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トピック型JSLカリキュラム 授業例 4 レベル3 テーマ:金

「金属の性質」(3時間)

1. ねらい
 
1 身の回りの物の中から、金属が使われている物を探し、探した物について実物を指しながら日本語で話すことができる。
2 触る、打ちつける等の活動を通して他の物質と比較し、金属の特性を理解することができる。
3 実験の結果をもとに、金属の性質について簡単な日本語で書いてまとめることができる。

2. 利用するAUカード(次のAUに、示されている日本語の表現を使って参加させる)
 
1 AU:A-1 知識を確認する1「知識を確認する」
 
表現 : T「を知っていますか。」
S「はい、知っています。/いいえ、わかりません。」
2 AU:D-4 操作する4「該当するものを探す」
 
表現 : T「ものを探しましょう。」
S「はい。(探す)見つけました。にありました。」
3 AU:K-10 絵や図で表現する1「絵で表現する」
 
表現 : T「絵を使って説明してください。」
S「これを見てください。これはで、これはです。」…描いた絵を指して
4 AU:C-7 比べながら観察する2「違いを観察する-1」
 
表現 : T「、違うところはどこですか。」
S「(だ)けれども、(だ)というところが違います。」
5 AU:K-8 経験したことを表現する2「したことを表現する」
 
表現 : T「どんなことをしたか、話してください。」
S「を(どのように)しました。」
6 AU:H-2 条件的に考える2「条件を付して考える-2」
 
表現 : T「だったら、はどうでしょう。」
S「だったら、です。」
7 AU:K-5 わかったことを表現する1「わかったことを表現する」
 
表現 : T「どんなことが分かったか、発表してください。」
S「ということが分かりました」

  示した表現は一例であり、実施に当たってはAUカードの日本語表現を参考に子どもの実態に合わせて調整する必要がある。

3. 教材・教具等
 
金属製品(釘・空き缶など)
その金属製品と似た形や用途の物(爪楊枝・空きびんなど)
白紙のカード(10センチメートル四方)
タスクシート

4. 授業の流れ
 
○: 教材・教具
  活動 AU・表現
体験

一単位時間
「金属」について確認する
教材・教具 釘、缶、画鋲等金属でできている物
知識を確認する1「知識を確認する」
T: これは何ですか。
S: 釘です。缶です。画鋲です。
T: こういうのを何と言いますか。
S: …知りません。
T: こういうのを金属と言います。

身の回りの物から金属製品を探し出す
教材・教具 教室内の金属でできている物
操作する4「該当するものをさがす」
T: 金属でできているものを探しましょう。
S: はい。(探す)見つけました。
これは、金属でできています。ここは、金属です。

見つけた物を絵カードにする
教材・教具 白紙カード・色鉛筆
絵や図で表現する1「絵で表現する」
T: これは何ですか。絵を描きましょう。
S: これはです。

探求

一単位時間
釘や缶等が金属以外の素材で作られた場合どうなるか考える(一部実験)
教材・教具 釘と爪楊枝・指輪と輪ゴム
缶とびん・導線とひも
なべとプラスチック容器

比べながら観察する2「違いを観察する-1」
 爪楊枝を板に打ち込む実験をして
T: 爪楊枝と釘、どこが違いますか。
S: 硬さが違います。爪楊枝は柔らかいです。釘は硬いです。
実験結果をまとめ、発表する
教材・教具 タスクシート
経験したことを表現する2「したことを表現する」
T: 実験したことを話してください。
結果はどうでしたか。
S: 木に爪楊枝を打ちました。爪楊枝は折れました。やわらかいです。

発信

一単位時間
金属の性質について話し合う
教材・教具 前時に使った物
タスクシート
条件的に考える2「条件を付して考える-2」
T: 釘じゃなくて爪楊枝だったらどうでしょう。
S: 爪楊枝だったら、折れやすいからだめです。
びんとカン: 割れやすい/割れない
輪ゴムと指輪: 光らない/光る
ひもと導線: 電気を通さない/通す
プラスチック容器と鍋: 燃える/燃えにくい

金属の性質について分かったことを話し合い、文にまとめる →発表する
教材・教具 タスクシート
わかったことを表現する1
「わかったことを表現する」
T: 金属はどんな性質でしたか。
わかったことを書きましょう。
S: 金属は硬いから壊れにくいです。そして電気を通します。燃えにくいです。だから釘や鍋や導線は金属でできています。


5. 語彙と文字 活動中に自然な形で聞かせたり使わせたりすれば、次の語彙・文字の力を強化することができる。
 
(1)
語彙: 日本語能力及びトピックに関する知識を考慮して、語彙(数も)を選択する。
素材を表す言葉: 金属・鉄・銅・アルミ・プラスチック・木・ゴム・皮など
製品名: 缶・画鋲・釘・針・なべ・はさみ・指輪・時計・コード・輪ゴム・びん・ひも・プラスチック・容器・ポリ・袋など
性質を表す表現: 硬い・丈夫・きれい・壊れやすい・伸びる・曲がる・燃える・(光や電気を)通すなど
(2)
文字: 対象児童の文字の読み書きの力に応じて、意識化させる文字を決める。
漢字: 金属・光る・電気・通す・曲がる・燃える   カタカナ: ゴム・コード・プラスチック・アルミ・ポリなど

6. 教師の支援
   学習内容の理解と表現を補助するための手立てと、予測される困難とそれへの対応例を各活動に対応させて示す。
 教師は、理解を求める表現・語彙と、使用まで求める表現・語彙とを区別して、聞かせたり使わせたりすることが大事である。また、子どもが言いたいことが表現できずにいる場合は、適切な言葉を伝える、或いはいくつかの表現を示して子ども達がそこから選んで使用できるようにする等の補助が必要である。

体験 「金属」について確認する
「金属」という言葉を全く知らない子の場合、金属でできているものを探す活動を通して、金属のイメージができてから「金属」という言葉を示してもよい。分かりにくい言葉は具体的に物や例を示す。見る・触れる等の体験を通して理解させていくことが有効である。
ボールペンのように金属と非金属素材で作られている物をいくつか用意し、プラスチック部分を指して「ここは金属ではありません」金具部分を指して「ここは金属です」と示しても理解の助けになる。「対比」させると、分かりにくい言葉や事象を理解させるのに役立つ。

体験 見つけた物を絵カードにする
子どもが見つけた金属でできているものを、1枚ずつカードに描く。(表に絵、裏に物の名前)
「金属」という言葉をできるだけ多く聞かせるために、作業中も子ども一人一人に、何が金属で何が金属ではないかを問いかける。経験させたい学習活動や身につけさせたい日本語を、さまざまな文脈や状況で繰り返し体験させることが重要である。
絵を描くのに時間がかかりすぎないように、教師の方で絵にする物を指定してもよい。

探求 釘や缶等が金属以外の素材で作った場合どうなるか考える(一部実験)
金属でできている物が「他の物質でできていたらどうか」という実験を通してその違いを体験的に理解できるようにする。比べさせるものは、子ども達の身近なものから選択する。
比較を通して気づいて欲しい性質>
1
釘:硬い⇔爪楊枝:柔らかい   2 缶:丈夫⇔びん:壊れやすい。
3 指輪:光る・きれい⇔輪ゴム:光らない
4 電気コード:電気を通す・細くても折れない⇔ひも:電気を通さない
5 なべ:熱に強い・燃えない⇔プラスチック容器:熱に弱い・燃える
物質の性質についてなかなか答えられない場合は、次のようなやりとりで考えさせる。
  T: 釘の代わりに、これ(爪楊枝)だったらだめでしょうか。
  S: だめ。それ(爪楊枝)じゃ、柔らかくてだめ。
  T: 釘だったら、どうしていいのですか。
  S: 釘は硬いからいいです。
すぐに覚えられない語彙は、一時的に「これ」「それ」に置き換えるとよい。

発信 金属の性質について分かったことを話し合い、文にまとめる
まず、口頭でやり取りをし、子ども達の発言から文章化するときに役立つ語彙や表現を拾い出して、板書しておく…語彙や表現を意識化させる。
「(1)だったら(2)からだめです。(3)だったら(4)からいいです。」
・硬い ・やわらかい ・じょうぶ ・われにくい ・こわれにくい ・電気を通す ・燃えない
タスクシートは、書き進むにつれて徐々に難易度が上がるように作る。
例えば、書き込む個所を少しずつ増やして行く。上の例であれば、書き込む箇所を(4)だけ→(4)と(2)→(1)(2)(3)(4)全てとし、→最終的に自分で全文を書かせる。
まとめの文章を自力で書くことが困難であれば、一部分を書き込むような形でもよい。それも無理であれば、教師が書いたものを読む、写す、再度読むという活動にしても良い。いずれにしても、学習したことを文字言語で(読み、書きで)確認するという活動が重要である。
まとめの文章の例 「金属はかたいからこわれにくいです。そして電気を通します。燃えにくいです。だから、くぎやなべやどう線は金属でできています。」

7. 活動のバリエーション
 
(1) 学習の形態に応じた工夫
 
金属探しの活動では、一人一人探す場所を決めて行い、どんな金属を探したかを発表する。
実験的な活動はグループ活動や個別の活動にして、結果をクラス全体で共有化する(発表する)。
(2) 出身国による違いに着目して
 
1時間目の金属探しの活動で、いろいろな国の家の写真を見ながら、気候との関係でトタン屋根とそうじゃない屋根があることについて話し合う。(他にも、気候・地理的条件によって素材の違う道具や日常用品などがあれば取り上げる)
それぞれの国で、今は金属で作られているけれども昔は他の材料で作られていたものを調べて、紹介しあう。
(3) 学習活動を発展させるために
 
1時間目の金属探しで作ったカードに加え、金属以外の物の絵のカードも作成し、ゲームをする。
 Tが出題「金属/木/プラスチック/紙でできていて、まるまるする時に使うもの!」
 Sが該当する絵カードを取る(Sが出題してもよい)
1時間目に、教室内で金属を探す活動の代わりに、リサイクルのためにごみを素材別に分ける活動をする。ガラス製品・金属製品(鉄とアルミに分ける)・プラスチック製品・紙製品などに。
2時間目の学習の後、可能であれば、日本で採れる金・銀・銅・鉄や、輸入されている原材料を、図鑑やインターネットで調べて発表する。私たちの生活に金属がどれだけたくさん利用されているか、金属の輸出入の面から海外とどんな関係があるのかについて考える。
金属以外のものでも造られている物(例えば、セラミックの包丁、木や石の橋、木やバナナの葉の家、牛乳パック)について、自分は金属の物がいいか、金属じゃない物がいいか、選んでその理由を話す。それによって、丈夫さや便利さだけでなく、私たちが嗜好やリサイクル等の観点からも材料を選んでいることに気づく。
もしオリンピックで6位までメダルがもらえるとしたら、4~6位にどんな金属のメダルをあげるかを考える。アルミ? 鉄? 亜鉛? 鉛?
(4) 多様な学習の連携に向けて
 
在籍学級の理科の授業で、物の性質についての学習がある場合、この授業でも関連ある物を取り上げて性質について学習しておくと、性質をどのような観点から見るのかが経験的に身につく。
作ったカードを在籍クラスの先生やクラスメイトに紹介する。
3時間目の「なになにだったらどうでしょう」をクイズにし、クラスメイトや近所の友だちに出題する。
家庭にある金属でできているものを保護者や兄弟と探してみる。或いは、近所の友だちと、公園や近所にある金属でできている設備や、近所の商店にある金属製品を探す。

8. リソース
 
(1) 教材・教具
   身近な金属としては硬貨があるが、一円(アルミ)を除くとほとんどが合金。五円は黄銅(銅と亜鉛)、十円は青銅(銅と錫)、五十円と百円は白銅(銅とニッケル)、平成12年以降の五百円はニッケル黄銅で、小学校の理科に出てくる金属は一円のアルミニウムぐらいである。
(2) 人的リソース…7.(4)の「多様な学習の連携に向けて」参照

-- 登録:平成21年以前 --