学校は、教育の場であると同時に、児童生徒等が一日の大半を過ごす生活の場でもある。また、地域住民の生涯学習の場、地域コミュニティの拠点、地震等の災害時の応急的な避難場所としての機能も求められるなど、学校の果たす役割は一層重要なものとなっていることから、児童生徒等にとって安全・安心な施設環境が確保されている必要がある。
とりわけ、近年の学校を発生場所とする犯罪の件数の増加等を背景として、児童生徒等の安全確保及び学校の安全管理の一層の徹底が求められており、子どもたちが安心して教育を受けることができるよう、教職員をはじめとする関係者が危機管理意識を持って緊密に連携し、ハード、ソフト両面から学校施設の安全対策に組織的・継続的に取り組むことが重要である。
こうした考えの下、これまで、政府において、また、各学校や設置者において、学校の安全管理の取組がなされてきたところであり、以下、主な取組状況について紹介する。
これまで、文部科学省では、安全で安心できる学校の確立を目指し、学校安全の充実に総合的に取り組む「子ども安心プロジェクト」を平成14年から推進しており、不審者侵入などの事態が起きた場合の共通的な留意事項をまとめた「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」(平成14年12月)、学校における犯罪被害防止のための特色ある安全管理の取組を紹介した「学校の安全管理に関する取組事例集」(平成15年6月)等を作成・周知している。
また、大阪府寝屋川市立中央小学校の事件を受け、「安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム」を設置し、学校への不審者侵入防止のためのチェック体制の確立など各学校の安全対策の再点検のポイント等について提言した「学校安全のための方策の再点検等について‐安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム第一次報告‐」(平成17年3月)を取りまとめ、各学校や設置者において、実効性のある安全対策の積極的かつ継続的な実施を求めている。
さらに、最近の下校中の児童に対する痛ましい事件を受け、政府は、犯罪から子供を守るための対策に関する関係省庁連絡会議を設置し、「犯罪から子どもを守るための対策」(平成17年12月)を取りまとめたところであり、関係省庁が総合的に対策を講じているところである。
施設面では、学校施設の安全対策のための施設整備に要する経費を補助するとともに、「子ども安心プロジェクト」の一環として、学校施設の安全対策推進のための事業を実施してきている。
具体的には、以下のような取組を行ってきており、これらの報告書において、既存学校施設の点検・改善の重要性について指摘されている。
各学校において考慮すべき防犯対策に係る基本的な考え方や、設置者が具体的な防犯対策を計画・設計する際の留意点、今後の推進方策等、学校施設の防犯対策の在り方を総合的に提言。
※ 既存学校施設の防犯対策の推進のため、施設の現状について点検・評価を行い、必要な予防措置を計画的に講じていくことの重要性を指摘している。
上記調査研究報告書「学校施設の防犯対策について」を踏まえ、学校施設整備指針を改訂し、それぞれの学校施設の防犯対策に関する規定を充実。(「小学校施設整備指針」、「中学校施設整備指針」、「幼稚園施設整備指針」を平成15年8月、「高等学校施設整備指針」を平成16年1月に改訂)
社団法人日本建築学会に委嘱して調査研究を実施し、学校施設の防犯対策に関する手引書として「学校施設整備指針」における防犯対策関係規定について分かりやすく解説。.
※ 学校施設の防犯対策は、常に施設の現状について点検・評価を行い、必要な予防措置を計画的に講じることが重要であり、このことは、関係者が学校安全への意識を維持していく上で有効であること、点検・評価は、地方公共団体等の学校の設置者が、各学校の教職員とともに、必要に応じ保護者、地域の関係機関・団体、建築や防犯に関する専門家等の協力の下に実施することが有効であること等を指摘し、具体的な点検・評価の手順を紹介している。
国立教育政策研究所との連携の下、学校施設における防犯対策について特色ある取組事例を紹介。
※ 「学校安全のための方策の再点検等について‐安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム第一次報告‐」において、「学校の敷地内への不審者の侵入防止」、「学校の敷地内での不審者の発見・排除」、「校舎内への不審者の侵入防止」の3段階のチェック体制の確立が提言されたことを受けて、門等における不審者侵入防止の対策事例等も紹介している。
各学校や設置者においては、これまでも学校や地域の実情等を踏まえつつ、学校施設の安全対策に取り組んできたところである。以下、文部科学省が実施した調査結果から、施設面及び安全点検面に関する学校の安全管理の取組状況を紹介する。
門や塀で囲まれている場合において、学校の敷地内への不審者の侵入防止のための対応(注1)を行っている学校の割合 72.5パーセント
例えば、
などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること
学校の敷地内での不審者の発見・排除のための対応(注2)を行っている学校の割合 75.4パーセント
例えば、
などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること
校舎内への不審者の侵入防止のための対応(注3)をとっている学校の割合 83.9パーセント
例えば、
などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること
学校の安全管理に関し学校において取り組むべき事項について、点検を実施した学校の割合 87.6パーセント
※ 平成18年6月、文部科学省「学校の安全管理の取組状況に関する調査」(平成17年3月31日現在の実績を示す)
近年の学校を発生場所とする犯罪の件数の増加等を背景として、児童生徒等の安全確保及び学校の安全管理の一層の徹底が求められている中、学校施設の安全管理に関する取組を一層推進していくためには、これまでの安全対策を再点検し、より実効性のある安全管理の取組を積極的かつ継続的に推進していくことが望まれる。
文部科学省では、これまでの調査研究報告書等において、既存学校施設の防犯対策の推進のため、点検・改善の重要性を指摘してきたところであり、「学校施設の防犯対策について」(平成14年11月)においては、学校施設における防犯対策の推進方策として、防犯対策のチェックリストやマニュアル等に基づいた定期的な点検や訓練等を実施し、改善すべき点は早急に対応するといった、実効性のある検証システムを確立することを求めている。
本調査研究では、これまでの調査研究報告書等を踏まえつつ、学校施設における防犯対策に関する点検・改善の取組を一層促進することを目的とし、防犯対策に関する点検・改善の現状および取組における課題等を整理・分析し、学校施設の防犯対策の点検・改善に資するマニュアル策定に当たっての視点や留意事項等を明らかにするための調査研究を行う。
国立教育政策研究所に、建築計画・防犯の専門家、校長、教育委員会関係者による研究会を設置(平成17年11月24日国立教育政策研究所長決定 参考資料P.58参照)し、文部科学省と連携の下で調査研究を実施する。
平成17年 | 10月 | 文部科学省より「学校施設の防犯対策に関する点検・改善マニュアル作成支援事業」(以下、「支援事業」という)及び「学校施設の防犯対策に関する点検・改善マニュアルの事例調査」(以下、「取組事例」という)を各都道府県教育委員会等に依頼 |
11月 | 「取組事例」の提出 | |
11月 | 「学校施設の防犯対策に係る点検・改善マニュアル作成の取組に関する調査研究」 (国立教育政策研究所長決定) |
|
平成18年 | 2月 | 第1回研究会 |
3月 | 現地校視察 「支援事業」報告書の提出 |
|
4月 | 第2回研究会 | |
5月 | 第3回研究会 | |
6月 | 第4回研究会 | |
6月 | 第5回研究会 |
大臣官房文教施設企画部施設企画課
-- 登録:平成21年以前 --