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平成19年度帰国・外国人児童生徒受入促進事業に係る報告書の概要 実施団体名【川崎市教育委員会】

1.研究事項(テーマ)

「多文化共生のまち・かわさき-帰国・外国人児童生徒への支援体制を通して、ともに学ぶ学校、地域づくりを考える-」

2.事業の実施体制(地域連絡協議会の構成員等)

  • 教育委員会(1名)
  • 教育センター(2名)
  • 市民局人権男女共同参画室(1名)
  • 各校 国際教育担当教員(約150名)
  • 日本語指導等協力者連絡会(約40名)
  • 外国人市民代表者会議(5名)
  • 国際交流協会(2名)

3.研究内容〈具体の取組内容〉

  • 1研究センター校において校内組織をつくり、全職員で受入、指導していく体制を作る。さらに、帰国外国人保護者会や学校説明会を継続的に開催してその意義を検証する。また、センター校を中心に保護者会、学校説明会を地域に広げていく。
  • 2川崎市で行っている日本語指導等協力者指導後に学習支援相談員を派遣して、特に中学校での学習支援、進路指導、教育相談といった内容に対応するシステムを構築する。
  • 3川崎市総合教育センターと川崎市ふれあい館、東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターとの具体的かつ継続的な連携のかたちを推進する。
  • 4受入における面接、健康安全に関することへの配慮事項の充実を図る。具体的には保健調査票・児童生徒調査票の多言語化および帰国外国人児童生徒指導の手引きの改訂を行い、ウエッブページでのダウンロード化を進める。

4.成果と課題

1成果

●学校全職員のかかわりの中で温かい受入の学校風土をつくる

 研究センター校(京町小学校・今井小学校・富士見中学校)において、校内委員会を設置して帰国・外国人児童生徒の受入れ体制を整備することができた。具体的には、京町小学校では、単元部会・個別支援部会、外国語活動部会、今井小学校では、学年部会、国際理解部、富士見中学校では、日本語教室指導の充実チーム、評価・評定チーム、保護者との連携チーム、国際理解教育の推進チームを設定した。コーディネーターを中心に学校全職員のかかわりの中で実践研究を進めたことはたいへん意義がある。全職員でかかわることが温かい受入の学校風土をつくる基盤になると考える。

●川崎らしい受入促進の方法と巡回指導員と学習支援相談員の意義

 川崎市では海外帰国・外国人児童生徒教育相談と連動して、日本語指導等が必要な場合、日本語指導等協力者を学校へ派遣し、初期の日本語指導、学校適応、家庭連絡の通訳などの支援を行っている。通常2時間、週2回、8ヶ月~1年の派遣を行っている。近年、外国人児童生徒の増加にともない、延べ日本語指導等協力者派遣対象者児童生徒数は、年々増加している。さらに、不登校、家庭内DV、障害、学校とのトラブルによる転校など緊急かつ長期な支援が必要なケースが多くなってきている。そのような状況の中で、本事業を通して巡回指導員と学習支援相談員を学校に派遣することができ、初期の日本語指導と学習支援の違いを明らかにすることで、それぞれの役割が明確になった。また、児童生徒が多様化する中で、巡回指導員と学習支援相談員の必要性と意義を川崎市における行政の中においても提言することができた。

●ゆるやかなネットワークづくり

 本市では、平成17、18年度は国際理解教育研究会議を設置して、2年間東京外国語大学多文化コミュニティ教育室と共同で川崎市3校において実践研究を進めてきた。平成18年度は東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターが開設され、1国際理解教育活動2学習支援活動3教員研修への協力の3つの柱のもと、より包括な連携を締結することができた。さらに平成19年度は新規の保健調査票と児童生徒調査票の多言語化への協力、夏季国際理解教育研修の協力、川崎市立橘高等学校への学習支援など継続的かつ具体的な協力をいただいている。また、川崎市ふれあい館での学習支援に対して、東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターと川崎市総合教育センターが協力してゆるやかなネットワークづくりを進めることができた。

●受入における健康安全に関する充実

 受入に際して、健康調査票・伝染性疾病(結核等)に関する問診票の多言語化が緊急性のある課題であった。平成19年度は受入の際の充実を図るために平成18年度作成したにリーフレット「温かい声から」に加え、帰国外国人児童生徒指導の手引きの全面改訂を行った。また、保健調査票と児童生徒児童調査票の6言語化を進めることができた。さらに、にほんごのあゆみ(初期日本語指導のガイドライン)を作成して、その中にも安全や健康に関する日本語指導内容をしめした。平成20年5月より川崎市総合教育センターのウエッブページよりダウンロードできるように作業を進めている。

2課題

●国際教育担当の研修の充実

 本市は平成19年12月現在、122カ国、30,592人の外国人市民が生活をしている政令指定都市である。平成19年度外国籍児童生徒基本調査および日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入調査からわかるように、165校のうち146校、約9割弱の学校に外国籍児童生徒が全市に分散して在籍し、かつ川崎区(南部)に集住している傾向がある。また、国籍も29カ国にもおよび多国籍多言語という大きな特徴がある。また、帰国児童生徒も全市に1,293名在籍しており、近年、海外で現地校のみに在籍していた児童生徒の編入が増え、日本語指導が必要なケースが多くなっている。もはや外国籍、日本語籍、二重国籍という国籍ではなく、一人一人にどのような教育的なニーズがあるのか考える必要がより強くなってきている。また、9割の学校が、日本語指導が必要な児童生徒が3名以下であり、国際教室を設置する基準には至っていない。そのために「どこの学校でも温かく受入ができるようにする」ことが本市の大きな目標である。そのために、国際教育担当者が各学校に校務分掌に位置づけられているが、その内容が国際理解教育の推進という大枠な理解に留まっている学校があり、帰国外国人児童生徒教育の受入についても、地域や学校によってその理解に差がある。国際教育担当教員が受入の流れとその基本的な支援の考えを学ぶ研修を計画的に実施する必要がある。

●さらなる全市における包括的な受入促進への取組

 センター校を中心にした実践発信という視点とともに市行政として包括的な受入促進への取組を進めていく必要がある。どことどこの組織が、どの部分で、どのようなことを、いつまで行うかを具体的に進める必要がある。現在は組織の人と人のつながりからの動きが多いが、しっかりした小さなシステムを組み合わせていく発想が必要である。

5.その他(今後の取組等)

今後も4つの研究の柱(1受入体制の包括的な整備2学習支援と地域のネットワークづくり3就学・進学支援4センター校における校内体制づくりと国際教育担当の研修の充実)を通して、川崎市としての帰国外人児童生徒受入促進を構築し全市において共有化する。また、本市の取組が「たった一人の帰国外国人児童生徒が学校に入る」多国籍多言語で分散型の地方都市の参考になるような実践をすることを研究の柱に考えていきたい。

(初等中等教育局国際教育課)

-- 登録:平成21年以前 --