学校施設の換気設備に関する調査研究報告書 第1章 学校施設における換気計画の基本的な考え方(1)

(1)空調・換気設備

1)空調・換気設備の計画

 良好な室内環境を確保するためには、地域の環境条件、経済条件等を考慮し、換気設備と空調設備(冷暖房設備)を総合的に計画することが必要です。

2)空調・換気設備の方式

a)暖房設備

 学校で使用される暖房設備としては、高温輻射暖房(開放型・半密閉型ストーブ、蒸気式放熱器等)、温風暖房(FF式温風暖房機、ファンコイル、エアコン等)、低温輻射型暖房(床暖房、温水パネル等)、校舎全体を輻射または温風で暖房する方式等があります。
 現在、多くの学校では、FF式温風暖房機が使用されていますが、この方式は、温風が吹き出される付近が高温になるとともに、室内の垂直方向の温度分布が大きくなりやすいことに留意する必要があります。
 また、開放型や半密閉型の燃焼方式の暖房器具については、室内空気が汚染され易く、換気設備を計画する際に必要換気量を大きくとる必要があります。
 一方、温水パネルを窓下に設置する等の低温輻射型暖房は、教室の水平方向や垂直方向の温度分布を少なくし、衛生的で快適な室内の温熱環境を確保するために有効な方式です。また、将来的には、廊下も含めた校舎全体の暖房についても検討することが必要になると思われます。

b)冷房設備

 学校で使用される冷房設備としては、天吊りエアコン(個別方式)、中央式ファンコイル方式(冷水循環方式)等があります。
今のところ冷房設備が設けられている学校は少ない状況にありますが、騒音や大気汚染が問題となる地区では、窓を開放して通風を確保することが困難であることから冷房設備を設けている場合があります。

c)換気設備

 学校で使用される換気設備の設置方式としては、個別に換気扇(給気型、排気型、同時給排気型)を設置する方式と中央管理方式の換気設備等があります。
 また、外気を取り入れる方式として、省エネルギー対策としては、自然換気と機械換気の両方を組み合せたハイブリッドシステム等が考えられます。ただし、この方式の場合は、安定した換気量を確保するための配慮が必要になります。
 建築基準法の改正において規制対象となったホルムアルデヒドについては、許容濃度を100マイクログラム毎立方メートルとし、これを達成するための換気回数は教室の場合には0.3回毎時以上と規定されています。一方、学校環境衛生の基準では、二酸化炭素(シー オー ツー)の許容濃度は1,500ppm以下、一酸化炭素濃度は10ppm以下、浮遊粉塵は0.1ミリグラム/毎立方メートル以下と規定されており、例えば40人が在室している180立方メートルの教室における換気回数は、幼稚園・小学校では2.2回毎時以上、中学校では3.2回毎時以上、高等学校等では4.4回毎時以上となります。

 計画する機械換気設備の換気回数としては以下の方法が想定されます。

  • 建築基準法の規定による必要換気回数(0.3回毎時)を前提とした換気設備を計画する場合
     機械換気設備による換気の他に、学校環境衛生の基準(第1章(4)2)学校環境衛生の基準への対応参照)に基づくシー オー ツー(二酸化炭素)の判定基準(1500ppm以下)を守るために定時間毎の窓開けによる換気が必要となります。
  • 学校環境衛生の基準に基づく換気回数(幼稚園・小学校:2.2回毎時以上、中学校3.2回毎時以上、高校等:4.4回毎時以上)を前提とした換気設備を計画する場合
     学校環境衛生の基準で必要な換気量を1台の換気設備で確保する場合の他、基準法上必要な換気回数(0.3回毎時)の換気設備を1台と残りの換気量を確保する複数の換気設備を組み合わせる場合、あるいは換気量の可変型の換気設備の設置を行う場合等が考えられます。

ハイブリッド換気システムについて

 ハイブリッドとは、何かを混合するという意味で、ハイブリッド換気システムは、内外の温度差を利用した換気システム(パッシブ換気システム)に排気用の補助ファンと排気量を調節するためのダンパを組み込んだシステムのことです。
 補助ファンとダンパを組合わせることで、パッシブ換気システムの中間期(春・夏)の温度差が小さい時期に換気量が不足することや温度差が大きい時期には必要以上の換気が行われる場合があるなどの短所を補うことが可能です。
 安定した換気量を確保するためには、実際の内外温度差と内外温度差による排気量をあらかじめ調べておく必要があります。

図1‐1 ハイブリット換気ステムの例
図1‐1 ハイブリット換気ステムの例

3)換気計画の留意点

 機械換気設備を計画する際には、校舎全体の換気計画を立案することが重要です。
 室内に廃気が排出される暖房設備の場合は、人体から放出されるシー オー ツーの他に、それらの汚染物質の排気についても考慮する必要があります。また、冷暖房設備を設置する場合の機械換気設備は、外気の予熱や熱回収についても考慮する必要があります。

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