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はじめに

 近年、世界各地で暴動、騒乱、地域紛争や盗難、強盗などが発生し、不安定な治安状況に対する危機管理体制の整備が重視され、在外教育施設における安全対策の必要性が益々大きなものとなっています。
 幸い、これまでに、日本人学校や補習授業校の児童生徒に係る重大事件はありませんが、天安門事件、湾岸戦争、ペルー大使公邸占拠、インドネシア情勢の悪化、米国同時多発テロ、当該テロに伴うアフガニスタン周辺国の情勢の悪化、インド・パキスタン間の緊張の高まり、ベネズエラ情勢の悪化など、様々な事件が発生し、一部においては、児童生徒が日本へ一時帰国する事態に至っています。
 また、台風や洪水などの自然災害により臨時休校の措置が取られたり、トルコ西部、アテネ北東部、メキシコや台湾での大地震、キトの火山噴火では、校舎損壊など、学校施設に甚大な被害を受けています。
 海外における安全対策の必要性や危険の度合いは、地域の情勢によっても大きく異なりますが、各在外教育施設では、現地を取り巻く実情に応じ、学校運営委員会と連携し、在外公館と緊密に連絡を取り、現地日本人会、保護者及び現地関係機関などの理解と協力を得つつ、セルフディフェンス体制を構築することが必要です。
 今日、このような緊急事態が発生した場合、児童生徒の安全の確保を最優先に図るとともに、適切な心のケアを行うことが求められています。心のケアの視点からは、児童生徒の安心の確保を図ることが重要です。従来の危機管理の考え方では、安全が確保されても、安心の確保に関して十分に配慮されていませんでした。心のケアを考えた危機管理では、「安全と安心の確保」が基本となります。
 本書では、道都大学の小澤康司講師の協力により、緊急時や普段における学校教育活動としての心のケアの手法や事例を取りまとめていますので、各日本人学校、補習授業校において、心のケアに係る活動の充実に資することを期待します。

平成15年3月
文部科学省初等中等教育局国際教育課
奈良 人司

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