学校施設の換気設備に関する調査研究報告書 参考資料[3]

3.換気設備性能の検証試験結果についての概要(学校施設における機械換気システム導入のための基礎実験現場調査報告書(財団法人ベターリビング)より

現場調査の目的

  建築基準法改正に伴い、シックハウス対策として学校施設においても機械換気システムを導入する必要がある。そこで既存の学校施設を利用し、機械換気システムにより効率よく教室内を換気するための基礎資料を得るため、現場測定を実施することを目的とする。

(1)新潟県J学校における実測調査結果概要

1)調査場所、日時
  • 調査場所:新潟県J学校の2階の2教室
  • 日時:平成15年8月8日(金曜日)~8月10日(日曜日)

調査教室平面図
調査教室平面図

2)調査項目
  • 気密測定
  • 換気量測定
  • 空気質濃度測定
  • 調査時温湿度及び風向・風速測定
3)調査結果

1.換気回数測定結果
換気回数測定結果表

図‐30 実験条件と換気回数 グラフ
 図‐30 実験条件と換気回数 グラフ

図‐31 設定換気風量と減衰法から求めた換気量
 図‐31 設定換気風量と減衰法から求めた換気量

2.調査結果まとめ

 今回実施した現場調査により以下の結果を得た。

  • 教室の気密性は、相当隙間面積で約14(平方センチメートル毎平方メートル)であった。建具をシールして気密性を測定した結果、アルミサッシ部分の相当隙間面積が約2(センチメートル2/平方メートル)、廊下側の引き戸、建具が約11(平方センチメートル毎平方メートル)、残りの隙間が約1(平方センチメートル毎平方メートル)となった。
  • 減衰法により測定された教室の換気回数は、サッシ、建具を閉め切り、機械換気を設置しない状態で0.2(回毎時)程度、アルミサッシ上部及び廊下側木製建具上部(引き違い窓)を開放(開放面積は床面積の約1/10)することで10.0(回毎時)以上の換気回数となった。
  • 機械換気を設置した状態では、第二種換気及び第一種換気とも教室内の濃度には大きな分布は見られなかった。また教室内の風速についても0.1(秒速毎メートル)以下となった。
  • 機械換気による換気量は、換気扇の設定風量に自然換気量分を足し合わせた形で概ね算定できる結果となったが、内外温度条件、外部風速条件により異なるため、注意が必要である。

(2)東京都G学校における実測調査結果概要

1)調査場所、日時
  • 調査場所:東京都G学校の3教室
  • 日時:平成15年8月27日(水曜日)~8月29日(金曜日)

調査教室平面図
 調査教室平面図

2)調査項目
  • 気密測定
  • 換気量測定
  • 空気質濃度測定
  • 調査時温湿度及び風向・風速測定
  • VOC放散源を設置しての教室内VOC濃度測定3)調査結果
3)調査結果

1.換気回数測定結果
換気回数測定結果表

図‐28 実験条件と換気回数 グラフ
 図‐28 実験条件と換気回数 グラフ

図‐29 設定換気風量と減衰法から求めた換気量
 図‐29 設定換気風量と減衰法から求めた換気量

2.VOC放散源を設置しての教室内VOC濃度の測定

 教室における換気設備の設置によるVOCの低減効果について検証するため、教室内にVOC放散源を設置して機械換気設備の有無による教室内濃度への影響を検討した。

表‐10 教室内の濃度測定結果
表‐10 教室内の濃度測定結果

注)換気設備を運転した場合のトルエン濃度の測定値が厚生労働省指針値(260マイクログラム毎立方メートル)の約3倍の値となった要因は、小型チャンバー法で得られた放散速度を用いて室内濃度を予測して放散源を設置したが、小型チャンバー法では7日目の濃度測定結果から計算した放散速度であるのに対し、実験では24時間後の測定となっている点、また、教室内体積と放散源表面積の比率(試料負荷率)がチャンバーの条件と異なる点などが考えられる。

図‐32 機械換気の有無による教室内の科学物質濃度比較
 図‐32 機械換気の有無による教室内の科学物質濃度比較

3.調査結果まとめ

 今回実施した現場調査により以下の結果を得た。

  • 教室の気密性は、相当隙間面積で約14(平方センチメートル毎平方メートル)であった。建具をシールして気密性を測定した結果、アルミサッシ部分の相当隙間面積が約2(平方センチメートル毎平方メートル)、廊下側の引き戸、建具が約10(平方センチメートル毎平方メートル)、残りの隙間が約2(平方センチメートル毎平方メートル)となった。
  • 減衰法により測定された教室の換気回数は、サッシ、建具を閉め切り、機械換気を設置しない状態で0.2(回毎時)程度、アルミサッシ上部及び廊下側木製建具上部(引き倒し窓)を開放(開放面積は床面積の約1/19)することで3.0(回毎時)以上の換気回数となった。また教室の相当隙間面積が15(平方センチメートル毎平方メートル)となるよう、窓に隙間を設けることで1.0~3.0(回毎時)程度の換気回数となった。
  • 機械換気を設置した状態では、第二種換気及び第一種換気とも教室内の濃度には大きな分布は見られなかった。また教室内の風速についても0.1(秒速毎メートル)以下となった。
  • 機械換気による換気量は、換気扇の設定風量に自然換気量分を足し合わせた形で概ね算定できる結果となったが、内外温度条件、外部風速条件により異なるため、注意が必要である。
  • 放散源を設置した教室内濃度は、機械換気を運転し、換気回数を換気無しの状態の2倍にすると、約50%に低減した。

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文教施設企画部施設企画課

-- 登録:平成21年以前 --