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トピック型JSLカリキュラム 授業例 2 レベル3 テーマ:月

「月」(3時間)

1.ねらい

  1. 月について見たことや知っていることを絵に描き、簡単な日本語で友だちに伝えられる。
  2. 擬似的体験による観察を通して、月の位置と形(見え方)の関係についてだいたい理解できる。
  3. 疑似体験を通して分かったことや調べたことを短い文にまとめ、写真や図を使って発表できる。

2.利用するAUカード(次のAUに、示されている日本語の表現を使って参加させる)

1.AU:J‐4 関連付ける4.「特徴を探る」

表現:
 T「~の特徴は何ですか」
 S「~です。」

2.AU:A‐4 経験を確認する1.「経験の有無を確認する‐1」

表現:
 T「~をしたことがありますか。」
 S「はい、(いつ/どこで/何回/だれと)しました。」

3.AU:K‐10 絵や図で表現する1.「絵で表現する」

表現:
 T「絵を使って説明してください。」
 S「(描いた絵を示して)これを見てください。これは~で、これは ~です。」

4.AU:C‐12 変化を観察する2.「変化の結果について話す‐1」

表現:
 T「どう変わりましたか。」
 S「~が~になりました。」

5.AU:K‐11 絵や図で表現する2.「図で表現する」

表現:
 T「図を使って説明してください」
 S「(図を指して)これは、~の図です。これは~です。」

6.AU:J‐2 関連付ける2.「関連を把握する‐1」

表現:
 T「~と~はどんな関係がありますか。」
 S「~が~の時、~は~です」

7.AU:K‐5 わかったことを表現する1.「わかったことを表現する」

表現 :
 T「どんなことがわかったか発表してください。」
 S「~ということが分かりました。」

 ※ 示した表現は一例であり、実施に当たってはAUカードの日本語表現を参考に子どもの実態に合わせて調整する必要がある。

3.教材・教具等

  • 月の写真や図(満月、半月、三日月などいろいろな月)
  • 太陽、月、地球の位置関係がわかる写真や図
  • 月の形の変化を観察(擬似体験)するための道具(懐中電灯、白いボール)
  • タスクシート

4.授業の流れ

○:教材・教具

活動 AU・表現
体験

一単位時間
月面の写真を見て、黒い影を見たてる
(何に見えるか話し合う)
  • 影がはっきり見える月面の写真
    ペン…月面の写真に書き込む
関連付ける4.「特徴を探る」
T:月の写真です。黒いところは何に見えますか。
S:うさぎ/かに/おばあさんに見えます。
 (写真に見立てたものの絵を書き込む)
月を見た経験について話し合う
  • 月の絵(満月、半月、三日月、それぞれの中間の月等)
経験を確認する1.「経験の有無を確認する‐1」
T:月を見たことがありますね。いつ、どこで見ましたか。どんな月でしたか。
S:昨日、家で見ました。
 丸い/半分の/大きい/白い月でした。とても、高かったです。
自分が見た月を絵に描いて説明をする
→作文にまとめる
  • タスクシート、色鉛筆
絵や図で表現する1.「絵で表現する」
T:見た月の絵を描いてください。
S:(描いた絵を示して)去年の9月に、中国で見た月です。とても大きくて丸い月でした。
 作文の例「去年の9月、中国で見た月です。とても丸くて大きな月でした。中国の9月15日は月の日です。一年で一番丸くなります。みんなは月餅を食べます。」
探求

一単位時間
懐中電灯(太陽)の光をボール(月曜日)に当て、ボールを移動させて月の形の変化を観察する
  • 懐中電灯、ボール
変化を観察する2.「変化の結果について話す-1」
T:月の形はどう変わりましたか。
S:丸(満月)が半分(半月)になりました/細くなりました/少し丸くなりました。(ジェスチャーでもよい)
観察の結果を図で表現する
  • 月の形の変化を書き込むタスクシート
絵や図で表現する2.「図で表現する」
T:月の形がどう変わったか、図に描きましょう。始めはどんな形でしたか?それからどうなりましたか?
S:始めは丸い(満月)です。次に半分に(半月に)なりました。(図を指して、「これ」「こう」等と表現しても良い)
発信

一単位時間
月と太陽の位置関係と、月の形の変化を関連づける
  • 太陽と月の位置関係をあらわした図
情報を関連付ける2.「関連を把握する1」
T:太陽はここです。月がAの時、月の形はどんな形ですか。月がBに来るとどう変わりますか。
S:月がAの時、月の形は丸くて(満月で)、Bに来ると半分(半月)になります。
(月の位置にABC等の記号が付してあるもの)月の形と太陽との位置関係について分かったことを書いてまとめる→発表する
  • 上の活動で利用した図が記載されているタスクシート
わかったことを表現する1.「わかったことを表現する」
T:わかったことをまとめましょう。
 まとめ方の例
 「月の形はAの時は満月、Bに来ると半月、Cに来ると三日月に変わります。月は地球の周りを回っています。太陽に近くなると細くなります。遠くなると丸くなります。」

5.語彙と文字

 活動中に自然な形で聞かせたり使わせたりすれば、次の語彙・文字の力を強化することができる。

(1)語彙:日本語能力及びトピックに関する知識を考慮して、語彙(数も)を選択する。

  • 月の形状に関する語彙:丸い、細い、満月、新月、半月、三日月
  • 天体に関連する語彙:太陽、月、地球、空
  • 時間に関連する語彙:夜、昼、朝、夕方、昨日

(2)文字:対象児童の文字の読み書きの力に応じて、意識化させる文字を決める。
 漢字:形、満月、半月、三日月、太陽、地球、太い、細い、丸い 変わる、東、西、南、北

6.教師の支援

 学習内容の理解と表現を補助するための手立てと、予測される困難とそれへの対応例を各活動に対応させて示す。
 尚、教師は、理解を求める表現・語彙と使用まで求める表現・語彙とを区別して、聞かせたり遣わせたりすることが大事である。また、子どもが言いたいことが表現できずにいる場合は、適切な言葉を伝える、或いは、いくつかの表現を示して子ども達がそこから選んで使用できるようにする等の補助が重要である。

体験 月を見た経験について話し合う
  • ☆ 月を見た経験を話す前に、興味をもって月の学習に入れるように月面の陰の部分を何かに見立てる活動をする。見立て方について友だちの意見を聞き、国による違いを知り、月に対する関心を高めてから、月を見た経験を話すように配慮する。
    • 満月の写真を準備し、何に見えるかをフェルトペンなどで書き込ませ、話しやすくする。
    • また「~に見えます」の表現カードを提示しておくと、それを利用して発言しやすくなる。
体験 自分が見た月を絵に描いて説明をする→作文にまとめる
  • ☆ タスクシートは説明する時に必要な項目「いつ」、「どこで」、「どんな形」等を記入できる形式のものがよい。その他に、月を見た状況や感想も書き込めるように自由記述をするスペースも作る。
  • ☆ 絵とそれについて記入する活動の時にも、個別に「いつ」「どこで見たか」「どんな形だったか?」等の問いかけをしながら進める。言いたいことが表現できない様子であれば、言い方を伝える。
  • ☆ 説明させる時には、必要な語彙を絵と文字と両方で示しておくと、発表する側もそれを指差したりしながら説明できるし、聞く側もそれを頼りに理解ができる。

 ※ 満月、半月、三日月等、語彙に関しては、子どもの日本語の力や月についての既有知識を考慮して弾力的に扱う。語彙として提示するか、「丸い」「半分」「細い」などの語彙で言い換えるか。

探求 懐中電灯(太陽)の光をボール(月曜日)に当てて、ボールを移動して月の形の変化を観察する
  • ☆ 擬似的体験活動をする前に、月の形の変化について予測をさせ、課題を意識化させる。
    月の絵(いろいろな形のもの)を準備し、どんな順番で変化するかを、その絵を並べながら予測させる。絵を利用して予測したことを発表させる。
  • ☆ 太陽、月、地球の位置関係は複雑なので、ここでは太陽と月に焦点を当てるようにする。
    懐中電灯(太陽)と月(ボール)を使った擬似的体験では、子どもを地球の位置に固定させ、ボールをその周りを回るように移動させる。懐中電灯は同じ方向から光を当てるようにする。ボールの光の当たる部分が、はっきり見えるように場の設定に注意を払う。
  • ☆ 疑似体験活動中にも、繰り返し「月の形はどう変わりましたか」と問いかけ、子ども達からの反応を受けて「細く(三日月に)/丸く(満月に)なりましたね」等、適切な表現を与える。
  • ☆ 疑似体験の太陽(懐中電灯)・月(ボール)・地球(子ども)の位置関係が示されているタスクシートを準備をする。また、月の位置を記号で示しておく。
  • ☆ 自分の考えだけでなく、友だちの意見を聞きながら考えられるように配慮する。
    →予想したことを掲示しやすくする…月の形のカードを準備し、並べさせる。
発信 月と太陽の位置関係と、月の形の変化を関連づける
  • ☆ 月と太陽の位置関係を図で表現させ、それを手がかりに日本語で文を書いたり、発表したりできるようにする。
  • ☆ 文章化する時に、必要に応じて、表現の型を示して利用させてもよい。
    例 「月の形は(月の位置を表す記号)の時は(半月)です。(記号)に来ると(満月)になります。そして、( 記号 )に来ると( 三日月 )に変わります。月は地球の周りを回っています。太陽に近くなると(細く)なります。遠くなると(太く)なります。」
    ※ ただし、自分で書くことが無理であれば、教師が書いたものを読む、写す、再度読むという活動にしても良い。いずれにしても、学習したことを文字言語で(読み、書きで)確認するという活動が重要である。
  • ☆ 家族に話すことや、クラスで発表することなどを想定して、目的意識をもって表現できるようにする。

7.活動のバリエーション

(1)学習の形態に応じた工夫
  • 一人の場合には、資料や図鑑などを活用して、学習内容に広がりが出るようにする。
  • 疑似体験の代わりに模型作り活動とし、その作業を通して月と太陽の位置関係と月の形について理解させていく。
(2)出身国による違いに着目して
  • 体験段階の「月について知っていることを話す」活動で、出身国の月にまつわる話や、物語、或いは月の陰を何に見立てるか等を紹介しあう。
  • 体験段階で、それぞれの国で「月」からどんなものをイメージするのかを自由に挙げていく。
  • 出身国に、月に関連する祭事・行事があれば、それについて詳しく紹介することを、中心の活動にして展開してもよい。
(3)学習活動を発展させるために
  • 発信段階で、「わかったこと」をもとにクイズを作り、在籍学級で出題する機会を設けてもらう。
  • 疑似体験により、月の形の変化を大体理解した後、子ども自身に調べたい課題を設定させて、インターネットや図鑑などを利用して、月の形や地球と月の位置関係、或いは太陽系の惑星等について調べる。
  • 可能であれば、プラネタリウムに行って星の動きについて学習し、天体の全体像に関する学習へと展開する。
(4)多様な学習の連携に向けて
  • 在籍学級で月や星の学習がある場合には、その前後に実施し、内容も関連付けて扱う。
  • ここでの学習の成果を、在籍学級で報告する時間を設けてもらう。
  • 修学旅行や臨海学校等、先生や友達と一緒に夜を過ごす機会があれば、夜の活動に月の観察などを組み込んで、ここで学習したことを発揮できる場を作る。
  • 地域の学習会等で、天体や星等を対象にした講座などがあれば、そこへの参加を促す。

8.リソース

(1)教材・教具
  • 新聞の切り抜きや月の暦カレンダー等も、子どもたちに月の形の変化を具体的にイメージさせるのに役立つ。
  • 月の形の擬似体験の際には、ボールにあてる光源として懐中電灯やOHPなどを活用する。
    天気の良い日には、ボールを日光にかざして観察してもわかりやすい。
  • タスクシートは、言語面でも配慮が必要であるが、子どもの興味・関心、既有知識等の実態に合わせて作成したものが有効である。
  • 竹取物語(かぐや姫)の絵本などを日本での月にまつわる話として紹介してもよい。
(2)人的リソース
  • 家族から、自分の出身国の月にまつわる話や伝説などを聞いて来る。
  • 地域の天体観測をしているグループなどがあれば、話を聞きに行く。
  • 友達に天体に関心がある子がいれば、月の動きや形の変化について、話を聞く。
  • 図書の先生に、月が出てくるお話を紹介してもらう。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

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