学校施設の換気設備に関する調査研究報告書 第2章 換気設備計画の立案(1)5)

5)普通教室における換気設備方式の検討例

a)機械換気設備の方式(第1章(3)換気方式の使い分け参照)

1.第1種機械換気設備

【換気方式の概要】
  • 教室単位で給気・排気を行うため、部屋単位で換気を完結させたい場合に適した方式で、給気量と排気量を確実に確保するためには、最も適した方式です。
【選定の考え方】
  • 廊下側からの音や汚染物質の流入を防止したい時等に用いられます。
【注意事項】
  • 廊下側の間仕切りや出入り口に気密性が必要です。
【配慮事項】
  • 省エネルギー対策や冬季の冷気対策等としては、全熱交換型の換気設備を用いることもあります。

2.第2種機械換気設備

【換気方式の概要】
  • 新鮮外気を直接教室内へ導入する方式です。
【選定の考え方】
  • 廊下側からの汚染物質の流入を防止したい時、!都市部の幹線道路沿いや火山灰の降灰地域等で高性能フィルター付の換気扇とした場合、"冷暖房との組合せで予熱等に対して有利となる場合、#外部騒音に対して高い遮音効果を必要とする場合等に有効です。
【注意事項】
  • 廊下側にガラリ等の排気口や通気性が必要です。
  • 本方式の場合は、教室内の空気が廊下へ流れ出るため、教室内が接着剤や塗料などの汚染物質の発生源となる可能性のある場合は望ましい方式ではありません。また、建築基準法に対応した必要換気量の算定に当たっては、換気経路となる廊下等も含めて計算する必要があります。
【配慮事項】
  • 冬季には、直接冷気が室内へ導入されるため、暖房機器の配置を工夫する等の冷気対策に配慮する必要があります。

3.第3種機械換気設備

【換気方式の概要】
  • 教室から直接外部へ排気する方式です。
【選定の考え方】
  • 教室内で接着剤や塗料などの汚染物質の発生源となる可能性がある場合等に有効です。
【注意事項】
  • 廊下側にガラリ等の給気口や通気性が必要です。
  • 廊下等より給気を取り入れる方式のため、廊下における空気汚染にも配慮が必要になるとともに建築基準法に対応した必要換気量の算定に当たっては、換気経路となる廊下等も含めて計算する必要があります。
【配慮事項】
  • 冬季の廊下からの給気について、外気を予熱することやガラリ等の給気口の取り付け位置を天井に近い位置に設ける等の配慮が必要です。(第1章(5)各種の条件に対応する換気計画の考え方参照)

b)機械換気設備の取付け方式

1.ダクト方式とする場合

  • 空気の経路となるダクトを通して給気や排気を行う方式で、効率の良い場所に給気口や排気口を設置できる方式です。
  • ダクトや換気設備の本体を設置するためのスペースが天井裏に必要となります。
  • ダクトの経路における梁の位置や照度分布に影響を与えないように照明器具の配置等を調整する必要があります。

2.ダクト方式以外の場合

  • 壁やサッシに直接換気設備を取り付ける方式は、ダクトが不要で比較的簡便に設置できる方式です。
  • 天井裏にダクトや換気設備を設置するためのスペースがない場合や天井等の室内の改修工事を実施せず換気設備の設置のみを行う場合などに使用されます。
  • サッシに取り付ける場合は、取付けパネルにより採光面積が減少するため採光面積の検討にも留意する必要があります。

c)換気回数の選定

 機械換気設備による必要換気回数設定の考え方としては、建築基準法に基づくシックハウス対策に対応した換気回数や学校環境衛生の基準に基づいた二酸化炭素濃度等に対応した換気回数とする考え方があります。

1.建築基準法に対応した換気回数とする場合(0.3回毎時)

(第1章(4)1)改正建築基準法への対応参照)

  • 建築基準法に基づくシックハウス対策のための最低換気量を確保するための方式です。
  • 学校環境衛生の基準による換気回数を確保するためには、窓開けによる換気が確実に励行されるよう使用者に対して徹底する必要があります。

2.学校環境衛生の基準の規定に対応した換気回数とする場合(幼稚園・小学校2.2回毎時、中学校3.2回毎時、高等学校等4.4回毎時)

(第1章(4)2)学校環境衛生の基準への対応参照)

  • 二酸化炭素濃度等の学校環境衛生の基準に基づく換気量を確保するための方式です。
  • 省エネルギーの観点から在室していない時は、換気量を減らすことができるように可変型の換気設備とする場合や複数台の換気設備を設置する場合もあります。
  • 換気量が大きくなるため、冬季の冷気対策等が必要となります。

d)各換気設備方式の配慮事項等について(小学校の例)

凡例

  • 注1:必要有効換気量での選定が必要(P9参照)
  • 注2:建築基準法に基づく必要換気回数の算定に当たっては、換気経路となる廊下等を含めた算定が必要(P8参照)
  • 注3:1台毎室の場合は換気扇等からの騒音対策に配慮が必要(P16参照)
  • 静圧:ダクトによる圧力損失を考慮することが必要(22参照)
  • 雨水:給気側の雨水侵入の配慮が必要(P18参照)
  • 窓開け:学校環境衛生の基準への対応として窓開け換気が必要(P2参照)
  • 予熱:外気導入に当たり予熱や給気口の位置に配慮が必要(P15参照)
  • △:換気風量が大きい場合は、冬季の冷気対策上あまり好ましくないと考えられる。
  • イニシャルコスト(設備設置費) :A(低め)→C(高め)
  • ランニングコスト(運転費・メンテナンス費) :A(低め)→C(高め)

 ※ 地域性の地域区分(1~6)は、巻末参考資料の「4.地域区分」(P56、57)を参照

換気設備方式 第1種 第2種 第3種
全熱交換あり注1 全熱交換なし 全熱交換あり注1 全熱交換なし
取付け方式 ダクト方式 ダクトなし(壁・サッシ取付) ダクト方式 ダクトなし(壁・サッシ取付) ダクト方式 ダクトなし(壁・サッシ取付)
静圧 雨水 静圧 雨水 静圧
必要換気回数(回毎時) 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2 0.3 2.2
窓開け 窓開け 窓開け 窓開け 窓開け 窓開け 窓開け 窓開け
地域性 寒冷地域
(1~3)

予熱

予熱
○予熱
予熱

予熱

予熱

予熱

予熱
一般地域
(4)

予熱

予熱

予熱

予熱

予熱

予熱
暑熱地域
(5、6)
コスト イニシャルコスト 高め 高め 高め 高め 高め 高め 普通 普通 普通 普通 低め 低め 普通 普通 低め 低め
ランニングコスト 高め 高め 高め 高め 高め 高め 普通 普通 高め 高め 低め 低め 高め 高め 低め 低め
備考 注3 注3 注3 注3 注2 注3 注2 注3 注2 注3 注2 注3
計画事例図 36 37 38 39 40 41 42 43
事例No. A-1-1 A-1-2 A-1-3 A-1-4 A-2-1 A-2-2 A-2-3 A-2-4 B-1-1 B-1-2 B-2-1 B-2-2 C-1-1 C-1-2 C-2-1 C-2-2

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-- 登録:平成21年以前 --