CLARINETへようこそ

平成22年度 帰国・外国人児童生徒受入促進事業に係る報告書の概要(川崎市)

実施団体名【川崎市教育委員会】

平成22年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・地域連絡協議会の構成員等)

○川崎市国際教育連絡協議会の設置
 平成4年度より年度当初毎年実施。川崎市の国際教育および帰国外国人児童生徒教育の推進のために、学校教育部・総合教育センター・小学校国際教育研究会・中学校国際教育研究部会・日本語教室設置校各関係者による連絡協議会である。会長は小学校国際教育研究会と中学校国際教育研究会の会長が交代で務める。

2.具体の取組内容 

4.指導補助者・支援員等の配置

 (1)日本語指導等協力者の取組

日本語が話せない児童生徒のために、日本語指導等協力者派遣事業を実施している。初期の日本語指導習得および学校生活の適応などの支援をするためにそれぞれの学校に週2回、1回2時間の指導を基本64回(約8ヶ月~1年)実施した。平成22年度は、新規指導児童生徒(平成22年4月からの指導児童生徒)130名および平成21年度からの継続児童生徒74名、合計204名に対して各学校に日本語指導等協力者(学習支援員を含む)を派遣した。

 (2)東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターとの連携による日本語指導の取組

平成18年度、東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターが開設され、1.国際理解教育活動2.学習支援活動、3.学習環境づくりの3点について連携を締結した。本年度は、学生に川崎市日本指導等協力者に登録をしていただき、イタリア語とインドネシア語という平成21年度まで支援できなかった言語の児童生徒に母語で日本語指導ができるようになった。2校に3名の学生を派遣した。

 (3)学習支援員の派遣の取組

平成22年度より中学3年生を対象に学習言語や高校受験にむけて学習支援員の派遣を開始した。10校の中学校へ学習支援員を派遣して学習支援(定期試験での母語通訳、定期的な学習支援、進路個人面談での母語通訳など)を実施した。

 (4)中学校・高等学校外国籍卒業生調査の取組

本市では長年、中学校・高等学校外国籍卒業生調査を実施してきたが、その調査は、国籍別および公立・私立・就職などの全体的な傾向を調査する内容であった。本年度から、日本語指導等協力者および学習支援員が指導した生徒の進学先や本市全体における渡日3年以内の特別枠受験ができる生徒や日本生まれや小学校段階で渡日した生徒の進路の実態を正確に把握するために調査項目を大きく変更して実施した。

 (5)日本語指導等協力者研修の取組

 日本語指導等協力者派遣事業は初期の日本語指導と学校適応を目標として、日本語指導等協力者の登録・研修を実施した。本年度より、センター主催の年間4回の研修に加えて、中核的な日本語指導等協力者の学習会が、文化庁日本語教育委託事業を受け、主に日本語を母語としない協力者(中国・フィリピン・韓国・ブラジル人協力者など)を対象に、夏期日本語セミナーを共催で実施した。日本人協力者が日本語の指導などにあたりながら、日本語を母語としない協力者の指導力向上をめざすとともに、日本人協力者も海外の教育制度や中国語などのネイティブの表現などについて協働的に学ぶ場をつくることができた。

7.教育委員会等と関係機関との連携による就学支援

 (1)川崎市総合教育センター内での連携

近年、母国においても特別支援教育を受けていた児童生徒や日本語の習得だけではなく集団行動がうまくできない児童生徒の教育相談が増加傾向にある。川崎市総合教育センターでは、カリキュラムセンターにおける海外帰国外国人児童生徒相談室と、特別支援教育センター、教育相談センターが同じ施設で相談業務を行っている。そのために、帰国外国人児童生徒相談から特別支援教育センターと連携を取ったり、逆に、特別支援教育センターや教育相談センター(不登校やいじめなどに関する相談)から帰国外国人児童生徒相談に連携を取ったり柔軟な相談体制ができるようになってきた。

 (2)川崎市総合教育センターと区教育担当との連携

平成21年度より川崎市総合教育センターの海外帰国・外国人児童生徒教育相談室での編入相談を中心に、各区教育担当でも小学生低学年の教育相談を受けられる体制を実施している。特に、総合教育センターでは高校受験制度や日本語習得、保護者が日本を学べる情報等について専門的な相談を行っている。平成22年度は10ケースを区教育担当が相談を受けて、学校とセンターに連絡を行うことができた。

 (3)川崎市総合教育センターと地域学習支援等との連携

ふれあい館「学習サポート教室かわさき」(川崎区)との連携

川崎市ふれあい館は1988年、日本人と韓国・朝鮮人を主とする在日外国人が、お互いの歴史・文化を理解し、差別をなくし共に生きる地域社会を創造していくために設置された社会教育事業施設である。ニューカマーの子どもたちが増加する中で、川崎区に在籍するフィリピンや中国人生徒等への学習支援、高校進学へのサポートを行っている。特に、母国で義務教育9年間を修了した者が高等学校の受験をめざせる学習支援を行っている。そのために川崎市総合教育センターで相談を受けた生徒で、母国で義務教育9年間を修了した者に対してはひとつの学習保障の方法としてふれあい館「学習サポート教室かわさき」のリーフレットを配布して説明を行い、ふれあい館にも生徒の情報を提供した。また、「学習サポート教室かわさき」で学習している生徒の状況も定期的に連絡会議を開催して情報を共有することができた。

学習支援「ひまわり」(麻生区)との連携

 川崎市北部にある学習支援「ひまわり」は麻生区市民パートナーシップ事業から立ち上がった学習支援グルー プである。麻生区に在籍する外国につながる児童生徒においては、日本語指導等協力者派遣が終了後、学校 からの要請に対して約1年間の学習支援を各学校で授業や放課後に実施している。センターの初期の日本語指導を受けて学習支援を行っており学習支援のひとつのモデルと考えている。

3.成果と課題 

4.指導補助者・支援員等の配置

従来、日本語指導等協力者派遣事業は初期の日本語指導と学校適応を目標とした事業であったが、本年度より、初期の日本語指導を支える本事業の予算増額とともに、中学3年生の学習支援を同事業の中で実施することが可能となった。

学習支援員には、日本あるいは母国で教員免許をもっている方あるいは日本の退職中学校教員、日本語指導等協力者の中学で受験指導をした経験がある方を派遣して指導の充実をめざした。母語通訳による定期試験や高等学校説明会や進路決定のための三者面談での母語通訳など従来は行うことができなかった支援も行えるようになったことは大きな成果である

7.教育委員会等と関係機関との連携による就学支援

1.川崎市総合教育センター内(カリキュラムセンター、特別支援教育センター、教育相談センター)2.川崎市総合教育センターと川崎市教育委員会区教育担当(外国人児童の相談)3.川崎市総合教育センターと地域学習支援等(ふれあい館)の3つの連携を柱に取り組んできた。多様化する児童生徒の実態がある中で、行政においても柔軟な連携が求められている。川崎市の実態にあったシステムづくりが年々積み上げられていると考える。

4.その他(今後の取組等)

4.指導補助者・支援員等の配置

一般に、初期の日本語習得期間(1~2年間)、教科等の学習言語期間(3年~5年)と言われている。そのために日本語指導等協力者派遣事業が、初期の日本語指導から学習支援すべてをサポートするシステムになることは不可能である。今後は、日本語指導等協力者派遣事業の目的(立ち位置)をより明確にして、新しい指導者の確保および研修の充実を進めことが大切である。個人の日本語指導等協力者の指導力ではなく、チームとしての日本語指導等協力者の目的の共有および指導の向上をめざしていく。

7.教育委員会等と関係機関との連携による就学支援

2.の川崎市総合教育センターと川崎市教育委員会区教育担当の連携については、帰国外国人児童生徒相談の手引きを作成して周知を行ってきたが、毎年区役所の就学事務担当や区教育担当指導主事が替わることがあり、担当によって相談の方法などが曖昧な面がある。毎年、区教育担当に相談の方法やその後の手順などを丁寧に説明する必要がある。
  また、区によって帰国外国人児童生徒の実態が大きく異なるために、体制づくりという枠組みと一人一人の当事者に寄り添う相談のバランスが課題となる。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成23年08月 --