に集中指導を実施することができるなど、新たな支援の方法が生まれた。
  5. 日本人社会で孤立しやすい保護者等が国際交流協会主催の日本語教室に入室するなど、日本語力の向上が図れただけでなく、指導者や受講者等とのコミュニケーションを通じて心の安定を図ることができた。
  6. 外国人園児児童生徒の有する課題について、新たな人権課題として真摯に受け止め、課題解決のための意識があらためて高まった。

【 課題 】

  1. 不就学児童等を就学に導くに至る過程においては、関係各課のより密接な連携と保護者、保護者の就労先への関係づくりが引き続き必要である。
  2. 保護者の就労により転入・転出が多いため、転出入先教育委員会及び学校園との円滑な接続を行う必要がある。しかし、受け入れ体制の創意により円滑な支援について接続困難な場合があることから、本取組の一層の広域化が必要である。

(5) 初期指導教室(プレクラス)の実施

【 成果 】

  1. 平成22年度の取組から、園児同士のかかわりによる生活言語の習得が行われることが望ましいと考え、主に園児同士のコミュニケーションの状況を観察し、幼稚園教員への助言を中心として支援した結果、さらに広範囲な生活言語の習得につながった。
  2. 次年度の就学を考え、生活の中で、読んだり、書いたりすることができるよう、幼稚園教員による支援を行った結果、他の幼児とかかわりの中で読んだり、書いたりすることができるようになってきた。
  3. 保護者、特に母親のコミュニケーション範囲が狭く、日本の生活に適応できない面が認められたために、園が中心となって保護者による異文化交流サークルを立ち上げ、保護者同士の交流が進み、母親の態度も随分柔らかくなり、当該園児の心の安定も図ることができた。

【 課題 】

  1. 就学前の日本語指導については、園児同士の必要性、必然性を背景として指導するほうが効果が高いことから、短期集中的に日本語指導を実施することが好ましいが、短期的な指導のできる指導者の配当が困難である。
  2. 幼児期の指導においては、保護者とのコミュニケーションが重要となる。就学後の学校への理解や協力、協働という面においても、幼児期における園と保護者との意思疎通は重要であることから、異文化交流サークルなどの多様な仕掛けが必要である。

(6) センター校の設置
a  JSLカリキュラムを活用した日本語指導を実施し、その定着及び普及に努めるとともに担任を中心とした組織的支援体制を充実させる。

【 成果 】

  1. センター校を設置し、日本語指導担当教員を配置することは、散在地域における日本語指導の推進について、指導情報の収集、指導技能の共有、対象園児児童生徒の状況把握、指示系統のスリム化及び多言語への対応等、多くの面において効果的な取組の核となり、効果的な事業が展開できた。
  2. JSLカリキュラムを活用した日本語指導を研究・実践するは、対象となる園児児童生徒のみならず、授業改善全般において効果が認められた。
  3. 研究発表により、日本語指導推進校の研究・実践を共有することができ、取組の成果を普及することができた。
  4. 組織的に本研究に取り組んだ結果、学校組織の人間関係が円滑化し、活性化した。

【 課題 】

  1. 本事業を実施することで、日本語指導のみならず、子どもたちの多文化共生の心の育成、教員の指導力の向上等、多くの効果が得られることを体感できる良い機会となった。この認識については、外国人園児児童生徒が在籍する学校園の教員により高い認識が認められる。今後においても外国人園児児童生徒の受入について適切な取組を展開することで、日本語指導や多文化共生教育を推進することが子どもたちは勿論のこと、多文化共生の理念に基づく、わかる授業の展開と心の教育を軸とする教職員の資質の向上に多いに効果が表れることをより多くの学校園に啓発することが重要である。
  2. JSLカリキュラムを主とする日本語指導が必要な子どもたちを核とする授業の組立てが、低学力の子どもたちへの適切な指導支援につながることが再認識できた。しかし、JSLカリキュラムについての各学校園における実践となると、新たな指導法の習得を必要とするという意識が強く、普及については十分とは言えない。今後、さらに研修を継続し、JSLプログラムの考え方や基礎的指導法を習得するなどし、外国人児童生徒担当者のみならず、さらに、多くの教員への普及が必要とされる。

b 三木市公立学校園に在籍する外国人園児児童の担任及び多文化共生教育担当者等による連絡協議会を開催し、情報や指導方法の共有化を図るとともに、JSLカリキュラムを活用した日本語指導の普及に努める。

【 成果 】

  1. 帰国・外国人園児児童生徒の担任が情報交換をすることにより、受入各校園が抱える課題の共有化が図れ、課題解決のための事例も共有することができた。散在地域かつ、母国語の多様な本市では指導・支援の内容それぞれ異なることから、一人一人の対応事例は非常に貴重な実践内容であり、貴重な実践内容の共有化が図れた。
  2. 日本語指導推進校の研究・実践を共有することができ、取組の成果を普及することができた。
  3. アドバイザー(大阪教育大学準教授)による研修を重ねることにより、日本語指導を必要とする子どもたちを核とする授業の組立てが、低学力の子どもたちへの適切な指導支援につながることが再認識でき、JSLカリキュラムの普及が進んだ。
  4. 昨年度本事業で作成した「外国人の子どものための指導支援ハンドブック」を活用することは、様々な困難なケースで課題解決につながった。

【 課題 】

  1. 日本語指導を必要とする帰国・外国人園児児童生徒が散在し、多言語に及んでいるため、その指導支援の方法について多様なものとなることから、市内に留まらず、他市町との情報共有を一層進め、多様な支援に対応する必要がある。
  2. JSLカリキュラムの実践となると、新たな指導法の習得を必要とするという意識が強く、普及については十分とは言えない。今後、さらに研修を継続し、JSLカリキュラムの考え方や基礎的指導法を習得するなどし、外国人児童生徒担当者のみならず、さらに多くの教員への普及が必要とされる。

c センター校より日本語指導担当教員を日本語指導を必要とする外国人園児児童生徒が在籍する在籍校に派遣し、JSLカリキュラムを中心とする巡回指導を実施するとともに、支援の方向性や実施計画等について担任等への巡回相談を行う。

d 日本語指導を必要とする外国人園児児童生徒が在籍する学校園に対し、指導補助者を派遣し、学校生活への適応を図るとともに、外国人園児児童生徒の在籍数が少ない中での不安や悩みを払拭し、心の安定を図るとともに、保護者への相談活動を実施する。

【 成果 】

  1. 巡回指導にあたって、各園児児童生徒の状況により柔軟に指導日数や時間を調整することで、定着状況に沿った指導が可能となったほか、高等学校への進学、友人関係、保護者との関係等、様々な悩みに対して丁寧に対応することができた。
  2. 専門的指導技術を有する教員が巡回指導することにより、JSLカリキュラムは外国人園児児童生徒だけでなく、他の園児児童生徒の基礎学力の定着においても効果的であった。また、その指導理念や指導方法を在籍する学校の教員に広めることができた。
  3. 母国が話せる指導補助者は、外国人児童生徒にとって母国語で意思疎通のできる重要な存在である。生活・学習言語の習得だけでなく、心情、生活環境等の把握のためにも継続した配置が必要である。散在地域では、不登校、問題行動の防止の視点からも十分な効果が認められた。

(1) 小学校 2年男子(母語:スペイン語)
 日本語初期指導を終え、日常会話もほぼ理解できている。別室指導によりJSLカリキュラムを実施、国語は別室個別指導と同室複数指導を学習内容に応じて実施した結果、平仮名、片仮名、1・2年の漢字の読み書きもほぼ習得し、音読も上達した。
 また、言語や生活習慣、文化の相違、友だち関係によるストレスを解消するために、組織的な支援をした結果、コミュニケーションも良好となり、楽しい学校生活をすごせるようになった。
(2) 小学校 4年男子(母語:フィリピノ語)
 日本語初期指導をほぼ終え、日常会話や具体的な指示も少しずつ理解できるようになり学習活動に自信を持った。
 また、学級づくりを工夫し、友だちとのコミュニケーションがとれるようになり、表情も明るくなり、行事参加への不安も解消し、運動会や音楽会等の行事も楽しく参加することができた。
(3) 小学校 6年女子(母語:フィリピノ語)
 日常会話のやり取りができ、具体的な指示も理解できるようになった。音読や読解の力がつき、理科の学習においても、学習言語や実験道具、薬品の名前を覚える等、語彙の習得ができた。
 また、学級の友だちからの声かけなど、学級経営に配慮した結果、表情も柔らかくなり日本語で話す機会も増え、行事参加への不安も解消し、運動会や音楽会等の行事も楽しく参加することができた。
(4) 小学校 6年女子(母語:ポルトガル語)
 苦手な社会科の指導を中心に支援した結果、わからない言葉や学習言語を自ら質問し、納得するまで理解しようとする意欲的な姿勢が見られるようになった。反復練習を強化し、学習に自信をつけた。
 また、児童や保護者の悩み相談を聞く機会を設けることで学校生活に慣れ、保護者も学校行事等に参加することができた。
(5) 中学校 2年男子(母語:フィリピノ語)
 日本語初期指導充実させ、小学校1~3年の漢字もほぼ習得させた後、電子辞書を「活用した自学自習等ができるよう指導するとともに、カードやプリント活用し、語彙の習得を促した。
 また、中学2年からの転入で友だちとコミュニケーションがとれない上、言語、生活習慣、学校にも慣れず、かなりストレスを抱えた状況であったため、組織的に支援した結果、緊張やストレスが解消し、体育祭やトライやる活動、文化祭等の行事にも意欲的に参加することができた。
(6) 中学校 3年女子(母語:スペイン語)
 高校受験に向け、苦手な社会科を中心に別室個別指導を実施した結果、自学自習の芽が育ち、学習方法も定着した。
 高校受験に向けて親の期待により、過度なストレス状態にあったが、相談活動を継続した結果、前向きに自己実現に向け努力できるようになった。

【 課題 】

  1. センター校を主とする日本語指導者や日本語指導補助者による巡回指導については、非常に効果的であることを再認識した。しかし、日本語指導教員を中心に派遣校との調整に努め、より一層無駄のない効果的な学校園の巡回プログラムを推進するが、対象園児児童の学年等が重複した場合、同様の時期に支援が必要となる。このため、年間計画等を早期に作成し、より計画的な派遣配当を行うことが必要である。また、指導補助者の増員も今後必要となる。
  2. 日本語指導担当教員については、国による研修会への出席や実際の指導に携わる中でスキルがアップし高い専門性を備えることができる。しかし、旅費等の捻出が困難なことからも、特定の人材に固定化される傾向がある。今後、年次を追って参加者を抽出するなど、計画的な人材育成が必要となる。
  3. 母国が話せる指導補助者の存在は、意思疎通のできる重要な存在である。心情、生活環境等の把握のためにも継続した配置が必要であり、散在地域にあっては、不登校、問題行動の防止の視点からも配置は十分な効果が認められる。しかしながら母語指導補助者を探すのは容易なことではない。補助者の登録、共有化を進めるなど、県、他市町教育委員会、国際交流協会等の関係機関とのネットワークを構築することが重要である。
  4. 補助者については、保護者への連絡や、学校配布物等の翻訳、配置時間外の相談・助言活動などが必要であり、補助者の好意(ボランティア)に頼る部分が多い。補助者の確保、配置については、今後、補助者の就業の機会、職としての安定などの施策を講じる必要がある。
  5. 母国語の話せる補助者との結びつきは強固であり、悩みや家庭の状況等、当該園児児生徒の情報は補助者から入ることが多い。このため、補助者と日本語指導教員、学級担任等との考えや指導方針に相違が生じることのなきよう、十分な連携が必要である。

4.今後の取組等

(1)散在地域における効果的な日本語指導を研究するために、より効果的な通級指導、巡回日本語指導及び日本語初期指導のあり方について、引き続き研究・実践を継続する。

(2)関係機関の連携を拡大・深化させることにより、情報の共有を図り、指導補助者の確保に努める。

(3)幼児期における日本語指導のあり方について引き続き研究する。

(4)外国人園児児童生徒の在籍数が少ない中での不安や悩みを払拭し、心の安定を図るための本人及び保護者への相談の在り方について研究する。

(5)外国人園児児童生徒を担任する教員による情報交換会を定期的に開催し、課題を共有化する。

(6)外国人園児児童生徒の担任のためのハンドブック内容を精査し、改訂を図るとともに、外国人園児児童生徒の支援の在り方や推進体制の普及を図る。

(7)JSLカリキュラムの基本的な考え方を普及するとともに、多文化共生教育を推進することが、わかる授業の展開を軸とする教職員の資質の向上に大いに効果が表れることを周知する。

(8)自己実現に向け、進学を希望する外国人生徒等の希望が叶うよう、支援体制を充実させる。 

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成24年09月 --